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17.相談援助の理論と方法(R2年-第33回)2/3

問題104 事例を読んで,在日外国人支援を行うX団体のA相談員(社会福祉士)によるBさんへのこの時点での対応として,適切なものを2つ選びなさい。 〔事例〕 外国籍の日系人Bさん(45歳,男性)は,半年前に来日し,Y社で働いていたが,1か月前にY社が倒産し職を失った。今後の生活について相談するため,在日外国人支援を行うX団体を訪ねた。A相談員との面接では,以下のことを語った。母国では,今日まで続く不況により一家を養える仕事に就けず,家族の生活費を稼ぐため来日したこと。近い将来,母国で暮らす家族を呼び寄せたいと思っていること。現在求職中であるが日本語能力の低さなどからか,仕事が見付からず,もうこのまま働けないのではと思っていること。手持ちのお金がなくなり当面の生活費が必要なこと。なお,Bさんは在留資格(定住者)を有することを確認した。 1 一旦帰国することを提案する。 2 これまでの就労経験を確認し,働く上での強みを明らかにする。 3 生活福祉資金貸付制度などの仕組みを説明し,希望があれば窓口へ同行することを提案する。 4 日本語を学び直し,日本語能力を早急に高めることを勧める。 5 家族を呼び寄せることは無理であると伝える。   推論型の問題である。各選択肢を丁寧に読み込み、適切ものを選んで欲しい。   1は、×である。Bは目的を持って来日しており、現在求職中である。一旦帰国することを提案するのは、Bの意向にも現在の状況にも合致していない。 2は、〇である。Bがこれから就職する上での強み(ストレングス)に着目したものである。3は、〇である。Bは手持ちのお金がなくなり当面の生活費が必要な状況にある。このような対応は適切といえるであろう。 4は、どうか。Bは日本語能力が低いことから、このようなアドバイスもよいのではないかと考えた人もいるかもしれない。しかし、日本語能力を高めるのは容易なことではないし、日本語を学び直しても当面の生活に足しになるわけでもない。肢2や肢3と比べると適切とはいえない。 5は、×である。Bの言動に対する受容も共感もない対応であり、相談員(社会福祉士)の対応として不適切である。

【正解2,3】

  問題105 次のうち,相談援助の過程におけるモニタリングに関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 クライエントに対する一連の支援終結後に,支援計画の妥当性や効果を測る段階である。 2 支援再開の要否確認のため,問題再発の有無などクライエントの生活状況を確認する段階である。 3 支援計画見直しのため,クライエントの状態変化のありように関する情報を収集する段階である。 4 支援を開始するため,クライエントの問題を把握し.援助関係を形成する段階である。 5 計画どおりに援助が展開されているか否か,計画された援助が効果を上げているか否かなど,援助の経過を観察する段階である。   モニタリングは援助の過程の中で行われるものであることを押さえていれば、正解できる問題である。 ㉓問101にそっくりな問題がある。   1は、判断に迷う。「支援終結後に」の部分を除くとよさそうな内容である。△にして次に進む。 2は、×である。「支援再開の要否確認のため」とあるので、アセスメントとして把握したほうがよい。 3は、×である。再アセスメントとして把握したほうがよさそうである。 4は、×である。インテークの説明である。 5は、〇である。 以上から肢1か肢5かで迷った人がいると思われるが、肢5のほうが適切な内容といえる。

【正解5】

  問題106 次のうち,生活モデルにおけるクライエントの捉え方として,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 環境から一方的に影響を受ける人 2 成長のための力を有する人 3 治療を必要とする人 4 パーソナリティの変容が必要な人 5 問題の原因を有する人   生活モデルについてきちんと説明できる人は少ないと思われるが、現在のソーシャルワークに大きな影響を与えているものであるから、これを機にしっかり学習しておきたい。 生活モデルについては、問98に出ている。   1は、×である。※ワン ステップUP参照。 2は、〇である。自信をもって判断できない場合、△にして次に進む。※ワン ステップUP参照。 3は、×である。これを読んで治療モデルを思い浮かべた人が多かったと思われる。 4は、×である。このような捉え方は、治療モデルの捉え方に近い。 5は、×である。問題解決アプローチ、あるいは課題中心アプローチにおけるクライエントの捉え方である。

