14.発達と老化の理解(R元年-第32回)
問題 69 Aちゃん( 1 歳 3か月)は,父親に抱かれて散歩中である。前方から父親の友人がやってきて,父親がにこやかに友人と話をしていると,Aちゃんは父親にしがみつき,父親の顔と父親の友人の顔を交互に見ている。しばらくすると,Aちゃんは緊張が解けた様子で,友人が立ち去るときには少し笑顔を見せた。
Aちゃんの様子を説明する用語として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 3か月微笑
2 社会的参照
3 クーイング
4 自己中心性
5 二項関係
乳幼児に関する事例です。乳幼児に限定されない用語もあります。
1:3か月微笑とは、赤ちゃんが誰にでも微笑みを向ける事が3か月頃から見られるので、そのように言われています。
事例の場合1歳3か月ですので、違います。また、Aちゃんは父親の友人に向けて最初は緊張していたのに、最後は緊張が解けた笑顔となっていますので、状況的にも3か月微笑ではありません。
2:社会的参照とは、周囲の表情や態度、反応を手掛かりにして、意思・行動決定を行うことです。
Aちゃんは父親と友人のやりとりを見て、友人が立ち去る時に笑顔になったことから、社会的参照があったことが分ります。
3:クーイングとは、赤ちゃんが機嫌がよいときに発する「アー」「ウー」「クー」といった声を指します。
4:自己中心性とは、自己を中心に据えた視点から外界に働きかけるという特徴。
5:二項関係とは、情報伝達の発信者と受信者のみが関わる構造の情報伝達です。
問題文ではAちゃんと父親それと父親の友人が出てきます。Aちゃんの最終的な反応から二項関係でないのは明らかです。この用語の意味を知らなかった人は多かったと思います。
【正解2】
問題 70 高齢者の年齢規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律では,高年齢者を 75 歳以上としている。
2 「高齢者虐待防止法」では,高齢者を 65 歳以上としている。
3 高齢者の医療の確保に関する法律では,後期高齢者を 65 歳以上としている。
4 道路交通法では,免許証の更新の特例がある高齢運転者を 60 歳以上としている。
5 老人福祉法では,高齢者を 55 歳以上としている。
(注)「高齢者虐待防止法」とは,「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援
等に関する法律」のことである。
高齢者に関する様々な法令からの出題です。ただ、2と3は多くの人が知っているハズです。消去法ではなく、明らかに知っているものを選択する方法で解きます。
1:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律で高年齢者は55歳以上です。
2:適切な記述です。
3:高齢者の医療の確保に関する法律で後期高齢者は75歳以上です。
4:道路交通法で免許証の更新の特例がある高齢運転者は75歳以上です。認知症の検査などを行います。
5:高齢者の定義というような規定はありませんが、福祉の措置の対象となる者として65歳以上という年齢が挙げられています。
【正解2】
問題 71 加齢に伴う嚥下機能の低下の原因に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 舌骨の位置の上昇
2 咽頭の位置の上昇
3 舌骨上筋の増大
4 喉頭挙上の不足
5 咳嗽反射の増強
簡単に言えば、1~5の選択肢のどの状態になったら飲み込みにくいかです。
ただ、ちょっと分かりにくいですね。
言葉から考えると、筋肉の増大はありえません。反射の増強もありえません。後は、舌骨、咽頭の位置が上昇すると嚥下機能が低下するかどうか考えなければなりません。そもそも上昇するかどうかという問題もあります。食物を飲み込んでからの機能は非常に複雑ですので、詳細は割愛します。
考え方ですが、まずはその現象が加齢に伴って起きるか、且つその現象が起こったことにより、機能が低下するかどうか。このどちらかでも否定されると不適切な選択肢になります。
【正解4】
問題 72 老年期の記憶と注意機能に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 自分の若い頃の記憶では,40 歳代の頃の出来事をよく覚えている。
