問題136 社会保障審議会児童部会に設置された児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会の「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第14次報告)」(2018 年(平成30 年))に示された心中以外の虐待死に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 死因となる虐待の種類は, ネグレクトが最も多い。
2 主たる加害者は, 実父が最も多い。
3 虐待通告を受理した後, 48 時間以内に安全確認をすることを新たに提言した。
4 死亡した子どもの年齢は, 0歳が最も多い。
5 児童相談所が関与していた事例が半数を超えている。
死亡事例に関する虐待の問題です。
虐待一般と勘違いしないように。
1はどうだろうか。ネグレクトよりも身体に対する暴行のほうが多いような気がするが。2は
実母が一番多いので×である
(㉘‐問136参照)。3は知らないと迷う。内容はよさそうだが、これが専門委員会で新たに示されたものかどうかは、知識がないと判断できないであろう。4も知らないと何ともいえない。5は、死亡にまで至るケースについて、児童相談所が関与していたケースが半数を超えることはないであろうと推測できる。×であろう。
関与していないから、虐待死を防げなかったケースが多いと思われるからである。
【正解4】
問題137 次のうち, 子どもの権利に関する先駆的な思想を持ち, 児童の権利に関する条約の精神に多大な影響を与えたといわれ, 第二次世界大戦下ナチスドイツによる強制収容所で子どもたちと死を共にしたとされる人物として, 正しいものを1つ選びなさい。
1 ヤヌシュ・コルチャック(Korczak,J,)
2 トーマス・ジョン・バーナード(Barnardo, T,J,)
3 セオドア・ルーズベルト(Roosevelt,T,)
4 エレン・ケイ(Key, E,)
5 ロバート・オーウェン(Owen, R,)
知識がないと解くのは難しいであろう。ただし、選択肢を絞れば正解できる可能性がなくはない。
あるいは、2つの肢まで絞ったら確率法を併用するという手もある。
3の
セオドア・ルーズベルト(第25代アメリカ大統領)、5の
ロバート・オーウェン(16-17世紀に活躍したイギリスの社会改良家)が×であることはわかりやすい。残りの肢を絞る方法だが、「第二次世界大戦下ナチスドイツによる強制収容所で子どもたちと死を共にした」という記述がヒントになる。おそらく
ユダヤ系の人だったであろうから、それらしい名前の人に絞ってみる。2の
トーマス・ジョン・バーナードは
英米系の名前なので外れそうな気がする。残る1と4であるが、4の
エレン・ケイも英米系の名前という感じがするので×だろうと考え、1の
ヤヌシュ・コルチャックを選ぶという方法である。
試験の問題を解くだけなら、上記のようにして正解に近づくことができる。
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス
本問を解き終わってからさっそくヤヌシュ・コルチャックを調べてみたところ、その生涯に圧倒されてしまった。受験勉強を抜きにして、一度は検索してみて欲しい。
【正解1】
問題138 児童福祉法に基づく里親制度に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 里親には, 養育里親, 養子縁組里親, 親族里親, 週末里親の4種類がある。
2 里親となることを希望する者に配偶者がいなくても, 都道府県知事が認めれば里親として認定される。
3 全ての里親希望者は必要な研修を受講することが義務づけられている。
4 一人の里親希望者に対して, 異なった種類の里親を重複して認定することはできない。
5 里親への委託が開始される児童の年齢は,12歳未満と定められている。
知識があればさくさく解けるが、知らないとあれこれ考えながら選択肢を絞るほかない。
もし十分な知識がなければ、例外の有無を問う2と3に絞って検討するというのも一つの手だったかもしれない。
1は、週末里親(これ自体を独自の里親制度として分類しているとは思えない)が変なので×。2は、知らないと悩むであろう。配偶者がいることが望ましいが、例外を認めてよいかという問題である。児童に不利益が生じなければ、このような例外を認めてもよいと考えれば、本肢は正しいと判断することになろう。3は、「全ての」という部分をどう考えるか。研修を受けることは望ましいが、里親の種類によっては受けなくてもよい場合があると考えてよいか。結論からいうと
親族里親や養子縁組里親には研修を受講することが義務づけられていないので、本肢は×である。ただし、
親族里親については自治体によって扱いを異にするところもある。4は、何となく異なった種類の里親を重複して認定することはありそうだと感じられるので、×だとした人も多かったのではないだろうか。前述のように肢1は週末里親が間違いであると指摘したが、残る一つは
専門里親である。この知識があれば、重複する場合があることをよりイメージしやすかったであろう。5であるが、養育する児童は、基本的に乳児から18歳までなので、×である。高校生位まではならいいのではないかと推測できれば、とりあえず×だと判断できるであろう。
【正解2】
問題139 母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)の業務に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 配偶者からの暴力がある家庭で乳幼児を養育している母につき, 子と共に一時保護する。
2 妊娠・出産・子育てに関する妊産婦等からの相談に応ずるとともに, 必要に応じ,支援プランを策定する。
3 乳幼児がいる世帯の経済的な問題に関する保護者からの相談に応ずるとともに,必要に応じ, 現金給付を行う。
4保育所利用の申請に関する相談に応ずるとともに保育所利用の申請を受け付け,入所の可否の判断を行う。
5 病院又は診療所の付置が義務づけられており, 必要に応じて出産や病気の診断,治療等の医療行為を行う。
母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)について知っていれば、簡単に解けるであろう。
