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15.相談援助の基盤と専門職(R2年-第33回)

問題 91 社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている社会福祉士に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1 社会福祉士は資格更新のため,7年ごとに所定の講習を受講しなければならない。 2 社会福祉士は相談業務を行う上で,クライエントの主治医の指示を受けなければならない。 3 社会福祉士の「信用失墜行為の禁止 」は,2007年 (平成 19 年 )の法律改正によって加えられた。 4 社会福祉士の「秘密保持義務」は,社会福祉士の業務を離れた後においては適用されない。 5 社会福祉士はその業務を行うに当たって,福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。   この手の問題は、過去何度もカタチを変えて出題されている。 過去問学習が功を奏す。   1は、×である。社会福祉士は更新制ではない。 2は、×である。チーム支援において、社会福祉士と医師は連携関係にある。少なくとも社会福祉士の専門領域である「相談業務を行う」に際してクライエントの主治医の指示を受けないとならないことは無い。 3は、知らないと自信を持って判断できない。知らなければ△にして次に進む。結論から言えば、信用失墜行為の禁止は、社会福祉士及び介護福祉士法が制定されたときからあり、×である。 4は、×である。社会福祉士の業務を離れた後でも秘密保持義務はある(社会福祉士及び介護福祉士法46条)。 5は、〇である。内容的に特に問題のない記述である。(同法47条)。

【正解5】

  問題92 次のうち,「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014年)が「ソーシャルワークの定義」(2000年)と比べて変化した内容として,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 人間関係における問題解決を図ることが加えられた。 2 中核をなす原理として,社会の不変性の尊重が容認された。 3 実践の基盤として,社会システムに関する理論の導入が加えられた。 4 定義は,各国及び世界の各地域で展開することが容認された。 5 人々が環境と相互に影響し合う接点に介入することが加えられた。 (注)1「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」とは,2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(I FSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW) の総会•合同会議で採択されたものを指す。 2 「ソーシャルワークの定義」とは,2000年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)で採択されたものを指す。   グローバル定義は過去問でも何度か出題されており、代表的な参考書には掲載されている。大切な部分は多少なりとも記憶に残っていたのではないだろうか。 何が問われているのかを確認してから選択肢を順に検討していく。はじめはぴんとこなくても、選択肢を読んでいくうちに出題者の意図に気づけるはずである。   1は、×である。ソーシャルワークの中核要素であり、当初から定義に入っていた。 2は、×である。社会の不変性などあるのかという疑問があるし、それを尊重するというのもおかしい。 3は、少し迷うかもしれない。その場合、△にして次に進む。 4は、〇である。2014年の「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」に導入されたのはまさにこれである。 5は、×である。ソーシャルワークの中核要素であり、当初から定義に入っていた。 ※肢3の判断に迷うかもしれないが、肢4については、代表的なものである為、知っていた人も少なくないだろう。 仮に、迷ったとしたら、2014年にあえて作られたグローバル定義により相応しいと思われるほうを選べばよい。

【正解4】

  問題93 国が規定する近年の相談事業に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1 地域で生活する障害者のために,「地域生活定着促進事業」が創設され,地域生活定着支援センターにおいて相談支援事業が行われるようになった。 2 「スクールソーシャルワーカー活用事業」において,社会福祉士や精神保健福祉士等がその選考対象に明記されるようになった。 3 地域包括支援センターでは,社会福祉士等によって「自立相談支援事業」が行われるようになった。 4 矯正施設退所者のために,「地域生活支援事業」が創設され,市町村における必須事業として相談支援事業が行われるようになった。 5 生活困窮者自立支援制度が施行され,その中核事業として「総合相談支援事業」が行われるようになった。   この問題では、自分のたしかな知識を最大限に活用することが大切である。 一定の知識がないと自信を持って判断できない問題であるが、全ての肢を知らなくても、交差法で選択肢を消去することができる。   1は、×である。地域生活定着促進事業は、高齢又は障害により自立が困難な矯正施設退所者(刑務所、少年刑務所、拘置所及び少年院を退所したもの)に対し、退所後直ちに福祉サービス等につなげ、地域生活に定着をはかるため、各都道府県の「地域生活定着支援センター」と保護観察所が協働して進めるものである。 2は、知らないと自信を持って判断できないであろう。ただ、内容そのものは十分ありうることなので、自信がなければ△にして次に進む。事実、要綱には社会福祉士や精神保健福祉士等がその選考対象に明記されている。〇である。 3は、×である。自立相談支援事業は、生活困窮者からの相談に早期かつ包括的に対応するものであり、その根拠は生活困窮者自立支援法である。 4は、×である。地域生活支援事業とは、障害のある人が、自立した日常生活または社会生活を営む ことができるよう、区が地域の特性や利用者の状況に応じて、柔軟に実施する事業である。 5は、×である。中核事業として「総合相談支援事業」を行うのは地域包括支援センターである。

【正解2】

  問題94 19世紀末から20世紀初頭のセツルメント活動に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1  バーネット(Barnett,S.)が創設したトインビーホールは,イギリスにおけるセツルメント活動の拠点となった。 2 コイト(Coit,S.)が創設したハル・ハウスは,アメリカにおけるセツルメント活動に大きな影響を及ぼした。 3 石井十次が創設した東京神田のキングスレー館は,日本におけるセツルメント活動の萌芽となった。 4 アダムス(Addams,J.)が創設したネイバーフッド・ギルドは,アメリカにおける最初のセツルメントであった。 5 片山潜が創設した岡山孤児院は,日本におけるセツルメント活動に大きな影響を及ぼした。   知識がないと解けない典型的な問題である。ただし、いずれも著名な人物であり過去問に出ている上に、交差法で消去できる可能性が高い。 このタイプの問題としては易しい部類に属する。正解したい問題である。   1は、〇である。基本中の基本事項である。 2は、×である。コイトが創設したのは、ネイバーフッド・ギルドである。 3は、×である。石井十次が創設したのは、岡山孤児院である。 4は、×である。アダムス(Addams,J.)が創設したのは、ハル・ハウスである(※「アダムス‐シカゴ‐ハル・ハウス」と何回か唱えて覚える)。 5は、×である。片山潜が創設したのは、キングスレー館である。

