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15.相談援助の基盤と専門職(R元年-第32回)

問題91 社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている社会福祉士の義務等に関する次の記述のうち, 最も適切なものを1つ選びなさい。 1 資質向上の責務として, 相談援助に関わる後継者の育成を行わなければならない。 2 秘密保持義務として, その業務に関して知り得た人の秘密は, いかなる理由があっても開示してはならない。 3 信用失墜行為の禁止として, 所属組織の信用を傷つけるような行為をしてはならない。 4 連携保持の責務として, 業務内容の変化に対応するため, 知識と技能の向上に努めなければならない。 5 誠実義務として, 個人の尊厳を保持し, 自立した日常生活を営むことができるよう, 常にその者の立場に立って, 誠実にその業務を行わなければならない。   きちんと読まないと間違える。本試験らしい出題だといえる。 一読して×とわかるものもあるが(2など)、その他はよく読まないとうっかりミスを犯しやすい。特に1と4は、説明部分そのものが違っているのではなく、各責務の内容と対応していないために不適切なものとしなければならない。 1は、資質向上の責務と説明部分が噛み合っておらず×。2は「いかなる理由があっても」が×。3は「所属組織の信用」が×。4は連携保持の責務と説明部分が噛み合っておらず×。5は特に問題の無い内容である。頻出問題なので、正解して欲しい。
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス 社会福祉士の義務等に関する問題は、頻出問題である。サブノートにある一覧表を活用して、しっかり学習しておこう!

【正解5】

問題92 「ソーシャルワークのグローバル定義」(2014年)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。 l ソーシャルワークの発展は, 西欧諸国を基準に展開する。 2 ソーシャルワークは, できる限り,「人々のために」ではなく,「人々とともに」働くという考え方をとる。 3 ソーシャルワークの基盤となる知は, 単一の学問分野に依拠する。 4 ソーシャルワークの原則は, 人間の内発的価値と尊厳の尊重から, 多様性の尊重へと変化した。 5 ソーシャルワークの本質として人間関係における問題解決を図ることが新たに加わり, 政策目標であることが明示された。 (注) 「ソーシャルワークのグローバル定義」とは,2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。   グローバル定義は近年の過去問でも何度か出されており、何らかの知識を有している人が多かったと思われる。こういう問題こそ慎重に得点したい。 問題文の正誤の判断のさせ方に特徴がある(特に肢4)。多様性の尊重は中核と言ってもよいが、その知識にひっぱられると肢4を選んでしまうという間違いをおかしやすい。 1は、「西欧諸国を基準に」が×。2は、少し違和感があるので△にして次に進む。3は「単一の学問分野に依拠する」が×。4は、たしかに多様性の尊重を謳っているものの、人間の内発的価値と尊厳の尊重を無視しているわけではなく、違和感がある。×ぽい。5は、「人間関係における問題解決を図ること」が2014年に「新たに加わり」という部分がおかしいので×ぽい。今ごろ?と感じて欲しい。以上から、最も適切なものとしては2を選ぶのが無難だろう。

【正解2】

問題93 ソーシャルワーク実践理論を発展させた人物に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。 1 ベーム(Boehm, W,)は, 人間と環境の交互作用を基本視点とした生態学的アプローチを展開した。 2 ジャーメイン(Germain, C,)は, ソーシャルワークを本質的な観点から検討し,ソーシャルワークの活動を三つの機能に分類して定義化を試みた。 3 シュワルツ(Schwartz, W,)は個人と社会の関係は共生的な相互依存関係であるとし, ソーシャルワーカーの媒介機能を重視する相互作用モデルを展開した。 4 ゴールドシュタイン(Goldstein, H,)は, 価値の体系, 知識の体系および多様な介入方法の3要素に基づくソーシャルワーク実践の共通基盤を提唱した。 5 バートレット(Bartlett, H,)は, システム理論を指向した一元的アプローチを展開し, 後に認知的‐人間性尊重アプローチを展開した。   あまり馴染のない人も出題されている。すべての人を知っていなくても、知っている人を中心に解けないかを考えてみる。 1の生態学的アプローチジャーメインのつながりはわかりやすい。1と2を交差させて両方を×だと推測する。また5のバートレットも試験でよく出ている。バートレットといえば、4の「ソーシャルワーク実践の共通基盤」である。これで4と5が交差して×と推測する。以上から、正しいものは3ではないかと推測できる。
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼ ベーム(Boehm, W,):ソーシャルワークの機能として、回復、資源の確保、予防という3つの機能をあげている。 ジャーメイン(Germain, C,):ギッターマン(Gitterman,A.)と共に、「生活モデル」を提唱、生態学的アプローチを展開した。 ※生活モデルとは「人と環境の交互作用を活用して問題解決を目指していく、システ ム理論を取り入れたソーシャルワークのモデルである。」 シュワルツ(Schwartz, W,):集団援助技術における「準備期」で、波長合わせが重要であるとした。 ※波長合わせとは「援助者が利用者のニーズ等をあらかじめ理解して、利用者を援助していく中で生じてくるであろうことを前もって把握しておくことである。」 ゴールドシュタイン(Goldstein, H,):ケースワーク、グループワーク、コミュニティ・オーガニゼーションの三方法が分立していたソーシャルワークを、システム論の影響の下、統合ソーシャルワークとして成立させた。 バートレット(Bartlett, H,):ソーシャルワーク実践の共通基盤として,3要素「価値・知識・介入(調整活動)」があることを明らかにした。

