問題 103 事例を読んで、A医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)によるBさんへの説明に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
C県で暮らすBさん(56歳、会社員)は、1年前より箸が持ちにくい、重いもの が持てない等の症状が見られ、1か月前より休職していた。1週間前に自宅の階段から転落し、病院に救急搬送された。大きなケガはなかったものの、両下肢の筋力低下が著しく、歩行が困難となっており、外来の医師より難病の疑いがあるとの説明を受け、D神経内科医師を紹介され受診した。その結果,筋縮性側索硬化症(ALS)との診断結果を受けた。今後の療養生活の支援が必要と考えたAは、Bさんへ次のような説明を行った。
1 「難病の治療費については、育成医療が適用されます」
2 「「難病法」による医療費の自己負担は徴収されません」
3 「「難病法」により、医療費は公費優先となります」
4 「一定の条件の下で、「障害者総合支援法」による障害福祉サービスの対象となります」
5 「県内の難病相談支援センターのピアサポーターによる支援があります」
(注)1「難病法」とは、「難病の患者に対する医療等に関する法律」のことである。
2「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援 するための法律」のことである。
1は×である。
育成医療は、身体に障害のある児童に対して適用される自立支援医療制度の一つである。㊱問59参照。
2は×である。
難病法に基づく特定医療費(指定難病)助成制度は、社会保険が優先される医療費助成制度である。㉟問70参照。このことを知っていれば、自己負担が徴収されることは推測できる。ちなみに、特定医療費(指定難病)助成制度における患者負担割合は2割となっていて、所得水準に応じた自己負担限度額が設定されている。
3は×である。
肢2の解説参照。
4は〇である。
受験生であれば、押さえておくべき知識である。㊱問56肢2参照。
5は〇である。
正解4,5
問題 104 事例を読んで、受診した病院のA医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)による、この段階でのBさんへの説明として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Bさん(43歳、正社員)は、健康保険の被保険者であり、勤務する会社の倉庫での機械の入出庫や運搬に従事している。昨日、勤務中に会社の倉庫内でうっかり商品の機械を自分の足の上に落としてしまった。病院を受診した結果、左足の指2本を骨折と診断された。
1 高額療養費制度の説明
2 傷病手当金の説明
3 療養補償給付の説明
4 医療保険と労働者災害補償保険の違いの説明
5 公費負担医療制度の説明
1は×である。
高額療養費制度は、医療保険が適用された場合に問題となるものである。本問の事例は、労災保険が適用されることを念頭に置いている。
2は×である。
傷病手当金は健康保険(医療保険)の制度である。労災保険が適用されることを念頭に置いている本問の事例では、不適切である。
3は〇である。
Aの骨折(けが)は、業務上の負傷にあたるので、労災保険が適用される。その結果、治療費は、労災保険から療養補償給付として支給される。
4は〇である。
Aの骨折についての治療費や骨折に程度によっては休業せざるを得ない場合について、治療費や休業中の所得保障が、医療保険または労災保険のいずれから支給されるのかが、本問では問題となっている。よって、AがBに両制度の違いについて説明することは適切である。
5は×である。
公費負担医療制度とは、国や地方自治体が医療費の全額あるいは一部を負担する制度である。Aに公費負担医療制度が適用されるような事情は存在しない。公費負担医療での費用の負担方法には、対象となる医療費の全額を公費で負担する「公費優先」と、医療保険の給付が優先され、一部負担金(自己負担)などを公費で負担する「保険優先」がある。後者の例として、問103の難病法に基づく特定医療費(指定難病)助成制度がある。
正解3,4
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
本問は、頻出問題と言ってもよい医療保険と労災保険の適用関係を聞く問題である。㊱問62、㉞問70参照。
問題 105 診療報酬制度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 介護報酬改定の時期と診療報酬改定の時期が重なることはない。
2 混合診療が行われた場合、診療報酬は減額して支払われる。
3 診療報酬上で、社会福祉士の配置や関与が評価されているものがある。
4 DPC制度(DPC/PDPS)とは、診療報酬の出来高算定制度のことである。
5 診療報酬の全体の改定率は、社会保険診療報酬支払基金が決定する。
1は×である。
介護報酬改定は3年毎、診療報酬改定は2年毎なので、最小公倍数である6年毎に、2つの改定の時期が重なる。直近では、2024年がW改定の年だった。㉟問72肢1、㉛問73肢1、㉘問131肢5参照。
2は×である。
日本の医療保険は、混合診療を原則禁止としている。過去問では、保険外併用療養費は何度か出題されているが(㊱問70、㉘問55・問70)、混合診療禁止の原則から理解しておく方が、記憶に残りやすいし、応用も効く。
3は〇である。
平成20(2018)年の診療報酬改定により設けられた退院調整加算を皮切りに、その後の改訂に際に、社会福祉士の配置や関与が評価されるようになってきている。
4は×である。
DPC制度(DPC/PDPS)とは、包括医療費支払い制度のことである。㉛問73肢3、㉘問72肢1参照。
5は×である。
診療報酬の全体の改定率は、厚生労働大臣が決定する。㉛問73肢2参照。
正解3
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
選択肢3以外は、すべて過去問で出題されている。判断に迷うものがあった場合は、選択肢3の記述の内容と文末の「ものがある」を決め手にする。
