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3.社会理論と社会システム(R6年2月-第36回)

問題15 持続可能な開発目標(SDGs)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 1989年にアメリカのオレゴン州で策定された、行政評価のための指標である。
2 生活に関する八つの活動領域から構成された指標である。
3 貧困に終止符を打つとともに、気候変動への具体的な対策を求めている。
4 1995年より毎年各国の指数が公表されている。
5 貨幣換算した共通の尺度によって、一律に各指標を測定する。

★★
1は×である。
持続可能な開発目標(SDGs)は、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された。
2は×である。
17の目標(ゴール)・169のターゲットから構成されている。なお、八つの活動領域から構成された指標はMDGsである。
3は〇である。
4は×である。
各国の指標は、2016年から公表されている。
5は×である。
169のターゲットには、少なくとも1つの指標が設けられているが、すべてが貨幣換算されているわけではないし、各国の定義にしたがった指標もある。

正解3

持続可能な開発目標(SDGs)は、㉜問28で出題されている。1は早すぎ、4も早すぎ、5は内容的におかしいと判断できるので、いずれも誤りと判断できる。残る2と3は知識がないと悩むであろう。

問題 16 次の記述のうち、ウェルマン(Wellman, B.)のコミュニティ解放論の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 特定の関心に基づくアソシエーションが、地域を基盤としたコミュニティにおいて多様に展開しているとした。
2 現代社会ではコミュニティが地域という空間に限定されない形で展開されるとした。
3 人口の量と密度と異質性から都市に特徴的な生活様式を捉えた。
4 都市の発展過程は、住民階層の違いに基づいて中心部から同心円状に拡大するとした。
5 アメリカの94のコミュニティの定義を収集・分析し、コミュニティ概念の共通性を見いだした。

★★★
1は×である。
マッキーバーが提唱したものである。㉚問17肢1参照。
2は〇である。
3は×である。
ワースのアーバニズム論である。㉝問16肢2参照。
4は×である。
バージェスの同心円地帯理論である。㉝問16肢1参照。
5は×である。
ヒラリーの研究成果である。

正解2

コミュニティ解放論は、㉚問17で出題されている。もし覚えていなかった人は、「コミュニティ・解放」という語義から、コミュニティがどのように変化したと考えるのか、と想像して解く。ウェルマン(Wellman, B.)のコミュニティ解放論の特徴は、地域という空間に限定されないという部分である。

問題17 次のうち、人々が社会状況について誤った認識をし、その認識に基づいて行動することで、結果としてその認識どおりの状況が実現してしまうことを指す概念として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 予言の自己成就
2 創発特性
3 複雑性の縮減
4 ホメオスタシス
5 逆機能

★★★
1は〇である。
予言の自己成就(自己成就的予言)は、マートンが提唱した。㉞問21肢1参照。
2は×である。
創発特性は、ある部分や要素が一定量集まると、各部分や各要素には還元できない集合体自体の性質を持つようになる特性のことである。パーソンズ,Tによって広められた。㉔問20、㉒問15参照。
3は×である。
ルーマンが提唱した。世界は多様な可能性をはらむ不確実なものであり、これを確からしいものにするために、私たちは意味によって世界を秩序づける。この秩序づけの働きが「複雑性の縮減」と呼ばれる。
4は×である。
生体の 内部や外部の環境因子の変化に関わらず生理機能が一定に保たれる性質のことで、恒常性と訳される。㉞問12、㉜問98参照。
5は×である。
社会活動はプラスに働く場合とマイナスに働く場合があり、前者を順機能、後者を逆機能という。マートンが提唱した。㉙問21肢1、㉒問15肢1参照。

正解1

ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
予言の自己成就は、ほとんどのテキスト、参考書に載っていると思われるので、正解したい問題である。

問題 18「第16回出生動向基本調査結果の概要(2022年(令和4年))」(国立社会保障・人口間題研究所)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1「いずれ結婚するつもり」と回答した未婚者の割合が、これまでの出生動向基本調査の中で最も高かった。
2 第1子の妊娠が分かった時に就業していた妻が、子どもが1歳になった時も就業していたことを示す「就業継続率」は、2015年(平成 27年)の調査の時よりも低下した。
3「結婚したら子どもを持つべき」との考えに賛成する未婚者の割合は、2015年(平成27年)の調査の時よりも上昇した。
4 未婚男性がパートナーとなる女性に望む生き方として、結婚し、子どもをもつが、仕事も続ける「両立コース」が最も多く選択された。
5 子どもを追加する予定がほぼない結婚持続期間 15∼19年の夫婦の平均出生子ども数(完結出生子ども数)は、2015年(平成27年)の調査の時よりも上昇した。

