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21.高齢者に対する支援と介護保険制度(R元年-第32回)2/2

問題131 事例を読んで, L介設支援専門員(社会福祉士)が行う支援で, 適切なものを2つ選びなさい。 〔事例〕 脳梗塞後遺症で左片麻痺のMさん(84歳, 要介護3)の在宅生活に向けた退院時カンファレンスが開催された。Mさんは79歳の要と二人暮らしで,主たる介護者は妻である。Mさんは杖歩行の訓練中であるが, 転倒防止のため車いすを使用している。カンファレンスで, 「在宅生活でも車いすの継続利用が望ましい」と理学療法士の意見があった。そのため, 自宅の住宅改修などを行う必要性があることが話し合われ, 居宅介護支援事業所のL介護支援専門員が居住環境の見直しをすることとなった。 l 住宅改修は, Mさんより, 介護者である妻の希望を優先する。 2 在宅生活のため, 屋外の段差解消は必要ないと説明する。 3 浴室での座位保持のため, 入浴用椅子の購入を勧める。 4 居宅介護住宅改修費の支給限度基準額は10万円であることを伝える。 5 畳からフローリングヘの変更が可能であると伝える。   状況を想像できれば、解ける問題である。 少し知らないものがあっても、本問では3と5を選べた人が多かったと思われる。 1は×である。2は、家の中で生活するので屋外の段階解消は必要ないという意図で書かれているのだろうか。少しわかりづらい記述だが、「屋外の段差解消は必要ない」とは言い切れないので×である。3は、Mさんの状況から考えて適切なものであろう。4は、20万円なので×。5は、知らないと判断しづらいが、これが〇である。ただ、知らなかったとしても、肢1から肢4までの中で適切なものは一つしか見つかっていないので、もし5を選ばないと「2つ」選べなくなる。

【正解3,5】

問題132 介護保険制度に関する次の記述のうち, 国の役割として, 正しいものを1つ選びなさい。 1 介護保険事業支援計画を策定すること。 2 介護給付費等審査委員会を設置すること。 3 介護保険に関する収入及び支出について特別会計を設けること。 4 市町村に対して介護保険の財政の調整を行うため, 調整交付金を交付すること。 5 指定情報公表センターの指定をすること。   難問である。勘違いしてもしょうがない選択肢がある。 2と4までは絞れるが、その先は知識がないと自信を持って答えを選べないであろう。 1の介護保険事業支援計画は、都道府県が策定するものなので×。なお、市町村の〇〇計画に対して、都道府県が作るものは〇〇支援計画とされていることが多い。2は知らないと判断しづらい。知らなかったら△にして次に進む。3は、その内容から保険者の役割であることがわかる。介護保険の保険者市町村なので×である。4は知らないと判断しづらい。5の指定情報公表センターの指定都道府県の役割なので、×である。 【補足説明】 2の介護給付費等審査委員会は、介護給付費請求の審査を行うため、国民健康保険団体連合会(国保連)に設置されている委員会である。何となくイメージを掴めていれば、これが国の役割でないことに気づけたであろう。4は、記述だけを読むと都道府県の役割ではないかと勘違いした人が多かったと思われる。4の調整交付金は、国庫負担金25%のうち5%分を用いて、市町村間の「後期高齢者比率が高いことによる給付増」と、「被保険者の所得水準が低いことによる収入減」を財政調整するためのものである。この程度のことを知っていれば、4が〇だと判断できたであろうが、知識としてはやや細かい。また、財政安定化基金と混同してしまい間違えた人もいると思われる。

【正解4】

問題133 介護保険制度の地域支援事業における介護予防•生活支援サービス事業に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。 1 この事業は, 被保険者のうち, 居宅で生活している要介護者及び要支援者が幅広く対象となっている。 2 通所型サービス(第一号通所事業)では, 保健・医療専門職による短期間で行われるサービスが実施可能となっている。 3 訪問型サービス(第一号訪問事業)では, 訪問介護員による身体介護は実施されないこととなっている。 4 介護予防ケアマネジメント(第一号介護予防支援事業)については, 地域包括支援センターヘ委託をしてはならないこととなっている。 5 この事業における利用者負担は, 全国一律になっている。   介護保険法の中で、最も複雑と思われる地域支援事業からの出題である。 新しい介護予防•生活支援サービス事業(平成27年改正法)は、これまでにも何回か出題されている。大まかでもよいので、特徴を押さえて欲しい。 それがわかっていれば、積極法で2を選ぶことは可能だったと思われる。 1は「要介護者及び要支援者が幅広く対象となっている」が×。介護予防•生活支援サービス事業の対象は、要支援者と基本チェックリスト該当者である。2は特に問題のない記述であり、これが〇だろうと推測できる。3の訪問型サービス(第一号訪問事業)では、訪問介護員による身体介護や生活援助を受けることができる。よって、本肢は×である。4の介護予防ケアマネジメント(第一号介護予防支援事業)は、地域包括支援センターヘの委託が可能なので、×である。5は、 利用者負担は保険者である市町村が定めることができ全国一律ではないので×。

