問題119 社会福祉法人の組織体制に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会福祉法人は、定款、貸借対照表、収支計算書、役員報酬基準等を公表しなければならない。
2 社会福祉施設を経営している社会福祉法人において、当該施設の管理者は法人の理事になることは禁止されている。
3 社会福祉法人は収益事業を行うことが禁止されている。
4 社会福祉法人における評議員の選任・解任は、定款に定めることにより、理事長や理事会が決定することが可能である。
5 社会福祉法人は、理事長以外に業務執行理事を評議員会で選定することができる。
1は○である。社会福祉法59条の2、同施行規則第10条第3項参照。
2は×である。このような制限はない。実際にも社会福祉法人の理事が施設長を兼任するケースが存在する。
3は×である。㉜問119肢1参照。
4は×である。
評議員の選任・解任を理事長や理事会が決定できるとすれば、評議員の理事に対する監督機能が発揮できなくなってしまう。社会福祉法45条の8第3項参照。
5は×である。理事長以外に業務執行理事を選定できるのは理事会である(法45条の16第3項)。
正解1
社会福祉法人における各機関の関係の理解は必須である。
問題120 特定非営利活動法人の組織運営に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 特定非営利活動法人における最高意思決定機関は、評議員会である。
2 特定非営利活動法人において役員に報酬を支払うことができるのは、役員総数の半数までである。
3 特定非営利活動法人は、その主たる活動の目的を、政治上の主義を推進、支持、反対するための活動とすることができる。
4 特定非営利活動法人は、法律に定められた要件を満たし、必要な書類を添えて所轄庁に申請し、審査を経て認可された後、登記することによって成立する。
5 特定非営利活動法人は、その社員の資格の得喪に関して不当な条件を付してはならず、加入や脱退の自由を保障する必要がある。
1は×である。
特定非営利活動法人における最高意思決定機関は、社員総会である。
2は×である。このような制限はない。
3は×である。
「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするものでないこと」が要件となっている(特定非営利活動促進法第2条2項2号ロ参照)。
4は×である。認可ではなく、認証を受けなければならない(前掲第10条1項参照)。
5は〇である。第2条2項1号イ参照。
正解5
自信を持って判断できない肢もあると思われるが、こういう問題のときこそ落ち着いて解く必要がある。5は極めて当然のことを言っており、これが正しい肢となる。
問題121 福祉や医療サービスを提供している組織・団体に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会医療法人は、収益業務を行うことが禁止されている。
2 株式会社は、都道府県知事への届出によって児童養護施設を設置することができる。
3 医療法人は、都道府県知事への届出によって特別養護老人ホームを設置することができる。
4 福祉活動を行う市民団体は、法人格を取得しなければならない。
5 医療法人は、剰余金の配当をすることが禁止されている。
1は×である。㉙問120肢3参照。
2は×である。児童養護施設は第1種社会副事業なので、株式会社は設置できない。
3は×である。特別養護老人ホームは第1種社会副事業なので、株式会社は設置できない。
4は×である。
福祉活動を行う市民団体というのはかなり広い概念だが、そのような団体が法人格を取得しなければならない、といった制限はない。
5は〇である。医療法人は非営利法人なので、本肢が正解となる。
正解5
1は過去問にまったく同じ肢がある。2,3は、第1種社会福祉法人の設置主体が、国、地方公共団体、社会福祉法人でなければならない、ことを知っていれば、正誤を判断できる。4と5まで絞れれば、比較して、5を選べと思われる。
問題122 組織運営や法の原則に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 コンフリクトは、集団に肯定的な影響を与えることはなく、組織運営に非生産的な結果をもたらすので回避する必要がある。
2 事業部制組織は、職能別管理をすることによって、組織の統制が向上するメリッ卜がある。
3 各構成員に対する指示・命令は、複数の者によって多面的に行う必要がある。
4 従業員が意思決定を行うことができる権限の範囲と、それに対応した職務に対する責任の範囲は、等しくなるようにしなければならない。
5 管理者は、例外的で高度な業務のみならず、定型的で反復的な業務についても行わなければならない。
1は×である。
コンフリクトは、論争・争い・衝突などを指す言葉であるが(社会福祉士試験では割とよく出るワードなので押さえておく)、集団に肯定的な影響を与えることもある。
2は×である。
事業部制組織とは、本社の下に事業ごとに編成した組織(事業部)を配置した組織構造で、事業の責任・権限を事業部に託し、本社の経営負担を抑え、現場の意思決定を重視するものである。
3は×である。これでは、指示・命令を受けた者が混乱してしまう。
4は○である。無難な内容の記述である。
5は×である。
管理者の役割は、組織の成果を出し続けることであり、そのために目標を定めたり、組織の方向性を定めたり、業務を構想すること(成果を出すために自分の部門にどのような機能が必要なのかを考えること)にある。定型的で反復的な業務を行ってはいけないというわけではないが、「行わなければならない」というのは誤りである。
