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3.社会理論と社会システム(R4年2月-第35回)

問題15 次の記述のうち、ヴヱーバー(Weber、M.)の合法的支配における法の位置づけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 法は、被支配者を従わせ、超人的な支配者の権力を貫徹するための道具である。
2 法は、伝統的に継承されてきた支配体制を正当化するための道具である。
3 法は、支配者の恣意的な判断により定められる。
4 法は、神意や事物の本性によって導き出される。
5 法は、万民が服さなければならないものであり、支配者も例外ではない。

1は×である。カリスマ的支配である。
2は×である。伝統的支配である
3は×である。
ヴヱーバーの合法的支配における法は、万民が服さなければならないものであり、支配者も例外ではない(肢5参照)。
4は×である。
カリスマ的支配における法の位置づけを意識した記述だと思われる。
5は○である。

正解5
㉜問15に類題がある。㉘問15は合法的支配以外についても問うものである。合法的支配という用語から、法に基づく支配ということは想像できるであろう。そこでの法はどのようなものか素直に考えればよい。

問題16 社会変動の理論に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ルーマン(Luhmann、N.)は、社会の発展に伴い、軍事型社会から産業型社会へ移行すると主張した。
2 テンニース(Tonnies、F.)は、自然的な本質意志に基づくゲマインシャフトから人為的な選択意志に基づくゲゼルシャフトへ移行すると主張した。
3 デュルケム(Durkheim、E.)は、産業化の進展に伴い、工業社会の次の発展段階として脱工業社会が到来すると主張した。
4 スペンサー(Spencer、H.)は、近代社会では適応、目標達成、統合、潜在的パターン維持の四つの機能に対応した下位システムが分出すると主張した。
5 パーソンズ(Parsons、T.)は、同質的な個人が並列する機械的連帯から、異質な個人の分業による有機的な連帯へと変化していくと主張した。

1は×である。スペンサーの社会進化論の説明である。
2は○である。㉘問18参照。
3は×である。ベル,Dの主張である。㉞問17参照。
4は×である。パーソンズ,TのAGIL4機能図式の説明である。
5は×である。デュルケーム,Eの理論である。㉖㉒で出題されている。

正解2
テンニースの理論は過去問でも何度か出題されており、積極法でこれを選びたいところである。

問題17 「令和4年版男女共同参画白書」(内閣府)に示された近年の家族の動向に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 2020年(令和2年)において、全婚姻件数における再婚件数の割合は40%を超えている。
2 家事、育児における配偶者間の負担割合について、「配偶者と半分ずつ分担したい」(外部サービスを利用しながら分担するを含む)と希望する18〜39歳の男性の割合は、70%を超えている。
3 20代の男性、女性ともに50%以上が、「配偶者はいないが恋人はいる」と回答している。
4 2021年(令和3年)において、妻が25-34歳の「夫婦と子供から成る世帯」のうち、妻が専業主婦である世帯の割合は、50%を超えている。
5 子供がいる現役世帯のうち、「大人が一人」の世帯の世帯員の2018年(平成30年)における相対的貧困率は、30%を下回っている。

1は×である。
全婚姻件数における再婚件数の割合であるが、40%は少し多い感じがする。2020年の調査では全婚姻件数の約4件に1件の割合になっている。
2は〇である。
ひと昔前なら考えられなかったであろう。時代とともに変わるものがあることを実感する。
3は×である。
男女ともに50%以上は多すぎると感じるのではないだろうか。20代の女性の約5割、男性の約7割が、「配偶者、恋人はいない(未婚)」と回答している。
4は×である。
50%を超えているというのは多すぎると感じる。妻が64歳以下の世帯について見ると、令和3(2021)年では、専業主婦世帯は夫婦のいる世帯全体の23.1%となっている。
5は×である。
この場合の相対的貧困率はもっと高いと感じるのではないだろうか。「大人1人と子供の世帯の相対的貧困率」は53.4%(2019年、全国家計構造調査)、48.3%(2018年、国民生活基礎調査)である。

正解2
統計に関する問題は、知らなければ推測して解くしかない。このタイプの問題は推測して解けることが多いが、本問は難問の部類に属するであろう。なお、本問の題材が「令和4年版男女共同参画白書」のデータであることから、思い切って2を選ぶという方法もある。

