問題 98 ソーシャルワーク実践におけるシステム理論の考え方に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ピンカス (Pincus, A.)とミナハン(Minahan, A.)の実踐モデルにおけるターゲットシステムは、目標達成のために、ソーシャルワーカーと協力していく人々を指す。
2 開放システムの変容の最終状態は、初期条件によって一義的に決定される。
3 システムには、他の要素から正負のフィードバックを受けることで、自己を変化・維持させようとする仕組みがある。
4 クライエントの生活上の問題に関し、問題を生じさせている原因と結果の因果関係に着目する。
5 家族の問題に対して、課題を個々の家族員の次元で捉え、個々人に焦点を当てたサービスを提供する。
★★
1は×である。
「目標達成のために、ソーシャルワーカーと協力していく人々」はワーカーシステムまたはチェンジ・エージェント・システムである。
2は×である。
開放システムとは、システムが他の様々なシステムと相互関係をもち、それによってシステム内部に変化が起きるものをいう。そのため変容の最終状態は、初期条件によって一義的に決定されるものではない。
3は〇である。
人間の体をシステムとして捉えた場合、ホメオスタシスが良い例である。
4は×である。
システム理論では、システムの要素は相互に関連し、循環しているため、原因を一つに特定することができない(円環的因果律)。そのため、説明のような手法を取らない。なお、解決志向アプローチは、システム理論と親和性がある。
5は×である。
システム理論では、課題を個々の家族員の次元で捉え、個々人に焦点を当てることはしない。
正解3
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
システム理論は、㉞問98、㉜問98、㉙問98などで出題されている。システム理論について何となくでもイメージできれば、2と5が誤りであることには気づける。
問題 99ソーシャルワークの実暖モデルに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 生活モデルは、問題を抱えるクライエントの人格に焦点を絞り、問題の原因究明を重視する。
2 生活モデルは、人と環境の交互作用に焦点を当て、人の生活を全体的視点から捉える。
3 治療モデルは、人が疎外される背景にある社会の抑圧構造に注目する。
4 治療モデルは、問題を抱えるクライエントのもつ強さ、資源に焦点を当てる。
5 ストレングスモデルは、クライエントの病理を正確に捉えることを重視する。
★★
㉞問99、㉝問106参照。
1は×である。
治療モデルに関する記述である。
2は〇である。
ジャーメイン(Germain, C.)は、ギッターマン(Gitterman,A)とともに、生態学(エコロジー)、エコシステムを主な基本理論とした「生活モデル」を提唱した。生態学は、生物と環境、または生物同士の相互作用を理解しようとする学問である。
3は×である。
エンパワメントアプローチについての説明である。㉞問100参照。
4は×である。
ストレングスアモデルの説明である。
5は×である。
ストレングスモデルが焦点を当てるのは、クライエントの病理ではなく強みである。説明は、治療モデルについての記述である。
正解2
問題100 ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 機能的アプローチでは、4つのPを実践の構成要素として、クライエントのコンピテンス、動機づけとワーカビリティを高めることを目指す。
2 問題解決アプローチでは、女性にとっての差別や抑圧などの社会的現実を顕在化させ、個人のエンパワメントと社会的抑圧の根絶を目指す。
3 ユニタリーアプローチでは、ソーシャルワーカーが所属する機関の機能と専門職の役割機能の活用を重視し、クライエントのもつ意志の力を十分に発揮できるよう促すことを目指す。
4 実存主義アプローチでは、クライエントが自我に囚われた状態から抜け出すために、他者とのつながりを形成することで、自らの生きる意味を把握し、外からの解放を目指す。
5 フェミニストアプローチでは、システム理論に基づいて問題を定義し、ソーシャルワーカーのクライエントに対する教育的役割を重視し、段階的に目的を達成することを目指す。
★★★
1は×である。
説明部分は、問題解決アプローチについてのものである。
2は×である。
説明部分は、フェミニストアプローチについてのものである。
3は×である。
説明部分は、機能的アプローチについてのものである。
4は〇である。
5は×である。
説明部分は、ユニタリーアプローチについてのものである。
正解4
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
交差法を用いれば、比較的簡単に解ける。1の機能的アプローチは3の説明部分と、2の問題解決アプローチは1の説明部分と、5のフェミニストアプローチは2の説明部分とつながる。
これで、1,2,3,5が誤りとわかり、残る4を選ぶ。なお、3のユニタリーアプローチに対応するのは、5の説明部分である。ユニタリーアプローチは㉖問99肢2で登場しているが、意味をきちんと押さえていた人は少なかったのではないだろうか。
問題 101 事例を読んで、就労継続支援B型事業所のE職員(社会福祉士)が、クライエントに危険が及ぶような行動を減らすために、行動変容アプローチを応用して行う対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
知的障害があるFさん(20歳)は、作業中に興味があるものが目に入ると勢いよく外に飛び出してしまうことや、作業時間中でも床に寝転がること等の行動が度々あった。寝転がっているところに起き上がるよう声かけを行うと、引っ張り合いになっていた。Fさんのこれらの行動は、職員や仲間からの注目・関心を集めていた。そこで、Eは、Fさんが席に座って作業を継続することを目標行動にして支援を開始した。
1 Fさんが何かに気を取られて席を立つたびに、報酬を与える。
2 支援を始めて1か月後に、目標行動の変化を評価しベースラインをつける。
3 不適切行動のモデリングとして、職員が寝転がって見せる。
4 作業が継続できるたびにベルを鳴らし、ベルの音と作業を条件づける。
5 寝転がる前の先行条件、寝転がった後の結果といった行動の仕組みを分析する。
