問題 38 地域福祉の財源に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 市区町村社会福祉協議会の平均財源構成比(2019年(平成31年))をみると、会費・共同募金配分金・寄付金を合計した財源の比率が最も高い。
2 共同募金は、社会福祉を目的とする事業を経営する者以外にも配分できる。
3 社会福祉法人による地域における公益的な取組とは、地元企業に投資し、法人の自主財源を増やしていくことである。
4 個人又は法人が認定特定非営利活動法人に寄付をした場合は、税制上の優遇措置の対象となる。
5 フィランソロピーとは、SNSなどを通じて、自らの活動を不特定多数に発信し寄附金を募る仕組みである。
★★
1は×である。
会費は1.7%、寄付金は1.0%、経常的経費補助金(共同募金分配金を含む)は17.6%であり、3つを合わせても受託金(25.7%)に及ばない。一般には、社協の財源は、会費、寄付金、共同募金の分配金で占められているようなイメージがあるが、実態は異なる。㉖問39肢1参照。
参考資料「社会福祉協議会の組織・事業・活動について」⇒こちらをクリック⇒
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000768521.pdf
2は×である。
共同募金は、社会福祉を目的とする事業を経営する者以外の者に配分してはならない(社会福祉法117条1項)。㉙問42肢4参照。
3は×である。
社会福祉法人は、社会福祉事業及び第26条1項に規定する公益事業を行うに当たっては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない(社会福祉法24条2項)。この規定に基づき、2016年4月から始まったのが、社会福祉法人による地域における公益的な取組みの実施が義務付けられた。
4は〇である。
一般の寄附金に係る損金算入限度額とは別枠で、「特定公益増進法人に対する寄附金」の「損金算入限度額の計算」により計算した特別損金算入限度額の範囲内で損金の額に算入される。㉝問39肢1で出題されている。
5は×である。
フィランソロピーとは、企業や個人による社会貢献活動全般を指す言葉である。語源は、「人間愛」を意味するギリシア語の「フィラントローピア」である。なお、選択肢のような仕組みは、クラウドファンディングと呼ばれるものである。クラウドファンディングは、㉞問123、㉜問39で出題されている。
正解4
類似した問題に㉖問39がある。十分な知識がなければ、問題文をざっとみて、明らかにおかしなものを除いていき、残ったものの中から、良さそうなものを選ぶ。肢4は、社会福祉法人への寄付が税制上優遇されていることを知っていれば、そのアナロジーとして正しいのではないかと推測できる。
問題 39事例を読んで、N市において地域福祉計画の策定を担当しているD職員(社会福祉士)が策定委員会での意見を踏まえて提案したニーズ把握の方法として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
地域福祉計画の改定時期を迎えたN市では、その見直しに向け策定委員会で協議を行った。委員の一人から、「子育て世代に向けた施策や活動が十分ではない」という提起があった。また、これに呼応して、「子育て世代といっても、様々な環境で子育てをしている人がいる」「まずは子育て中の人の生の声を実際に聞いた方がよい」といった意見に賛同が集まった。Dは、こうした声を踏まえて、どのように多様な子育て世代のニーズを把握すれば良いかについて考え、最も有効と思われる方法を策定委員会に提案した。
1 N市の子育て支援課の職員(社会福祉士)を対象とした個別インタビュー
2 子育て中の親のうち、世代や環境等の異なる親たちを対象としたグループインタビュー
3 利用者支援事業の相談記録を対象とした質的な分析
4 特定の小学校に通う子どもの保護者を対象とした座談会
5 保育所を利用している全世帯を対象としたアンケート調査
★★★
1は×である。
「子育て中の人の生の声」ではない。
2は〇である。
「様々な環境で子育てをしている」「子育て中の人の生の声を実際に聞」くものになっている。
3は×である。
「子育て中の人の生の声を実際に聞」くものではない。
4は×である。
対象に制限があり(小学校1年から6年の子どもの保護者であること)、ニーズに偏りが生じる可能性がある。
5は×である。
アンケート調査は、「生の声を聞」くものとはいない。また、対象に制限があり(保育園児を育てている人)、ニーズに偏りが生じる危険がある。
正解2
事例から、策定委員会でのやりとりを踏まえて、多様な子育て世代のニーズを把握するためにDが提案した方法を考えさせる問題である。素直に解けば、自ずと答えが見つかるのではないだろうか。