【正解2】

 
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼ クライエントを治療の対象とするのではなく、生活主体者として捉えている点が大きな特徴である。 さらに、生活状況を人と環境が交互作用を行う「場」としており、生活それ自体がもっている成長と発達および問題解決の力をすべて活用し、援助していこうとする理論である。この過程では、交互作用関係に注目しており、互いが影響を受け、互いが変化するという点で、一方は変化せず他方のみが影響を受けるという視点と異なっている。
  問題107 事例を読んで,Z大学の障害学生支援室のCソーシャルワーカー(社会福祉士)のDさんへのこの時点での対応として,適切なものを2つ選びなさい。 〔事例〕 Z大学3年生のDさん(21歳,男性)は入学前に交通事故に遭い,日常的に車いすを使用している。Dさんの入学以来,Cソーシャルワーカーは面接を行い,必要な支援を提供してきた。ある日,Dさんが卒業後の生活について相談したいと障害学生支援室を訪れた。「就職活動をする時期になり,卒業後は一人暮らしをしたいと両親に伝えました。両親は,最初は反対していましたが,最終的には賛成してくれました。でも,実際に将来のことを考え始めたら様々なことがとても不安で,就職活動が手につきそうにありません」と,Dさんは思い詰めた表情で話した。 1 両親にはこれ以上心配を掛けないよう,自分で解決するように伝える。 2 CソーシャルワーカーがDさんにとって良いと考える具体的な就職先を伝える。 3 不安について具体的に話すよう促し,解決すべき問題を一緒に整理する。 4 障害者の自立生活や就職活動の経験者がいる自助グループへの参加を提案する。 5 就職して一人暮らしをすることは十分可能なので,自信を持つように伝える。   この様な事例問題を解くときは、事例文の条件(背景)を慎重に捉える習慣を身に付けよう。 肢4と肢5で迷った人が居るのではないだろうか。なお、問103-肢5は、本肢と似た対応であるが、そちらも×となっている。   1は、×である。明らかに不適切な対応だと分かる。 2は、×である。CはまずDの意向をきちんと確認すべきであろう。 3は、〇である。Dの不安な内容を聞き、課題を明らかにすることは、今後の支援を考える上で適切な対応といえる。 4は、〇ぽいが、悩む人もいると思う。△にして先に進むもよし。Dと同じような状況にある人たちの自助グループへの参加は、Dにとって有益な示唆をもたらすと考えられる。 5は、どうか。このような言動(励まし)が、効果をもたらすこともあるかもしれないが、根拠の伴わない励ましは、信頼関係を損なう可能性もある。事例文を読む限り、Cが卒業後の一人暮らしを可能と断言する具体性は、読み取れない。×と判断するのが適当だろう。

