問題38 社会福祉法に規定される共同募金に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 災害に備えるため準備金を積み立て、他の共同募金会に拠出することができる。
2 共同募金を行うには、あらかじめ都道府県の承認を得て、その目標額を定める。
3 共同募金を行う事業は第二種社会福祉事業である。
4 市町村を区域として行われる寄附金の募集である。
5 募金方法別実績で最も割合が髙いのは街頭募金である。
1は〇である。社会福祉法118条1項2項参照。
2は×である。
共同募金会は、共同募金を行うには、あらかじめ、都道府県社会福祉協議会の意見を聴き、及び配分委員会の承認を得て、共同募金の目標額、受配者の範囲及び配分の方法を定め、これを公告しなければならない(社会福祉法119条)。㉚問35肢5参照。
3は×である。第一種社会福祉事業である。㉚問33肢3参照。
4は×である。都道府県を区域として行われる。㉜問22肢5参照。
5は×である。圧倒的に多いのは、戸別募金である。2020年のデータであるが、街頭募金は0.7%である。
正解1
正解肢1の知識は初めての出題だと思われる。過去問学習を頼りに消去法で解く。
問題39 災害時における支援体制に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 災害対策基本法は、国及び地方公共団体が、ボランティアによる防災活動を監督し、その指揮命令下で活動するよう指導しなければならないと規定している。
2 災害対策基本法は、市町村長が避難行動要支援者ごとに、避難支援等を実施するための個別避難計画を作成するよう努めなければならないと規定している。
3 災害対策基本法は、本人が同意している場合でも、市町村長が作成した避難行動要支援者の名簿情報を避難支援等関係者に提供してはならないと規定している。
4 「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(2021年(令和3年)改定(内閣府))は、福祉避難所は社会福祉施設でなければならないとしている。
5 「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」(厚生労働省)は、国が主に福祉避難所において、災害時要配慮者の福祉支援を行う災害派遣福祉チームを組成するとしている。
1は×である。
「監督し、その指揮命令下で活動するよう指導しなければならない」という部分が誤りであると気づける。㉜問35肢1参照。
2は〇である。努力義務となっているところがひっかかる人は、△にして次に進む。
3は×である。本人が同意しているのであれば、情報の提供を認めてもよい。㉘問38肢2参照。
4は×である。「祉避難所は社会福祉施設でなければならない」との部分が×である。
5は×である。
「国が」となっているのが×である。国では被災地への迅速かつ適切な災害派遣福祉チームの組成は難しいであろう。㉛問25参照。
正解2
災害対策基本法については、㉞問37、㉝問37、㉜問35、㉘問38で関連問題が出されている。「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」参照。
問題40 地域福祉におけるネットワーキングに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 地域介護予防活動支援事業は、市町村が介護保険の第二号被保険者に対して、介護予防の活動を行うために、地域住民とネットワークを構築して取り組むものである。
2 被災者見守り・相談支援事業では、復興公営住宅の居住者を対象として、生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)が見守りを中心としたネットワークを構築し、支援を行う。
3 社会福祉法人による「地域における公益的な取組」は、社会福祉充実残額が生じた場合に、社会福祉法人がネットワークを構築して取り組むものである。
4 介護保険の生活支援・介護予防サービスの体制整備に向けて、都道府県は、協議体を定期的な情報共有のネットワークの場として設置している。
5 ひきこもり地域支援センター事業では、地域の多様な関係機関で構成される連絡協議会を設置する等、ネットワークづくりに努めるとされている。
1は×である。
一読して、対象を第二号被保険者に限定するのはおかしいと感じるはずである。対象となるのは、すべての第一号保険者(65歳以上の高齢者)及びその支援のための活動に関わる者である。
2は×である。復興公営住宅の居住者ではなく、仮設住宅や災害公営住宅の居住者である。
3は×である。
「社会福祉充実残額が生じた場合に」という限定がおかしいと感じられればよい。社会福祉充実残額の有無に関わらず、取り組むものである。
4は×である。
都道府県ではなく、市町村である(介護保険法115条の45第2項5号参照)。協議体を定期的な情報共有のネットワークの場として設置するのにいずれが適しているか考えてみるとよい。
5は〇である。
正解5
個々の記述について細かい知識がなくても構わない。注意深く選択肢を読んでおかしな部分がないかに気付けばよい。また、各選択肢を比較して、もっとも無難なことが書かれている5を選ぶという方法も考えられる。
問題41 事例を読んで、会議に向けたD社会福祉士の方針に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
独立型社会福祉士事務所のD社会福祉士は、一人暮らしのEさん(85歳、女性、要介護1、身寄りなし)の保佐人を務めている。Eさんが熱中症の症状で入院することになった際、担当介護支援専門員からEさんの退院後の支援方針について会議を持ちたいと提案があった。担当介護支援専門員は、Eさんは認知機能の低下もあり、単身生活に不安を表明する近隣住民もおり、今後の本人の安全も考えるとサービス付き高齢者向け住宅への転居を検討すべきではないかと話している。また、長年見守りを続け、Eさんが信頼を寄せるF民生委員は、「本人の思いを尊重したい」と述べている。
1 Eさんの最善の利益を実現するため、Eさんにサービス付き高齢者向け住宅への転居を促す。
2 Eさんにとって危険な状況であるため、緊急的な措置入所の可能性を検討する。
3 Eさんの意思を尊重するため、専門職を中心に自宅で暮らし続ける方法を検討する。
4 Eさんが思いを表明しやすくするため、Eさんが信頼するF民生委員に会議に同席してもらう。
5 Eさんは認知機能の低下が見込まれるため、会議ではEさんや関係者で判断せず、かかりつけ医の判断に委ねる。
1は×である。Eの意思を確認することなく、最善の利益を優先している。
2は×である。Eは熱中症で入院し治療を受けているが、それだけでEが危険な状況にあると判断することはできない。
3は×である。問題文にはEが自宅で暮らし続ける意思を有しているかが明示されていない。
4は○である。
会議でEが自分の意思を率直に伝えられるかについては、様々な課題がある。参加者に気兼ねして本心を言えない可能性もある。会議でEが思いを表明しやすくするため、Eが信頼するF民生委員に同席してもらうことは、会議に向けたD社会福祉士の方針として最も適切なものといえる。
5は×である。
Eの認知機能の低下を考慮することは大切だが、かかりつけ医の判断に委ねることは適切とはいえない。
正解4
選択するのは、会議に向けたD社会福祉士の方針として最も適切なものである。
本人の意思(決定)の尊重は近時の福祉のトレンドともいえる。その一方で、最善の利益を考えることも重要である。この問題について興味があるに人は、佐藤彰一「「意思決定支援」は可能か」法哲学年報2016(2017). 57-71頁をお薦めする。