問題 112 「個人情報保護法」に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 個人情報取扱事業者には、国の機関は除外されている。
2 本人の生命の保護に必要がある場合であっても、本人の同意を得ることが困難であるときは、個人情報を第三者に提供してはならない。
3 オンラインによる個人情報の提供は、ウイルスや不正アクセス等のリスクを伴うため禁止されている。
4 クレジットカード番号は、個人識別号に含まれる。
5 事業者は、サービス利用者から本人のサービス記録の開示を求められた場合でも、これに応じる義務はない。
(注)「個人情報保護法」とは、「個人情報の保護に関する法律」のことである。
★★
1は○である。
㉝問116肢1、㉚問117肢1参照。
2は×である。
人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときは、例外である(法27条1項2号)。
3は×である。
オンラインによる個人情報の提供は禁止されていない。これが禁じられているとしたら、現在の社会は立ち行かない気もする。
4は×である。
携帯電話番号やクレジットカード番号は、様々な契約形態や運用実態があり、およそいかなる場合においても特定の個人を識別することができるとは限らないこと等から、個人識別号に含まれない。ただし、このような番号も、氏名等の他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなる場合には、個人情報に該当する。
5は×である。
個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの利用目的の通知を求められたときは、本人に対し、遅滞なく、これを通知しなければならない(法33条2項本文)。
正解1
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
肢1については、過去問でも出題されている。ここで積極法により正解を導ければ良いが、知らなかった場合には、消去法で解く。常識的に正誤を判断できる肢が多い。
問題 113 事例分析の対象を手段的事例と固有事例に分けたとき、手段的事例の例として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ソーシャルワーカーが担当しているクライエントの支援において、今後の方向性を考えるために、クライエントと共に事例分析をした。
2 新人のソーシャルワーカーが担当しているクライエントの支援過程について、指導的立場のソーシャルワーカーと一緒に、事例分析をした。
3 ソーシャルワーカーが担当している事例で、支援結果が良好なものがあったので、その要因を明らかにするため、事例分析をした。
4 ソーシャルワーカーが担当している事例で、複雑な問題を抱え支援が困難なクライエントがおり、事例分析をした。
5 ソーシャルワーカーが担当している地区で、高齢者から振り込め詐欺に関する相談が頻繁にあるため、研修を目的とした事例分析をした。
★★
1は×である。
固有事例である。
2は×である。
固有事例である。
3は×である。
固有事例である。
4は×である。
固有事例である。
5は〇である。
手段的事例である。
正解5
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
初めての出題ではないかと思われる。事例分析を行うときに、対象を手段的事例と固有事例にわけることが前提になっている。
両者の違いは何となくわかるが、今一つぴんとこないときは、すべての選択肢を一読するとよい。そうすると、1から4が当該事例そのものを分析しようとしているのに対して、5は研修で用いるために振り込め詐欺に関する相談の内容を分析しようとしている(内容にも立ち入ってはいるが、どういう手口が多いのかなど)。
このことから、5は個別の事例そのものの分析ではなく、別の目的のための手段的事例(分析)だと判断してもよいし、分類法(仲間外れを見つける)で、5が手段的事だろうと判断する。
問題 114事例を読んで、N市社会福社協議会のM職員(社会福祉士)の対応として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
N市社会福祉協議会は、N市から避難行動要支援者への支援に関して委託事業を受けている。Mは、その事業のコーディネート役を担当しており、N市が海岸線の近くにあり、高台が少ないことから、大地震の際の津波などによる被害を心配している。Mは、日頃から「備えあれば憂いなし」と周りの職員たちに言い、避難行動要支援者を中心にした、平常時からのネットワーキングがN市には必要と考えて、支援活動をしている。
1 近隣の住民に声をかけ、避難行動要支援者と一緒に避難訓練を行う。
