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第21回 精神保健福祉の理論と相談援助の展開

問題 36 次のうち,障害者福祉に関する法律の内容として,正しいものを 1 つ選びなさい。 1 障害者の雇用の促進等に関する法律では,事業主に精神障害者雇用を義務づけている。 2 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律では,知的障害者福祉施策も包含している。 3 「障害者総合支援法」では,対象としている障害者は 18 歳以上の者である。 4 「障害者虐待防止法」では,社会的障壁による権利侵害の防止を目的としている。 5 「障害者差別解消法」では,民間企業に社会的障壁の除去の実施についての合理的配慮を義務づけている。 (注)1  「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。 2  「障害者虐待防止法」とは,「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。 3  「障害者差別解消法」とは,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。

この問題の解説

1は、同法は事業主に精神障害者雇用を義務づけていないので✕。ただし、雇用した場合には法定雇用率には算定されることにも注意。 2であるが、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の精神障害者の定義には知的障害者が含まれるものの、精神障害者保健福祉手帳の交付対象には知的障害者は含まれていない。このことからもわかるように、同法は知的障害者福祉施策も包含しているものとはいえない。知的障害者施策を包含しているのは、知的障害者福祉法と障害者総合支援法である。2は×である(なお、18歳未満の障害がある者についても確認しておくこと)。 3の障害者総合支援法が対象としている障害者は18歳以上の者なので本肢が○となる。 4の社会的障壁による権利侵害の防止を目的としているのは障害者基本法、それを具現化したのが障害者差別解消法となる。4は×である。 5の社会的障壁の除去の実施についての民間企業の合理的配慮は努力義務なので×である(なお、行政機関についても努力義務である)。
【正解3】
【補足】各肢の知識は、今後も出題される可能性が高いものばかりである。自信がないものについては、この機会に押さえておいて欲しい。この年の精神保健福祉相談援助の基盤の問題21と同様に、出だしにこうした問題が置かれていた場合、できないと後に引きずる危険がある。できなくても1問に過ぎないと割り切って、頭を切り替えることが大切である。
問題 37 次の記述のうち,精神科病院の退院後生活環境相談員(精神保健福祉士)の業務として,適切なものを 2 つ選びなさい。 1 本人が退院を希望してから,ピアサポーターと交流できる機会を設ける。 2 退院に向けた意欲の喚起や相談支援を行う。 3 退院日が決まった段階で,地域援助事業者に支援を依頼する。 4 地域相談支援の利用に当たり,地域移行支援計画を作成する。 5 地域生活のための,クライシスプランを検討する。 精神科病院の退院後生活環境相談員(精神保健福祉士)の業務をきちんと覚えていなくてもすぐに諦めてはいけない。何となくはイメージできるので、それに即して考えて解く。

この問題の解説

1は、退院を希望しなくても、ピアサポーターとの交流はあってもよいので、×ぽい。2は、当然よさそうな内容で○ぽい。3は、退院日が決まる前であっても地域支援事業者に支援を依頼してもよさそうである。×ぽい。4は知識がないと判断しづらいであろう。ただ、地域相談支援は(その名称から考えて)少なくとも精神科病院の退院後生活環境相談員の業務ではなさそうな気がする。そうだとすれば、地域移行支援計画を作成するのも別の職種であろうと推測できる。4は×ぽい。5のクライシスプランが、危機的状況に陥ったときの計画であろうという程度の意味は推測できた人が多かったと思われる。それがわかれば、これが○だろうと推測できる。 クライシスプランとは、退院後に起こりうる問題への対処法を意味する。 【正解2,5】
【補足】「クライシス=危機」がわからないと5を選びづらいかもしれない。その場合、4と5のいずれを選ぶかで迷うであろう。その場合でも、4の地域相談支援は一般相談支援事業者が行うこと(障害者総合支援法)を知っていれば、4を×にして、5を○と判断することができる。
問題 38 次のうち,「平成 26 年患者調査」(厚生労働省)において,平成 11 年の同調査と比較して,その推計患者数が減少しているものとして,正しいものを 1 つ選びなさい。 1 精神病床の入院患者 2 うつ病の入院患者 3 統合失調症の外来患者 4 アルコール依存症の外来患者 5 精神疾患の総患者

