問題70 医療保険制度における保険者とその被保険者に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 健康保険の保険者には,全国健康保険協会が含まれる。
2 船員保険の保険者は,健康保険組合である。
3 日雇特例被保険者の保険の保険者は,国民健康保険組合である。
4 国民健康保険の被保険者には,国家公務員共済組合の組合員が含まれる。
5 後期高齢者医療制度の被保険者は,75歳以上の者に限られる。
積極法で正解を選びたい問題である。
1は、〇である。
2は、×である。船員保険の保険者は、全国健康保険協会である。
3は、×である。日雇特例被保険者の保険の保険者は、全国健康保険協会である。
4は、×である。これは×だとわかりやすいのではないだろうか。
5は、×である。65歳以上で一定の条件を満たす者も含まれる。
【正解1】
問題71 公的医療保険の保険給付に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 医療保険の保険給付は,現物給付に限られる。
2 高額療養費の給付は,国民健康保険を除く公的医療保険で受けられる。
3 療養の給付は,保険医の保険診療を受けた場合に受けられる。
4 出産手当金は,女子被保険者及び女子被扶養者が出産した場合に支給される。
5 入院時生活療養費は,特別の病室に入院した場合に限り支給される。
何か例外があるのではないかと勘ぐってしまう問題である。消去法によるアプローチも併用して解く。
正しい内容を正面から問われるとかえって戸惑うことがある。
1は、×である。現金給付に傷病手当金がある
(※過去問で何回も出ている)。
2は、×である。国民健康保険にも高額療養費の給付はある。仮に知らなかったとしても、×であることは判断できて欲しい。
3は、〇であるが、知らなければ△にして次に進む。
4は、×である。出産手当金は女子被保険者にしか支給されない。出産手当金とは、出産のために会社を休み、給与の支払いが受けられなかった場合に健康保険から支給される手当金である。※出産育児一時金との混同を狙った可能性が考えられる。
5は、×である。入院時生活療養費は、特別の病室に入院した場合の費用については支給されない。
【正解3】
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス
入院時生活療養費は、介護保険との均衡の観点から、医療療養病床に入院する65歳以上の者の生活療養(食事療養並びに温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養をいう)に要した費用について、保険給付として支給されることになったものである。
問題72 日本のがん対策に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 都道府県は,がん対策基本法に基づき,がん対策推進基本計画を策定することが義務づけられている。
2 地域がん診療連携拠点病院では,患者や家族に対して,必要に応じて,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を含めた意思決定支援を提供できる体制の整備が行われている。
3 がん診療連携拠点病院では,相談支援を行う部門としてがん相談支援センターが設置されている。
4 地域がん診療連携拠点病院では,社会福祉士がキャンサーボードと呼ばれるカンファレンスを開催することが義務づけられている。
5 都道府県は,健康増進法に基づき,がん検診を実施することが義務づけられている。
がん対策については、2006年(平成18年)に成立した「がん対策基本法」と同法に基づいて推進されている「がん対策推進基本計画」を押さえておこう。
現行の「がん対策推進基本計画」は、第3期計画である。
1は、×である。がん対策推進基本計画を策定することが義務づけられているのは政府(国)である。
2は、〇である。知らなかったとしても、内容的に特に問題ないと感じるであろう。
3は、〇である。内容そのものに大きな問題はない。知らなければ、△として先に進もう。4は、×である。「キャンサーボードと呼ばれるカンファレンスを開催することが義務づけられている」ことはよいとしても、「社会福祉士が」行うことまでは義務付けられていない。5は、×である。主体は市町村である。また、がん検診の実施は推進されている。
【正解2,3】
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼
厚生労働省は、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(健発第0331058号 平成20年3月31日厚生労働省健康局長通知 平成28年2月4日一部改正)を定め、市町村による科学的根拠に基づくがん検診を推進している。
キャンサーボード
手術、放射線療法及び化学療法に携わる専門的な知識及び技能を有する医師や、その他の専門医師及び医療スタッフ等が参集し、がん患者の症状、状態及び治療方針等を意見交換・共有・検討・確認等するためのカンファレンスのことをいう。
※カンファレンスが、患者の治療方針を決めるための会議であることに対し、キャンサーボードは、患者を取巻くもっと大きな規模で意見交換や情報共有をする意味合いを含んでいる。cancer=がん、board=委員会
問題73 医療法等による地域医療構想に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 構想区域の設定については,三次医療圏を原則とする。
2 病床の必要量の推計については,慢性期病床は推計の対象外とされている。
3 医療需要の推計については,在宅医療は推計の対象外とされている。
4 都道府県は,構想区域等ごとに,診療に関する学識経験者の団体等(関係者)との協議の場を設けなければならない。
5 地域医療構想では,地域における病床の機能分化と連携の推進が目指される。
医療圏については過去問でも出ている。
1は、×である。地域医療構想の構想区域を設定する場合、三次医療圏では大きすぎる。なお、問題文をよく読まないと〇にしてしまう可能性がある。
2は、×である。慢性期病床を推計の対象から外す積極的な理由は考えづらい。
3は、×である。在宅医療を推計の対象から外す積極的な理由は考えづらい。
4は、〇である。このような協議の場を設けることを義務付けた方がより適切な議論もできそうである。
5は、〇である。まさに書かれているとおりであろう。
【正解4,5】
