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15.相談援助の基盤と専門職(R6年2月-第36回)

問題 91 社会福社士及び介護福祉士法における社会福祉士の義務等に関連する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 後継者の育成に努めなければならない。
2 秘密保持義務として、その業務に関して知り得た人の秘密は、いかなる理由があっても開示してはならない。
3 社会福祉士の信用を傷つけるような行為を禁じている。
4 社会福祉士ではなくとも、その名称を使用できる。
5 誠実義務の対象は、福祉サービスを提供する事業者とされている。

★★
㉜問91、㉙問91参照。
1は×である。
㉜問91肢1参照。
2は×である。
正当な理由があれば、開示することが許される(法46条)。
3は〇である(法45条)。
4は×である。
社会福祉士でない者は、社会福祉士という名称を使用してはならない(法48条)。
5は×である。
「その担当する者」すなわちクライエントが対象である(法44条の2)。

正解3

問題 92 次の事例を読んで、福祉事務所に勤務するK職員(社会福祉士)が取り組む様々な対応のうち、メゾレベルの対応として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
L民生委員は、Mさん(45歳)の件で市の福祉事務所を訪れ、Kに相談をした。Mさんは勤め先を3年前に人員整理で解雇されてからは仕事をせず、親が残してくれた自宅で一人、昼夜逆転の生活をしているとのことであった。現時点では、Mさんには緊急の要保護性は感じられないが、仕事をしておらず、生活費が底をつく心配がある。Mさんは「今すぐに仕事をする自信はないが、今後に備えて相談をしたい」と望んでおり、Mさんの了解のもとに相談に訪れたとのことであった。

1 中高年を対象とする就労支援制度の課題を、所属機関を通して国に提示する。
2 相談意欲のあるMさんと相談援助の関係を樹立する。
3 Mさんに対して、生活費を確保するために、不動産担保型生活資金を検討するよう勧める。
4 市内の事業所に対して、Mさんのような中高年者が利用可能な自立相談支援に関する事業の実施状況の情報を収集する。
5 L民生委員からの情報をもとに、同様の事例に関する今後の支援について、所内で検討する。

★★★
1は×である。
マクロレベルである。
2は×である。
ミクロレベルである。
3は×である。
ミクロレベルである。
4は〇である。
メゾレベルである。
5は〇である。
メゾレベルである。

正解4,5

🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
㉞問95、㉜問106で出題されている。ミクロ<メゾ<マクロの大まかな理解があれば、正解を導くことができる。メゾレベルを積極的に選ぶよりも、ミクロ、マクロのレベルのものを消去した方が、答えを導きやすい。

問題 93 「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014年)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 人間尊重、人間の社会性、変化の可能性の3つの価値を前提とした活動である。
2 人、問題、場所、過程を構成要素とする。
3 価値の体系、知識の体系、調整活動のレパートリーを本質的な要素とする。
4 ソーシャルワーク実践は、価値、目的、サンクション、知識及び方法の集合体である。
5 社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進すね。
(注)「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」とは、2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IF SW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IA S.SW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。

★★
1は×である。
ブトゥリムが示したソーシャルワークの3つの基本的価値前提である。㉖問93参照。
2は×である。
パールマンの4つのPである。
3は×である。
バートレットがソーシャルワーク実践の共通基盤で挙げた3要素である。
4は×である。
NASWは、1958年に『ソーシャルワーク』(№2)4月号で。作業定義として、「ソーシャルワーク実践は、他の専門職の実践同様、①価値、②目的、③サンクション、④知識、⑤方法、からなる一つの集合体(constellation)」からなるとした。平塚良子(2014)「ソーシャルワーク実践の認識構造「7次元統合体モデル」の意義と意味」西九州大学健康福祉学部紀要:18参照。
5は〇である。

正解5

🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
㉟問92、㉝問92、㉛問92、㉚問92、㉙問92、㉘問92と繰り返し問われているテーマである。本問は、㉚問92が印象に残っている人には解きやすかったであろう。

問題 94 障害者の自立生活運動に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 当事者が人の手を借りずに、可能な限り自分のことは自分ですることを提起している。
2 ピアカウンセリングを重視している。
3 施設において、管理的な保護のもとでの生活ができることを支持している。
4 当事者の自己決定権の行使を提起している。
5 危険に挑む選択に対して、指導し、抑止することを重視している。

★★
障害者の自立生活運動は、1960年代にアメリカから始まり、1970年代に世界的に広がった。
一度は目にしているだろうが、内容について細かく押さえていた人は少ないと思われる。選択師をみながら、消去法を駆使して解くのがよい。
肢3は施設での生活を支持するものだが、これは明らかに誤りとわかる。肢4は正しいとすぐに判断できる。肢5はパターナリズムを強調するものであり、これも誤りとわかる。
肢4が適切として、あと一つ適切なものを肢1と肢2のいずれかから選ぶ必要がある。
肢1は人の手を借りずに自分のことは自分ですることを強調しているが、自立生活運動は、障害者自身が自立のための道を探り、必要なサービスを利用するという考え方が基本としている。
このことからすると、肢1よりも肢2の方が適切だと判断できる。以上から、2と4を選ぶ。

正解2,4

🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
選択肢の正誤を一つずつ機械のように振り分ける必要はない。考えながら正解にたどりつければよい。肢1と肢2のいずれが良いかについて、解説のように明確な理由づけができる必要はない。
肢1と肢2を比較して、肢1は何となくしっくりこないから肢2を選ぶというのでも構わない。

