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18.相談援助の理論と方法(R5年2月-第35回)3/3

問題112 事例を読んで、X基幹相談支援センターのD社会福祉士によるこの段階における対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
X基幹相談支援センターのD社会福祉士は、買物依存のために家族関係の破綻や生活再建に苦労した人たちから、同じような課題で悩む人たちと経験を分かち合いたいとの相談を受け、自助グループの立ち上げを支援した。1年経ち、中心メンバーから、自助グループ運営の助言を求められた。特にルールを定めず開始したためか、グループでは、他のメンバーへの批判が繰り返され、一部のメンバーは、行政への請願を活動の中心とすることを求めるのだという。

1 経験を分かち合いたいとするグループと行政へ請願するグループへの編成を提案する。
2 批判を繰り返すメンバーに退会を勧めるための話合いの場を、中心メンバーと一緒に設ける。
3 メンバー同士でグループの目的やルールについて話し合うことを助言する。
4 グループの司会進行を引き受け、相互援助システムづくりを行う。
5 家族関係の再構築と生活再建に向け、全メンバーとの個別面接を遂行する。

1は×である。
この自助グルプは、もともとは買物依存のために家族関係の破綻や生活再建に苦労した人たちから、同じような課題で悩む人たちと経験を分かち合うことをも目的に作られたものである。この段階で2つのグループへの編成を提案することは時期尚早といえる。
2は×である。
批判を繰り返すメンバーが生じたのは、特にルールを定めずに自助グループを開始したことにも原因がある。その見直しをせずに退会を勧めるのは適切ではない。
3は〇である。
当該グループの問題としては、①特にルールを定めず開始したこと、②他のメンバーへの批判が繰り返されていること、③一部のメンバーは、行政への請願を活動の中心としようとしていること、などにある。これらを踏まえて、グループの中心メンバーから助言を求められた場合、目的やルールについて話し合うことを提案することは、この段階でのDの対応として適切なものといえる。
4は×である。
この段階で相互援助システムを作れるのかという疑問に加えて、仮にそれが可能だとしても、実際にそのシステムを作るのグループの構成員が主体となって行うべきであろう。
5は×である。
これはDによる自助グループへの大幅な介入になってしまうし、これでは自助グループとはいえないであろう。

正解3
D社会福祉士によるこの段階における対応としては、当該自助グループが当初の理念に立ち返って運営していけるようにするためのアドバイスを行うことであろう。
セルフヘルプグループのメンバーは, 特定の体験を共有し, 蓄積し吟味することによって生み出される体験的知識を活用し, 問題に対処する(㉜問115肢1)。

問題113 ソーシャルワークにおけるスーパービジョンに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 スーパービジョンの目的は、クライエントへの支援やサービスの質を向上させるための専門職育成である。
2 スーパービジョンの支持的機能は、スーパーバイジーが適切に業務を行うよう目配りすることである。
3 スーパービジョンの教育的機能は、ストレスに対応するようスーパーバイジーの精神面を支える機能である。
4 スーパービジョンの管理的機能は、スーパーバイジーが実践するために必要な知識や技術を高める機能である。
5 スーパービジョン関係は、クライエントとスーパーバイザーとの契約によって成り立つ。

1は〇である。
2は×である。説明部分は、管理的機能についてのものである。
3は×である。説明部分は、支持的機能についてのものである。
4は×である。説明部分は、教育的機能についてのものである。
5は×である。
クライエントではなく、スーパーバイジーとスーパーバイザーとの契約によって成り立つ。

正解1
直感で1を選んでも、結果的には正解なので問題はない。より自信を持って解きたければ、消去法、交差法を併用することである。スーパービジョンの管理的・支持的・教育的機能の3つは受験生であれば知っておくべきであるが、仮に忘れていても2,3,4の記述を読んでいけば、自ずと内容を思い出せるであろう。