2 数字の逆唱課題で答えられる数字の個数は,加齢による影響を受けない。
3 複数のことを同時に行う能力は,加齢によって低下する。
4 騒がしい場所での作業効率は,若年者より高齢者が高い。
5 エピソード記憶は,加齢による影響を受けない。
加齢による影響を受けないものというのは考えにくい。あるとしたら、Aに比べてBの方が影響を受けにくいといったものです。
1:40歳代と限定できるわけがありません。
2と5加齢による影響を受けないわけがありません。
3:適切な記述。
4:基本的に高齢者の作業効率は悪くなります。
【正解3】
問題 73 高齢者において,心不全(heart failure)が進行したときに現れる症状に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 安静にすることで速やかに息切れが治まる。
2 運動によって呼吸苦が軽減する。
3 チアノーゼ(cyanosis)が生じる。
4 呼吸苦は,座位より仰臥位(背臥位)の方が軽減する。
5 下肢に限局した浮腫が生じる。
チアノーゼという言葉を知らなくてもあとの選択肢がおかしいと分かるはずです。
1:心不全の人が安静にするだけで速やかに息切れが治まるとは限りません。
2:運動するともっと苦しくなるはずです。
4:座位の方が楽です。
5:下肢に限られているわけではありません。
【正解3】
問題 74 Bさん(82 歳,男性)は脳卒中(stroke)による右片麻痺がある。ほとんどベッド上の生活で,排泄もおむつを使用している。一週間前から咳と鼻汁があり,37.2℃の微熱で,元気がなく,いつもよりも動きが少なかった。食欲も低下して食事を残すようになっていた。今日,おむつの交換をしたときに仙骨部の皮膚が赤くなり一部に水疱ができていた。
Bさんの皮膚の状態とその対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 圧迫によって血流が悪くなったためである。
2 仙骨部にこうしたことが起こるのは,まれである。
3 食事量の低下とは無関係である。
4 体位変換は,できるだけ避ける。
5 おむつの交換は,できるだけ控える。
この問題を落とすと痛い。ほとんどの人が解答できるはず。褥瘡に関する問題と言って良いと思います。
2:仙骨部が一番できやすいですね。
3:食事量と関係あります。特にたんぱく質の摂取と関係あります。
4、5は圧迫部分の変更や湿潤を回避するために必要です。
【正解1】
問題 75 次のうち,高齢者の栄養状態を良好に維持するための対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 歯科健康診査を受ける。
2 複数の薬剤を併用する。
3 外出を控える。
4 一人で食事をする。
5 たんぱく質を制限する。
この問題も落とすと痛い。ほとんどの人が解答できると思います。直接的なものと間接的なものがあります。
間接的1、2、3、4 / 直接的5
1:適切な記述。
2:服薬量が多いと食欲もなくなるのではないでしょうか。
3:運動した方が食欲は出てきます。
4:一人の食事は食欲が出ないものです。
5:たんぱく質を制限したら、栄養状態は悪くなります。
【正解1】
問題 76 糖尿病(diabetes mellitus)のある高齢者(要介護1)が転倒して,骨折(fracture)した。入院治療後に再び自宅療養を続けるための専門職の役割として,正しいものを1つ選びなさい。
1 看護師は,糖尿病(diabetes mellitus)の薬の処方箋を交付する。
2 理学療法士は,糖尿病(diabetes mellitus)の食事メニューを考える。
3 管理栄養士は,自宅で料理ができるような作業訓練をする。
4 訪問介護員(ホームヘルパー)は,居宅サービス計画を立案する。
5 介護支援専門員(ケアマネジャー)は,訪問リハビリテーションの利用を提案する。
専門職の領域に関する常識問題です。
1:処方箋の交付は医師が行います。
2:食事メニューを考えるのは栄養士です。
3:料理という言葉に惑わされないで。作業訓練をするのは、作業療法士です。
4:居宅サービス計画を立案するのは介護支援専門員です。
5:適切な記述。
【正解5】
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