問題 136 事例を読んで,Bスクールソーシャルワーカー(社会福祉士)によるこの時点での対応として,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕Bスクールソーシャルワーカーは,C君(小学6年生)の学級担任のD教師から相談を受けた。C君は,母親が病気で動けないため,母親の手伝いや2歳の妹の世話をしており,学校を休むことが多いという。Bスクールソーシャルワーカーが登校してきたC君と二人で話すと,父親は仕事が忙しく,家族と過ごす時間が少ないこと,C君は父親から,家庭内のことは誰にも話さないようにと言われていることが分かった。C君は,「学校には来たいけれど,母や妹のことが心配だ」と話した。
1 C君に,このまま家族の犠牲になっていては,将来に影響すると話す。
2 保護者に対し,学校を休みがちで心配だと伝え,家庭訪問を打診する。
3 関係機関によるケース会議が必要であることを校長に報告する。
4 乳児家庭全戸訪問事業として家庭訪問を行う。
5 妹を一時保護する。
乳児家庭全戸訪問事業、一時保護についてはいずれも近時の過去問で出題されている。普段の勉強の中で、その内容について押さえておく必要がある。
1:そう話したとしてC君に何ができるでしょう。また、家族を悪く話すことが良い結果を生むとも思えません。
2:適切。担任のDがBに伝えたところによると、Cが学校を休みがちであり、その原因は母親が病気で動けないため、母親の手伝いや2歳の妹の世話をしていることにある。Cの父親は他言しないように言っているが、学校を休みがちであることを理由に家庭訪問を打診することは適切な対応といえる。
3:適切。関係機関によるケース会議を開き、方針を決めて対応することは適切な対応である。
4:乳児家庭全戸訪問事業の対象は、原則として生後4か月を迎えるまでの乳児である。Bの妹は2歳であり、この場面での対応としては適切とはいえない。㉝-問140参照。
5:一時保護の第一の目的は子どもの生命の安全を確保することである。
単に生命の危険にとどまらず、現在の環境におくことが子どものウェルビーイング(子どもの権利の尊重・自己実現)にとって明らかに看過できないと判断されるときは、まず一時保護を行うべきであるが、Bについてはそのような事情は認められない。㉝-問138参照。
【正解2,3】
問題 137 次の記述のうち,児童福祉法に定められた事業の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 児童発達支援は,未就学の児童とその保護者を対象に,「子育てひろば」を実施する取組である。
2 放課後等デイサービスは,小学校に通う児童を対象に,放課後,小学校の空き教室や児童館等の公共施設において「学童保育」を実施する取組である。
3 保育所等訪問支援は,保育所等に入所している健診未受診の乳幼児を対象に,保健師が保育所等を訪問する取組である。
4 児童自立生活援助事業は,「自立援助ホーム」における相談その他の日常生活上の援助及び生活指導並びに就業の支援を行う取組である。
5 子育て短期支援事業は,出産直後の子育て家庭を対象に,居宅を訪問して家事支援等を行う取組である。
(注) 「自立援助ホーム」とは,義務教育を終了した児童又は児童以外の満20歳に満たない者であって,措置解除された者等が共同生活を営むべき住居のことである。
児童関係の事業は似たような名称が多い為、覚えるのが大変です。結局、繰り返し学習するしか方法はありません。
1:児童発達支援は,未就学の児童とその保護者を対象に,日常生活における基本動作や知識技術を習得するためのサポートや就学に向けた支援等を行います。
2:放課後等デイサービスは,小学生だけでなく中学、高校生なども対象です。公共施設において「学童保育」を実施する取組は放課後児童クラブです。
3:保育所等訪問支援は、保育所や幼稚園、小学校など、子どもが通っている施設に支援員が訪問し、集団生活への適応をサポートします。
4:適切
5:子育て短期支援事業は、保護者の疾病その他の理由により家庭において子どもを養育することが一時的に困難となった場合等に、児童養護施設等において一定期間、養育・保護を行うことにより、これらの子ども及びその家庭の福祉の向上を図るという事業です。短期入所生活援助(ショートステイ)事業と夜間養護等(トワイライトステイ)事業があります。
