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6.地域福祉の理論と方法(R5年2月-第35回)1/2

問題32 地域福祉の基礎的な理念や概念に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 コミュニティケアとは、地域の特性や地域における課題やニーズを把握し、地域の状況を診断することをいう。
2 セルフアドボカシーとは、行政が、障害者や高齢者等の権利を擁護するよう主張することをいう。
3 福祉の多元化とは、全ての人々を排除せず、健康で文化的な生活が実現できるよう、社会の構成員として包み支え合う社会を目指すことをいう。
4 社会的企業とは、社会問題の解決を組織の主たる目的としており、その解決手段としてビジネスの手法を用いている企業のことである。
5 住民主体の原則とは、サービス利用者である地域住民が、主体的にサービスを選択することを重視する考え方である。

1は×である。
コミュニティケアは、単に地域の状況を診断することではない。
2は×である。
セルフアドボカシーとは, クライエントが自らの権利を主張していく活動である。㉜問94参照。
3は×である。
ソーシャル・インクルージョンの説明である。㉛問33参照。
4は〇である。㉚問25参照。
5は×である。
住民主体の原則とは、地域の福祉を推進していく基本的な主体は地域社会に暮らす住民自身であるという考え方である。㉞問32、㉛問33などで登場している。

正解4
4を単独で選ぶのは難しかったであろう。消去法で解く方が無難である。

問題33 地域福祉における多様な参加の形態に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 特定非営利活動法人は、市民が行うボランティア活動を促進することを目的としており、収益を目的とする事業を行うことは禁止されている。
2 社会福祉法に規定された市町村地域福祉計画を策定又は変更する場合には、地域住民等の意見を反映させるように努めなければならないとされている。
3 重層的支援体制整備事業における参加支援事業は、ひきこもり状態にある人の就職を容易にするため、住居の確保に必要な給付金を支給する事業である。
4共同募金の募金実績総額は、1990年代に減少に転じたが、2000年(平成12年)以降は一貫して増加している。
5 市民後見人の養成は、制度に対する理解の向上を目的としているため、家庭裁判所は養成された市民を成年後見人等として選任できないとされている。

1は×である。NPO法人も収益活動を行える。㉜問120参照。
2は〇である。社会福祉法107条2項参照。
3は×である。
参加支援事業は社会とのつながりを作るための支援であり、住居の確保に必要な給付金を支給する事業ではない。㉝問34参照。
4は×である。総じて減少傾向にある。㉜問39参照。
5は×である。このような制限はない。

正解2

問題34 地域共生社会の実現に向けた、厚生労働省の取組に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 2015年(平成27年)の「福祉の提供ビジョン」において、重層的支援体制整備事業の整備の必要性が示された。
2 2016年(平成28年)の「地域力強化検討会」の中間とりまとめにおいて、初めて地域包括ケアシステムが具体的に明示された。
3 2017年(平成29年)の「地域力強化検討会」の最終とりまとめにおいて、縦割りの支援を当事者中心の「丸ごと」の支援とする等の包括的な支援体制の整備の必要性が示された。
4 2018年(平成30年)の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」において、社会福祉士は特定の分野の専門性に特化して養成すべきであると提言された。
5 2019年(令和元年)の「地域共生社会推進検討会」の最終とりまとめにおいて、生活困窮者自立支援法の創設の必要性が示された。
(注)1 「福祉の提供ビジョン」とは、「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現-新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン-」のことである。
2 「地域力強化検討会」とは、「地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会」のことである。
3 「地域共生社会推進検討会」とは、「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」のことである。

1は×である。2021(令和3)年の改正社会福祉法である。
2は×である。
初めて地域包括ケアシステムが具体的に明示されたのは、2014年に施行された「医療介護総合確保推進法」だと思われる。 3は〇である。
4は×である。
社会福祉士には、ソーシャルワークの機能を発揮し、制度横断的な課題への対応や必要な社会資源の開発といった役割を担うことができる実践能力を身につけることが求められている。
5は×である。生活困窮者自立支援法は、2013(平成25)に成立している。

正解3
重層的支援体制整備事業は初の登場である。最近の法改正の動向を押さえていなかった人は、消去法で解くしかない。

問題35 事例を読んで、自立相談支援機関のB主任相談支援員(社会福祉士)がこの時点で検討する支援として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Cさん(30歳代、男性)は、60歳代の両親と同居している。終日、自室でオンラインゲームをして過ごしており、10年以上ひきこもりの状態にある。父親はいくつかの仕事を転々としてきたが、65歳で仕事を辞め、その後は主に基礎年金で生活をしているため、経済的にも困窮している様子である。また、母親は長年にわたるCさんとの関係に疲れており、それを心配した民生委員が、生活困窮者自立支援制度の相談機関を紹介したところ、母親は自立相談支援機関に来所し、B主任相談支援員にCさんのことを相談した。

