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16.相談援助の理論と方法(H30年-第31回)1/3

問題98 ケンプ(Kemp, S.)らによる「人-環境のソーシャルワーク実践」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。 1 環境を「知覚された環境」,「自然的・人工的・物理的環境」など5 種に分類した。 2 ソーシャルネットワークの活用に対し,一定の制限を加えた。 3 クライエントが抱える欠損の修正による問題解決に主眼を置いた。 4 クライエントの環境よりもクライエント自身のアセスメントを強調した。 5 支援者とクライエントは,それぞれ異なる基盤に存在するものと捉えた。   ケンプ(Kemp, S.)って誰?と思うが、そこは無視して問題文を読む。「人-環境のソーシャルワーク実践」に関して考えればいいことがわかるので、後は素直に問題文を読んでいく。 1は、知らないので△。2は、内容が変なので×ぽい。3の内容は医学モデルぽいので、今の時代に合わない感じがする。×ぽい。4は、「人-環境のソーシャルワーク実践」なのだから、環境を無視している本肢は×ぽい。5の支援者とクライエントを「それぞれ異なる基盤に存在する」ものとの考は、人と環境の交互作用を考える現在の主流から外れる。×ぽい。このようにみると1は(私は)全然知らないけれども、1かなという気がしてくる。そして、正にこれが正解となる。
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス この手の問題(正解の選択肢が分からなくても)に、正解することができるか否かは、もはや勉強だけで克服できるものではない。ある意味、試験に対するセンスが必要になってくる。そして、このセンスは言うまでもなく、合格を手にするには欠かせないものだ! ※ケンプ(Kemp, S.)らとなっているので、ケンプ以外にもいるのだろうが、私は不勉強なためケンプの提唱がわからなかった。このケンプが特異な考えを持っていれば別だが、そうでなければ「現在のソーシャルワークの主流派」の考え方に即して、各肢の正誤を判断すればよいのではないだろうか。
こんな問題もありですよ。リラックスして勉強しましょう

【正解1】

問題99 事例を読んで,外国籍住民を支援する団体のKソーシャルワーカー(社会福祉士)が,エコロジカルアプローチの視点から今後行う取組として,より適切なものを2つ選びなさい。 〔事 例〕 P国籍のLさん(30 歳,女性)は半年前に来日した。Mさんなど一部の日本人住民に挨拶をしても無視されることが度々あり,Lさんは疎外感を覚えている。LさんはMさんなど近隣の日本人住民と交流しながら住み続けたいと考えているが,Lさん自身はMさんらに何も伝えることができない。このためLさんは,Kソーシャルワーカーに相談した。   1 Lさんの了解を得て,Lさんに対する思いについてMさんらに尋ねる。 2 この地区の民生委員に問題解決・再発防止の仕組み作りを任せる。 3 日本人住民との良好な関係作りのためにLさんができることを,一緒に考える。 4 疎外感緩和のため,在日P国人団体の集まりに参加するように助言する。 5 Lさんに,Mさんらに対する言動を思い返してもらい,もし不適切な言動をしたことがあればやめるように助言する。   やや捉えどころのない肢が多い。戸惑った受験生も多いのではないか。エコロジカルアプローチの意味を正確に言えなくても、何となくわかっていれば十分正解に辿り着ける。 1は対応としては、悪くない。△。2のような「~に任せる」という表現は、まず×だと思ってよい。3の対応も悪くない。エコロジカルアプローチの点からも、こうした取組は必要だろう。〇かな。4の対応も悪くはない。△。5の対応も悪くはない。△。ここまで絞ったら、1,4,5について選択肢を再読する。 1は、Lさんの思いを聞いて、状況を分析する上ではあってもよさそうな取組である。4の「疎外感緩和のため,在日P国人団体の集まりに参加するように助言する」のは、Lを「地域の中の一員として捉える」ことから少し外れる。5は、「もし不適切な言動をしたことがあればやめるように」との助言が一方的過ぎる感がある。
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼ エコロジカルはエコロジー(生態学)から来ている。生物または生物群と,これを取り巻く環境との相互関係 (生態系) を研究する学問分野である。エコロジカルアプローチとは、援助対象者を家族、近隣、職場、地域の中の一員として捉え、この対象者の関わりのある環境との相互関係を基に、援助を行うことである。

