問題136 事例を読んで、V里親養育包括支援(フォスタリング)機関のD相談員(社会福祉士)の対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Vフォスタリング機関のソーシャルワーカーであるD相談員は、養育里親であるEさん夫婦からFさん(9歳)の相談を受けた。Eさん夫婦はFさんの養育里親委託を受け、5年になる。このところ、Fさんが実親のことを詳しく知りたいと言い出し、どうしたらよいか悩んでいると話す。Eさん夫婦は、実親のことを知ることで、自分たちとの関係が不安定になるのではないかと危惧しているとD相談員に話した。
1 Fさんは思春期に入る前なので、今は伝えない方がよいと助言する。
2 Fさんの最善の利益を考え、Fさんに実親のことをどのように伝えるかについて相談する。
3 Eさん夫婦が自分たちを追い詰めないことを優先する必要があり、実親の話題が出たら話を変えてみることを提案する。
4 D相談員からFさんに、実親のことを知らない方がFさんのためだと伝えることを提案する。
5 実親についての全ての情報を、Fさんに直ちに伝えなければならないと助言する。
1は×である。
Fが実親のことを知りたいと言っているのだから、Dが単独でこのような判断をくだすべきではない。
2は〇である。
Fは子どもなので、単にF(9歳)の意向を尊重するだけでなく、最善の利益基準を用いて判断することは許されてよいであろう。その上で、「Fさんに実親のことをどのように伝えるか」について相談するのは、Dの対応として適切なものといえる。
3は×である。Fの利益への配慮がまったくない。
4は×である。Fの希望への配慮に欠けている。
5は×である。
すべての情報をFに伝えることが、Fにとって良くない影響を及ぼすことも考えられる。この選択肢を見ると、Fの希望⇔Fが事実を知ることにより害される利益、を両極として、総合的にどのようにするのがよいのかという視点から、選択肢を選ぶというのも本問を解く一つの方法ではないかという気もする。
正解2
面食らった人もいるかもしれないが、こういうときこそ、もっとも良さそうなもの(もっとも無難なもの)を選ぶという観点から、選択肢を比較してみて欲しい。
V里親養育包括支援(フォスタリング)機関は、㉜問100で登場しているが、本問はその問題と比べると難易度が高い。フォスタリングは、英語のfoster(育てる、養育する)から来ている。本問との関係で、外せないのは、子どもの権利条約7条1項の「児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するもの」とし、また、「できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する」であろう。
問題137 事例を読んで、妊娠中のGさんが出産後に母子で居住する場について、H婦人相談員(社会福祉士)がこの時点で利用を勧める施設として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Gさん(18歳)は夫から暴力を受けて、心も身体も深く傷ついており、「出産で入院することをきっかけに夫から逃げたい。子どもは自分一人で育てる」とH婦人相談員に相談した。Gさんは親族との関係が断絶しており、実家に戻ることもできないという。働いたこともなく様々な不安があるので、子どもとの生活設計を支援してもらえるところを希望している。
1 母子生活支援施設
2 児童家庭支援センター
3 産後ケアセンター
4 乳児院
5 母子・父子休養ホーム
Gが探しているのは、「出産後に母子で居住する場」である。GはDVを受けて傷つき、夫から逃げたいと考えている。また、実家にも戻れない状況にある。母子生活支援施設は、さまざまな事情の母親と子どもに対して、生活の安定のための相談や援助を行いながら、自立を支援する施設であり、Hが利用を勧める施設として適切である(児童福祉法38条参照)。
2は×である。
児童家庭支援センターは、子ども、家庭、地域住民等からの相談に応じ、必要な助言、指導を行う施設である。㉛問139肢1参照。
3は×である。
産後ケアセンターは、出産後の育児支援を目的として、母親と乳児が一緒に過ごせる宿泊型ケア施設である。宿泊型、滞在型、訪問型があるが、現時点で利用をすすめる施設としては、母子生活支援施設の方が適切である。
4は×である。
乳児院は、乳児(保健上、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、幼児を含む。)を入院させて、これを養育し、あわせて退院した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設である(児童福祉法37条参照)。現段階では検討する施設としては適切ではない。
5は×である。
母子・父子休養ホームは、各地方自治体が母子・父子家庭を対象に、指定の施設の利用料を無料または割引料金で利用できるようにした制度である。㉚問67肢3参照。
正解1
1か3かで迷った人が多かったと思われる。Gはまだ出産前であり、出産後の状況がどうなるかはわからない。そのような場合、普通に出産して、母子ともに健康であることを前提に、Gと乳児に適した施設を勧めることになる。
問題138 「児童虐待防止法」に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 児童相談所長等は、児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護のため、施設入所している児童を除き、面会制限を行うことができる。
2 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、できる限り通告するよう努めなければならない。
3 児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待の早期発見を行わなければならない。
4 児童が同居する家庭における配偶者に対する生命又は身体に危害を及ぼす暴力は、児童虐待の定義に含まれる。
5 児童に家族の介護を行わせることは、全て、児童虐待の定義に含まれる。
(注)「児童虐待防止法」とは、「児童虐待の防止等に関する法律」のことである。