問題 95 ソーシャルワークを発展させた人物に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 レヴィ(Levy, C.)は、倫理とは、人間関係とその交互作用に対して価値が適用されたものであるとした。
2 トール(Towle, C.)は、ジェネラリストの観点からソーシャルワークの統合化を図り、ジェネラリスト・ソーシャルワークを提唱した。
3 アプテカー(Aptekar, H.)は、相互連結理論アプローチを提唱し、それぞれの理論は相互に影響を及ぼし合い、結びついていると論じた。
4 ジョンソン(Johnson, L.)は、社会的目標を達成するために不可欠な要素として、4つの基本的ニーズを提示した。
5 ターナー(Turner, F.)は、機能主義の立場に立ちつつ、診断主義の理論を積極的に取り入れ、ケースワークとカウンセリングを区別した。


1は〇である。
レヴィ(Levy,C.)は、倫理を人間関係及びその交互作用に価値が適用されたものと規定し、人間関係における行動に直接影響を及ぼす点に特色があると述べている。㉓問88肢4参照。
2は×である。
ジェネラリスト・ソーシャルワークを提唱したのは、バートレットである。トール(Towle, C.)は、心理社会的アプローチの流れを汲む研究者の一人であり、著書に「ヒューマン・ベーシック・ニーズ」がある。ハミルトン→トール→ホリスの流れを覚えておくと問題を解くときに役立つ。㉗問101肢1参照。
3は×である。
相互連結理論アプローチを提唱したのは、ターナー(Turner, F.)である。アプテカーは。著書の『ケースワークとカウンセリング』(1955)の中で、2つの違いを強調した。肢5の説明部分は、アプテカーについて述べたものである。
4は×である。
ジョンソンは、福祉多元主義や福祉の混合経済の提唱者であり、社会サービスの供給部門として、「国家」、「営利」、「ボランタリーおよびコミュニティ」、「インフォーマル」部門をあげた。なお、肢4の説明部分は、ブラッドショーのものだと思われる。
5は×である。
説明部分はアプテカ―に関するものである。ターナーの業績は、肢3の相互連結理論アプローチを提唱したことである。

正解1

🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
レヴィについては、古い過去問でそのまま出題されている肢がある。本問は、どちらかというとあまりなじみのない人名が多い。㉜問96、㉘問96参照。 説明部分から誤りと判断できる肢もある(2と4)が、肢3と5の人名と説明部分の交差に気づいた人は少なかったのではないだろうか。

問題96 事例を読んで、X小学校に配置されているAスクールソーシャルワーカー(社会福祉士)が、Bさんの意思を尊重することに対する倫理的ジレンマとして、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Aは、2学期に入ったある日、暗い顔をしているBさん(小学5年生)に声をかけた。Bさんは、初めは何も語らなかったが、一部の同級生からいじめを受けていることを少しずつ話し出した。そして、「今話していることが知られたら、ますますいじめられるようになり、学校にいづらくなる。いじめられていることは、自分が我慢すればよいので、他の人には言わないで欲しい」と思いつめたような表情で話した。

1 クライエントの保護に関する責任
2 別の小学校に配置されているスクールソーシャルワーカーに報告する責任
3 学校に報告する責任
4 保護者会に報告する責任
5 いじめている子の保護者に対する責任

★★
㉜問96、㉘問96参照。
倫理的ジレンマとは、どちらが、明らかに正しく、 どちらかが明らかに間違っている、 とはいえない微妙な倫理的価値の対立を意味する。
「他人に言わないで欲しい」というBの意思を尊重することは、クライエントの保護(肢1)である。だが、Aは所属機関である学校にBのことについて報告する責任がある(肢3)。
本問で倫理的ジレンマとして適切なものは、肢1と肢3である。

正解1,3

問題 97 次の事例の場面において、複数のシステムの相互作用をもたらすシュワルツ(Schwartz, W.)の媒介機能を意図した支援として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
自閉傾向のあるCさん(10歳)の母親が、市の子育て支援課の窓口に久しぶりに相談に来た。D相談員(社会福祉士)がCさんについて、この間の様子を聞いたところ、言語的なコミュニケーションは少ないが、最近は絵を描くことが好きになってきたとのことであった。

1 次回面接では親子で来所することと、Cさんの描いた絵を持ってくるよう依頼した。
2 親子で共通する話題や目的をつくるために、市主催のアートコンクールに出展する絵を描くよう勧めた。
3 絵によるコミュニケーションカードを親子で作成し、日常生活で使うよう勧めた。
4 市内にある大きな文房具店を紹介し、親子で一緒に絵を描く道具を見に行くことを勧めた。
5 障害児と親が活発に参加している絵画サークルに親子で参加し、児童や親達と交流することを勧めた。

★★
媒介とは、2つかそれ以上の人や物の間に位置どり、双方が関係を持つために必要な中継地点として機能すること、および、そのような役割をするもののことであり、2つ以上の事物や現象が互いに関連付けられるための中間的な存在を指す言葉である。シュワルツ(Schwartz, W.)は、グループワーカーの機能を「個人と社会が互いに手を差し伸べる過程を媒介すること」とした。
1は×である。
媒介はなされていない。
2は×である。
媒介はなされていない。
3は×である。
媒介はなされていない。
4は×である。
文房具店とC親子を媒介しているようにもみえるが、単に絵を描く道具が売っている場所として文房具店に行くことをすすめただけであり、双方が関係を持つことを意図していない。
5は〇である。
C親子と当該絵画サークルとが関係を持つための中継地点として機能している。

正解5

ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
シュワルツ(Schwartz, W,)は個人と社会の関係は共生的な相互依存関係であるとし, ソーシャルワーカーの媒介機能を重視する相互作用モデルを展開した(㉜問93肢3参照)。シュワルツの媒介機能について知らなかったとしても、「媒介」という言葉からイメージされるものを頼りに考えていけば、正解を見つけることは可能である。

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