問題 22 福祉における政府と民間の役割に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 平行棒理論とは、救済に値する貧民は救貧行政が扱い、救済に値しない貧民は民慈善事業が扱うべきだとする考え方を指す。
2 繰り出し様子理論とは、ナショナルミニマムが保障された社会では、民間慈善事業が不要になるとの考え方を指す。
3 社会市場のもとでは、ニーズと資源との調整は、価格メカニズムにより行われ、そこに政府が関与することはない。
4 準市場のもとでは、サービスの供給に当たり、競争や選択の要素を取り入れつつ、人々の購買力の違いによる不平等を緩和するための施策が講じられることがある。
5 ニュー・パブリック・マネジメント(NPM)とは、福祉サービスの供給に参入した民間企業の経営効率化のために、その経営に行政職員を参画させる取組を指す。
★★
1は×である。
救済に値する貧民は民慈善事業が扱い、救済に値しない貧民は救貧行政が扱うが正しい。㉘問24肢2参照。
2は×である。
ナショナルミニマムを保障したうえで、その上に民間慈善事業を位置づけるものである。㉜問25肢4参照。
3は×である。
価格メカニズムのみでは不十分であり(購買力の差が生じる)、政府の関与が関与する余地がある。
4は〇である。
説明部分の内容と文末の「ことがある」から、本肢が正解となる。介護保険によるサービスの利用をイメージするとよい。㉞問29、㉘問29参照。
5は×である。
NPMは、公的サービスに市場メカニズムや民間企業経営の理念を取り入れ,サービスの効率化・活性化を図ろうとする手法であり、その経営に行政職員を参画させる取組ではない。㉞問29肢5参照。
正解4
少し古い過去問で出題されていたものが多い。各用語の意味がわからないと自信を持って解けないであろうが、積極法で肢4を選ぶことは可能であろう。
問題 23 次のうち、1930年代のアメリカにおけるニューディール政策での取組として、正しいものを1つ選びなさい。
1 社会保障法の制定
2 公民権法の制定
3 メディケア(高齢者等の医療保険)の導入
4 ADA(障害を持つアメリカ人法)の制定
5 TANF (貧困家族一時扶助)の導入
(注) 「障害を持つアメリカ人法」とは、「障害に基づく差別の明確かつ包括的な禁止について定める法律」のことである。
★★
1は○である。
アメリカの社会保障法は、ニューディール政策の後半、1935年に制定された。
2は×である。
公民権法は1964年に制定された。
3は×である。
メディケアは1965年に創設された。
4は×である。
ADA(障害を持つアメリカ人法)の制定は1990年である。
5は×である。
TANF (貧困家族一時扶助)の導入は1996年である。
正解1
ヒントは1930年代という部分である。二次世界大戦後(1945年以後)に成立したと考えられるものを消去していき、正解1を導いた人もいたと思われる。
問題 24 日本の貧困に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 日本の2010年代における「貧困率」は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均を大きく下回っている。
2 「2019年国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)によれば、子どもがいる現役世帯の世帯員の「貧困率」は、「大人が二人以上」の世帯員よりも「大人が一人」の世帯員の方が高い。
3 「2019年国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)によれば、子どもの「貧困率」は10%を下回っている。
4 「平成29年版厚生労働白書」によれば、高齢者の「貧困率」は、子どもの「貧因率」に比べて低い。
5 2018年(平成30年)の時点で、生活保護世帯に属する子どもの大学進学率は60%を超えている。
(注) ここでいう「貧困率」とは、等価可処分所得が中央値の半分に満たない世帯員の割合(相対的貧困率)を指す。
★
1は×である。
日本の2010年代における「貧困率」は、OECD加盟国の平均を上回っている。
2は○である。
3は×である。
同調査では、「子どもの貧困率」は 13.5 %となっている。
4は×である。
同白書によれば、高齢者の相対的貧困率は他の年代よりも高い。1994年以降は低下傾向にあり、2015年では19.6%まで下がっている。
5は×である。
現在の大学進学率は、60%弱である。このことから考えて、肢5は誤りだと推測できる。
正解2
背景にある問題を知らないと正解を選ぶのは難しいかもしれないが、それでも常識的におかしなもの(例えば肢5)については消去するなどして検討して欲しい。肢2について別の言い方をすれば、子どもがいる現役世帯の世帯員の「貧困率」は、両親がいる世帯よりも、1人親世帯の方が高いということである。このように言い換えれば、多くの人は本肢を選ぶことができたのではないだろうか。
問題25 次の記述のうち、ブラッドショー(Bradshaw, J.)のニード類型を踏まえたニードの説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 クライエントがニードを表明しなければ、ニードのアセスメントを行うことはできない。
2 社会規範に照らしてニードの有無が判断されることはない。
3 クライエントと専門職との間で、ニードの有無の判断が食い違うことはない。
4 他人と比較してニードの有無が判断されることはない。
5 クライエントがニードを自覚しなければ、クライエントからのニードは表明されない。
★★★
1は×である。
クライエントがニードを表明していなくても、ニードアセスメントは可能である。
2は×である。
規範的ニードがある。
3は×である。
クライエントと専門職とで、ニードの有無の判断が食い違うことはある。
4は×である。
比較的ニードを想起して欲しい。
5は○である。
ニードを自覚していないクライエントが、自らニードを表明することは想定しづらい。
正解5
ブラッドショーが提唱した4つのニーズの理解は必須である。それがわかっていれば、答えを導くことはできる。
問題 26 次のうち、日本における第1次ベビーブーム期の出生者が後期高齢者になるために、国が示した、医療や介護等の供給体制を整備する目途となる年次として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 1973年(昭和48年)
2 1990年(平成2年)
3 2000年(平成12年)
4 2025年(今和7年)
5 2035年(令和17年)
★★★
正解4
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
日本における第1次ベビーブーム期の出生者とは、団塊の世代(1947-1949に出生した人)を指す。
団塊の世代がすべて75歳になるのは、2024年(1949+75)である。そのため2025年がかねてから注目されてきた。
関連する問題は、㉝問29肢3、㉜問126肢1、㉜問134で出題されている。