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33.社会理論と社会システム(R2年-第23回)

問題15 「令和元年版少子化社会対策白書」(内閣府)に示された合計特殊出生率に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1 日本の合計特殊出生率は,1975年(昭和50年)以降2.0を下回っている。 2 日本の1999年(平成11年)の合計特殊出生率は1.57で,それまでの最低値であった。 3 日本の2017年(平成29年)の合計特殊出生率は,2005年(平成17年)のそれよりも低い。 4 イタリアの2017年の合計特殊出生率は,フランスのそれよりも高い。 5 韓国の2017年の合計特殊出生率は,日本のそれよりも高い。   本問は知識がないと解けないという意味で難問である。 本問は難問であり、正解率は低かったと思われる。このような問題は肢だけ絞って、あまり考えこまない方がよいと考える。   1は知らないと判断できない。△として先に進む。 2は、×だが、知らないと判断しづらい。 ※1.57ショックは1989年の合計特殊出生率が丙午の1966年の1.58を下回ったことを指している。 3も知らないと判断しづらい。政府が少子化対策に本腰を入れたことから少し回復傾向がみられるといったニュースを知っていた人は×かもしれないと判断したかもしれない。 4と5は知らないと判断できない。韓国の合計特殊出生率は日本よりも低いが、インパクトがある内容なので知っていた人もいるかもしれない。

【正解1】

  問題16 都市化の理論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 フィッシャー(Fischer,C.)は,都市の拡大過程に関して,それぞれ異なる特徴を持つ地帯が同心円状に構成されていくとする,同心円地帯理論を提起した。 2 ワース(Wirth,L.)は,都市では人間関係の分節化と希薄化が進み,無関心などの社会心理が生み出されるとする,アーバニズム論を提起した。 3 クラッセン(Klaassen,L.)は,大都市では類似した者同士が結び付き,ネットワークが分化していく中で多様な下位文化が形成されるとする,下位文化理論を提起した。 4 ウェルマン(Wellman, B.)は,大都市では,都市化から郊外化を経て衰退に向かうという逆都市化(反都市化)が発生し,都市中心部の空洞化が生じるとする,都市の発展段階論を提起した。 5 バージェス(Burgess,E.)は,都市化した社会ではコミュニティが地域や親族などの伝統的紐帯から解放されたネットワークとして存在しているとする,コミュニティ解放論を提起した。   本問も知らないと解くのは難しい。過去問で出ている人名や用語もあるが、ややマイナーな感はある。 ウェルマンのコミュニティ解放論は比較的新しい過去問にあるので、覚えていた人もいたかもしれない。しかし、残りの人物と業績について押さえていた人は少なかったのではないだろうか。   1は、×である。同心円地帯理論を唱えたのはバージェスである。 2は、〇である。ワースが唱えたのはアーバニズム論である。 3は、×である。下位文化理論を唱えたのはフィッシャーである。 ※もし、この知識があれば、1と3を交差法で×と判断するという方法がある。 4のウェルマンは、コミュニティ解放論を唱えた人である(㉚問17参照)。この知識があれば、交差法で4と5を×と判断するという方法がある。

【正解2】

 
新型コロナの影響で2020年は福祉勉強会の直前講座を開催できなかったが、同講座のテキストには、ワースのアーバニズム論が記載されていた。 もっとも、このような形で正面から問われることまでは予想していなかった。 同講座のテキストは短時間で得点UPにつながる情報が載っている優れものだと思っているが、本問のような問題までも視野に入れるとテキストのページ数はどんどん膨らんでしまう。 直前対策講座のテキストが優れていると感じているのは、情報量の多さではなくむしろ情報量の少なさである。 この科目で伸び悩んでいる人は、勉強方法と問題に対するアプローチの仕方を今一度考えてみて欲しい。ちなみに、筆者も受験のときは社会学が苦手科目の一つであったことを付記しておく。
  問題17 社会集団などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 準拠集団とは,共同生活の領域を意味し,地域社会を典型とする集団を指す。 2 第二次集団とは,親密で対面的な結び付きと協同によって特徴づけられる集団を指す。 3 内集団とは,個人にとって嫌悪や軽蔑,敵意の対象となる集団を指す。 4 ゲマインシャフトとは,人間が生まれつき持っている本質意志に基づいて成立する集団を指す。 5 公衆とは,何らかの事象への共通した関心を持ち,非合理的で感情的な言動を噴出しがちな人々の集まりを指す。   嫌な感じの問題であるが、用語については、第22回以降の過去問にほぼ出ているものばかりである。 ゲマインシャフト(さらにゲゼルシャフト)については、受験生であれば知っていなければならない知識といえる。   1は、×である。準拠集団(reference group) は、人の価値観、信念、態度、行動などに強い影響を与える集団を意味し、具体例は家族、地域、学校、職場などである。 2の説明は第一次集団に関するものであり、×である。 3は、×である。あまり聞きなれないが、想像するに対になる概念は外集団であろう。その場合、「個人にとって嫌悪や軽蔑,敵意の対象となる集団」は外集団ではないだろうか(※鬼は外と言うし)。 5は、「公衆」と「何らかの事象への共通した関心を持ち」の説明部分が噛み合わないので×ぽいと判断したほうがよさそうである。