1 ひきこもりの人に配慮された居場所が、地域のどこにあるかを調べ、Cさんにその場所と事業・活動を紹介する。
2 まずはCさんが抱える心理的な課題に絞ってアセスメントを行い、支援計画を作成する。
3 福祉専門職による支援だけでなぐ当事者や経験者が行うピアサポートや、ひきこもりの家族会などの情報を母親に提供する。
4 手紙やメール等を用いた支援は不適切であるため行わず、直接、Cさんと対面して支援する。
5 地域の支援関係者間で早期に支援を行うため、Cさんの同意を取る前に、支援調整会議で詳細な情報を共有する。

1は〇である。
2は×である。時期尚早である。
3は〇である。
4は×である。
手紙やメールが不適切であると一概には言えないし、いきなり対面して支援するような段階でもない。
5は×である。
支援調整会議で詳細な情報を共有するには、まずCの意向を確認してからにすべきである。

正解1,3
Cの母親が自立相談支援機関に来所して相談したのは、これが初めてである。この段階でBが検討する支援は何かが問われている。
初回面接の場面を想定した事例問題は、過去にも出されている。㉞問97参照。

問題36 次のうち、社会福祉法に規定されている地域福祉に関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 2017年(平成29年)の社会福祉法改正において、「地域福祉の推進」の条文が新設された。
2 市町村社会福祉協議会は、災害ボランティアセンターを整備しなければならない。
3 地域住民等は市町村からの指導により、地域福祉の推進に努めなければならない。
4 重層的支援体制整備事業は、参加支援、地域づくりに向けた支援の二つで構成されている。
5 市町村は、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に努めなければならない。

1は×である。
「地域福祉の推進」の条文が新設されたのは、2000年の改正社会福祉法である。
2は×である。
災害ボランティアセンターは一般的に、被災した地域の社会福祉協議会やボランティア活動に関わっている関係団体、行政が協働して担うことが多いが。市町村社会福祉協議会が整備しなければならないとされているわけではない。㉜問35、㉙問40参照。
3は×である。「市町村からの指導により」が不適切である。
4は×である。
重層的支援体制整備事業は。①包括的相談支援事業、②参加支援事業、③地域づくり事業、④アウトリーチ等を通じた継続的支援事業、⑤多機関協働事業からなる(社会福祉法106条の4第2項参照)。
5は〇である。社会福祉法6条2項参照。

正解5
個々に迷う記述はあると思うが、5がもっとも無難な記述になっている。ちなみに、社会福祉法6条2項は、「国および地方公共団体は」となっていることにも注意する。

問題37 地域福祉の推進に向けた役割を担う、社会福祉法に規定される市町村地域福祉計画に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 市町村地域福祉計画では、市町村社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画をもって、地域福祉計画とみなすことができる。
2 市町村地域福祉計画の内容は、市町村の総合計画に盛り込まれなければならないとされている。
3 市町村地域福祉計画では、市町村は策定した計画について、定期的に調査、分析及び評価を行うよう努めるとされている。
4 市町村地域福祉計画は、他の福祉計画と一体で策定できるように、計画期間が法文上定められている。
5 市町村地域福祉計画は、2000年(平成12年)の社会福祉法への改正によって策定が義務化され、全ての市町村で策定されている。

1は×である。このような規定は存在しない。
2は×である。
このような規定は存在しない。本肢の正誤については迷った人が多かったと思われるが、市町村地域福祉計画の策定は努力義務に留まる。このことから考えて、「市町村の総合計画に盛り込まれなければならない」との部分は誤りではないかと推測できる。
3は〇である。
策定した計画について事後にチェックすることは極めて普通のことであり、本肢は無難な内容の記述と言える。社会福祉法107条3項。
4は×である。このような規定は存在しない。
5は×である。
地域福祉計画の策定は、2000年の改正社会福祉法に規定された事項である。当初は策定は任意だったが、2018(平成30)年4月の社会福祉法(昭和26年法律第45号)の一部改正により、策定は努力義務になっている。

正解3
2か3かで迷った人が多かったと思われる。㉞問35、問47の他、市町村地域福祉計画は頻出している。これを地域福祉活動計画との違いは確実に押さえておく必要がある。

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