【正解2】

問題134 厚生労働省の介護人材確保対策に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。 1 介護福祉士の資格等取得者の届出制度では, 離職した介護福祉士に対し, その再就業を促進し効果的な支援を行うため, 都道府県福祉人材センターに氏名・住所等を届け出ることを努力義務としている。 2 介護保険制度の介護報酬における介護職員処遇改善加算では, 介護サービス事業所・施護等が特段の届出や要件を問われることなく, 介護職員の賃金増額などを図るための加算を取得できることとなっている。 3 福祉・介護人材確保緊急支援事業により, キャリア支援専門員が福祉事務所に配置され, 個々の求職者にふさわしい職場を開拓するとともに働きやすい職場づくりに向けた指導・助言を行うこととなっている。 4 「2025年に向けた介護人材の確保」によると, 介護人材の構造転換を図るために,専門性の高い人材を活用する「富士山型」の方策から, 基礎的な知識を有する人材を活用する「まんじゅう型」の方策へと転換を図る必要性が示されている。 5 「2025年に向けた介護人材の確保」によると, 中高年齢者等や介護未経験の者に対し,生活支援サービスの担い手養成のための研修の受講を支援するため, 介護福祉士等修学資金貸付制度の充実を図るとされている。 (注) 「2025年に向けた介護人材の確保」とは,「2025年に向けた介護人材の確保~量と質の好循環の確立に向けて~」(平成27年2月25日社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会)のことである。   1は斬新な内容であり、学校、予備校等で聞いていた人は印象に残っていたのではないだろうか。 一方、1について知らなかった人は、判断に迷ったと思われる。 1は〇である。知らなければ、いきなり本肢を正しいと判断するのは難しいように思われる。2は「特段の届出や要件を問われることなく」が×である。大体、こういった加算が出される場合、事業者には一定の届出や要件が問われるのが普通である(※何もしないでお金をもらえることは少ない)。3は、福祉事務所に福祉・介護人材確保のためのキャリア支援専門員を置いても実効性は低いと感じられる。×ぽい。4は、「まんじゅう型」の方策から「富士山型」の方策へと転換を図る必要性が示されているので、×である。もっとも、受験生が、限られた時間で「まんじゅう型」と「富士山型」の意味を推測するのは容易ではないと思われる。5であるが、一読してよさそうだと感じた人も多いと思われる。しかし、「生活支援サービスの担い手養成のための研修」の受講を支援するために「介護福祉士等修学資金貸付制度の充実を図る」という手法はマッチしない。また、(注)を読むと「2025年に向けた介護人材の確保」は、「量と質の好循環の確立」を目標としていることがわかるが、そのための手法としてこれまでも行われていた「介護福祉士等修学資金貸付制度」を充実させるという手段は取らないのではないかと推測することもできる。このように本肢は×だと推測すべきだが、関連する知識がないと推論することは難しいであろう。

【正解1】

問題135 「平成29年度『高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」(厚生労働省) で示されている「養介護施設従事者等」による高齢者虐待に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。 1 市町村等が虐待と判断した件数は,2008年度(平成20年度)以降減少傾向にある。 2 虐待の発生要因として最も多いものは,「倫理観や理念の欠如」である。 3 虐待の事実が認められた施設・事業所のうち,およそ3 割が過去に何らかの指導等(虐待以外の事案に関する指導等を含む)を受けている。 4 被虐待高齢者の状況を認知症高齢者の日常生活自立度でみると,「I」が全体のおよそ4分の3を占めている。 5 虐待の内容として最も多いものは,「経済的虐待」となっている。 (注) 「養介護施設従事者等」とは, 養介護施設又は養介護事業の業務に従事する者を指す。   常識力での勝負となる問題である。 本問で対象とする調査結果をちゃんと読んでいる受験生は、殆どいないのではないだろうか。 1は×であろう。2008年度以降も当分の間高齢者の絶対数は増加していくので、虐待が生じるリスクもその分高まっているであろうと推測できるからである。2であるが、虐待をした人で「倫理観や理念の欠如」が理由だった人は少数派だと思われる。倫理観や理念はあるのだが、何らかの要因で虐待に走ってしまうが通常であろう。そもそも証明が難しい。本肢は×ぽい。3は、虐待をしている施設は、過去に一定の割合で何らかの指導等を受けていたことを指摘するものである。本肢のようなことはありうる話であり、内容だけから間違いとは判断できない。△にして次に進む。4であるが、認知症高齢者の日常生活自立度「Ⅰ」は自立(なし)の次に認知症の程度が軽いものである。そのような軽度の人が虐待を受ける可能性は低いと思われるので、本肢は×である。高齢者虐待の内容で最も多いのは身体的虐待なので、本肢は×である。この傾向は、今までのところ変わっていない。

【正解3】

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