知らなかったとしても、推論して解くことは可能である。名称から判断して、母子の健康と子育てに関する総合相談を目的としたセンター(機関)だと推測できる。
1は「一時保護する」が×ぽい。2は、よさそうな内容である。3は「現金給付を行う」が×ぽい。4は「保育所利用の申請を受け付け,入所の可否の判断を行う」が×ぽい。5は、「出産や病気の診断,治療等の医療行為を行う」が×ぽい。
㉛-問139に選択肢の一つとして登場している。
【正解2】
問題140 要保護児童対策地域協議会に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 国は, 要保護児童等を支援するために関係機関, 関係団体及び関係者により構成される要保護児童対策地域協議会を設置しなければならない。
2 児童相談所長は,要保護児童対策地域協議会を構成する関係機関等のうちから,
1個に限り要保護児童対策調整機関を指定しなければならない。
3 要保護児童対策調整機関の調整担当者は, 厚生労働大臣が定める基準に適合する研修を受けなければならない。
4 要保護児童対策調整機関には, 専門的な知識及び技術に基づき適切な業務を行うことができる者として,主任児童委員を配置しなければならない。
5 母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)を設置した市町村は,要保護児童対策地域協議会を廃止することとされている。
本問は、選択肢の記述を頼りに消去法で解くことが可能だと思われる。
要保護児童対策地域協議会は、平成16年度の児童福祉法改正に際して、同法第25条の2に規定された機関である。
1は、
要保護児童対策地域協議会という名称からして、国に設置義務があるとは考えにくい。×であろう。2は、関係機関等のうちから、「1個に限り」指定する必要はないように考えられる。×ぽい。3は、内容そのものから正誤を判断するのは難しい。△にして次に進む。4は、「専門的な知識及び技術」と「主任児童委員」がつながりくいので、×ぽい。5は、
母子健康包括支援センターの設置と要保護児童対策地域協議会は両立するものと感じられるので、×ぽい。
㉛-問139に選択肢の一つとして登場している。
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス
平成16年児童福祉法改正法においては、地域協議会の設置は義務付けられていないが、こうした関係機関等の連携による取組が要保護児童への対応に効果的であることから、その法定化等の措置が講じられたものである。また、参議院厚生労働委員会の附帯決議においても、「全市町村における要保護児童対策地域協議会の速やかな設置を目指す」こととされているところである。これらの経緯を踏まえ、市町村における地域協議会の設置促進と活動内容の充実に向けた支援に努めるものとする。
【正解3】
問題141 事例を読んで, 学校が最初に行う対応として, 適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
小学校2 年生のA ちゃん(女児)には度々あざがあり, 理由を聞かれると転んだと話していた。その日は顔が腫れ上がっており, 学級担任が尋ねると, 父親に殴られたことを打ち明けた。A ちゃんは, 父親が怖いので家に帰りたくないと話した。父親は日頃から学校に対しても威圧的な要求が多かった。学級担任はすぐに校長にこのことを報告した。
1 養護教諭, 学年主任, 校長がそれぞれAちゃんから開き取りを行い,父親から殴られた詳細について, 重ねて確認する。
2 Aちゃんが父親から殴られたと話していることを母親に伝え, あざの原因を問いただす。
3 Aちゃんを帰宅させ, 速やかに職員会議を開いて, 全教職員にこのことを伝え,情報収集と協議を行う。
4 速やかに児童相談所に通告する。
5 速やかに教育委員会に連絡する。
問われているのは、「学校が最初に行う対応」である。
午後の終わりのほうの問題であり、注意力がかなり落ちている頃に解いた人が多いと思われる。4を見つけてつい安心してしまい、2つ選ぶことを忘れた人もいたかもしれない。
1は、最初に虐待をしている可能性のある父親から、殴られた詳細について 重ねて確認することは不適切だと思われるので×。2は、誰に「あざの原因を問いただす」のかが必ずしも明らかではないが、
学校の対応は犯罪の捜査ではないのだから、このような対応も不適切であろう。3は、学校として対応する姿勢はよいが、「顔が腫れ上がって」いる「Aちゃんを帰宅させ」ることが果たして妥当かどうかである。
本人が虐待について訴えており、重大な結果が発生している以上、このケースで帰宅させることは不適切だといえるのではないだろうか。4は、文句なしに〇である。5はどうか。迷うとしたら、3と5のいずれを選ぶかであろう。前述のように3は×だと判断して、5を選ぶほうが無難であろう。
【正解4,5】
問題142 児童相談所の設置及び業務に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 都道府県及び政令指定都市・中核市は, 児童相談所を設置しなければならない。
2 児童相談所長が行う一時保護は, 保護者の同意なく1か月を超えてはならない。
3 児童相談所長は, 児童本人の意に反して一時保護を行うことはできない。
4 児童相談所長は, 児童等の親権者に係る民法の規定による親権喪失の審判の請求を行うことができる。
5 管理栄養士の配置又はこれに準ずる措置を行うものとする。
必ず押さえなければならない問題である。積極法で選ぶ。
児童相談所長が、親権喪失の審判の請求を行うことができることについてはメジャーなテキストには掲載されている。
1は知らないと判断しづらい。2も同様である。3は、
「児童本人の意に反して」も
児童の利益を守るために一時保護を行うことができると考えられるので、×ぽい。4は、
状況によっては、親権喪失の審判の請求を行う必要があると思われ、児童相談所長がその権限を有していたとしても不思議ではない。これが〇であろう。5であるが、
児童相談所は生活するための施設ではないので、管理栄養士の配置はいらないと考えられる。×ぽい。
なお、親権喪失審判請求については、
㉚‐問140‐肢5に登場している。
【正解4】