【正解3,4】

  問題108 事例を読んで,Uがん診療連携拠点病院のE医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)による応答として,適切なものを2つ選びなさい。 〔事例〕 Uがん診療連携拠点病院のE医療ソーシャルワーカーは,入院以来関わり続けてきた末期がん患者のFさん(48歳,男性)の妻Gさんから次のような相談を受けた。 「夫も私も納得して,緩和ケアに変更して積極的な治療を行わないことを決めたのですが,もしかしたら明日効果的な薬が開発されるかもしれないし,果たしてその決断が正しかったのか。今後のことを考えると私は不安で不安で仕方がありません。 今の私は亡くなっていく夫を支えていく自信がありません」と話した。 1 「心配ですね。でも,Fさんはすぐに亡くなると決まったわけではありませんよ」 2 「Gさんなら最後までFさんに寄り添う力がありますよ」 3 「決断に迷いがあるのですね。そのお気持ちをもう少しお話しいただけますか」 4 「おつらいですね。Fさんを支えていく手立てをご一緒に考えていきませんか」 5 「がんの最新の治療方法を調べてお教えしますね」   現実の場面を想像するのではなく、ソーシャルワーク理論の原理原則を考えて解答を選ぶ。 事例の内容を把握し、選択肢をざっとみるような感じて解いていく。   1、2は単独では判断できないかもしれない。EはFの入院以来Gと関わり続けてきたのだから、こうした発言をすることも十分に考えられる。どちらも△にしておく。 3は、〇である。一旦は積極的な治療を決めたものの、その判断が正しかったのかという疑問が湧いたGの気持ちを、詳しく聞こうとする質問である。 4は、〇である。Gの気持ちに共感しながら、一緒にこれからのことを考えていこうとする対応である。 5は、×である。このような対応は、かえってGの悩みを増幅させるだけではないだろうか。 改めて、事例場面を読み、ソーシャルワーカーの役割を考えてみる。本事例のような場面で、E医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)が取るべき対応は、Gの気持ちに寄り添いながら、今後の対応を考えていくことである。   別の言い方をすれば、Gの意思決定支援として適切な対応はどのようなものか、ということである。 ここで、肢1と肢2を再確認してみる。 1は、自らの決定(決断)に揺れ動く、Gの悩みに答えているとはいえない。×である。 2は、すでに決めたGの意思決定を一方的に支持しようとするものともいえる。意思決定支援においては、意思は変化するものとされている。 適切なものとしては、3と4を選ぶのが無難であろう。

【正解3,4】

  問題109 次の記述のうち,ソーシャルワーカーが用いる面接技法に関する説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 明確化とは,クライエントを精神的に支えるための応答をすることである。 2 閉じられた質問とは,クライエントに多くの語りを促す質問方法である。 3 支持とは,クライエントの語りをソーシャルワーカーが明確にして返すことである。 4 開かれた質問とは,クライエントが,「はい」や「いいえ」など一言で答えが言える質問方法である。 5 要約とは,クライエントが語った内容をまとめて反射することである。   本問は、交差法を用いるとよい。 1-3、2-4は、用語と説明が交差している。これに気付けば、選択肢は消去できる。   1は、×である。説明部分は支持的態度であるが明確化ではない。 2は、×である。閉じられた質問は、はい、いいえで答えられる質問や答えが一義的に定まっている質問である。クライエントに多くの語りを促す質問方法は、開かれた質問である。 3は、×である。説明部分は明確化に関するものである。 4は、×である。説明部分は閉じられた質問に関するものである。 5は、〇である。本肢の場合、「まとめて」とは、そっくりそのままということではなく、「要約して」という意味で使われている。

【正解5】

  問題110 事例を読んで,V母子生活支援施設(以下「V施設」という。)のH母子支援員(社会福祉士)がJさんに家庭訪問を提案した目的として,適切なものを2つ選びなさい。 〔事例〕 Jさん(38歳,女性)は,半年前にV施設を退所した。退所後は仕事をしながら,息子(12歳)と共にV施設の隣町のアパートで暮らしていた。しかし,最近になって体調を崩し,自己都合により退職した。Jさんは生活に不安を覚え,V施設の支援担当者だったH母子支援員に電話をした。電話では,再就職活動をしているが,適切な職場が見付かっていないこと,手持ちのお金が底をつきそうで今後の生活に不安があること,思春期を迎える息子とのコミュニケーションに戸惑いがあることなどがJさんから話された。話を聞いたH母子支援員は,支援の必要性を感じ早期の家庭訪問を提案した。 1 アパートの家主に同席を願い,Jさんの状況を知ってもらうため。 2 時間の長さを気にせず,訪問面接を行うため。 3 Jさんの生活状況を把握するため。 4 Jさんが,緊張感を持って訪問面接に臨めるようにするため。 5 息子の様子を知るため。   事例を通じて、H母子支援員(社会福祉士)がJさんに家庭訪問を提案した目的を考えさせる問題である。 訪問面接という部分に着目すれば、自ずと適切な対応がわかるのではないだろうか。   1は、×である。JはHを頼って電話をしたと思われるが、この段階でアパートの家主に同席を願うのは、秘密保持義務に違反する可能性さえある。 2は、もっともらしい内容だが、結論は×である。時間の長さを気にせずに話を聞くなら、訪問面接以外の方法もあるはずである。 3は、〇である。訪問面接にしたのは、電話ではわからないJの生活状況を把握するためだと考えられる。 4は、×である。「緊張感を持って訪問面接に臨めるようにする」とあるが、そのためならむしろ訪問という形を取る必然性はないであろう。また、緊張感を持って臨む必要性があるのかにも疑問がある。 5は、〇である。訪問面接でないと、息子の様子を直に知ることは難しい。

