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17.相談援助の理論と方法(R元年-第32回)2/3

問題104 シングル・システム・デザイン法に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。 1 適用対象として, 個人よりも家族など小集団に対する支援が適切である。 2 ベースライン期とは, 支援を実施している期間を指す。 3 クライエントを実験群と統制群に分けて測定する。 4 測定対象のクライエントに対する支援効果を明らかにできる。 5 ABデザインを用いる場合, 測定期間中に支援を一且中止する必要がある。   シングル・システム・デザイン法(SSD法と略す)を知らないと答えを出すのは難しい。 知らなければ、さっさと諦めたほうがよい問題である。 1は家族よりも個人が向いているので×である(推測できるであろう)。2のベースライン期は介入前の期間なので×。3のように介入の効果を測定するためにクライエントを2つのグループにわけるという方法もある。集団比較実験法という。しかし、SSD法は同一のクライエントが対象なので、本肢は×である。4は〇である。5であるが、ABデザインとは先に述べたA期→B期の順に行う方法である(他にABABデザインBABデザインなどがある)。この方法では、測定期間中に支援を一且中止する必要があるとなっているが、このような取り決めはない。よって×である。見たことあると思った人もいるかもしれない。㉘-106でズバリ出題されている。ただし、本問ではシングル・システム・デザイン法となっているが、㉘-106では単一事例実験計画法となっている。また、そのときの正解肢とは違う特徴が聞かれている。
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼ SSD法は、介入の効果測定のためのものである。大雑把にいえば、介入前の期間(ベースライン期=A期)と介入後の期間(インターベンション期=B期)の状態を比較し、その変化を見るという方法である。

【正解4】

問題105 事例を読んで, エイズ治療拠点病院のL 医療ソーシャルワーカーの, この段階における応答として, 適切なものを2つ選びなさい。 〔事例〕 3 か月前にエイズ脳症でパートナーのM さんを看取ったA さん(50 歳)が, L 医療ソーシャルワーカーの下を訪れた。L医療ソーシャルワーカーは,「もう生きていけない」と悲しんでいたAさんを, Mさんの他界後も支援してきた。この日, 面接室でA さんは,「Mが亡くなってからは毎日Mのことを思い出して泣き, しばらくは夢を見ているようでした。今も悲しい気持ちに変わりありませんが, 最近現実を直視できるようになってきました。これからは, 一人で暮らしていけると思います」と話した。 l 「よくMさんを支え続けていらっしゃいましたね」 2 「お一人で生活していけるというお気持ちは, きっと一時的なものですね」 3 「面接室でお目に掛かることもこの先ないかと思うとお別れが寂しいですね」 4 「今後のことで相談が必要となるようなことがありましたらご連絡ください」 5 「パートナーと死別した方のグループに入会しましょう」   「この段階」をきちんと押さえる。 A(50歳)は3か月前にエイズ脳症でパートナーMを看取っている。そのときからLはAを支援してきている。その上でAは事例のような発言を面接室で行っている。 1は、Aの気持ちに沿った対応であり適切であろう。2のような発言は、立ち直ったAの気持ちを挫くものであり×である。3はドラマの中ならありえそうな応答だが、AはMを看取ってからまだ3か月しか経っていないし、今も悲しみが残っている。この応答はまだ早すぎるし、「この先ないかと思うと」という部分もひっかかる。もっとも、3を一旦よさそうだと思っても、次の4を読めば、3よりも4が適切だと気づけるであろう。悩むとしたら次の5である。もしこの応答が勧奨ではなく、提案の形を取っていたら、混乱はピークに達しそうである。ただ、試験委員もそこを意識して問題文を作っているはずである。この場面での話の流れからすると勧奨の形を取ることは、Aの発言を尊重していないと感じられる。