正解4
この問題を予想していた人は少ないであろう。常識的に考えて、1,2,3が誤りであることは判断できると思われる。残る4と5を比較して、より良いものを選べばよい。
問題123 福祉サービスの経営に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 CSR(Corporate Social Responsibility)は、福祉サービス事業者には求められない。
2 ドメイン(事業領域)は、単一の制度や限定された利用者を対象として設定しなければならない。
3 バランス・スコアカード(Balanced Score Card)とは、財務だけでなく、顧客、業務プロセス、従業員の学習・育成といった各視点から企業実績を評価する仕組みである。
4 経営における戦略とは、短期的な観点による目標を設定し、日々の業務を遂行するための方策のことである。
5 CSV(Creating Shared Value)とは、社会的な課題を解決するところから生まれる社会価値を、事業者の経済価値に優先する考え方である。
1は×である。
( )内の記述から、CSRとは企業の社会的責任を指していることがわかる。それは、福祉サービス事業者にも当然に求められる。㉛問119参照。
2は×である。
障害者と高齢者のサービスを提供している法人もあるし、保育園と特養を一緒に運営しているところもある。設問のような限定は不合理でもあるし、実際にも存在しない。㉝問125でドメインという用語は既出であるが、知らなくても判断できる。
3は〇である。㉛問119肢3参照。
4は×である。短期的ではなく長期的である。㉝問125肢5参照。
5は×である。
「社会価値を、事業者の経済価値に優先する」の部分がおかしい。CSVとは、共有価値の創造を軸とした経営のことである。共有価値とは、経済的価値(利益の獲得)と社会的価値(社会的課題の解決)を両立することを指す。Creating (想像)Shared Value(価値の共有)なのだから、一方を優先させるのはおかしいと気づければいい。
正解3
わからない肢があった場合、問題文の語句をヒントに誤っているものを消去していく。
問題124 人材の確保や育成に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 360度評価(多面評価)とは、評価者である上司が、職員の能力や業績だけでなく性格、志向、特技などを多面的に評価する手法を指す。
2 人事考課においては、ある対象を評価する際に、部分的で際立った特性が、全体の評価に及んでしまうハロー効果が起こることがある。
3 O JT(On the Job Training)とは、日常の職務を離れて行う教育訓練方法のことを指す。
4 職員のキャリアや能力の開発を目的に人事異動を実施することは、望ましくないとされている。
5 エルダー制度は、新入職員のセルフラーニングを通じた自己啓発の仕組みである。
1は×である。
「性格」はまだしも、「志向」、「特技」は?と感じて欲しい。ちなみに、多面評価(360度評価)とは、上司や人事担当者のほか、同僚や部下など、あらゆる立場から評価をする方法である。 自分で自分を評価すると同時に、自分にかかわりのあるスタッフの評価によってさまざまな方向からその人を見るところに特徴がある。
2は〇である。
ハロー効果は心理学で必須の知識と言える。その内容がわかっていれば、選択肢が正しいことは容易にわかる。
3は×である。
「日常の職務を離れて行う」の部分が×である。これではOff the Jobだと突っ込みを入れたい。なお、O F F – J Tも存在するので注意、㉝問143、㉚問125参照。
4は×である。
職員のキャリアや能力の開発を目的に人事異動を実施することもあってよいし、実際に行われている。
5は×である。
エルダー制度はOJTの一環で、新入社員と年齢が近く、社歴の浅い先輩社員が教育係として実務指導を行うことである。エルダーとは、先輩や年長者を指す。なお、㉚問125肢5に同一の選択肢があり、多くの人がひっかかったとのだと考えられる。
正解2
問題125 福祉サービス第三者評価事業に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 児童養護施設は、福祉サービス第三者評価を定期的に受審すること及び結果の公表が義務づけられている。
2 福祉サービス第三者評価は、市町村が認証した第三者評価機関が実施する。
3 福祉サービス第三者評価は、法令に定められた福祉サービスの運営基準が遵守されているかを監査するための仕組みである。
4 福祉サービス第三者評価の評価機関は、非営利組織であることが認証を受けるための要件となっている。
5 福祉サービス第三者評価の結果は、インターネット上に公開することができない。
1は〇である。2012年度から、児童養護施設は受審が義務付けられた。
2は×である。市町村ではなく都道府県が認証した第三者評価機関が実施する。㉛問124肢2参照。
3は×である。
法令に定められた福祉サービスの運営基準が遵守されているかを監査するための仕組みは、行政による指導検査である。
4は×である。福祉サービス第三者評価の評価機関は、非営利組織でなくてもよい。
5は×である。インターネット上に公開することができる(例:東京都福祉ナビゲーション)。
正解1
福祉サービス第三者表について全般的にきいている問題に、㉚問41、㉚問124がある。その後も選択肢の一つとして何回が出題されている。