問題 106 医療倫理の4つの原則に含まれるもののうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 人間の尊厳
2 多様性の尊重
3 必要即応
4 正義
5 自律尊重
1は×である。
人間の尊厳は含まれていない。
2は×である。
医療においても各自の判断(手術や治療を受けるかうけないか)は尊重されるべきだが、多様性の尊重はおかしいのではないかと判断して欲しい。
3は×である。
必要即応は日本の生活保護の原則の一つである。内容からしても、医療倫理にはそぐわないと判断して欲しい。
4は〇である。
正義は、アメリカで好まれる言葉である(※ロールズ,Jの『正義の原理』とか)。
5は〇である。
2の解説部分参照
正解4,5
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
本問は、知識がないと解くのは難しいであろう。医療倫理の4つの原則とは、自律性の尊重(Respect for Autonomy)、無危害(Non-Maleficence)、善行(Beneficence)、正義(Justice)のことである(異なる訳もある)。
米国のビーチャムとチルドレスが1979年に『生命医学の諸原理』で提唱したものである。今回が初めての出題であるが、新しい出題基準には、しっかりと掲載されていた(㊲問10、問18のレジリエンスも参照)。
問題 107 「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(2024年(令和6年)3月改訂版)」(厚生労働省)に沿った治療と仕事の両立支援に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 ガイドラインでは、短期で治癒する疾病を対象としている。
2 支援は、事業者からの申し出により開始される。
3 医療機関の裁量で、労働者の疾病の情報を事業者へ提供することができる。
4 職場復帰支援プランは、医療ソーシャルワーカーが単独で策定する。
5 主治医等が就労継続困難と判断した場合、事業者は就業禁止の措置を取る必要がある。
1は×である。
短期で治癒する疾病であれば、治療と仕事の両立支援そのものが問題になりにくいからである。
2は×である。
まずもって、労働者からの申し出があれば開始されるべきだといえ、本肢は誤りと推測できる。
3は×である。
労働者の疾病の情報は高度にプライベートな内容であり、「医療機関の裁量で」事業者に提供できるという結論には違和感がある。
4は×である。
職場復帰にあたっては、病状、復帰後の職務内容など、考慮すべき内容が多いと思われるので、医療ソーシャルワーカーが単独で策定するという結論には違和感がある。
5は〇である。
主治医等が就労継続困難と判断した場合、まずは労働者の健康を最優先するという価値判断は尊重されてよい。選択肢の内容は、正しいと推測できる。
正解5
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
ガイドラインの内容について知らなかったとしても、その場で考えて解くことができる問題である。
問題 108 事例を読んで、「医療ソーシャルワーカー業務指針」に基づいた、A医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)の実践に関する次の記述のうち、最も適切なもの を1つ選びなさい。
〔事例〕
Bさん(38歳,正社員)は、会社のラグビー同好会の練習で受傷し、病院に救急搬送され入院となった。主治医からBさんに、今後車いす生活となること、回復期リハビリテーション病棟へ転院する必要があることが説明された。しかし、経済的不安を抱えたBさんは自宅退院を訴えている。主治医から依頼を受けたAはBさんとインテーク面接を実施することとなった。
1 まずは面接をリハビリ室で行う。
2 守秘義務の観点から面接内容については主治医に報告しない。
3 転院先の選定については、Aが判断する。
4 入院費、生活費などの問題解決について話し合う。
5 自宅への退院支援を行う。
(注)「医療ソーシャルワーカー業務指針」とは、「医療ソーシャルワーカー業務指針(2002年(平成14年))」(厚生労働省健康局長通知)のことである。
1は×である。
Bにとって受傷後の生活は深刻なものとなることが予想される。面接は、リハビリ室ではなく、プライバシーに配慮した空間で行われるべきである。
2は×である。
守秘義務は重要であるが、面接内容は、Bの病状を踏まえて転院などの方針を考えなければならない主治医にとって重要なものである。面接内容については主治医に報告しないのは適切とはいえない。
3は×である。
転院先の選定は、A自身の考えや、Bの状態の回復について責任を負う主治医の判断を抜きには考えられない。転院先をAが判断することは適切とはいえない。業務指針の三(5)受診・受療援助と医師の指示を参照のこと。
4は〇である。
Bは、経済的不安を理由に、主治医が転院の必要性を訴えているにも関わらず、自宅退院を訴えている。Bは今後車いす生活になることから、回復期リハビリテーション病棟への転院は、長い目で見た場合、Bにとってプラスに働くものといえる。それにも関わらず、Bは経済的不安を理由にそれを拒んでいることから、Aが、入院費、生活費などの問題解決についてBと話し合うことは適切である。
5は×である。
Bは自宅退院を訴えているが、それは長い目で見た今後の生活のことよりも、経済的不安によるところが大きい。そうだとすれば、肢5よりも肢4の方が適切だといえる。
正解4
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
「医療ソーシャルワーカー業務指針」の内容を知らなかったとしても、その場で考えて解くことができる。明らかにおかしな内容のものを消去して、検討すべき選択肢を絞ったら、事例の内容から、より適切なものを吟味する。
「医療ソーシャルワーカー業務指針」が登場したのは、㉙問75以来であるが、業務指針に盛り込まれた価値や理念は、参考者や他の事例問題にも表れていると言って良い。業務指針の内容を覚えていなくても、自分を信じて解いて欲しい。