【正解1,4】

問題106 事例を読んで, B社会福祉士が介入しようとしているシステムとして, 最も適切なものを1つ選びなさい。 〔事例〕 P 国から2 年前に来日したC さんは, 現在,難民認定を得て就労可能な在留資格を持って, Q市で暮らしている。日本語能力は十分ではないが, R市にある会社に就職している。しかし, 自宅付近では孤独な暮らしで,近隣住民との会話ややりとりは全くない。C さんは, どうしたら近隣住民と交流を持てるのかと悩み, Q市社会福祉協議会のB社会福祉士に相談した。B社会福祉士は, Cさんと同じような相談を複数回受けたことがあったため, 実態把握の必要性を感じた。このため, Q市に居住している外国籍住民を対象とした聞き取りを行い, その結果を町内会に報告し, 対応を促すこととした。 1 ミクロシステム 2 メゾシステム 3 クロノシステム 4 マクロシステム 5 エクソシステム   考え込んでも正解が見えにくい問題であり、時間をかけすぎないことが大事だと思われる。 広がりでいうと、ミクロ<メゾ<エクソ<マクロ の知識は必須である。クロノはとりあえず置いておく。 B社会福祉士が介入しようとしているシステムは、C個人から拡がり、「Q市に居住している外国籍住民」にまで広がっている。ミクロマクロでないことはわかるので、メゾエクソに絞って考えてみる。地域社会でCと関連のある外国籍住民であることからすると2のメゾを選ぶのが無難であろうか。エクソは直接は関わらないが影響を受けやすい地域の住民・行政などを指す。なお、クロノは、先の4つと異なり、時間の要因を組み込んだシステムであり、時代や世代間の変化をとらえるものである。類題が㉗‐99で出題されているが、クロノは初登場である。

【正解2】

問題107 ソーシャルワークにおける援助関係に関する次の記述のうち, 最も適切なものを1つ選びなさい。 1 ラポールとは, 被援助者に代わって援助者が意思決定することを表す。 2 パートナーシップとは, 援助者と被援助者が共に課題に取り組む関係性を表す。 3逆転移とは, 被援助者が自己の感情を援助者に向けることを表す。 4 パターナリズムとは, 援助者と被援助者間の情動的な絆(きずな)を表す。 5 アタッチメントとは, 被援助者が援助者から自立している状態を表す。   逆転移を知らなかった(あるいは記憶が曖昧だった)受験生はそこそこいたのではないだろうか。積極法で解くことができる。 精神保健福祉ではポピュラーなので、この機会に押さえて欲しい。これ以外にもわからないものがあった人もいるかもしれないが、本問は2が〇であることがわかりやすい。 1は明らかに×。2はよさそう。3の内容は転移なので×。逆転移は援助者が自己の感情を被援助者に向けることである。4は明らかに×。パターナリズムの語源はラテン語のパテル(父)から来ているが、福祉ではマイナスのイメージで用いられる。5の×もわかりやすい。

【正解2】

問題108 相談援助の面接技法に関する説明として, 最も適切なものを1つ選びなさい。 1 言い換えによって, 話す内容の選択をクライエントに対して求める。 2 共感によって, ソーシャルワーカーが問題に対する価値判断を明確に伝える。 3 ミラクル・クエスチョンによって, 問題が解決した後の生活の様子や気持ちについて,クライエントの想像を促す。 4 アイメッセージによって,クライエントに対して客観的な情報を伝える。 5 閉じられた質問によって, クライエントに自由な語りを促す。   ミラクル・クエスチョンを見てピンとこなかったとしたら、勉強不足である。ただ知らなかったとしても、消去法でも答えを導くことができる。 解決指向アプローチの重要タームであり、過去問でも頻出している。 1は、説明部分が「言い換え」と対応していないので×。2も、同様に×。3は、特に問題のない記述であり〇ぽい。4は、アイメッセージでは客観的な情報を伝えられないので×。5は、閉じられた質問では自由な語りを促せないので×。

【正解3】

問題109 カデューシン(Kadushin, A, & Kadushin, G, )が示した,「会話」と「ソーシャルワーク面接」の相違に関する記述として, 正しいものを1つ選びなさい。 l 「ソーシャルワーク面接」と比べて,「会話」には意図的な目的が存在している。 2 「ソーシャルワーク面接」と比べて,「会話」では参加者間に明確な役割分担がある。 3 「ソーシャルワーク面接」と比べて,「会話」の参加者はしばしば文化的に異質である。 4 「会話」と比べて,「ソーシャルワーク面接」には参加者間に平等な権威と力がある。 5 「会話」と比べて,「ソーシャルワーク面接」ではスピーチのパターンが構造化されている。   選択肢を読むうちに、問題を解くための糸口がみえればよい。 カデューシンのことを知らなくても、その人物が「会話」と「ソーシャルワーク面接」の違いについて指摘していることを前提に解けばよい。 1は、「ソーシャルワーク面接」の方が意図的な目的が存在しているといえるので×ぽい。2の参加者間に明確な役割分担があるのは「ソーシャルワーク面接」の方であろう。これも×ぽい。3は少し迷うが、「会話」の参加者はしばしば文化的に異質であるとの記述は少しひっかかる。異質な人がしばしば会話に参加するのだろうかという疑問がわくからである。×ぽい。4であるが、「参加者間に平等な権威と力がある」のはどちらか。「ソーシャルワーク面接」には少なくとも平等な力はないのではないように感じる。5のスピーチのパターンが構造化されているのはどちらか。これは「ソーシャルワーク面接」の方ではないだろうか。以上から、微妙な肢もあるが、一番無難なのは5であろうか。3,4,5で迷うものがあるとしたら、比較してもっとも良さそうなものを選ぶしかない。

