問題105 事例を読んで、U大学の留学生支援室のK相談員(社会福祉士)のLさんへのこの時点での応答として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
S国からの留学生のLさん(24歳、女性)は、5年前に来日した。来日後1年でU大学に合格したLさんは順調に学業を続け、4年の後期試験を受けて卒業の見込みとなっていた。ある日、目を真っ赤にして留学生支援室を訪れたLさんは、K相談員に以下のように話した。「私は来週の後期試験2科目を受けて卒業の見込みです。しかし、昨日母から電話をもらい、私の祖母が末期のがんと知らされました。すぐにでも帰りたいのですが、試験を受けなければ卒業できず、かといってこんな状況では試験勉強も手につきません」
1 「帰国したいけれどもできない、その板挟みで苦しいのですね」
2 「おばあさんにはお母さんがついていらっしゃるから大丈夫です」
3 「お母さんは、さぞかしお困りでしよう」
4 「すぐにでも帰国できるよう私が調整します」
5 「お母さんも期待しておられるし、あと2科目で卒業だから頑張りましょう」
1は〇である。Lの置かれた状況を理解した上で、その気持ちを言語化している。
2は×である。Lがなぜ悩んでいるのかについての配慮がない。
3は×である。Kがこのように言うと、Lの悩みはますます深まるばかりである。
4は×である。Lの気持ちに配慮することなく、Kが帰国を決めるのはおかしい。
5は×である。Kの気持ちについて受容、傾聴していない。
正解1
選択肢1の発言にまったく問題がないとはえいないかもしれないが、すべての選択肢の中で「この時点での応答として」最も適切なものはやはり1であり。㉞問101参照。
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
Lは卒業まで残り2科目の後期試験を受けるばかりとなっていたが、祖母が末期のがんであると知り、それを聞いた翌日にKの元に相談に訪れている。Lはすぐにでも帰りたいが、卒業には試験を受けなればならず、かといって祖母のことが気になり勉強の手につかない状況である。問われているのは、Kがこの相談を最初に受けた「この時点での応答」である。ここでは、まずは、受容、傾聴に努めるべきである。
問題106 事例を読んで、V児童養護施設のM児童指導員(社会福祉士)が用いた面接技法の組合せとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Aさん(11歳、女性)は、10歳からネグレクトによってV児童養護施設に入所していた。1か月後に施設を退所し.実母と再婚相手の3人での生活が始まる予定である。ある日、M児童指導員に、Aさんがうつむきながら、「前の学校に戻れるのはうれしいけれども、家には本当は帰りたくない」とつぶやいた。M児童指導員は、少し間をおいてから.「家には本当は帰りたくない…。その気持ちをもう少し教えてほしいな」と静かに伝えた。
1 「繰り返し」と「言い換え」
2 「繰り返し」と「開かれた質問」
3 「言い換え」と「要約」
4 「要約」と「閉じられた質問」
5 「要約」と「開かれた質問」
1は×である。Mは「言い換え」はしていない。
2は〇である。
Mが行った「家には本当は帰りたくない…」の部分はAの発言を繰り返したものであり、「その気持ちをもう少し教えてほしいな」との発言は「開かれた質問」になる。
3は×である。Mは、「言い換え」も「要約」も用いていない。
4は×である。Mの問いかけは、「開かれた質問」である。
5は×である。Mは「要約」はしていない。
正解2
基本的な知識で正解できる問題である。選択肢の中でもっとも多く用いられているのは「要約」であるが、そこに惑わされないようにしたい。㉞問108参照。
問題107 相談援助における面接等の実際に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 受理面接では、信頼関係が既に形成されているので、クライエントの不安は除去されている。
2 生活場面面接では、クライエントの問題となった生活場面を再現することから始める。
3 電話での相談では、ソーシャルワーカーからの積極的な助言や指導を中心にする。
4 面接室での面接では、ソーシャルワーカーが行う情報収集に役立つ範囲で、時間や空間を設定する。
5 居宅での面接では、クライエントの生活環境の把握が可能である。
1は×である。
受理面接は、クライエントの相談を受け付けるかどうかの場面である。
2は×である。
生活場面面接とは、クライエントの生活場面で行われる面接のことである。例えば、居室や施設、病院の食堂などで行う面接であり、クライエントの問題となった生活場面を再現することから始めるわけではない。
3は×である。電話での相談でも、まずは受容、傾聴が基本である。
4は×である。
信頼関係の構築のためにも、共に存在する時間と空間を大切にすることが大切であり、ソーシャルワーカーが行う情報収集に役立つ範囲で、時間や空間を設定すればよいというものではない。
5は〇である。
正解5
3,4の選択肢は28回以降の本試験では見つけられなかった。こうした問題では、相談援助の基本から考えて、その場で選択肢の当否を判断することが必要である。