【正解4】

  問題18 次のうち,標準的な段階設定をすることなく,社会的存在として,個人がたどる生涯の過程を示す概念として,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 家族周期 2 ライフステージ 3 コーホート 4 ライフコース 5 生活構造   コーホートは過去問にも出ている用語である。 無理に思い出そうとするよりも、「標準的な段階設定をすることなく,社会的存在として,個人がたどる生涯の過程を示す概念」に最も近いと思うものを選択肢から探す方がよい。   1は、「個人がたどる生涯」との親和性に欠けるので×ぽい。 2は、ライフステージが特定の時点の静的なものであることから、「生涯の過程を示す概念」という部分と噛み合わないので×ぽい。 3のコーホートは、同じ時代に生まれた集団である(同級生をイメージするとよい)。明らかに設問の概念とは相容れず×である。 4のライフコースは、設問が示す概念にもっとも近い用語ではないだろうか。これが〇ぽい。 5の生活構造は、「生涯の過程」とは噛み合わないので×ぽい。

【正解4】

  問題19 次のうち,ゴッフマン(Gotfman,E.)が提示した,他者の期待や社会の規範から少しずらしたことを行うことを通じて,自己の存在を他者に表現する概念として,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 役割取得 2 役割距離 3 役割葛藤 4 役割期待 5 役割分化   「役割〇〇」は、過去問でも頻出事項である。 問題17と同様に過去問学習だけで正解を導ける問題である。地道な勉強はこういう問題で活きてくる。 「他者の期待や社会の規範から少しずらしたことを行うことを通じて,自己の存在を他者に表現する概念」として最適なのは、2の役割距離である。

【正解2】

 
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼ 役割期待 持続性がある安定した行為を適した場面で適当な形で示すことを期待されること 役割葛藤 複数の役割の矛盾等から緊張を感じること 役割取得 他者からの期待を認識しながら、自らの役割行為を形成すること 役割形成 役割取得だけでなく、他者の役割期待を変化、再構成させて新たな役割を形成すること 役割距離 他者の期待と少しずらした行動をすることにより、自律性の保持をすること 役割適応 人々が社会システム内で与えられた役割や社会システムが求める役割期待を遂行できているか否かを分析するための概念。 役割演技 社会生活において求められる役割や期待を本人が適切に判断し、意識的に演じていくこと(role playing)。
問題20 次のうち,社会的ジレンマの定義として,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 目標を効率的かつ公正に達成するための手段として制定されたルールが,それ自体目的と化してしまうことで,非効率な結果が生み出されている状況 2 文化を介して不平等や序列を含んだものとしての社会秩序が維持・再生産されている状況 3 信頼関係,互酬性の規範,人的ネットワークなどが整えられることによって人々に広く便益をもたらしている状況 4 協力的な行動には報酬を与え,非協力的な行動には罰を与えることで,協力的行動が合理的であるようにする状況 5 各個人が自らの利益を考えて合理的に行動した結果.集団あるいは社会全体として不利益な結果を招いてしまう状況   社会的ジレンマのイメージが持てていれば、あとは選択肢の中から最も近いものを探しだせばよい。 社会的ジレンマは㉘問20で出題されている。そこでは具体例が聞かれているが、きちんと復習していれば、本問は容易に解けたであろう。 本問では5が社会的ジレンマを的確に表現している。

【正解5】

 
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼ 社会的ジレンマ一人ひとりが自分の利益だけを考えて行動した場合、誰にとっても不利益な結果を招いてしまうようなこと。 ・フリーライダー ある財やサービスの対価を払うことなく,利益のみを享受する人のこと。 ・選択的誘因 協力的行動を選択する方が合理的であるような仕組みを作り出すことによって社会的ジレンマを解決しようとするもの(オルソン,M)。 ・共有地の悲劇 それぞれの個人が合理的な判断の下で自己利益を追求した結果、全体としては不利益な状況を招いてしまうこと。
  問題21  次のうち,マートン(Merton,R.K.)が指摘したアノミーに関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 ある現象が解決されるべき問題とみなす人々の営みを通じて紡ぎ出される社会状態を指す。 2 下位文化集団における他者との相互行為を通じて逸脱文化が学習されていく社会状態を指す。 3 文化的目標とそれを達成するための制度的手段との不統合によって社会規範が弱まっている社会状態を指す。 4 他者あるいは自らなどによってある人々や行為に対してレッテルを貼ることで逸脱が生み出されている社会状態を指す。 5 人間の自由な行動を抑制する要因が弱められることによって逸脱が生じる社会状態を指す。   アノミーについて多少なりとも知識がないと正解を導きにくい。しかも本問は、デュルケームではなくマートンが指摘したアノミーに関する記述を選ばせる点で難しいものになっている。 わからなければ、肢だけ絞っておいて正攻法で解くのを諦めたほうがよい問題だと思われる。   1は、社会問題の生成過程の分析についてのものであり×ぽい。 2は、逸脱行為に関するものであり、これも×ぽい。 3は、アノミーに関係している感じがするので△。 4は、ラベリングの話であり×。 5は、アノミーに関係しており△。 3と5までは絞れるが、いずれを選ぶかで判断に迷った人が多かったのではないだろうか。

【正解3】

 
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼ アノミーは、社会の規範が弛緩・崩壊することなどによる、無規範状態や無規則状態を示す言葉である。もともとはギリシア語の「無法律状態(アノミアー)」を意味する。フランスの社会学者エミール・デュルケームが社会学的概念として最初に用いた。 本問の肢5はデュルケームが指摘したものであり、肢3はマートンが指摘したものである。

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