問題18 次の記述のうち、人々の生活を捉えるための概念の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 生活時間とは、個々人の人生の横断面に見られる生活の様式や構造、価値観を捉える概念である。
2 ライフステージとは、生活主体の主観的状態に注目し、多面的、多角的に生活の豊かさを評価しようとする概念である。
3 生活の質とは、時間的周期で繰り返される労働、休養、休暇がどのように配分されているかに注目する概念である。
4 家族周期とは、結婚、子どもの出生、配偶者の死亡といったライフイベントの時間的展開の規則性を説明する概念である。
5 ライフスタイルとは、出生から死に至るまでの人の生涯の諸段階を示す概念である。

1は×である。生活時間は、3の説明部分に対応する。
2は×である。ライフステージは、5の説明部分に対応する。㉝問18参照。
3は×である。生活の質は、2の説明部分に対応する。
4は○である。
5は×である。ライフスタイルは、1の説明部分に対応する。

正解4
紛らわしい説明が多い。問題を読み進めていくうちに、交差法を使えるのではないかと気づければ楽に解ける。2のライフステージと5の説明部分、1の生活時間と3の説明部分のつながりは、わかりやすいであろう。

問題19 社会的役割に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 役割距離とは、個人が他者からの期待を自らに取り入れ、行為を形成することを指す。
2 役割取得とは、個人が他者との相互行為の中で相手の期待に変容をもたらすことで、既存の役割期待を超えた新たな行為が展開することを指す。
3 役割葛藤とは、個人が複数の役割を担うことで、役割の間に矛盾が生じ、個人の心理的緊張を引き起こすことを指す。
4 役割期待とは、個人が他者からの期待と少しずらした形で行為をすることで、自己の主体性を表現することを指す。
5 役割形成とは、個人が社会的地位に応じた役割を果たすことを他者から期待されることを指す。

1は×である。役割距離は、4の説明部分に対応する。㉝問19参照。
2は×である。役割取得は、1の説明部分に対応する。㉚問19参照。
3は〇である。
4は×である。役割期待は、5の説明部分に対応する。
5は×である。役割形成は、2の説明部分に対応する。ターナーが提唱した概念である。

正解3
㉝、㉚、㉙で出題されており、出題が予想できた問題である。説明の仕方を微妙にずらしてくることがあるので、注意深く解く必要がある。本問は交差法を用いてもよいが、積極法で3を選んでもよい。

問題20 次の記述のうち、ハーディン(Hardin、G.)が提起した「共有地の悲劇」に関する説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 協力してお互いに利益を得るか、相手を裏切って自分だけの利益を得るか、選択しなければならない状況を指す。
2 財やサービスの対価を払うことなく、利益のみを享受する成員が生まれる状況を指す。
3 協力的行動を行うと報酬を得るが、非協力的行動を行うと罰を受ける状況を指す。
4 それぞれの個人が合理的な判断の下で自己利益を追求した結果、全体としては誰にとっても不利益な結果を招いてしまう状況を指す。
5 本来、社会で広く共有されるべき公共財へのアクセスが、特定の成員に限られている状況を指す。

1は×である。囚人のジレンマについての説明である。㉘問20参照。
2は×である。フリーライダーについての説明である。㉛問21参照。
3は×である。選択的誘因についての説明である。㉘問20参照。
4は○である。㉚問20、㉘問20参照。
5は×である。共有地の悲劇についての説明ではない。㉘問20参照。

正解4
社会的ジレンマに関する用語の理解を問うものである。過去問でも出されており、出題が予想できた問題である。

問題21 次の記述のうち、ラベリング論の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会がある行為を逸脱とみなし統制しようとすることによって、逸脱が生じると考える立場である。
2 非行少年が遵法的な世界と非行的な世界の間で揺れ動き漂っている中で、逸脱が生じると考える立場である。
3 地域社会の規範や共同体意識が弛緩することから、非行や犯罪などの逸脱が生じると考える立場である。
4 下位集団における逸脱文化の学習によって、逸脱が生じると考える立場である。
5 個人の生得的な資質によって、非行や犯罪などの逸脱が生じると考える立場である。

正解1
直近では㉙問21で出されている。
ソーシャルワンカーと一緒にワン🐾ステップUP‼
ラベリング論とは、社会がある行為を逸脱とみなし統制しようとすることによって、逸脱が生じると考える立場である。1960年代にシカゴ学派に属するハワード・ベッカーらによって提唱された。それまでの逸脱行動を単なる社会病理現象として扱ってきたアプローチとは一線を画し、逸脱というのは、行為者の内的な属性ではなく、周囲からのラベリング(レッテル貼り)によって生み出されるものだ、と捉えるものである。

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