この問題の解説

本問で問われているのは、平成26年と平成11年の時点を比較し、その間における長期的な推計患者数が減少したのは何かである。すなわち精神保健福祉の大きな流れが問われているのである。だとすれば、入院患者そのものを減少させようという精神保健の流れから考えて、1の精神病床の入院患者が減少していると考えるのが素直であろう。 【正解1】
【補足】この問題は、平成31年2月に出題されたものである。「平成 26 年患者調査」(厚生労働省)をきちんと見ていた人はどの位いたのであろうか。なお、こうした大きな福祉政策のトレンドから推論して解かせる統計の問題は多い。知らないからといってすぐに諦めずに、大きな流れから推論して解くことを勧める。
問題 39 次の記述のうち,ソーシャルワークにおける権利擁護の中の代弁機能に当たるものとして,正しいものを 1 つ選びなさい。 1 風呂に入っておらず衛生の保持ができていない子どもがいたため,保護者面談で状況を把握した。 2 購入した商品の不満をうまく伝えられない通院患者から依頼を受けて,消費生活センターに同行した。 3 精神科の入院患者に対し,精神医療審査会の役割と利用の仕方について学習会を開催した。 4 被災者に対する医療費減免に関する制度の存続を求めて,関係自治体に対し話合いを求めた。 5 金銭管理に困難のある精神障害者の家族に対し,日常生活自立支援事業とその窓口を伝えた。

この問題の解説

問われているのは、ソーシャルワークにおける権利擁護の中の代弁機能(アドボカシー)である。 1は代弁していないので×。2は商品の不満をうまく伝えられない患者の依頼を受けて、消費生活センターに行き代わって説明しようとしているのだろうから、権利擁護のための代弁機能を果たすものといえる。○ぽい。3の学習会の開催は代弁機能とはいえない。4は権利擁護のための活動だが、制度の存続を求めて関係自治体に対し話合いを求めた行為はソーシャルアクションといえる。×ぽい。5は単なる情報提供であり、代弁機能とはいえないので×。迷うとしたら2か4のいずれにするかであろう。その場合、比較してどちらがより○(あるいは×)ぽいかで判断するしかない。 【正解2】
【補足】この問題を見てデジャブ!と思った人は鋭い。この年の問題28と似ているからである。
ただし、本問は、アドボカシーの機能として、(1)発見、(2)調整、(3)介入、(4)対決、(5)変革の5つがあることを知らなくても解ける。
問題 40 次の記述のうち,精神科リハビリテーションにおけるチームアプローチで各構成員に求められるものとして,正しいものを 1 つ選びなさい。 1 それぞれの視点でモニタリングを行い,その結果を共有する。 2 意見が対立した場合は,外部の専門家に決定を委ねる。 3 インフォーマルな関係形成を控える。 4 緊急事態が起きたときも,意見の一致を優先する。 5 それぞれがチームの目標を設定し,職種の専門性を発揮する。

この問題の解説

雑に解くと間違える可能性がある。肢を絞り込んで確実に得点することが大切である。 1は〇ぽい。2は×、3は×、4は×、5は少し悩むかもしれない。1と5を比較する。ともに「それぞれ」で始まるが、5は「それぞれがチームの目標を設定し」が明らかに×である。 【正解1】 問題 41 次の記述のうち,1994 年にWHO,ILO,UNESCOにより示された合同政策方針における「地域に根差したリハビリテーション(CBR)」の考え方として,正しいものを 1 つ選びなさい。 1 ストレス-脆弱性-対処モデルを基盤とする。 2 合理的配慮が初めて定義された。 3 公的サービスを主軸に置く。 4 総合的な地域開発の戦略の一つである。 5 病気の再発防止を目的とする。

この問題の解説

1994年という時代(比較的新しい)、「地域に根差したリハビリテーション」から考えて、病気の治療や再発防止に焦点を当てた1や5は×だと推測できる。また、2の公的サービスを貫くという記述も1994年にはそぐわない(民間活力の活用が当然のように言われていた時代だからである)。2と4を比較した場合、「地域に根差したリハビリテーション」により整合的なものは、4のほうであろう。 【正解4】 問題 42 次のうち,相談援助のインテーク段階において,相談機関が対応可能かどうかを判断する方法として,適切なものを 1 つ選びなさい。 1 コーディネーション 2 エンゲージメント 3 スクリーニング 4 モニタリング 5 リファーラル