【正解5】

問題110 ドメスティック・バイオレンスの被害女性を支援するNPO法人(Y法人)にDさん(35歳女性)が,「何年も前から, 夫に殴られたり蹴られたりしていて,このままだとどうなるか分からないので, 助けてほしい」と, 保護を求めて来所した。このためY法人はDさんを保護するとともに, Y法人のE社会福祉士がDさん,と面接することとなった。 次の記述のうち,この面接の導入部分におけるE社会福祉士の関わりとして, 適切なものを2つ選びなさい。 1 なぜ, これまで助けを求めなかったのかを問う。 2 この面接の目的を伝える。 3 これから尋ねることに対して, 正確に回答するよう指示する。 4 支援を求めてY法人に来たことをねぎらい, 緊張を解く。 5 E社会福祉士がこれまで担当した事例から, 解決方法を伝える。   問題文に記載されている条件をしっかり事例文の中で確認すれば惑わなくてすむ。 問われているのは、「この面接の導入部分におけるE社会福祉士の関わり」である。 1は、導入部分の関わりとしてはよくないであろう。×ぽい。2は、特に問題はなく、導入部の関わり方としては十分にありうる。〇ぽい。3は、相手にプレッシャーを与えるし、社会福祉士の禁忌事項である「指示する」があるので×。4は、導入部分として適切な対応である。〇であろう。5のような思考法は現実にもありうるであろう。ただ、導入部分ではDの状況を正確に把握できている訳ではないから、このような思考は早すぎるし、参考にするのはよいとしてもストレートに解決方法を考えるのは個別化の原則にも反するであろう。×ぽい。

【正解2,4】

問題111 ケースマネジメントの範囲や目的に関するモデルについての次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。 l クライエントのケアプランを作成し, サービス提供者へ送致するまでの中核的な機能に焦点化したものを最小限モデルという。 2 クライエントの暮らす地域のケアシステムを変革するために, ネットワーク推進,システム改変計画化(施策提言)を含めるものを包括的モデルという。 3 クライエントが利用する資源開発に向けての弁護機能, サービスの品質の監視,市民教育を含めるものをコーデイネーションモデルという。 4 クライエント本人を尊重し, 利用者の利益を向上させるというソーシャルワークの価値, 倫理を基盤にするものをシステム指向モデルという。 5 クライエントに対して, 効果的で効率的なサービスの調整を目指すものを利用者指向モデルという。   ケースマネジメントの範囲や目的に関するモデルというのは聞きなれない。こういう問題は、一読して解決の糸口を探すのがいい。  各モデルのイメージを頼りに積極法か消極法で解く方法でもよいが、交差法を併用できるとうまく解けることがある。 各肢をみていくと、5の利用者指向モデルと4の説明が親和的であることに気づく。また、4のシステム指向モデルは、2の説明につながるのではないかと推測できる(ネットワーク、システム改変という用語が含まれているから)。また、2の包括的モデルは、3の説明とつながると推測できる。そして、4のコーデイネーションモデルと5の説明がつながると思われる。以上から、2から5は、説明と用語を交差させていると推測できるので、残る1を選ぶ。ここで書いた対応がすべて成り立つのかについて絶対の自信があるわけではない。本問に関する十分な知識がなければ、それは無理である。しかし、いきなりあてずっぽうで解くよりは、はるかによいであろう。ちなみに、1が残った場合に改めて内容を確認してみると、「ケアプランを作成し, サービス提供者へ送致するまでの中核的な機能に焦点化」という説明と「最小限モデル」という用語とはそれなりにかみあっていることに気づく。

【正解1】

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