【正解1,3】

問題100 ピンカス(Pincus, A.)らによる「4 つの基本的なシステム」の中の,ターゲット・システムとチェンジ・エージェント・システムに関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。 1 ターゲット・システムは,役割を遂行するソーシャルワーカーを指す。 2 ターゲット・システムは,ソーシャルワーカーが所属している機関を指す。 3 ターゲット・システムは,変革努力の目標達成のためにソーシャルワーカーが影響を及ぼす必要のある人々を指す。 4 チェンジ・エージェント・システムは,契約の下,ソーシャルワーカーの努力によって利益を受ける人々を指す。 5 チェンジ・エージェント・システムは,目標達成のために,ソーシャルワーカーと協力していく人々を指す。 に対する言動を思い返してもらい,もし不適切な言動をしたことがあればやめるように助言する。   システム理論をもとにして、ピンカス(Pincus,A.)とミナハン(Minahan,A.)が示した、ソーシャルワーク実践における4つのシステムは基本事項である。正解して欲しい問題である。 ⇒1の説明はワーカーシステムに関するものであり、×である。2の説明もワーカーシステムに関するものであり、×である。3は、ずばりで〇である。4の説明部分はクライエントシステムにかかわるものであり、×である。5は、アクションシステムに関するものであり、×である。
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス 去年までの直前対策講座では、要注意箇所として伝えていたが、ようやく正面から出題された。試験委員は予想を外すのがうまい。2つの概念が一緒に聞かれるいう問題形式に混乱した人も多かったのではないだろうか。 受験生としては、「チェンジエージェントシステム≒ワーカーシステム」として捉えておけば十分だと思う。

【正解3】

問題101 事例を読んで,この場面におけるナラティブ・アプローチに基づくA生活相談員(社会福祉士)の応答として,最も適切なものを1 つ選びなさい。 〔事 例〕 Bさん(85 歳,男性)は,特別養護老人ホームに入所している。妻は10 年前に亡くなっており,子どももいないため身寄りがない。Bさんは,話し相手もおらず,部屋に閉じ籠もりがちである。ある時,A生活相談員に対して,「生きていても仕方がない。早くお迎えがくればいいのに」と語った。   1 「そのような悲しいことは言わないでください」 2 「何があなたをそのような気持ちにさせるのか教えてください」 3 「奥さんの死がBさんの孤独を深めているのかもしれません」 4 「グループ活動に積極的に参加するといいと思います」 5 「この先,きっといいこともありますよ」   問われているのは、この場面におけるナラティブ・アプローチに基づくA生活相談員(社会福祉士)の応答として適切なものである。 ナラティブ・アプローチについての理解がないと解けない。他方で、これを知ってさえいれば、積極法でさえ正解を選べる。
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼ ナラティブ・アプローチとは・・・ 相手の語る「物語」を通して、その人らしい解決法を見出していくアプローチ方法である。ナラティブには「物語」という意味がある。 ※状況を説明する人や物語を話す人をナレーターというが、語源は同じである。

