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16.相談援助の理論と方法(R5年2月-第35回)1/3

問題98 事例を読んで、R市子ども福祉課の社会福祉士が行う、家族システムの視点に基づいた今後の対応として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Jさん(15歳)は、小学6年生の時に父親を交通事故で亡くした後、母親(37歳)と母方の祖母(58歳)の3人で暮らしている。母親は、朝から夜中まで働いているため、家事全般は祖母が担っている。Jさんは、中学生になった頃から、祖母へ暴言を吐くようになり、最近は家の中で暴れたり、家に帰ってこなかったりするようになった。祖母は途方に暮れ、友人でもある近所の民生委員・児童委員に相談すると、R市子ども福祉課の相談窓口を紹介され、来所につながった。

1 祖母に思春期の子への対応方法を学習する機会を提供する。
2 家族の凝集性の高さが問題であるため、母親に祖母との距離を置くよう求める。
3 家族関係を理解するため、3人の互いへの思いを尋ねていく。
4 家族システムを開放するため、Jさんの一時的別居を提案していく。
5 家族の規範を再確認するため、それぞれの役割について話し合う機会を設ける。

1は×である。
対応としては適切であるが、家族システムの視点に基づいた今後の対応とはいえない。
2は×である。
家族システムの視点に基づくが、内容が適切とはいえない。母親は朝から夜中まで働いているのであるから、母親と祖母との凝集性は高くない。もし、祖母にJとの距離を置くよう求めたのであれば、適切な対応となりえた可能性がある。
3は〇である。
家族システムを解明するために3人の互いへの想いを尋ねることは、適切な対応といえる。
4は×である。
5は〇である。
家族システムを解明するためにそれぞれの役割について話合う機会を設けることは、適切な対応といえる。

正解3,5
問われているのは、「家族システムの視点に基づいた今後の対応」として適切なものは、いずれかである。 類題に㉜問100がある。また、家族システム論の理解のためには、㉜問99を見ておくとよい。

問題99 ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 行動変容アプローチでは、クライエントの主体的な意思決定や自己選択が重視され、自分の行動と決定によって生きる意味を見いだすことを促す。
2 問題解決アプローチでは、クライエントのニーズを機関の機能との関係で明確化し、援助過程の中で、社会的機能を高めるための力の解放を焦点とする。
3 実存主義アプローチでは、その接触段階で、クライエントの動機づけ・能力・機会についてのソーシャルワーカーからの探求がなされる。
4 ナラティヴァプローチでは、クライエントのドミナントストーリーを変容させることを目指し、オルタナティヴストーリーを作り上げ、人生を再構築するよう促す。
5 機能的アプローチでは、ターゲット問題を明確化し、クライエントが優先順位をつけ、短期処遇を目指す。

1は×である。説明部分は、実存主義アプローチ(肢3)に関するものである。
2は×である。説明部分は、機能的アプローチ(肢5)に関するものである。
3は×である。説明部分は、ワーカビリティの探求に関わるものだと思われるが、いずれのアプローチの特徴とはいえない。
4は○である。
5は×である。
本肢を問題解決アプローチと結びつけた人もいると思われるが、説明部分は、課題中心アプローチに関するものだと思われる。

正解4
㉞問100、㉛問103参照。過去問学習を通じて、それぞれのアプローチの特徴を押さえておく。各アプローチのキーワードを押さえておくと問題を解くのに役立つ。また、交差法を用いて選択肢を絞るのもよい。本問の場合、1-3、2-5の交差に気付けば、それだけで正解を導くことができる。

問題100 エンパワメントアプローチに関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 クライエントが持つ資源より、それ以外の資源を優先して活用する。
2 クライエントのパーソナリティに焦点を絞り、行動の変化を取り扱う。
3 クライエントのパワーレス状態を生み出す抑圧構造への批判的意識を醸成する。
4 個人、対人、組織、社会の四つの次元における力の獲得を目指す。
5 クライエントが、自らの置かれた社会状況を認識しないように注意する。

1は×である。
エンパワメントアプローチは、クライエントの能力を高めるものであり、クライエントの持つ資源以外の資源を優先するものではない。
2は×である。パーソナリティに焦点を絞るものではない。
3は〇である。
4は○である。コックスらが指摘した四つの次元が示されている。
5は×である。
エンパワメントアプローチでは、クライエントが自らの置かれた状況を正しく認識するところから始まる。

正解3,4
エンパワメントアプローチは、クライエントが,自分の置かれている否定的な抑圧状況を認識し,自らの能力に気付き,その能力を高め,問題に対処することを目指すものである(㉛問103、㉚問103参照)。
この特徴を押さえていれば、3が正しく、1,2,5が誤りであることは判断できたと思われる。その結果、4について檀独で判断できなくても、正解を導くことができる。