【正解4】
問題 138 次の記述のうち,2019年度(令和元年度)の児童相談所における児童虐待相談対応件数(「福祉行政報告例」(厚生労働省))について,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 虐待相談対応件数は,5年前と比べて減少している。
2 心理的虐待は,5年前と比べて減少している。
3 警察等からの虐待通告は,5年前と比べて増加している。
4 相談種別で件数をみると,ネグレクトの割合が最も高い。
5 相談の経路(通告者)は,家族・親戚からの割合が最も高い。
虐待のニュースは毎日のように流れています。児童虐待相談対応件数のトレンドを押さえていれば、積極法か消極法を用いて正解を導くことができる。㉛-問142、㉚-問21に類問がある。
1:児童相談所における児童虐待相談対応件数は、増加傾向にある。
2:心理的虐待は、5年前と比べて増加している。心理的虐待が増加した要因として、子どもの前で家族に暴力を振るう(面前DV)の警察からの通告が増えたことが挙げられている。
3:適切
4:多い順に、①心理的虐待:10万9118件(56.3%)、②身体的虐待:4万9240件(25.4%)、③ネグレクト:3万3345件(17.2%)、④性的虐待:2077件(1.1%)となっている。
5:相談の経路(通告者)は、警察等が103,625(50.5%)と圧倒的に多い。
【正解3】
問題 139 事例を読んで,T市母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)のE相談員(社会福祉士)の支援に関する次の記述のうち,この段階における対応として,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕若年妊婦等支援事業の担当者であるE相談員は,お腹の大きいFさん(19歳)から相談を受けた。Fさんは,両親との関係が悪く友人宅を転々としており,「妊娠していると思うが,交際相手とは別れてしまい,頼れる人はいない」「自分はどうしたらよいか分からない」「子どもを産んで育てる自信がない」「仕事もしておらず,経済的にも苦しい」と語った。
1 緊急一時的な居場所として宿泊施設等の利用を提案する。
2 出産や子育てには両親の手助けが必要であり,まずは家に戻るよう促す。
3 母親になる自覚を持つよう促す。
4 出産費用の捻出が求められるため就労支援を図る。
5 産科受診の同行支援ができることを伝える。
本問はこの若年妊婦等支援事業の詳しい内容を知らなかったとしても、選択肢を比較することによって、社会福祉士の支援として適切なものを選ぶことは可能だと思われる。
1:適切。Fは妊娠中にも関わらず、友人宅を転々としてる。母子の健康のためにも居場所を確保することは適切である。
2:Fは両親との関係が悪いために友人宅を転々としている。現段階で家に戻るよう促すのは適切とはいえない。
3:Fは交際相手と別れて頼れる人がおらず、自分がすべきこともわからず、子育てにも自信が持てずにいる。この段階では、母親になる自覚を持つよう促すことよりも、Fの安全の確保が優先されると考えるべきである。
4:Fはお腹が大きくなっており、この段階で就労支援を図ることは適切とはいえない。
5:適切。産科受診の同行支援が可能であることを伝えることは、混乱と不安の中にいるFに対する適切な支援といえる。
【正解1,5】
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス
若年妊婦等支援事業は、予期せぬ妊娠等により、身体的、精神的な悩みや不安を抱えた若年妊婦等への身近な地域での支援として、NPO等も活用し、①アウトリーチやSNS等による相談支援を行う。②不安や金銭面の心配から医療機関受診を躊躇する特定妊婦等に対し、支援者が産科受診に同行するとともに、受診費用を補助する。③行き場のない若年妊婦等に、緊急一時的な居場所を提供する。本事業の実施主体は、都道府県、指定都市、中核市である。
