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7.地域福祉の理論と方法(R元年-第32回)2/2

問題37 市町村社会福祉協議会に関して, 社会福祉法に規定されている次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。 1 福祉サービスの苦情を解決するための運営適正化委員会を設置する。 2 生活支援コーデイネーター(地域支え合い推進員)を配置し, 制度では対応できないニーズに対応する。 3 役員の総数の3 分の1 を関係行政庁の職員で構成しなけれぱならない。 4 第一種社会福祉事業の経営に関する指導及び助言を行う。 5 市町村の区域内における社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の過半数が参加する。   社会福祉協議会は知っている様で、知らないことも多い組織である。 1は、運営適正化委員会の説明としては問題がない。だが、そのような委員会は「市町村」社協に置くべきものだろうか。都道府県社協に置くものだと考えるのが素直であろう。×ぽい。2は、内容的には問題ないが、生活支援コーデイネーターは、介護保険法の改正で導入されたものである。社会福祉法に規定されたものではないから、×である。3のような規定があるとすれば、社協は行政の天下り先との批判を確実に受けるであろう。こんな不合理な規定を社会福祉法に規定することは考えられないので、×であろう。4はどうか。社会福祉協議会はあくまで民間の団体であるから、第一種社会福祉事業の経営に関する指導を行うような立場にはないと考えるのが素直ではないだろうか。×ぽい。5は、特に問題のある内容は書かれていない。他の肢との比較からしても、5を選ぶのが無難であろう。

【正解5】

問題38 民生委員・児童委員についての法律上の規定に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。 1 民生委員は, 市町村内の小学校区ごとに1 名配置する。 2 主任児童委員は,児童虐待の早期発見と介入のため児童相談所に配属される。 3 民生委員協議会は. 民生委員の職務上必要があるときに関係各庁に意見することができる。 4 民生委員は, 職務上知り得た特定の要援護者個人の情報を広く地域住民と共有してもよい。 5 民生委員は, その職務に関して市町村長の指揮監督を受ける。   基本知識で解ける問題。かつ頻出問題である。 基本として、民生委員は児童委員を兼ねるである。 1は知らないと迷うであろうが、小学校区に1名というのは少なすぎるような気もする。△。2は×である。児童相談所は行政機関である。3は、このような規定があっても特に不合理さは感じない。〇ぽいが、自信がなければ△にして次に進む。4は、明らかに×である。5は、市町村長ではなく都道府県知事の指揮監督を受けるので×である。㉚-問96に全く同じ肢がある。ちなみに、都道府県知事の推薦により厚生労働大臣が委嘱することを知っていれば、本肢は×だと推測しうる。迷う肢はあるが、3を選ぶのが無難であろう。

【正解3】

問題39 地域福祉推進のための財源に関する次の記述のうち. 正しいものを1つ選びなさい。 1 厚生労働省の「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」報告書(2008 年(平成20 年))では, 住民の地域福祉活動の資金は原則として公的財源によるとされている。 2 厚生労働省の「地域力強化検討会最終とりまとめ」(2017 年(平成29 年))では, 地域の課題を地域で解決していく財源として, クラウドファンデイングやSIB(Social Impact Bond)等を取り入れていくことも有効であるとされている。 3 社会福祉法の改正(2016 年(平成28 年))では,社会福祉法人は,収入の一定割合を地域における公益的な取組の実施に充てなければならないとされた。 4 「平成29 年度特定非営利活動法人に関する実態調査」(内閣府)によれば. NPO法人の収入は,「会費」,「寄附金」が大半を占めている。 5 共同募金実績額の推移をみると,年間の募金総額(一般募金と歳末助けあい募金の合計)は, 1995 年(平成7 年)から2017 年(平成29 年)までの約20 年間, 一貰して増加している。   ちょっと慣れない問題である。答えが割れた問題だと思われる。 迷うとしたら2と4であろう。財源不足、費用対効果が問われざるを得ない状況であることを鑑みると今後も出題されてもおかしくないテーマである。 1は、財政が厳しい中で「住民の地域福祉活動の資金は原則として公的財源による」などと規定するはずがないと考えられる。×ぽい。2は、時代を先取りし過ぎている感があるが、このような方法の有効性は否定できない。ただ、こうした方法を厚生労働省が提唱するかについは少し疑問も感じる。△にして次に進む。3は社会福祉法人に地域公益活動が推奨されているとしても、収入の一定割合をそこに充てることを義務付けるのは行き過ぎではないかと感じる。×ぽい。4はどうか。NPOの収入は「会費」,「寄附金」が大半を占めるという内容は即座に誤りとは判断できない。ただ、NPOの多くは何らかの事業活動を行っており、その収入も一定割合を占めていると考えられる。△にして次に進む。5であるが、1995 年(平成7 年)から2017 年(平成29 年)の間にはリーマンショックも起きており、「一貫して増加している」とは考えにくい。また、寄付金収入はピーク時を境に漸減傾向にあることは基本的知識でもある。いずれにせよ5は×だと判断しやすい。