問題101 相談援助の過程におけるプランニングに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 アセスメントと相談援助の実施をつなぐ作業である。
2 短期目標は、将来的なビジョンを示すものとして設定する。
3 家族の要望に積極的に応えるような計画を立てる。
4 生活状況などについて情報収集し、サービス受給要件を満たしているかを確認することである。
5 クライエントの課題解決能力を超えた課題に挑戦するよう策定する。

1は〇である。
相談援助の流れを考えると、アセスメント→プランニング→実施という経過をたどるので、選択肢のように言い換えることができる。
2は×である。将来的なビジョンを示すものは、長期目標である。
3は×である。まずは利用者の要望に積極的に応えるべきである。
4は×である。アセスメントの説明である。
5は×である。実現不可能な課題ではなく、利用者が実現可能な課題とすべきである。

正解1

問題102 相談援助の過程におけるモニタリングに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 文書や電話ではなく、クライエントとの対面で行うものである。
2 モニタリングの内容を記録に残すよりも、情報収集に集中することを重視する。
3 モニタリングの対象には、クライエントやその家族とともに、サービス提供者等の支援者も含まれる。
4 クライエントの主観的変化よりも、生活状況等の客観的変化の把握を重視する。
5 モニタリングは、インテークの途中で実施される。

1は×である。
本来は対面で行うべきであるが、文書や電話で行ってはいけないとまでは言えない。
2は×である。
情報収集に集中することは大切だが、記録に残すことも重要である。
3は〇である。
4は×である。クライエントの主観的変化の把握が重視される場合もある。
5は×である。
インテークは、援助を求めて相談機関を訪れたクライエントに、ソーシャルワーカーなどが行う最初の段階の面接である。受理面接とも訳されていることからわかるように、相談援助を受理するかどうかの段階なので、ここではモニタリングは実施されない。

正解3
「最も適切なもの」を選ばせる問題では、できれば1回はすべての選択肢に目を通した方がよい。選択肢を比較しないと最も適切なものは判断できないからである。本問であれば、1を読んだ時点で正解を決めてしまった人も多かったと思われる。

問題103 相談援助の過程における終結に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ソーシャルワーカーが、アセスメントを行い判断する。
2 残された問題や今後起こり得る問題を整理し、解決方法を話し合う。
3 クライエントのアンビバレントな感情のうち、肯定的な感情に焦点を当てる。
4 クライエントは、そのサービスを再利用しないことを意味する。
5 問題解決の過程におけるソーシャルワーカーの努力を振り返る。

1は×である。㉞問105参照。
2は○である。前出㉞問105肢1参照。
3は×である。否定的な感情にも焦点を当てないといけない場合も考えられる。
4は×である。終結後も、そのサービスを再利用してはいけないわけではない。
5は×である。
肢2にあるように、終結は、残された問題や今後起こり得る問題を整理し、解決方法を話し合うためのものであり、ソーシャルワーカーの努力を振り返るためのものではない。

正解2

問題104 ソーシャルワークにおける援助関係に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 転移とは、ソーシャルワーカーが、クライエントに対して抱く情緒的反応全般をいう。
2 統制された情緒的関与とは、ソーシャルワーカーが、自らの感情を自覚し、適切にコントロールしてクライエントに関わることをいう。
3 同一化とは、ソーシャルワーカーが、クライエントの言動や態度などに対して、自らの価値観に基づく判断を避けることをいう。
4 エゴグラムとは、ソーシャルワーカーが、地域住民同士の関係について、その相互作用を図式化して示すツールをいう。
5 パターナリズムとは、ソーシャルワーカーが、クライエントの意思に関わりなぐ本人の利益のために、本人に代わって判断することをいう。

1は×である。
転移とは, クライエントが自己の感情をソーシャルワーカーに向けることを表す。㉜問107肢3参照。
2は○である。
統制された情緒的関与は、バイステックの7原則の1つである。㉞問116参照。
3は×である。
同一化とは、個人が人格(自我,超自我)を形成する基本的な機制で,他者の諸特性を自己のものとし,それに従って変容する心理的過程をいう。防衛機制で取り上げられる用語の一つである。説明文は、あえて分類するなら、回避についての説明といえる。
4は×である。
説明はソシオグラムに関するものだと思われる。エゴグラムは、人の心を5つに分類し、その5つの自我状態が放出する心的エネルギーの高さをグラフにしたものである。日本では、TEG(東大式エゴグラム)がよく知られている。
5は〇である。
パターナリズムの語源は、ラテン語の「patel(パテル)」である。対義語は、マターナリズムであるが、福祉の用語で度々出てくるのはもっぱらパターナリズムの方である。なお、マターなリズムの意味は、相手の同意を得て、寄り添いつつ進む道を決定していくという方針を意味する。

正解2,5

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