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20.高齢者に対する支援と介護保険制度(R4年2月-第35回)1/2

問題126 「令和4年版高齢社会白書」(内閣府)に示された日本の65歳以上の人の生活実態に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 経済的な暮らし向きについて、「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」と感じている人は約5割となっている。
2 介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人は、第一号被保険者全体の3割を超えている。
3 現在、収入の伴う仕事の有無については、収入の伴う仕事をしていると回答した人は約3割となっている。
4 現在の健康状態について、「良い」「まあ良い」と回答した人の合計は、全体の6割を超えている。
5 二人以上の世帯について、「世帯主の年齢が65歳以上の世帯」と「全世帯」の貯蓄現在高の中央値を比較すると、前者は後者のおよそ3分の2の金額となっている。

1は×である。
本肢は判断に迷うと思う。しかし、昨今の物価高や景気状況を考えると推測可能だと思う。
2は×である。
介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人は、令和2年度で668.9万人となっており、平成22年度(490.7万人)から178.1万人増加している。 要介護者等は、第1号被保険者の18.7%を占めている。
3は〇である。
4は×である。
現在の健康状態を見ると、「良い」(11.8%)、「まあ良い」(19.4%)の合計で31.2%となっている。
5は×である。
世帯主の年齢が65歳以上の世帯と全世帯の中央値を比較すると、世帯主の年齢が65歳以上の世帯は1,588万円で、全世帯の中央値である1,104万円の約1.4倍となっています。

正解3
本問について事前に予想していた人は少なかったであろうし、それで構わないと思う。「最も適切なもの」となっているが、「最もよさそうなもの」を選ぶという気持ちで解けばよい。4、5は感覚的に誤りと判断できるのではないだろうか。大事なことは、ここで躓いて後の問題に悪影響を及ぼさないことである。各科目の最初の方には、地雷が置かれていることが多い。

問題127 日本の高齢者保健福祉施策の変遷に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 老人医療費支給制度による老人医療費の急増等に対応するため、1980年代に老人保健法が制定された。
2 人口の高齢化率が7%を超える状況を迎えた1990年代に高齢社会対策基本法が制定され、政府内に厚生労働大臣を会長とする高齢社会対策会議が設置された。
3 認知症高齢者の急増に対応してオレンジプラン(認知症施策推進5か年計画)が1990年代に策定され、その計画推進を目的の一つとして介護保険法が制定された。
4 住まいと介護の双方のニーズを有する高齢者の増加に対応するため、2000年代の老人福祉法の改正によって軽費老人ホームが創設された。
5 高齢者の医療の確保に関する法律による第3期医療費適正化計画では、2010年代から2020年代の取組の一つとして、寝たきり老人ゼロ作戦が初めて示された。

1は〇である。
知らないと判断に迷うだろう。老人医療費支給制度(いわゆる老人医療費無料化)始まったのが、1973年で終わったので1982年である。これは知っている人が多いと思う。急騰した老人医療費への対策として、1982年に老人保健法が作られた。
2は×である。
高齢化率の「倍加年数」は24年であり,1970年から1994年にかけてであった。㉜問126肢2参照。
3は×である。
オレンジプラン(認知症施策推進5か年計画)は、2012年に公表された。新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)は、2015年ある。1990年代は、認知症が痴呆症と呼ばれていた時代である。
4は×である。
軽費老人ホームは、1963年の老人福祉法のときから存在している。
5は×である。
寝たきり老人ゼロ作戦は、1990年の高齢者保健福祉推進10か年戦略(ゴールドプラン)の中で示されている。

正解1
知識がないと解くのは難しい問題である。

問題128 次の記述のうち、ボディメカニクスの基本原理に関する介護場面への応用として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ベッド上で利用者の臀部を上げる際に、自分の肘を支点にして、てこの原理を使った。
2 ベッドから車いすへの移乗介助の際に、利用者の身体を小さくまとめてしまわないように意識した。
3 車いすからベッドへの移乗介助の際に、できるだけ自分の重心を利用者から離した。
4 ベッド上で利用者の体位変換や枕方向への移動を行う際に、利用者の身体をできるだけ垂直方向に持ち上げて移動させた。
5 ポータブルトイレからベッドへの移乗介助の際に、自分の両足をそろえ、直立姿勢をとった。

1は〇である。
この原理を使うことは理に適っているし、肘を支点にすることも正しい。
2は×である。
対象をなるばく小さくまとめるのがボディメカニクスの基本である。
3は×である。
自分の重心を近づけるのが正しい。
4は×である。
垂直方向に持ち上げると、介護者に負荷がかかる。
5は×である。
介護者は、支持基底面積を広く取る方が安定する。

正解1
ボディメカニクスは、最小限の力で介護をするための技術だと理解しておく。

問題129 事例を読んで、U介護老人福祉施設に入所しているMさんに対する日常介護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Mさん(79歳、女性、要介護4)は、先月U介護老人福祉施設に入所した。3年前に発症した脳梗塞の後遺症により右片麻痺、運動性失語症がある。問い掛けに対して、首を振って返答することは可能である。口腔内に感覚障害がある。時々、せき込むことがある。食事の時、自分で矢継ぎ早に摂取し、口いっぱいにほおばっていることが多い。最近になって腹圧性尿失禁があることが分かった。A生活相談員(社会福祉士)は、Mさんに対するケアカンファレンスに同席し、介護上の留意点を確認した。

1 Mさんに対する質問は、できるだけ開かれた質問で行うように心掛ける。
2 着替えの介助の際、袖を通すときは左側から介助する。
3 浴槽に入る際は、右足の方から湯船に入るように介助する。
4 せきの時に尿が漏れるかもしれないので、尿パッドの使用をMさんと検討する。
5 食事の時、食べ物を口に運ぶペースはMさんのペースのままとする。

1は×である。
閉ざされた質問を用いる。そうすれは、Mさんは、首を振って、自分の意思を伝えやすい。
2は×である。
着るときは患則から、Mさんの場合は右側から、袖を通す。
3は×である。
浴槽に入るときは健側である左足からである。観測の右足は、感覚が麻痺していてお湯の温度を適切に把握できない。
4は○である。
安易にオムツを使用すべきではないが、腹圧性尿失禁があるので、尿パッドを使用すれば、Mさんも安心できるであろう。
5は×である。
口腔内に感覚障害があって、食べるペースも早いとなると、窒息につながる危険がある。

正解4

問題130 高齢者に配慮した浴室の環境整備に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 開閉時に身体移動が少ないことから、脱衣所は開き戸にした方がよい。
2 立位でまたぐ場合、浴槽の縁(エプロン)の高さは65cm程度がよい。
3 浴室は温度が高くなるので、脱衣所は温度を低くしておくとよい。
4 洗面台の水栓はレバー式が握り動作がいらず操作しやすい。
5 浴室内に立ち上がりや姿勢保持のために水平及び垂直の手すりを複数設置する。

1は×である。引き戸の方が身体動作が少ない。
2は×である。65㎝は高すぎる、と感じられれば誤りと判断できる。30~40㎝程度がよいとされている。
3は×である。浴室と脱衣所の温度差が大きいとヒートショックの原因になる。
4は○である。レバー式は、ひねって回すハンドル式のような握る動作がいらない。
5は〇である。浴槽に入るときと、浸かっているとき、浴槽から出るときでは、手すりの位置も異なってくる。

正解4、5

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