問題114 ソーシャルワークの記録に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 フェイスシートには、全体の振り返りや目標達成の評価を記述する。
2 アセスメントシートには、目標を設定し具体的な解決策を記述する。
3 プロセスシートには、目標に対する援助過程を時系列に記述する。
4 プランニングシートには、クライエントの基本的属性を項目ごとにまとめて記述する。
5 クロージングシートには、クライエントの主訴、解決したいことを記述する。

1は×である。説明部分は、クロージングシートに関するものである。
2は×である。説明部分は、プランニングシートに関するものである。
3は〇である。プラセスと「援助過程」が対応していることに気付けば判断しやすい。
4は×である。説明部分は、フェイスシートに関するものである。
5は×である。説明部分は、アセスメントシートに関するものである。

正解3
自分が自信を持って答えを導きだせれば、どのような方法で解いてもよい。

問題115 事例は、Y地域包括支援センターのE社会福祉士によるFさん(74歳、男性)への支援記録の一部である。次のうち、用いられている文体として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
最近、Fさんからの電話連絡が頻回に続き、電話越しに混乱し、慌てている状況があるため、Fさん宅を訪問。財布をなくしたと探しているので一緒に探したが見付からない。また、部屋が片付けられないのでイライラしている様子。片付けの手伝いをボランティアに頼むことができることを伝えると了承した。後日片付けの日程の件で訪問。Fさんは片付けのことは忘れており、混乱し、怒り出してしまった。Fさんの言動や生活状況から認知症の進行も考えられるため、関係機関の見守りと早急なケース会議の開催を提案。

1 要約体
2 逐語体
3 過程叙述体
4 圧縮叙述体
5 説明体

1は×である。要約体は、要点を整理した記録である。
2は×である。逐語体は、話した内容を加工せずに、逐一そのまま記録するものである。
3は×である。
叙述体は、客観的な事実を時系列で記述した記録である。叙述体のうち、時系列でワーカーとクライエントの相互作用の詳細を記したものが過程叙述体である。㉞問114肢4参照。
4は○である。
叙述体のうち、客観的な事実を時系列で項目ごとに簡潔に示すものを圧縮叙述体という。
5は×である。
説明体は、単なる客観的事実だけでなく、記録者の説明や解釈を交えて記録したものである。

正解4
3か4のいずれにするかで迷った人が多かったと思われる。過程叙述体については、前年に出ているが、圧縮叙述体については出されていない。2つの違いが明確にわからない場合、問題文を読みながら、「過程」と「圧縮」のどちらかがより適しているかを考えるしかないが、その判断は容易ではないだろう。

問題116 社会的排除の状態に置かれ、複雑困難な課題を抱えている利用者と家族に対するソーシャルワークに関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 社会的排除の状態に置かれている利用者と家族に対して、プライバシーに配慮した上で、地域住民の協力を求め、利用者と家族の地域生活の継続を支援する。
2 利用者との距離を置き、客観的に状況を理解している同居をしていない家族の意向に基づき支援する。
3 人との関わりに抵抗のある利用者や課題を持つ家族が多いので、利用者と家族の生育歴や生活歴、に特徴的に見られる課題に限定して情報収集をする。
4 時間をかけて関係づくりを行い、利用者と家族の意向を踏まえ、優先順位をつけて生活課題やニーズに対応していく。
5 利用者や家族のストレングスを見いだすため、利用者自身の弱さを内省するよう支援する。

1は○である。
2は×である。
利用者との距離を置く理由、客観的に状況を理解している同居をしていない家族の意向に基づき支援する理由が明確でない。
3は×である。
前半の仮定が正しいとしても、情報収取をその範囲に限定する必要はない。
4は○である。
5は×である。
ストレングスを見いだすのでれば、利用者の強みに着目する必要がある。利用者自身の弱さを内省するよう支援することは、ストレングスを見いだすこととずれている。