問題108 事例を読んで、W認知症疾患医療センターで働くB若年性認知症支援コーディネーター(社会福祉士)のクライエントへの対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Cさん(45歳、男性)は、仕事の失敗が増えたことを思い悩み、「周りに迷惑をかけたくない」と4か月前に依願退職した。その2か月後にW認知症疾患医療センターで若年性認知症と診断された。今月の受診日にCさんが相談室を訪れ.「子どももいるし、教育にもお金がかかります。妻も働いてくれているが、収入が少なく不安です。働くことはできないでしょうか」と話すのを、B若年性認知症支援コーディネーターはCさんの気持ちを受け止めて聞いた。
1 他の若年性認知症の人に紹介したものと同じアルバイトを勧める。
2 認知症対応型通所介護事業所に通所し、就労先をあっせんしてもらうよう勧める。
3 障害年金の受給資格が既に生じているので、収入は心配ないことを伝える。
4 元の職場への復職もできますから頑張りましょうと励ます。
5 病気を理解して、対応してくれる職場を一緒に探しませんかと伝える。
1は×である。
Gが当該職場に向いているかどうかも確認せず、安易に同じアルバイトをすすめるのは適切とはいえない。
2は×である。
認知症対応型通所介護は、介護保険の地域密着型サービスの一つであり、就労先をあっせんするところではない。
3は×である。
問題文からCについては、障害基礎年金の受給の可否を検討することになると思われるが、保険料納付要件が満たされているかも明らかでないし、障害基礎年金2級の状態にも該当しないと考えられる。したがって、「障害年金の受給資格が既に生じているので、収入は心配ない」との発言は適切とは言えない。
4は×である。
Aはすでに依願退職しており、会社に復職できるかどうかは定かでない(通常は困難であろう)。
5は〇である。
正解5
選択肢3の判断に迷った受験生が多かったのではないだろうか。
問題109 ソーシャルワークにおけるアウトリーチに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 相談機関を訪れたクライエントが対象になる。
2 援助の労力が少なく効率的な活動である。
3 自ら援助を求めない人への関わりとして有効である。
4 住民への関わりや広報を必要としない活動である。
5 援助開始前に行われ、援助開始後においては行われない。
1は×である。アウトリーチは、援助者側がクライエントのところに赴くものである。
2は×である。1の解説参照。
3は〇である。
4は×である。1の解説参照。
5は×である。援助開始後においても行われる。
正解3
アウトリーチの意味さえ理解していれば解ける問題である。㉜問97、㉛問110参照。
問題110 ソーシャルサポートネットワークに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 自然発生的なネットワーク内に関与していく場合と、新しいネットワークを形成する場合がある。
2 ソーシャルサポートを提供する組織間のつながりを強めることを第一義的な目的とする。
3 家族、友人、知人、近隣住民から提供される支援の総体と定義される。
4 インフォーマルなサポートよりも、フォーマルなサービスの機能に着目して活性化を図る。
5 情報による支援や物的手段による支援からなり、ソーシャルメディアの利用を目的としている。
1は〇である。
2は×である。
組織間のつながりを強めることではなく、クライエントとソーシャルサポートネットワークとのつながりを強めることが主たる目的であろう。
3は×である。
ソーシャルサポートネットワークは、個人をとりまく家族、友人、近隣、ボランティアなどによる援助(インフォーマルサポート)と公的機関やさまざまな専門職による援助(フォーマルサポート)に基づく援助関係の総体を指す。
4は×である。
フォーマルサポートは、クライエントのインフォーマルな社会関係を補完する役割にある。
5は×である。肢3の解説参照。
正解1
㉞問38肢5、㉙問114、㉘問114で出題されている。解説に書いた特徴を押さえておく。肢1の記述がぴんと来ないときは、消去法を用いる。
問題111 ソーシャルワークにおけるグループワークに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 グループワークとは、複数の人を対象に行う集団面接のことである。
2 グループの開始期において、ソーシャルワーカーはグループの外から見守る。
3 グループワークでは、「今、ここで」が大切なので、事前準備は控える。
4 グループワークにおけるプログラム活動の実施は、手段ではなく目的である。
5 グループワークは、個々のメンバーの社会的に機能する力を高めるために行う。
1は×である。
グループワークは、直接援助技術の一つであり、集団面接ではない。
2は×である。
開始期は援助関係を形成する段階であり、援助の枠組みを明確にする段階である。メンバーの行動に対して制限を加えることもある(㉞問111参照)。なお、契約の締結も開始期に行われることを押さえておこう(㉚問113参照)。
3は×である。グループワークには、準備期もある。
4は×である。
グループワークの目的は、参加者の主体性と協調性を高めることにあり(肢5参照)、プログラム活動の実施は、目的ではなく手段である。
5は〇である。
正解5