問題 40 事例を読んで、包括的な支援体制の構築に向けて、社会福祉協議会のE職員(社会福祉士)が行う支援の方針として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
P地区では、Q国の外国人居住者が増加している。Fさんは、Q国の外国人居住者のまとめ役を担っており、Eのところに相談に訪れた。Fさんは、日常会話程度の日本語は話せるが、日本の慣習に不慣れなために、過去に近隣住民とトラブルが生じてしまい、地域で気軽に相談できる日本人がいない。Fさんを含めて、P地区で暮らす外国人の多くが、地域活動にはあまり参加していない状態で、地域から孤立しているようである。Eは、このような外国人居住者の社会的孤立の問題を解決するための対策を検討した。
1 Fさんらを講師として招き、地域で暮らす外国人居住者の暮らしや文化について、近隣住民が学ぶ機会を設ける。
2 日本語が上達できるよう、Fさんに日本語の学習教材を提供する。
3 外国人居住者が主体的に参加できるように、これまでの地域活動のあり方を見直す。
4 近隣住民と再びトラブルが生じることを避けるため、自治会長に外国人居住者に対する生活指導を依頼する。
5 外国人居住者に日本の文化や慣習を遵守させるため、地域のルールを作成する。
★★★
1は〇である。
Fは日常会話程度の日本語は話せるので、Fが地域で暮らす外国人の暮らしや文化について、近隣住民に話すことは、相互交流を促進するきっかけとなりうる。
2は×である。
Fの日本語能力を上げてもらうためとはいえ、日本語の学習教材を提供するだけでは社会的孤立の解消は難しい。㉝問104肢4参照。
3〇である。
Fの社会的孤立の原因の一つに、日本の習慣に不慣れで近隣住民とのトラブルが生じ、気軽に相談できる日本人がいないことがある。他の外国人も地域活動にはあまり参加していない状態であることから、これまでの地域活動のあり方を見直すことは打開策を見つけるきっかけになりうる。
4は×である。
解決策として自治会長に生活指導と一任することは、社会福祉協議会のE職員(社会福祉士)が行う支援の方針としては適切といえない。
5は×である。
多様性を尊重することなく。日本の文化や慣習を遵守させるために域のルールを作成することは適切な支援の方針とはいえない。
正解1,3
日本に滞在する外国人への支援については、過去問でも何回か出題されている。ソーシャルワーカーの倫理綱領、行動指針に照らして考えれば、適切な内容が見つかるはずである。
問題 41 事例を読んで、A市社会福社協議会のG生活支援コーディネーター(社会福祉士)が提案する支援策等として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
A市のUボランティアグループのメンバーから地域の空き家を活用した活動をしたいという相談があった。そこでGが「協議体」の会議で地区の民生委員に相談すると、その地区では外出せずに閉じこもりがちな高齢者が多いということであった。Gはグループのメンバーと相談し、そのような高齢者が自由に話のできる場にすることを目標に、週2回、通いの場を開設した。1年後、メンバーからは「顔馴染みの参加者は多くなったが、地域で孤立した高齢者が来ていない」という声が上がった。
1 地域で孤立していると思われる高齢者が、通いの場になにを望んでいるかについて、地区の民生委員に聞き取り調査への協力を依頼する。
2 通いの場に参加している高齢者に対して、活動の満足度を調査する。
3 孤立した高齢者のための通いの場にするためにはなにが必要かについて「協議体」で議論する。
4 孤立した高齢者が参加するという目標を、現在の活動に合ったものに見直す。
5 孤立している高齢者向けに健康体操等の体を動かすプログラムを取り入れる。
(注) ここでいう「協議体とは、介護保険制度の生活支援・介護予防サービスの体制整備に向けて、市町村が資源開発を推進するために設置するものである。
★★
1は〇である。
通いの場を設けても、地域で孤立した高齢者がそこに来ない場合、その理由を探ることは、必要な支援を考える上で重要である。
2は×である。
通いの場に参加している高齢者の満足度を調査しても、活動に来ない地域で孤立した高齢者への支援にはつながりにくい。
3は〇である。
4は×である。
通いの場を作ったそもそもの理由は、その地区では外出せずに閉じこもりがちな高齢者が多いということもにあった。それにも関わらず、目標を現在の活動に合ったものに修正することは本末転倒である。
5は×である。
孤立している高齢者がなぜ来ないのかを考えることなく、支援者側がプログラムを考えることは適切とはいえない。まずはアセスメントを行うべきである。