この問題の解説

「インテーク=受理面接」の段階で、「相談機関が対応可能かどうかを判断する方法」として適切なものはどれか。各肢をみていくと受理するかどうかを判断した後に行うものが複数ある。 1のコーディネーション、2のエンゲージメント、5のリファーラル(紹介)などは、いずれもそれにあたる。また、4のモニタリングは、支援後の評価に関するものなので不適切である。3のスクリーニングは選別することを意味するが、これが問題の条件にもっとも合致している。仮に知らなかったとしたら、消去法で正解を導いて欲しい。 【正解3】
【補足】自信がないものがあれば、復習の段階でしっかりと押さえておく。
問題 43 次の記述のうち,相談援助のプランニング段階の説明として,正しいものを 1 つ選びなさい。 1 援助終了後の変化を定期的に確認し,必要に応じて援助を再開する。 2 提供されているサービスの状況を確認しながら,課題達成度を把握する。 3 サービスの提供について,関係者が個々の役割を担い援助する。 4 ニーズを充足するための様々な社会資源を検討し,それらの活用を考える。 5 クライエントのニーズ充足度や効果を客観的に精査する。

この問題の解説

プランニング(支援計画の作成)段階を問う問題である。1は「援助終了後の変化を~」と来た段階で×。2も×。3は実施段階のことであり×。4は適切な内容であり〇。5は実施後の話であり×。 【正解4】
【補足】1はアフターケア、2はモニタリング、3はインターベンション、4はプランニング、5はエバリュエーションに対応している。復習のときは、そうした用語と照らし合わせて確認しておくと、基本的知識が強固なものになる。
問題 44 地域活動支援センターに勤務するG精神保健福祉士は,利用者のHさんから,次のような相談を受けた。Hさんは,「今のマンションに一人暮らしをするようになって半年経ったけれど,昨日,管理人さんから自転車を停める場所が間違っていると注意を受けたんです。停める場所には,いつも注意しているので,絶対に間違っていないと話したのですが,なかなか信じてもらえずに・・・。もう一度確認してもらったら,管理人さんの勘違いだったんです。どうして疑われたのかな・・・。病気だからかな」と,涙ぐみながら話した。G精神保健福祉士は,「半年も住んでいるのに,悔しかったですよね」と返答した。 次のうち,G精神保健福祉士が行った面接の技法として,適切なものを 1 つ選びなさい。 1 要約 2 繰り返し 3 感情の反映 4 言い換え 5 支持

この問題の解説

問題文を良く読む。Hが悔しい思いをしたことを話したのに対し、G精神保健福祉士は、「半年も住んでいるのに,悔しかったですよね」と返答している。選択肢を一読すると、3の感情の反映が適切であることに気づく。 【正解3】 問題 45 次の記述のうち,グループワークの作業期における精神保健福祉士の関わりとして,正しいものを 1 つ選びなさい。 1 メンバーのニーズを把握して計画を立てる。 2 グループ内でのルールをメンバーと決める。 3 個々のメンバーと波長合わせを行う。 4 グループ内に形成されたサブグループを活用する。 5 グループ目標の達成度をメンバーと評価する。

この問題の解説

「グループワークの作業期」とあるが、グループワークは、準備期→開始期→作業期→終結期をいう過程を経るのが一般的である。 1は作業期の内容としては×である。準備期に行うべきものといえる。2は作業期の作業期よりも前の開始期で行っておくべき内容である。×である。3の波長合わせも早い段階(準備期)で行うべきものであり×である。4はよさそうな内容である。5は明らかに終結期のものといえる。 【正解4】 問題 46 P市保健センターのJ精神保健福祉相談員(精神保健福祉士)は,Kさん(38 歳,男性)から妻のことで電話相談を受けた。Kさんの妻は双極性障害で,精神科に通院している。Kさんは単身赴任中で,妻はP市で小学 3 年生の子どもと二人で暮らしている。最近,妻の症状が悪化して,朝起きられず,そのために,子どもは学校を休みがちであるという。そのことで,妻は自分を責めている。Kさんは,妻と子どもが心配で毎日連絡は取っているが,仕事の都合で家に戻ることはできない。「何か利用できるものはありませんか?」と尋ねるKさんに,J精神保健福祉相談員は,Kさんをねぎらった上で,活用できる制度を念頭に置いて,妻宅に訪問することを伝えた。次のうち,J精神保健福祉相談員が考えた,活用できる制度として,適切なものを 1 つ選びなさい。 1 児童発達支援 2 居宅介護 3 自立生活援助 4 短期入所 5 放課後等デイサービス