問題 140 児童養護施設入所児童の家庭環境調整に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 家庭環境調整は,児童の家庭の状況に応じ親子関係の再構築などが図られるように行わなければならない。
2 児童が施設入所に至った理由の説明は,児童を精神的に追い詰めることになるので行わないこととされている。
3 児童にとって親は唯一無二の存在であり,児童養護施設には親との面会・交流を行うことが義務づけられている。
4 家庭支援専門相談員が児童の家庭復帰の判断とその決定を行う。
5 保護者の虐待で施設入所した児童を家庭復帰させた場合には,保護者の主体性を重んじ,児童相談所は継続的な指導は行わないこととされている。
大体の人は正解できると思います。
1:適切
2:児童の知りたい権利は?全く行わないのは無理がある。
3:虐待ケースなどの場合、親との面会交流が児童の福祉に適しないことも考えられるので、児童養護施設に親との面会•交流を行うことを義務づける必要性はないと考えられる。
4:家庭支援専門相談員は、児童の家庭復帰の支援は行いますが、家庭復帰の判断は児童相談所が行います。
5:児童を家庭復帰させた場合でも、必要に応じて児童相談所は継続的な指導を行うものとされている。
【正解1】
問題 141 事例を読んで,N県児童相談所のG児童福祉司(社会福祉士)が考えるHちゃんの支援方針として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕Hちゃん(1歳半)は,ネグレクトによりU乳児院に入所している。Hちゃんの母Jさん(25歳)は現在新しいパートナーと二人で暮らしているが,U乳児院によると,HちゃんはJさんと面会しても全く反応がなかったという。G児童福祉司は何度かJさんと面談し,今後の養育や家庭引取りに向け話合いをしてきた。しかし,JさんはHちゃんを養育する意思はないとはっきり伝えてきた。その後,Jさんは全く面会せず,現在は連絡もなかなかつかない状況である。
1 集団生活の一貫性を保障するため,児童養護施設に措置変更をする。
2 家庭と同様の養育環境を保障するため,里親に委託する。
3 JさんとHちゃんの愛着関係を見極めるため,措置を継続する。
4 Jさんに母親として自覚してもらうため,家庭復帰する。
5 愛着関係不全からの回復を図るため,福祉型障害児入所施設に措置変更をする。
乳児院は、乳幼児を保護する施設であるとともに家庭への早期復帰も目指しています。
1:この時点で児童養護施設への措置変更は稚拙と言えます。
2:適切。家庭への復帰は実親がベストですが、この事例の場合、残念ながら難しいと言えそうです。
3:乳児院での措置継続は現実問題ありそうですが、愛着関係を見極めるメリットは少ない為と思われます。
4:新しいパートナーもいるなか虐待の可能性は以前よりも強まります。
5:福祉型障害児入所施設は、身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある児童が対象ですが、Hちゃんは現時点で対象とは言い切れないと思います。
【正解2】
問題 142 児童相談所の一時保護に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 一時保護する場合には親権者の同意が必要である。
2 一時保護は児童相談所に設置されている一時保護所に限って行う。
3 親権者の意に反して2か月を超える一時保護を実施するためには,児童福祉審議会の承認を得なければならない。
4 都道府県知事は,一時保護所の福祉サービス第三者評価を行わなければならない。
5 外出,通学,通信,面会に関する制限は,子どもの安全の確保が図られ,かつ一時保護の目的が達成できる範囲で必要最小限とする。
児童相談所の業務は幅広く押さえておきましょう。
1:一時保護という性格上、保護者の同意を取るというのは考えにくいです。
2:警察署、福祉事務所、児童福祉施設、里親その他児童福祉に深い理解と経験を有する適当な者(機関、法人、私人)に一時保護を委託することができます。
3:親権者の意に反して2か月を超える一時保護を実施するためには,
家庭裁判所の承認を得なければならない。
4:一時保護所については福祉サービス第三者評価制度の対象となっていません。
5:適切
【正解5】