【正解1】

  問題95 事例を読んで,Z母子生活支援施設のL母子支援員(社会福祉士)の対応として,適切なものを2つ選びなさい。 〔事例〕 Mさん(28歳)は夫のD Vに耐え切れず,近所の人に勧められて福祉事務所に相談し,Aちゃん(7歳,女児)を連れてZ母子生活支援施設に入所した。Mさんには軽度の知的障害があり,療育手帳を所持している。入所後1か月が経過したが,Mさんは自室に閉じ籠もっていることが多い。また,他の入所者の部屋の音のことでトラブルとなったこともある。Aちゃんは精神的に不安定で学校を休みがちである。ある日,Mさんは,「ここに居ても落ち着かないので,Aちゃんを連れて施設を出たい」とL母子支援員に訴えてきた。 1 Mさんの気持ちを受け止めた上で,これからの生活に対する希望を聴く。 2 母子分離を図るため,Aちゃんを児童相談所へ送致する。 3 Mさんには退所に関する意思決定は困難であると判断する。 4 退所の申出の背景にある施設での生活環境を探る。 5 すぐに福祉事務所に退所についての判断を仰ぐ。   このような問題を通して、社会福祉士としての適切な対応とはどのようなものなのかを学んでほしい。   1は、〇である。肢にある通り、共感した上で、Mのこれからの生活に対する希望を聞くことは適切であろう。 2は、×である。この段階では母子分離を図る積極的理由が見当たらない。 3は、×である。Mには軽度の知的障害があるが、そのことかただちに「意思決定は困難であると判断する」のは不適切である。ましてやLは社会福祉士なのだから、このような軽率は判断をすべきではない。 4は、〇である。肢にある通り、Mの言動の背景を探ることはLの対応として適切なものといえる。 5は、×ぽい。福祉事務所に相談することはあってもよいが、MはDVのためにZ母子生活支援施設に入所したという経緯がある。Lはその施設の母子支援員(社会福祉士)という専門職なのだから、「すぐに福祉事務所に退所についての判断を仰ぐ」のは適切とはいえない。

【正解1,4】

  問題96 相談援助に関わる職種の根拠法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1 民生委員は,社会福祉法に規定されている。 2 介護支援専門員は,老人福祉法に規定されている。 3 児童福祉司は,児童福祉法に規定されている。 4 社会福祉主事は,生活保護法に規定されている。 5 身体障害者福祉司は,「障害者総合支援法」に規定されている。 (注)「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。   このタイプの問題は、福祉行財政で出題されることが多い。新カリキュラムになった後も、本問のように関連する科目で今後も出題されるであろう。 試験場で似た問題を解いたような気がすると感じた人は鋭い。問45に児童福祉司が登場している。   1は、×である。根拠法は民生委員法である。 2は、×である。根拠法は介護保険法である。 3は、〇である(児童福祉法13-15条)。 4は、×である。根拠法は社会福祉法である。 5は、×である。根拠法は身体障害者福祉法である。

【正解3】

 
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス 「司」の起源は、日本古代の律令制において、主に省のもとに置かれた官司の等級にある。現代にもその言葉使いの名残があるのだから、考えてみると凄いことである。
  問題97 事例を読んで,多職種連携の観点から,この時点でのT市の地域包括支援センターのB社会福祉士の対応として,適切なものを2つ選びなさい。 〔事例〕 担当地区の民生委員のCさんより,一人暮らしのDさん(80歳,男性)のことでT市の地域包括支援センターに相談の電話があった。Dさんは3か月ほど前に妻を亡くした後,閉じ籠りがちとなり,十分な食事をとっていないようである。Dさんはこれまで要支援•要介護認定は受けていない。B社会福祉士がDさんの下を訪ねたところ,Dさんは受け答えはしっかりしていたが,体力が落ち,フレイルの状態に見受けられた。 1 法定後見制度の利用を検討するため,弁護士に助言を求める。 2 サロン活動の利用を検討するため,社会福祉協議会の福祉活動専門員に助言を求める。 3 日常生活自立支援事業の利用を検討するため,介護支援専門員に助言を求める。 4 介護老人福祉施設への入所を検討するため,医師に助言を求める。 5 栄養指導と配食サービスの利用を検討するため,管理栄養士に助言を求める。   適切なものを「2つ」選ぶという条件を忘れないように注意しよう。   1は、×である。Dの「受け答えはしっかりしていた」とあり、判断能力に問題があることをうかがわせる記述はない。 2は、即答できない。他の肢との関係性を確認する必要があるので、△にして次に進む。 3は、×である。肢1と同様に、判断能力に問題があることをうかがわせる記述はない為、日常生活自立支援事業の利用は、適当ではない。 4は、×である。「体力が落ち,フレイルの状態に見受けられた」とあるものの、この段階で介護老人福祉施設への入所が必要とされる要介護度(原則3以上)があるとは考え難い。また、Dの意向も聞かずに、施設入所を検討することにも問題がある。 5は、特に問題のない記述である。 ※以上から、一読しただけでは肢2の判断がつきにくいものの、答えを2つ選ぶという問題なので、肢2と肢5を〇と判断できるであろう。

【正解2,5】

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