2 災害発生に備えて、避難行動要支援者名簿を地域の全戸に配布する。
3 自力で避難できるよう、避難行動要支援者を個別に訪問して指導する。
4 避難支援等関係者よりも、避難行動要支援者の安全確保を最優先するよう関係者に指示する。
5 避難支援等関係機関と一緒に福祉避難所を確認する機会をもつ。
★★★
1は○である。
2は×である。
避難行動要支援者名簿を本人の同意もなく配布することは許されない。
3は×である。
自力での避難に困難が伴うことから、避難行動要支援者として把握されているのである。
4は×である。
自身の安全確保よりも他者である避難行動要支援者の安全確保を最優先するような指示は行えない。
5は〇である。
正解1,5
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
㉜問112で類似した問題が出されている。選択肢をすべて読んで、明らかにおかしものを除いていき、迷った肢について比較検討する。
問題 115 事例を読んで、Aスクールソーシャルワーカー(社会福祉士)の解決志向アプローチに基づく問いかけとして、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Bさん(高校1年生)は、父親、弟(小学4年生)、妹(小学1年生)の4人家族である。父親は長距離トラックの運転手で、Bさんは長女として家事と妹の世話を引き受けている。ある日、Aスクールソーシャルワーカーに、「家族のためにやれることをやるのは当然だし。喜んでもらえるのもうれしい。でも毎日勉強とバイトと家事で精一杯。これ以上はもう無理かも・・」とつぶやいた。AはこれまでのBさんの頑張りをねぎらいながら、以下の問いかけをした。
1「もし奇跡が起こって何もかもうまくいくとしたら、どうなると思いますか?」
2「最悪な状況を0、何もかも解決したのが10なら、今は何点になりますか?」
3「Bさんが『もう無理かも』と思ったのは、どのようなときですか?」
4「Bさんが想像する、最悪の事態はどのようなものでしょうか?」
5「今、Bさんが抱える状況の根本の原因は何だと思いますか?」
★★
1は○である。
ミラクルクエスチョンと呼ばれる技法である。
2は〇である。
スケーリングクエスチョンと呼ばれる技法である。
3は×である。
解決志向アプローチに特有の質問ではない。
4は×である。
解決志向アプローチに特有の質問ではない。
5は×である。
解決思考アプローチは、原因よりもこれからどうしたいかを考えるアプローチである。㉙問100参照。
正解1,2
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
事例形式であるが、解決志向アプローチに関する知識がないと解くのは難しい。よく似た問題は新傾向になった第22回で登場した。
㉚問101、㉙問100に類問がある。解決志向アプローチの特有な質問として、ミラクルクエスチョン、スケーリングクエスチョンの他に、コーピングクエスチョン、エクセプションクエスチョン、サバイバルクエスチョンがある。
問題 116 事例を読んで、Y地域包括支援センターのC社会福祉士が参加している認知症初期集中支援チームの対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Y地域包括支援センターに「夫の物忘れがひどく、指摘するとすぐに怒りだすことと、時折暴力を振るうことで困っている」とDさん(72歳)から電話相談があった。その後、Dさんが来所して夫の日常の様子を詳しく話した。夫に病院で受診をしてもらおうとしたが、「俺はどこも悪くないから病院には行かない」と拒否され、困っているという。そこでCは、認知症初期集中支援チームにおける対応が必要と考えケース会議の開催を要請した。
1 夫を刺激しないように、認知症サポーターとCが自宅を訪問する。
2 Dさんが一人の時間を持てるように自宅を訪聞し、夫の利用可能な認知症カフェの案内を手渡す。
3 夫の状態について、認知症サポート医から専門的知見による助言を求める。
4 夫の生活の様子を聞くために、介護福祉士とCが自宅を訪問する。
5 Dさんへの暴力回避のために、保健所の職員とCが自宅を訪問する。
★★
Dの話によれば、夫はもの忘れがひどく、易怒的で、時折暴力を振るうこと、病院での受信をすすめても拒否していることなどがわかる。1は×である。
これらを把握したCは、認知症初期集中支援チームにおける対応が必要と考えケース会議の開催を要請しているが、まず、初期の段階では、Dの症状を把握することが必要だといえる。
初めて訪問する際には、認知症サポーターよりも専門職と一緒に同行した方がよいといえる。よって、肢1<肢5といえるので、肢1は×である。
2は×である。