【正解3】

問題94 アドボカシーに関する次の記述のうち, 最も適切なものを1つ選びなさい。 l ケースアドボカシーとは, クライエントと同じ状況に置かれている人たちの権利を守るために, 新たな制度を開発する活動である。 2 コーズアドボカシーとは, クライエントの権利を守るために, 法的な手段を用いる活動である。 3 セルフアドボカシーとは, クライエントが自らの権利を主張していく活動である。 4 シチズンアドボカシーとは同じ課題を抱えるクライエントの代弁や制度の改善・開発を目指す活動である。 5 リーガルアドボカシーとは, 一人のクライエントの安定した生活を復権させる活動である。   消去法で消していって残った肢を比較するのでもよいし、交差法を使って肢を絞ってもよい。 比較的新しい過去問で出題されている(㉙-112、㉘-102)。 すべてを正確に説明することは難しいが、自分にとってたしかな知識を最大限に活かして解く。3のセルフアドボカシーと説明部分の対応はわかりやすい。積極法で3を選ぶのが一つの方法である。

【正解3】

問題95,社会福祉施設等において, 国により配置が義務づけられている専門職として, 正しいものを1つ選びなさい。 1 介護老人福祉施設における薬剤師 2 母子生活支援施設における保健師 3 婦人保護施設における理学療法士 4 乳児院における看設師 5 地域包括支援センターにおける医師   実務に就いている人の方が有利な問題だと感じるが、知らなくても推論して解くことは可能である。 目新しいタイプの問題である。各施設に必置の職種を知っていれば簡単に解けるが、それを試験委員が求めていたとは考えにくい。むしろ選択肢にある施設の内容を大まかに知っていることを前提に、そこにいるべき職員を推測させたかったのではないかと考える。 1は×である。介護老人福祉施設は病院ではない。2も×だと推測できる。保健師がいたほうがよいかもしれないが、わざわざ置くまでの必要はなさそうだからである。3の×はもっとわかりやすい。婦人保護施設で身体機能のリハビリを積極的に行う必要性は感じられない。4の乳児院に看護師はあってもよさそうな組み合わせである。これが〇ぽい。5は×である。地域包括支援センターの三職種は受験生の常識であろう。 

【正解4】

問題96 事例を読んで, D社会福祉士が抱える倫理的ジレンマとして,最も適切なものを1つ選びなさい。 〔事例〕 V病院はこの地域の急性期医療の拠点であり,複数の社会福祉士が働いており, 円滑な退院支援を心掛けている。D 社会福祉士が担当したEさんは一人暮らしの85 歳の男性で猛暑による脱水症状のため緊急搬送された。入院して10 日目で全身状態は落ち着き, D 社会福祉士にEさんの速やかな退院支援を行うよう依頼があった。Eさんは今回の入院で一人暮らしが不安になり,当面V 病院での入院継続を希望している。困惑したD社会福祉士は,同僚のF 社会福祉士にも相談することにした。 1 クライエントの利益に対する責任と,記録の開示 2 クライエントに対する責任と,所属機関に対する責任 3 同僚に対する責任と,専門性への責任 4 クライエントとの信頼関係と,信用失墜行為の禁止 5 守秘義務と,制度や法令遵守に対する責任   倫理的ジレンマに関する問題である。事例を読んでおかしなものを消していく。 事例から対立する義務や責任が何であるのかを考えて、積極法で解くという方法もある。慎重に解けば正解できる問題である。 1は記録の開示は問題となっていないので×。2は、病院にいたいというEさんの意向(クライエントに対する責任)と退院支援を行うという所属機関に対する責任とが対立しているとみることができるので、適切そうな記述である。3は、同僚に対する責任は問題となっておらず×ぽい。4は、信用失墜行為は問題となっていないので×。5は、守秘義務も制度や法令遵守に対する責任も問題になっていないので×。類似したパターンに㉘-問96がある。

【正解2】

問題97 事例を読んで, G社会福祉士がこの段階で行う対応として, 適切なものを2つ選びなさい。 〔事例〕 地域包括支援センターのG社会福祉士は,「どこに相談してよいか分からない」という女性からの電話を受けた。電話の内容は, 数年前からこの地区で一人暮らしをしている母親(72歳)を心配した, 遠隔地に住む娘からのものであり,以下のことが話された。「母親に認知症の初期症状がみられるようで, ゴミを出す日を間違えたり中も片づけられない。近所の人とゴミのことで口論となることもあり,今後この地区で, 今までのように暮らしていくことができるかまた, 家族としてどのようにしていけばよいか悩んでいる」。 1 アウトリーチ 2 モニタリング 3 ソーシャルアクション 4 ターミネーション 5 アセスメント   問われているのは「G社会福祉士がこの段階で行う対応」である。 1は、当該母親の状態を確認するためにあってもよい対応であろう。〇ぽい。2は、的外れである。3のソーシャルアクションも何をするのかが不明である。4のターミネーションは言葉の意味がわからないと判断しづらい。ターミネーション(termination)は、支援関係を終結させることである。映画のターミネーター(terminator)は、人類を終結させる使者だった。同じ語源である。5のアセスメントは「この段階で行う対応」として適切なものだといえるだろう。4の意味を知らなかったとしても積極法で1と5を選べる。

【正解1,5】

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