問題74 日本における医師の資格,業務及び偏在に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 医師が正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らす行為は,刑法により罰せられる。
2 医師は診察治療の求めがあった場合には,事由のいかんにかかわらず,拒むことはできない。
3 医療施設に従事する医師の人口10万対の数を地域別にみると,東北地方に比べて近畿地方が少ない傾向にある。
4 医師の養成機関に対する指定権者は,厚生労働大臣である。
5 医療施設に従事する医師数を施設種別にみると,診療所に従事する医師が最も多い。
少し、珍しいパターンの出題だと感じる。医師の業務について深堀りするより、本問の各肢を知識としてインプットしておこう。
ワン ステップUP‼の記載事項は、しっかり学習しておきたい。
1は、知らないと判断に迷うであろう。△にして次に進む。
2は、×である。例えば、患者が多すぎて診察ができないような場合や専門科の医師が不在の場合等、正当な理由があれば拒むことができる。
3は、×である。事実を知らなくても、常識的に考えて東北地方<近畿地方と考えられる。
4は、知らないと判断に迷う。医師の養成機関は大学の医学部である。その管轄は文部科学省なので、指定権者は文部科学大臣である。
5は、知らないと判断に迷う。施設自体の数は診療所の方が病院よりも多いことは想像できるが、従事する医師の数はどうだろうか。結論からいうと病院に従事する医師の数の方が多いので、×である。
【正解1】
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼
刑法134条1項(秘密漏示罪)
「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」と規定している。
なお、社会福祉士は、刑法によって処罰されないが、秘密を保持する義務に違反した場合には、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処せられる(社会福祉士及び介護福祉士法46条、50条)。
問題75 訪問看護ステーションの指定要件等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 栄養士を配置していること。
2 特定行為研修を修了した看護師を配置していること。
3 管理者は医師であること。
4 機能強化型訪問看護ステーションでは,利用者や家族からの連絡及び相談を24時間受ける体制を整備していること。
5 訪問看護の対象は65歳以上の高齢者とすること。
指定要件に関する出題は、過去問実績があるので、基本事項は押さえておこう。
直感で正解できた人も多かったと思われる。
1は、×である。訪問看護ステーションの指定要件に、栄養士を必ず置かないといけない理由が見出し難い。
2は、判断に迷うが、特定行為研修は、特別な医療処置についてのものと思われるので、訪問看護ステーションの指定要件として求めることまでは必要ないように感じられる。△にして次に進む。
3は、×である。訪問看護ステーションの主役は看護師である。管理者が医師なら、診療所にすればいいのではないだろうか。
4は、〇である。24時間の連絡相談体制の整備を求めることは、機能強化型訪問看護ステーションという名称にも合致している。
5は、×である。対象を65歳以上の高齢者とする理由が見出し難い。仮に介護保険との整合性を考えるにしても、第2号被保険者を除く理由がない。
【正解4】
問題76 事例を読んで,X病院のB医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)のCさんへの対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Cさん(43歳,男性)は,正社員として勤務する工場での仕事中に鋼板の落下によって頭部外傷を負った。救急病院で1か月の入院後,リハビリテーションの目的でX病院へ転院し3週間が経過した。下肢の片麻痺と高次脳機能障害があり,歩行のために下肢装具を製作した。CさんはB医療ソーシャルワーカーの下を訪れ,「労働災害として認められたが,今後の経済的なことがとても心配である。復職を含めたこれからの生活について相談したい」と話した。B医療ソーシャルワーカー はCさんの不安な気持ちに共感しながら具体的な情報を提供した。
1 Cさん宅へ職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣し,復職に向けた訓練ができることを説明する。
2 入院期間中は傷病手当金が支給されることを説明する。
3 装具購入費は,労働者災害補償保険法に基づいて勤務先の工場へ請求できることを説明する。
4 退院後の生活に備えて,介護保険の要介護認定の申請について説明する。
5 休業4日目以降の休業期間中は,休業補償給付に加えて休業特別支給金が受けられることを説明する。
事例問題だが、選択肢の適否を判断するには(他の科目でも扱う)基本的知識があることが前提になっている。
医療保険、労災保険、介護保険の知識を踏まえて、援助者の対応を考えさせる良い問題だと思う。
1は、×である。Cは事故から1か月と3週間が経過した段階で、リハビリのために入院したX病院のB医療ソーシャルワーカーに「労働災害として認められたが,今後の経済的なことがとても心配である。復職を含めたこれからの生活について相談したい」と話している。この段階でのアドバイスとしては、適切とはいえない。
2は、×である。Cの受傷は「労働災害として認められた」のであるから、健康保険の傷病手当金が支給されることない。これは
社会保障で
よく出題される知識である。
3は、迷うかもしれないが、装具購入費は,労働者災害補償保険から支給されるのであり、勤務先の工場へ請求できるのではない。もし自信が持てなければ△にして次に進む。
4は、×である。Cは43歳であり、本問の事情のもとでは要介護度はつかない(※特定疾病により要介護状態となったのではない)。この知識は
高齢者に対する支援と介護保険制度、社会保障で
出題される。
5は、〇である。労災の給付として正しい内容であるし、「今後の経済的なことがとても心配である」というCに伝える内容としては最も適切だ。
【正解5】
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス
本問は、肢3か肢5かで迷った人が多かったのではないだろうか。
この様な場合、Cが心配している内容に対してより的確な対応となっているほうを選べばよい。
Cは、補装具の費用以上に、当面の生活に要する費用の方が心配なのが普通であろう。