1は×である。
本肢の記述を前提にすると、施設入所している児童については、面会を制限できないことになる。しかし、面会を制限しなければならない場合もあると考えられる。施設入所している児童についても面会の制限は可能である(児童虐待防止法12条1項)。
2は×である。
「できる限り」はおかしいだろうと気づいて欲しい。法文では、「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない」(同法6条1項)とされている。
3は×である。
「早期発見を行わなければならない」という日本語が変だと感じて欲しい。正しくは「早期発見に努めなければならない」(同法5条1項)である。
4は○である。
夫婦の一方が他方に対して行うDVは、虐待にあたる場合があるということである(同法2条4項参照)。㉝問138参照。
5は×である。
「全て」あたるとしたら、家族間の扶けあいを否定することになりかねない。
正解4
本問は落ち着いて読めば、常識で正解を選べる問題だといえる。
問題139 事例を読んで、相談を受けたW母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)の相談員(社会福祉士)がJさんにこの時点で利用を勧める事業として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Jさん(30歳、女性)は、夫と8か月の息子と共に暮らしている。Jさんは現在、育児休業を取得している。最近、時折とても悲しくなったり、落ち込んだりすることがある。どうしてよいか分からず、仕事への復帰に不安を感じるようになった。そこで住まいの近くにあるW母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)に、そのことを相談することにした。
1 児童自立生活援助事業
2 保育所等訪問支援事業
3 乳児家庭全戸訪問事業
4 産後ケア事業
5 児童発達支援事業
1は×である。8か月の子どもには無関係である。㉘問142参照。
2は×である。
保育所等訪問支援事業は、保育所や幼稚園、小学校などの集団生活の場に通所(通園・通学)している障害児に対する支援である。きちんと内容を知らなくても、事業の名称から本問とは無関係であると判断できるであろう。
3は×である。
乳児家庭全戸訪問事業は、生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問し、様々な不安や悩みを聞き、子育て支援に関する情報提供等を行うとともに、親子の心身の状況や養育環境等の把握や助言を行い、支援が必要な家庭に対しては適切なサービス提供につなげるものである。㉞問136肢4参照。
4は○である。関連問題が問137で出題されている。
5は×である。
児童発達支援事業とは、児童福祉法に基づくサービスのひとつで、未就学の障害のあるお子さまが、将来的に本人の負担を軽減するために、身近な地域で必要な支援を受けるためのサービスである。本問の子どもに、このサービスが必要な事情は見当たらない。
正解4
明らかに違うものを早めに消去する。1,2,5は無関係であることが明白である。早めにる3と4に絞って、いずれがよいかを検討する。
問題140 児童手当に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 児童手当の支給には、所得制限が設けられていない。
2 児童手当は、子どもの年齢が高い方が支給額は高くなる。
3 児童扶養手当を受給している者には児童手当は支給されない。
4 児童手当の受給を希望する者が申請の手続を行う必要はない。
5 15歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童は、支給要件児童に該当する。
2は×である。子どもの年齢が高い方が、支給額が低くなる。
3は×である。
児童扶養手当を受給している者にも、児童手当は支給される。2つは別個の制度であり、受給要件も異なる。
4は×である。児童手当の受給を希望する者は、申請の手続を行う必要がある。
5は〇である。児童手当法4条1項1号イ参照。
正解5
児童手当が正面から問われたのは久しぶりである。
問題141 保育士に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 保育士資格は社会福祉法に規定された国家資格である。
2 保育士としての登録は市町村が行い、保育士登録証が交付される。
3 保育士は保育士の信用を傷つけるような行為をしてはならないとされている。
4 保育士の業務を離れた後に、守秘義務を課されることはない。
5 保育士資格取得後に3年ごとの更新のための研修が義務づけられている。
1は×である。児童福祉法に規定された国家資格である(同法18条の4以下参照)。
2は×である。保育士としての登録は都道府県知事が行う。
3は〇である。児童福祉法18条の21。
4は×である。児童福祉法18条の21は、刑法134条(秘密漏示罪)を準用している。
5は×である。保育士の資格は更新制ではない。
正解3
肢3の信用失墜行為の禁止は、他の資格でも求められているものである。細かい点にこだわるよりも、積極法で3を選ぶ。
問題142 虐待のおそれがある場合の児童相談所長の権限に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 家庭への立入調査を学校に委託することができる。
2 一時保護を行うためには、保護者の同意を得なければならない。
3 一時保護を里親に委託して行うことができる。
4 一時保護は3か月以上行わなければならない。
5 児童虐待を行う親の親権喪失を決定できる。
1は×である。学校に委託することはできない。
2は×である。
一時保護の第一の目的は子どもの生命の安全を確保することである。当然のことながら、保護者の同意を得る必要はない。
3は〇である。
適当な者に委託して市保護を行わせることは可能であり(児童虐待防止法8条2項1号)、里親に委託して行うこともできる。
4は×である。一時保護雄目的からして、特に期限を定める必要はない。
5は×である。親権喪失を決定できるのは、家庭裁判所である(民834条)。
正解3