★★
1は×である。
「いずれ結婚するつもり」と回答した未婚者の割合は、前回よりも減少した。
2は×である。
就業継続率は上昇した。
3は×である。
「結婚したら子どもを持つべき」、「女らしさや男らしさは必要」への支持が大幅に低下した。
4は〇である。
「両立コース」は 33.9%から 39.4%に増加し、最多となった。
5は×である。
結婚持続期間 15〜19 年の夫婦の完結出生子ども数は、2002 年(第 12 回)調査までは 2.2 人前後で安定的に推移していたが、その後低下し、今回調査では 1.90 人となり最低値を更新した。

正解4

近年の低い出生率、未婚率の増加、世相などをもとに、なんとなく解いてもらいたい問題である。

問題 19 次の記述のうち、ライフサイクルについての説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 個人の発達の諸段階であり、生物学的、心理学的、社会学的、経済学的な現象がそれに伴って起きることを示す概念である。
2 生活を構成する諸要素間の相対的に安定したパターンを指す概念である。
3 社会的存在としての人間の一生を、生まれた時代や様々な出来事に関連付けて捉える概念である。
4 個人の人生の横断面に見られる生活の様式や構造、価値観を捉えるための概念である。
5 人間の出生から死に至るプロセスに着目し。標準的な段階を設定して人間の一生の規則性を捉える概念である。

★★
1は×である。
発達段階の説明である。
2は×である。
3は×である。
コーホートの説明である。
4は×である。
ライフスタイルの説明である。
5は〇である。
「プロセス」、「標準的な段階を設定」、「人間の一生の規則性」がキーワードである。

正解5

㉟問18、㉝問18、㉙問17、㉗問19参照。㉝問18にライフコースについての問題があるが、ライフイベント、ライフステージ、ライフサイクル、ライフコースの関係についてまとめておくことを薦める。
㉙問17で、ライフサイクルは、「各段階に固有の発達課題を達成していく過程を指す」概念とされている。

問題20 次のうち、信頼、規範、ネットワークなどによる人々のつながりの豊かさを表すために、パットナム(Putham, R.)によって提唱された概念として、正しいものを1つ選びなさい。
1 ハビトゥス
2 ソーシャルキャピタル(社会関係資本)
3 文化資本
4 機械的連帯
5 外集団

★★★
1は×である。
ハビトゥス は、人々の日常経験において蓄積されていくが、個人にそれと自覚されない知覚・思考・行為を生み出す性向である。ブルデューが用いた。
2は〇である。
㉞問38、㉛問33、㉚問26で選択肢の一つとして出題されている
3は×である。
文化資本とは、金銭によるもの以外の、学歴や文化的素養といった個人的資産を指す。ブルデューが提唱した。㉞問19、㉛問23で選択肢の一つとして出題されている。
4は×である。
機械的連帯は、デュルケームによって提唱された概念であり、人々が同質的でそれぞれが没個性的な活動しかしないことによって存立する社会諸関係の様式をいう。㉝問16肢5に登場しているが、内容、人名と関連した出題に、㉖問16、㉒問17がある。
5は×である。
内集団は、個人が自らをそれと同一視し、所属感を抱いている集団で、それに対して外集団は、「他者」と感じられる集団で、競争心、対立感、敵意などの差し向けられる対象である。㉝問17肢3参照。

正解2

問題21 次の記述のうち、囚人のジレンマに関する説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 協力し合うことが互いの利益になるにもかかわらず、非協力への個人的誘因が存在する状況。
2 一人の人間が二つの矛盾した命令を受けて、身動きがとれない状況。
3 相手のことをよく知らない人同士が、お互いの行為をすれ違いなく了解している状況。
4 非協力的行動には罰を、協力的行動には報酬を与えることで、協力的行動が促される状況。
5 公共財の供給に貢献せずに、それを利用するだけの成員が生まれる状況。

★★★
1は〇である。
㉝問20肢1,㉜問20で出題されている。
2は×である。
ダブルバインドの説明である。
3は×である。
4は×である。
選択的誘因の説明である。㉝問20肢3、㉘問20肢5参照。
5は×である。
フリーライダーの説明である。㉝問20肢2、㉛問21、㉘問20肢4参照。

正解1

㉜問20で正面から出題されている。1,4,5は、社会的ジレンマの問題として、過去問にも度々登場している。用語を覚え方は様々だが、具体的な場面と一緒に覚えると記憶に残りやすい。

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