Dの夫の状態を把握しないで、認知症カフェの利用をすすめることは適切とはいえない。
3は〇である。
Dの夫の状態を把握するために、認知症サポート医から専門的知見による助言を求めることは適切である。
4は×である。
初期の段階で訪問するのであれば、介護福祉士よりも保健師の方が適切であろう。そのため、肢3<肢5といえる。
5は×である。
肢1<肢3<肢5であるが、Dの夫の状態の把握のためには、肢5<肢3といえる。
正解3
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
認知症初期集中支援チームについては、㉛問129、㉛問41肢5、㉙問31肢5、㉘問35肢4で出題されている。
本問は、事例をもとに、同チームの対応を聞く問題である。支援が始まった初期の段階では、まず、認知症患者自身の状態を把握することを優先すべきだと考えられる。
なお、認知症サポート医は地域における認知症に関する地域医療体制構築の中核的な役割を担う医師として国が平成17年度(2005年度)から養成を開始したものである。
問題 117 事例を読んで、ひきこもり地域支援センターのF職員(社会福祉士)による、グループワークのこの段階における関わりとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Fは、ひきこもり地域支援センターが1か月前に開設した、ひきこもり状態にある人たちのための居場所であるカフェで、グループへの支援を行っている。Fは2年前から根気強く訪問していたGさん(38歳、男性)にもこのグループへ参加しないかと声をかけたところ、「どんなメンバーで、どんなことをしているのか」と興味を示し、久しぶりに外出し、カフェに初めて姿を見せた。Gさんは対人関係のつまずきからひきこもり状態となった経緯があり、人見知りがある。
1 人見知りが激しいことを知っているので、他のメンバーに対応を委ねる。
2 関係づくりができていることを活かしたいので、Qさんと二人で会話を続ける。
3 以前から参加している他のメンバーと話せるように橋渡しをする。
4 メンバー同士の関係を活用し、Gさんの長いひきこもり体験をメンバー間で分かち合うよう促す。
5 Gさんの過去の対人関係をメンバー間で振り返り、気持ちの分かち合いを促す。
★★
Gは少なくとも2年以上引きこもりの状態にあると考えられる。そして、Fが今期強く訪問していたこともあり、今回開設されたカフェでグループに参加してみようと思い立ったものである。「この段階で」Fはどのようにかかわるべきかを考えていく。1は×である。
人見知りが激しいことを知っているのに、他のメンバーに委ねるのは支援することを放棄しているといえる。なお、事例問題における「…に委ねる」という肢は、間違いであることがほとんどである。
2は×である。
これでは、グループに参加してもらった意味がない。
3は〇である。
この段階では、まずグループのメンバーと交流が持てるようにすることが大切である。
4は×である。
この段階でGの体験をメンバー間で分かり合うのは、時期尚早といえる。
5は×である。
4と同じく時期尚早な感があるのと、4<3といえる。
正解3
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
問116と同様に「最も適切なもの」を選ぶことを求められている場合、選択肢同士の比較による優劣を検討する必要がある。
問題 118 ソーシャルワークの面接技術に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 明確化によって、クライエントに特別な行動をするように伝えて、課題解決を促す。
2 言い換えによって、クライエントの話す内容や感情を別の言葉で表現し、気づきを促す。
3 閉じられた質間によって、クライエントが自由に話すのを促す。
4 要約によって、より多くの情報を収集するために、クライエントの自己開示を促す。
5 問題への直面化によって、クライエントとの信頼関係を構築する。
★★
類題に、㉝問109がある。
1は×である。
明確とは、クライエントの語りをソーシャルワーカーが明確にして返すことである。明確化には、クライエントの話の中から思いや感情を受け取って返す感情の反映や、クライエントが自らの問題状況を整理することや、自分の要求を具体化することを促進するといった機能がある。
2は〇である。
3は×である。
クライエントが自由に話すのを促すのであれば、開かれた質問を用いる。
4は×である。
要約によってではなく、開かれた質問によってなしうる。要約とは,クライエントが語った内容をまとめて反射することである。
5は×である。
直面化は、クライエントの言葉と感情や行動の不一致などの矛盾点を指摘し、クライエントの内面の葛藤に直面させる技法である。信頼関係の構築のために用いられるものではない。