この問題の解説

事例から考えられる支援としては、Kさん自身の負担を減らす支援と子どもを保護する支援が考えられる。 1の児童発達支援の対象は就学前の児童である。Kさんの子どもは小学校3年生であり、×である。2の居宅介護には、身体介護だけでなく家事援助もある。Kさんの負担を減らすため家事援助を活用することは一つの方法であろう。〇または△として残り肢も検討する。3の自立生活援助は障害者支援施設やグループホームで生活をして障害者が地域で自立した生活を送るための支援である。本問で活用できる制度ではなく、×である。4の短期入所であるが、Kさんは日常生活は行えており、短期入所の利用を考えることは適切ではない。仮にKさんが短期入所を利用できると考えたとしても、子どもはどうなるのかという問題もあり、やはり本問では適切とはいえない。5の放課後等デイサービスは、障害児(厳密には小学校から高等学校までの障害のある就学児)が利用するものであるが、Kさんの子どもに障害があるといった事情は書かれておらず、適切とはいえない。2を選ぶことに絶対的な自信がないときは、他の選択肢との比較から決めてもよい。 【正解2】
【補足】選択肢の各制度について多少なりとも知識を有していることが必要である。相談援助系の知識だけでは解けない問題といえる。
問題 47 L精神保健福祉士は,精神科病院に勤務して 3 年目に,デイケア担当から閉鎖病棟の担当となり,退院後生活環境相談員も兼ねることになった。 1 か月後,L精神保健福祉士は,「病棟での患者の様子を目の当たりにして,デイケアの利用者と違うので,入院患者とどのように接していけばいいのか分からなくなった。自分の専門性に自信がなくなった」と,上司のM精神保健福祉士に相談した。次のうち,この場面でM精神保健福祉士に求められるスーパービジョンの内容として,適切なものを 1 つ選びなさい。 1 この状況に対する戸惑いは当然だと返す。 2 入院患者との面接場面のロールプレイを行う。 3 他職種の専門性を説明する。 4 退院支援委員会の開催場所や会議前に準備することを教える。 5 退院後生活環境相談員と担当看護師,主治医との関係を解説する。

この問題の解説

L精神保健福祉士は、職場内でデイケア担当から閉鎖病棟の担当となり、戸惑いを覚え自信を無くしそうになっている。このような場面で「M精神保健福祉士に求められるスーパービジョン」は、まずもって支持的機能であろう。選択肢をざっとみていくと支持的機能にもっとも近いものは、1である。1を読むと少しぶっきらぼうな印象を受けるが、残りの選択肢に支持的な機能を果たすといえるものは見当たらない。 【正解1】
【補足】論理型の問題ともいえるが、スーパービジョンに、①管理、②教育、③支持、の3つの機能があること、その中でも支持的機能が重要な役割を果たすことを知らないと、どれを選ぶべきか迷うかもしれない。
問題 48 精神保健福祉センターのA精神保健福祉相談員(精神保健福祉士)のところへ,先日,市政だよりを読んでセンターのことを知ったというBさん(60 歳,女性)が訪問してきた。Bさんは,「仕事も辞めて,パチンコばっかりする息子に困っている。嫁と孫にも逃げられ,実家に転がり込んできた。やめろと言っても怒るばっかりだし,無理やりパチンコ代をくれとせがまれるんです。いつまでこの子のことで手を煩わせなければならないのか・・・。つらいです」と話した。次のうち,この場面でA精神保健福祉相談員が紹介したBさん自身が利用できる社会資源の情報として,適切なものを 1 つ選びなさい。 1 婦人保護施設 2 セルフヘルプグループ 3 生活福祉資金貸付制度 4 家庭裁判所 5 一時生活支援事業

この問題の解説

事例をしっかり読んで、想像力も働かせながら、「Bさん自身が利用できる社会資源」を考える必要がある。 1の婦人保護施設は、元は売春をしている女性を保護するための施設で近時はDVのシェルターとしての機能も果たしている。本問のBさんが利用する施設としては適切とはえいない。2のセルフヘルプグループは、Bさんによさそうな社会資源といえる。3であるが、Bさんが特に生活費に困っているという事情はないし、お金を借りることはBにとっても息子にとってもよい結果をもたらすとは考えられない。×ぽい。4の家庭裁判所であるが、何を求めるのかが不明である。現状を法律的に解決できるようなものが存在しないからである。世間ではよく親子の縁を切るとから、子どもを勘当したなどというが、それは事実上のものに過ぎない。5の一時生活支援事業は、生活困窮者自立支援事業のなかの任意事業である。Bさんが経済的に生活に困窮しているという事情は問題文になく、適切とはいえない。 【正解2】
【補足】事例問題ではあるが、選択肢の中の制度についてある程度の知識があった方が説きやすい問題といえる。ただ、本問については、すべての制度を知らなかったとしても、Bさんの抱えている問題の内容から考えて、セルフヘルプグループが適切ではないかと考えられる。積極法で2を選んだ人も多かったのではないだろうか。

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