【正解3,5】

  問題 111 ケアマネジメントの過程に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 アセスメントとは,クライエントや家族の意向に沿ってニーズを充足する方法を決定することである。 2 ケアプランの作成とは,ケアマネジメントの対象となるかどうかを確認することである。 3 ケアプランの実施とは,ケアマネジメントについて説明をし,利用意思を文書等により確認することである。 4 リファーラルとは,支援が望まれると判断された人々を,地域の関係機関等が支援提供機関などに連絡し,紹介することである。 5 スクリーニングとは,一定期間の後に支援経過と結果を全体的に評価することである。   リファーラルの意味を知っていたか否かがポイントになる。 リファーラルの意味を知っていた人は積極法で選べばよい。リファーラルを知らなかった人は、肢5が×と判断できればよい。   1は、×である。アセスメントは、クライエントの状況を把握して課題を抽出することである。 2は、×である。これはアセスメントの段階であり、スクリーニングの内容である。 3は、×である。ケアプランの実施は、作成されたケアプランの内容を実行に移すことである。 4は、〇である。リファーラルとは、紹介を意味する。 5は、×である。スクリーニングは、「審査」「選考」「ふるい分け」といった意味で用いられる。肢5に記載されている説明はモニタリングである。

【正解4】

 
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼ リファーラルとは・・・ 支援が望まれると判断された人々を地域の関係機関が支援提供機関などに連絡、紹介すること。 スクリーニングとは・・・ 心身機能の状態、生活状況などについて、規定の書式を用いて情報を収集し、サービス利用の対象者となるかどうかを確認すること。 マッチングとは・・・ 利用者のニーズに適合したサービスを提供する組織を探して、必要なサービス、提供方法などについて交渉、調整すること。 アセスメントとは・・・ 利用者の置かれている状況を把握するために、利用者の情報を収集し、どのような生活ニーズが生じているかを明らかにすること。
  問題112 次のうち,ネットワークに関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 ジェノグラムは,クライエントを取り巻く人間関係や社会環境における資源のネットワークを可視化したものである。 2 地域で構築される個別の課題に対する発見・見守りネットワークは,専門職を中心に構成される。 3 ラウンドテーブルとは,ボランティアグループのリーダーが参加する活動代表者ネットワークである。 4 多職種ネットワークでは,メンバーができるだけ同じ役割を担うようにコーディネートする。 5 個人を取り巻くネットワークには,個人にプラスの影響を与えるものと,マイナスの影響を与えるものの双方がある。   本問は積極法で解くのに適した問題といえる。曖昧な知識をもとに早合点するようなことはしたくないものである。 わからないものがあっても、そこで足踏みしないで次の選択肢に移る。   1は、×である。本肢の説明はエコマップに関するものである。 2は、×である。「専門職を中心に」していては、地域で構築される個別の課題に対する発見・見守りネットワークはうまく機能しない。 3は、知らないと判断しづらい。△にして次に進む。※ワン ポイントアドバイス参照 4は、×である。多職種ネットワークなのに、「メンバーができるだけ同じ役割を担う」のでは意味がないであろう。 5は、〇である。まさにそのとおりという内容の説明である。

【正解5】

 
ソーシャルワンカーと一緒にワン ポイントアドバイス ラウンドテーブル(円形のテーブル)は、誰でも参加できる井戸端会議のようなものをイメージすればよい。文字どおり円になって、肩書や上下関係を外して自由に意見交換する場である。

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