★★
1は×である。
席を立つたびに報酬を与えると、席を立つ行動が増加してしまう。これはFに危険が及ぶような行動を増やすことになる。
2は×である。
3は×である。
不適切行動の減少にはつながらないと考えられる。
4は×である。
作業を継続できるたびにベルをならしても、それが作業継続の強化につながる可能性は低い。
5は〇である。
正解5
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
行動変容アプローチは、利用者の問題行動の原因や動機は探求せず、問題行動そのものを取り上げて、特定の問題行動の変容を目標にして働きかけるものである。スキナーの学習理論やオペラント条件付けによる強化によって適応行動を増やしていく。バンデューラの社会的学習理論(モデリング理論)も取り入れられている。㉟問99、㉙問101、㉙問102、㉘問101参照。
問題 102 事例を読んで、乳児院のG家庭支援専門相談員(社会福祉士)が活用するアセスメントツールに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
一人暮らしのHさんは、慢性疾患による入退院を繰り返しながら出産したが、直後に長期の入院治療が必要となり、息子は乳児院に入所となった。Hさんは2か月前に退院し、職場にも復帰したので、息子と一緒に暮らしたいとGに相談した。ただ、「職場の同僚ともうまくいかず、助けてくれる人もいないので、一人で不安だ」とも話した。そこでGは、引き取りに向けて支援するため、アセスメントツールを活用することにした。
1 同僚との関係を整理するために、ジェノグラムを作成する。
2 息子の発育状況を整理するために、エコマップを作成する。
3 周囲からのサポートを整理するために、エコマップを作成する。
4 自宅周辺の生活環境を整理するために、ソシオグラムを作成する。
5 Hさんの病状を整理するために、ソシオグラムを作成する。
★★★
1は×である。
ジェノグラムは、3 世代以上の家族を図式化し,世代間の人間関係の構造を明らかにする。ジェノグラムを作成しても、同僚との関係は整理できない。
2は×である。
エコマップは、本人を中心に関連する人や社会資源の関係を図式化したものであり、息子の発育状況の整理ためのアセスメントツールには適しない。
3は〇である。
4は×である。
ソシオグラムは、グループメンバー間のつながり,構造,関係のパターンを図式化するものである。自宅周辺の生活環境を整理するのには適しない。
5は×である。
Hさんの病状を整理するのに、ソシオグラムは適しない。
正解3
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
㉛問104、㉙問118に関連する知識が出題されている。
問題 103 ソーシャルワークのプランニングにおける、目標の設定とクライエントの意欲に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ソーシャルワーカーが、独自の判断で高い目標を設定すると、クライエントの意欲は高まる。
2 クライエントが自分でもできそうだと思う目標を段階的に設定すると、クライエントの意欲は低下する。
3 クライエントが具体的に何をすべきかがわかる目標を設定すると、クライエントの意欲が高まる。
4 クライエントにとって興味がある目標を設定すると、クライエントの意欲は低下する。
5 最終的に実現したい生活像とは切り離して目標を設定すると、クライエントの意欲が高まる。
★★★
1は×である。
ソーシャルワーカーがクライエントと共同で目標の設定を行うことにより、クライエントの意欲が高まる。ソーシャルワーカーが、独自の判断で高い目標を設定しても、クライエントの意欲が高まるとは限らない。
2は×である。
達成できそうな目標であれば、クライエントの意欲は高まると考えられるので、目標を段階的に設定することにより、クライエントの意欲は高まる可能性が高い。
3は〇である。
4は×である。
クライエントにとって興味がある目標を設定すれば、クライエントの意欲は高まる可能性が高い。
5は×である。
最終的に実現したい生活像と切り離して目標を設定すれば、クライエントの意欲が低下する可能性が高い。
正解3
問題 104 次の事例は、在宅療養支援におけるモニタリングの段階に関するものである。この段階におけるJ医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)の対応として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Kさん(60歳)は、呼吸機能に障害があり病院に入院していたが、退院後には自宅で在宅酸素療法を行うことになった。Kさんとその夫は、在宅療養支援診療所のJと話し合いながら、訪問診療、訪問看護、訪問介護等を導入して自宅療養体制を整えた。療養開始後1か月が経ち、Jはモニタリングを行うことにした。
1 Kさんに「自宅での療養で困っていることはありますか」と聞き、新たな要望やニーズの有無を確認する。
2 Kさんの夫に「病気になる前はどのように暮らしていましたか」と聞き、Kさんの生活歴を確認する。
3 訪問介護員に「医療上、何かすべきことはありますか」と医療的ケアの課題を確認する。
4 主治医に「入院前の病状はいかがでしたか」と過去の治療状況を確認する。
5 訪問看護師に「サービス実施状況はどうですか」と経過や課題を確認する。
★★
1は○である。
療養開始後1か月が経った段階で、新たな要望やニーズの有無を確認することはJの対応として適切なものといえる。
2は×である。
JがKの生活歴を知らなければ、このような質問をすることも考えられる。しかし、こうした質問は、自宅療養体制を整える前の段階で行っておくべきものといえる。
3は×である。
医療的ケアの課題について、訪問介護員に確認するのは適切ではない。
4は×である。
過去の治療状況については、自宅療養体制を整える前の段階で行っておくべきものといえる。
5は×である。
療養開始後1か月が経った段階で、訪問看護師にサービス実施状況について、経過や課題を確認することは適切なものといえる。
正解1,5
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
迷った選択肢があれば、他の肢と比較して、より適切なものを探す。