終末期や亡くなった後のことsafe

この前僕らの飼い主が怪我をしてしまったんだ。

それは大変だったね。もう、大丈夫なの?

うん。比較的軽傷だったから、すぐに良くなったんだけど、飼い主さんは「自分は身寄りが居ないから、万が一の時、ニャン太とニャン子が困らない様に、そろそろ遺言を書こうかな」って言ってたわ。

心細そうな顔をしてたから、僕たちも心配になってしまったんだ。

僕たちペットのことを心配して遺言を書こうなんて、優しい飼い主さんだね。でも、遺言って書き方に決まりがあって、その決まり通りに書かれていないと意味が無いと聞いたことがある。

その通り。それに、僕たちペットのことに限らず、遺言だけでは万全とは言えないことも多いんだよ。

えー!それは大変。飼い主さんに教えてあげなきゃ。

その前に、まずは僕たちで、遺言のことや飼い主さんが亡くなってしまった後のことについて勉強してみないか!

一同:同意

高齢者の方が終末期に備えて準備する代表的な書類を紹介します。

遺言

自分が亡くなった後について、自分の気持ちを伝える手段が遺言です。
遺言には、大きく、普通方式遺言と特別方式遺言に分けられます。

普通方式遺言

一般に私たちが思い浮かべる遺言の作成方式で、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。

 

自筆証書遺言
その名の通り、自分で書く遺言です。手軽に準備できますが、決められたルールに従った書き方をしていないと無効になる可能性があります。また、作成した遺言は自分で保管する為、紛失してしまったり、亡くなったあとにも遺言が発見されず、意思が誰にも伝わらないということもありました。自筆証書遺言が執行される為には、裁判所での検認手続きが必要になります。
※平成31年1月13日以降に自筆証書遺言をする場合には,新しい方式に従って遺言書を作成することができるようになりました。
※法務省で詳しい内容が紹介されています。法務省:自筆証書遺言に関するルールが変わります。(moj.go.jp)
※現在は、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用することで、これまで自筆証書遺言のデメリットとされていた多くの部分をカバーすることが可能になっています。
※法務省が自筆証書遺言書保管制度について詳しく説明しています。自筆証書遺言書保管制度 (moj.go.jp)

公正証書遺言
公証役場おいて公正証書を作成することによる遺言です。完成した遺言は、法務局に登記されますので、信用性の高い遺言と言えます。文章自体は、公証人が作成してくれますが、高齢者の場合、そもそも自分の想いや意思を公証人伝えること自体が難しいという人も少なくありません。この為、何度も遺言を書き替える事態になる人も少なくありません。
もちろん、気持ちが変わったり、遺言を書き替えること自体が悪い訳ではありませんが、公正証書遺言は、作成するのに費用が掛かりますし、2名以上必要とされている証人への謝金も支払わなくてはなりません。無駄な費用を使わない様に、それなりの準備は必要です。
※日本公証人連合会で公正証書遺言についてのQAを紹介しています。2 遺言 | 日本公証人連合会 (koshonin.gr.jp)

 

秘密証書遺言
本人が作成した遺言に封をして、その封書を公証人に提出し必要事項の記載を受けた上で、本人と証人2名以上が封書に署名・押印することで完成する遺言です。公証役場で作成されますが、保管自体は本人が自分で行います。秘密証書遺言は、正規の手続きを経ずに開封すると無効になります。

特別方式遺言

普通方式において遺言書を作成する余裕のないときに利用できる特殊な方式の遺言です。
危急時遺言と隔絶地遺言の2種類があります。

死後事務委任契約

例えば、自分が亡くなった後の葬儀や納骨についての希望等は、遺言に記載されたからといって必ず実行されるとは限りません。この為、亡くなった後の事項について、自分の意思を書き留めて、更に、その行為を誰かに委任し、本人と委任者との間で予め契約を取り交わしておくことが死後事務委任契約です。公正証書によって、委任契約を交わしておくと、法的効力が高くなりますので、受任者が第三者の場合は公正証書での作成を行っておくことをお勧めします。

尊厳死宣言書

終末期の医療や介護を検討する時、避けて通れないのが「延命」に対する意思の確認です。
ご本人の意思が尊重されるべきは言うまでもありませんが、回復の見込みが無い場合に、「延命措置を中止して欲しい」と本人以外の第三者が、関係者の集まる会議等の席で表明するのは、そう簡単なことではありません。
自らの意思を表明するだけでなく、難しい判断を迫られる家族や関係者の為に、作成するという人も少なくありません。作成に際しては、特別なルールがある訳ではありませんが、命に係わることなので、公証役場で作成するとより信頼性が高まるかもしれません。

公証役場で作成される尊厳宣言書の一例

ペット信託(信託契約・信託遺言)

ペット信託って何?~遺言とどう違うの~

用語として使われている「ペット信託」は、既存の信託制度を活用して、自分が病気でペット面倒を見れなくなった後や亡くなった後も大切なペットが困らない様に、その世話を誰かに託すことです。例えば、遺言で「私の財産を愛犬もしくは愛猫に遺贈する」と書いたとしても、愛犬や愛猫が財産を使用できる訳ではありません。
では、「私の財産は、愛犬もしくは愛猫の世話をしてくれる人に遺贈する」と書いたとしたらどうでしょう。「世話をします」と言って財産をもらった途端に、愛犬や愛猫が放置されてしまう可能性も否めません。
例え、宣言通り愛情をもって世話をしてくれたとしても、その人が事故や病気で愛犬や愛猫より先に亡くなってしまったら、せっかく愛犬や愛猫の為に残したハズの財産でも、法律的には世話をしてくれていた人の相続財産となる為、本来の目的とは違ったものになってしまいます。

こうした不安を出来るだけ、軽減させておくために準備するのが、ペット信託(信託契約・信託遺言)です。
具体的には、ある一定の財産を蓄えておいて、ペットの世話をしてくれる人に、定期的に支払を行うという契約を公正証書で取り交わしておくものです。ペットの為の財産は、信託銀行の信託専用口座で管理されます。
もちろん、どこまで準備をしていても完璧という訳にはいきませんが、自分で世話が出来なくなる以上、どこかで誰かを信じなければなりません。
少なくとも、誰にどの様に愛犬や愛猫の世話を託すのかを、事前に考え話し合っておくことで、心の負担や心配の種は軽減できるのではないでしょうか。

当団体では、お一人おひとりのご要望をお聞きするのはもちろん、ワンちゃんやネコちゃんとも事前に面接を行った上で、ペット信託(信託契約・信託遺言)の準備をお手伝いしています。
金銭的な準備は当然必要ですが、最も大切なことは、高齢期の飼い主さんが生きている間、不安なく愛犬や愛猫と一緒に生活できる環境を整えることだと考えているからです。
飼い主さんが安心できるペットとの暮らしは、当然、動物福祉に通じるものでなければなりません。この為、当団体でのペット信託(信託契約・信託遺言)相談は、時間を要することをご理解頂いた上で、ご相談ください。