【正解2】

問題40 社会福祉協議会が地域において行う福祉調査や分析活動に関する次の記述のうち, 適切なものを2つ選びなさい。 1 災害時要援護者のニーズを視覚的に把握するために, デジタル地図の上に様々な情報を表示するGIS (地理情報システム)を用いた。 2 実際に虐待のおそれのある個別事例の検討会を, 当該小地域における住民懇談会で実施した。 3 高齢者の訪問介護サービスに関するニーズの総量を具体的に推計するために, 福祉総合相談窓口の担当者に聞き取り調査を行った。 4 障害のある当事者のニーズを把握するため, フォーカスグループインタビューを行った。 5 在宅で暮らす後期高齢者のニーズの全体像を把握するために, 高齢者個人へのアンケート調査の回答フォームを社会福祉協議会のホームページ上に設置し, 調査を実施した。   またしても、社協の問題である。 「2つ」選ぶことを忘れないように注意。 1のような分析活動に特に問題はないであろう。有効な方法だと思われるので、〇ぽい。2であるが、虐待事例を該当地域における住民懇談会で実施することはNGであろう。3のような聞き取り調査の有効性は否定できないが、「社会福祉協議会が地域において行う福祉調査や分析活動」として適切なものといえるかには疑問が残る。△にして次に進む。4は、適切な内容だと思われる。5のような調査の有効性は否定できないが、「在宅で暮らす後期高齢者」のうち社協のホームページにアクセスして回答フォームに入力できる人がどの位いるであろうか。少なくとも全体像は把握できないだろう。以上から、適切なものは1と4と考えられる。

【正解1,4】

問題41 事例を読んで,N市社会福祉協議会の福祉活動専門員(社会福祉士)が行ったアウトカム評価として,最も適切なものを1つ選びなさい。 〔事例〕 N市では, 近年ひきこもりに関する相談が増加する一方,具体的な支援活動が市内に不足していることが課題となっていた。そのため, ひきこもりの人やその家族に対する支援活動の拡大を目的として,N市社会福祉協議会が行政の補助金を得て,計6回の講義・見学等からなるひきこもりサポーターの養成研修を企画・実施することになった。初めての取組であることから,行政からプログラム評価の枠組みを用いて,研修のアウトカム評価を行うことが求められた。 1 ひきこもりに関する理解度を測る調査票を作成し,養成研修受講前の受講者の理解度を計測する。 2 養成研修終了後に,支援活動に取り組み始めた受講者の人数とその活動内容を把握する。 3 養成研修の実施回数及び内容が,当初企画したとおりに実施されているかを確認する。 4 養成研修終了後に,N市の市民を対象としたアンケート調査により,ひきこもりに関する市民の意識を把握する。 5 養成研修終了後に,N市内でひきこもり状態から就業に至った人数を把握し,就業による経済効果と補助金額との差を計測する。   アウトカム評価といえば、平成30年の改正介護保険法が頭に浮かぶ。 福祉の支援も単に予定通りにプログラムを実施したか(アウトプット)だけでなく、その成果(アウトカム)が問われる時代に移行しつつある。 1のように事前に調査票で理解度を確認しておくことは、研修の効果を把握する上で有効な手法である。しかし、この事前の計測だけであれば、アウトカム評価として,最も適切なものとはいえない。2は、研修を受けた者を対象に、支援活動に取り組み始めた人数とその活動内容を把握するものであり、研修のアウトカム評価としては適切なものだといえる。3は、研修が当初の企画通りに行われたか(アウトプット)を把握するだけのものであり、アウトカム評価として適切なものとはいえない。4は、研修参加者以外に市民一般を対象に調査を行うものであり、これも適切といえない。5の内容はまったくはずれたものとはいえないが、2と比べると研修のアウトカム評価を測定する上で少しずれがある。2と5を比較した場合、2の方がより適切であろう。

【正解2】

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