【正解2】

問題102 ホリス(Hollis, F.)が示した心理社会的アプローチの介入技法に関する次の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。 1 「福祉事務所の相談窓口に行って話を聞くといいですよ」とアドバイスするのは,発達的な反省である。 2 「親に心配を掛けまいとして,泣きたいのをずっとこらえていたのですね」という言葉掛けは,直接的指示である。 3 「うんうん,なるほど。そうだったのですね」とうなずきながら話を聞くのは,持続的支持である。 4 「教室に入ろうとすると,友だちの視線が気になってつらくなり入れなくなるのですね」という言葉掛けは,浄化法である。 5 「子どもにきつく当たってしまうということですが,あなたが子どもの頃のお母さんとの関係はどうでしたか」と聞くのは,パターン力動的反省である。   何だ、これは!という感じの問題である。気持ちを取り直して解くことに専念する。自分を信じるか、確率法を併用するしかない。 ホリスは頻出人物だが、その介入技法が聞かれたのは初めてではないだろうか。ホリスが診断学派であることを知っている人は多いと思うが、そこから考えても答えを導き出しづらい。 1のアドバイスは「発達的な反省」という用語と噛み合っていない。×ぽい。2の言葉掛けは、「直接的指示」とはいえない。3のように「うなずきながら話を聞く」ことと「持続的支持」という用語は合致している。〇ぽいが他も確認する。4のような言葉掛けと「浄化法」はどうか。知らないとにわかに判断できないが、支持的かかわりであり「浄化」しているとまではいえない気がする。×ぽい。5のような質問と「パターン力動的反省」もにわかに間違っていると判断できない。△。

【正解3】

問題103 ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1 解決志向アプローチは,クライエントが抱く解決のイメージを尊重し,その実現に向けてクライエントの社会的機能を高めることを目指す。 2 行動変容アプローチは,クライエントが,置かれている否定的な抑圧状況を認識し,自らの能力に気付き,その能力を高め,問題に対処することを目指す。 3 エンパワメントアプローチは,行動を学習の結果として捉え,正しく学習することにより問題行動を消去することを目指す。 4 フェミニストアプローチは,クライエント自らが問題を解決するための課題を設定し,あらかじめ決められた期間の中で課題を達成することを目指す。 5 課題中心アプローチは,クライエントが自らの人生のストーリーを理解し,新たなストーリーに書き換えていくことを目指す。   肢5の説明部分を読んでナラティブアプローチを思い出して、問題101に再び戻って解き直した人もいたのではないだろうか。本試験では、このようなことが意外とある。 1は、知っていれば、〇。これで答えがでる。2の説明は、エンパメントアプローチなので×。3の説明は行動変容アプローチなので×。4の説明部分は、課題中心アプローチなので×。5の説明部分はナラティブアプローチに関するものであり×。 覚えてしまおう!

【正解1】

問題104 アセスメントツールに関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。 1 ジェノグラムは,成員間の選択・拒否関係を図式化し,小集団における人間関係の構造を明らかにする。 2 エゴグラムは, 3 世代以上の家族を図式化し,世代間の人間関係の構造を明らかにする。 3 ソシオグラムは,交流分析理論に基づき,人間の性格を五つの領域に分けて分析する。 4 DCM(Dementia Care Mapping)は,クライエントとその家族の関係や社会資源との関係を,円や線を用いて表す。 5 PIE(Person-in-Environment)は,クライエントが訴える社会生活機能の問題を記述し,分類し,コード化する。   一見、単純な基本問題のようだが、意外と厄介。 1,2,3は単純な知識、あるいは交差法で、消去できる。問題は、4と5。このような形で正面から問われたことはない(肢5は過去問で数年前に問われていた-ホリスの状況の中の人と混同しないように)。決め手を4の(Dementia Care‐)の部分にした人は、意外と多かったのではないだろうか。Dementia認知症のことである(cf.BPSDやHDS-RのDである)。説明部分は認知症について全く触れていないので、不自然な感じがする。5は知らないと何ともいえないが、消去法で正解に導く。
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼ 認知症ケアマッピング(Dementia Care Mapping 以下DCM)とは 認知症をもつ人々が過ごすグループホームなどの施設内で、彼らがどの程度よい状態かよくない状態か、また、どのような行動をしているのかなどを観察評価する方法。

【正解5】

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