正解1,4

問題117 事例を読んで、Z放課後等デイサービスのG児童指導員(社会福祉士)による、Hさんへの面接に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Hさん(28歳、女性)は、長女Jさん(8歳)と二人暮らしで、Jさんには発達障害がある。ある日Jさんが、通っているZ放課後等デイサービスで、他の子のおやつを食べてしまった。Jさんは、「お腹がすいて我慢ができなかった」と訴えた。G児童指導員の呼び掛けに応じた面談でHさんは、「Jが大事で頑張っているけど、子育てがちゃんとできない自分が嫌」と話した。

1 「Jちゃんと少し距離を置くために、施設入所も検討してみませんか」と意向を聞く。
2 「Jちゃんを大事だと思って、あなたはよく頑張っていますね」と承認する。
3 「家事を手伝ってくれる子育て短期支援事業を利用してはどうですか」と意向を聞く。
4 「子育ての方法を教えてくれるペアレント・トレーニングを受けるという方法もありますよ」と情報提供する。
5 「Jちゃんにとって大事なお母さんなんだから、しっかりしましょう」と励ます。

1は×である。この状況で施設入所の検討を打診するのは時期尚早である。
2は○である。Hの発言を受けてその努力を承認するものであり、適切といえる。
3は×である。Jの状況、意向を確認することなく、子育て短期支援事業の利用を打診するのは適切ではない。
4は○である。
子育ての悩みを抱えるJに対して、その打開策の一環としてペアレント・トレーニングについての情報提供をするのは適切である。
5は×である。
Jの発言に対する受容と共感の姿勢がないまま、励ますことは適切ではない。ちなみに、過去の本試験で「励ます」という対応が入っている足はすべて誤りになっている(㉞問101、㉜問76、㉜問103、㉛問109)。

問題118 事例を読んで、病院のK医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)のこの時点の対応として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Lさん(59歳、女性)は、利き腕を複雑骨折し入院してきた。手術後も後遺症から細かい作業が困難となった。家族の見舞いはなく、不自然なあざがあり、退院を強く渋ったため、病棟の要請でK医療ソーシャルワーカーが面接を開始した。Lさんは徐々に心を開き、会社員の夫(64歳)から長年毎日のように暴力を受けてきたこと、高校卒業後すぐ結婚し妊娠したため働いたことがないことを話してくれた。子どもたちは他県で家庭を築いているが、経済的余裕はなく、他に頼れる親戚はいないそうである。離婚は考えるものの、収入がなく、今後の生活が心配だという。

1 夫に連絡を取り、心理的カウンセリングを受けるよう促す。
2 他県にいる子どもの家族と同居できるよう、引っ越しの手配を手伝う。
3 行政から委託を受けた民間シェルターに入居するという選択肢を説明する。
4 離婚や今後の生活に必要な情報提供をし、生活設計を共に考える。
5 仕事を見付けられるよう、公共職業安定所(ハローワーク)に行くことを促す。

1は×である。
Lは利き腕を複雑骨折して入院しており、家族の見舞いもなく、不自然なあざがあり、退院を渋っている。さらに、Lは離婚を考えている。このような状況の元で、夫にカウンセリングを受けてもらうという方法は適切とはいえない。
2は×である。
子どもたちは他県で家庭を築いているが、経済的余裕はない。Lも子どもたちとの同居をぜひとも望んでいる状況にもない。
3は〇である。
Lの保護のために、行政から委託を受けた民間シェルターに入居するという選択肢を説明することは、Lの意思にも適っており、この時点における現実的な対応といえる。
4は○である。
Lには離婚したい気持ちを有し、かつ今後の生活のことを心配しているので、Kが離婚や今後の生活に必要な情報提供をし、生活設計を共に考えることは適切である。
5は×である。
Lは59歳で、これまで働いたことがない。今は、長年の家庭内での暴力の末に、利き腕を複雑骨折して入院し。手術後も後遺症から細かい作業が困難となっている。今は仕事を見付けることよりも、Lの安全の確保、離婚や今後の生活設計について、共に考えるべき段階といえる。

正解3,4
4が適切であることは多くの人が気づけたであろう。残るもう一つの肢を選ぶポイントは、問題文をよく読んでLの意思に最も適ったものがどれなのかを見つけ出せるかにある。

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