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15.相談援助の基盤と専門職(R5年2月-第35回)

問題91 次の記述のうち、社会福祉士に関する説明として、適切なものを2つ選びなさい。
1 虐待に関わる相談は、社会福祉士が独占している業務である。
2 社会福祉士は、特定の職種の任用資格になっている。
3 社会福祉士の名称は、国家試験の合格をもって使用することができる。
4 社会福祉士でない者が社会福祉士の名称を使用した場合に罰則がある。
5 介護老人保健施設に社会福祉士を置かなければならない。

1は×である。虐待に関わる相談は、社会福祉士の独占業務ではない。
2は〇である。
試験で出題されたもに「福祉事務所の指導監督を行う所員及び現業を行う所員」がある。㉛問67肢5参照。
3は×である。
社会福祉士となる資格を有する者が社会福祉士となるには、社会福祉士登録簿に、氏名、生年月日その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない(社会福祉士及び介護福祉士法28条)。
4は○である。
社会福祉士でない者は、社会福祉士という名称を使用してはならず(前掲48条1項)、違反した場合には30万円以下の罰金に処せられる(同53条3号)。㉚問91肢1。
5は×である。
社会福祉士は必置の職種ではない。介護支援専門員は必置である(介護保険法97条2項)。

正解2,4

問題92 次のうち、「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014年)に関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 本定義は、各国および世界の各地域を問わず、同一であることが奨励されている。
2 ソーシャルワーク専門職は、社会変革を任務とするとともに社会的安定の維持にも等しく関与する。
3 ソーシャルワークの原則において、マイノリティへの「多様性の尊重」と「危害を加えない」ことは、対立せずに実現可能である。
4 ソーシャルワークの研究と理論の独自性は、サービス利用者との対話的過程とは異なるところで作り上げられてきた。
5 ソーシャルワークの焦点は多様であるが、実践における優先順位は固定的である。
(注)「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」とは、2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。

1は×である。
「この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい」ものとされている。
2は〇である。
「ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である」とされている。
3は×である。
グローバル定義の注釈で挙げられている例として、「女性や同性愛者などのマイノリティの権利(生存権さえも)が文化の名において侵害される場合」がある。
4は×である。
常識的におかしいと感じられれば十分であるが、このことについても注釈に書かれている。「多くのソーシャルワーク研究と理論は、サービス利用者との双方向性のある対話的過程を通して共同で作り上げられてきたものであり、それゆえに特定の実践環境に特徴づけられる。」
5は×である。
実践における優先順位は「固定的である」という部分が誤りである。

正解2
グローバル定義の注釈まで読んでいた人はどの位いたであろうか。知らない場合は、消去法で肢を絞りながら、もっとも無難な肢を選ぶようにする。㉝問92、㉜問92、㉛問92、㉚問92、㉙問92、㉘問92と頻出問題の一つになっている。

問題93 19世紀中期から20世紀中期にかけてのソーシャルワークの形成過程に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 エルバーフェルト制度では、全市を細分化し、名誉職である救済委員を配置し、家庭訪問や調査、相談を通して貧民を減少させることを目指した。
2 セツルメント運動は、要保護者の個別訪問活動を中心に展開され、貧困からの脱出に向けて、勤勉と節制を重視する道徳主義を理念とした。
3 ケースワークの発展の初期段階において、当事者を主体としたストレングスアプローチが提唱された。
4 ミルフォード会議では、それまで分散して活動していたソーシャルワーク関係の諸団体が統合された。
5 全米ソーシャルワーカー協会の発足時には、ケースワークの基本的な事柄を広範囲に検討した結果として、初めて「ジェネリック」概念が提起された。

1は〇である。
エルバ-フェルト制度が方面委員(後の民生委員)のモデルになっていることは知っておく必要がある。そこから少しイメージを膨らませれば、本肢が正しいと推測できる。
2は×である。
試験場では1か2のいずれかで迷った人もいたと思われる。セツルメント(※正確にはソーシャルセツルメント)とは。隣保館などと訳されることがあるが、社会教化事業を行う地域の拠点を指す。ここに気付けば、「要保護者の個別訪問活動を中心に展開され」の部分が誤りではないかと気づけるであろう。なお、COSの友愛訪問のことが思い浮かべば、より自信を持って本肢を誤りと判断できる。
3は×である。
ケースワーク発展の初期の段階といえば、第二次大戦前の話であり、その頃にストレングスアプローチは提唱されていないだろうと気づければよい。ちなみに、ストレングスモデルについて本試験で押さえておいて欲しいのは、サリービー、ラップ、ゴスチャの3人である。
4は×である。
1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まって,ケースワークについて毎年会議を行った。この会議はミルフォード会議と呼ばれる。1929年のミルフォード会議の報告書の名前は、「ソーシャル・ケースワーク―ジェネリックとスペシフィック」である。ここで述べられたのは、ケースワークは領域が違っても,基本的に必要な知識・技術は共通であること(ジェネリック・ソーシャル・ケースワークの重要性)である。
5は×である。
全米ソーシャルワーカー協会が発足したのは1955年である。初めてジェネリック概念が提起されたのは、それよりも前である(肢4の解説参照)。

正解1
4と5は、かなり細かい。

問題94 事例を読んで、Z障害者支援施設のF生活支援員(社会福祉士)がこの時点で行う支援方針の見直しに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
知的障害のあるGさん(35歳)は、日頃から言語的コミュニケーションは難しいところがあるが、Z障害者支援施設から離れた場所にある生家に一時外泊を行った。Gさんが施設に戻った際に、Gさんの家族から、外泊中の様子を伝えられた。自分から気に入った場所に遊びに出掛けたり、簡単な食事は自分で用意したりしていたとのことであった。F生活支援員にとっては、施設ではこれまで見掛けたことのなかったGさんの様子であった。

1 Gさんの支援は、施設と自宅では環境が異なるため、施設の事情や制約に合わせた支援を行うことを再確認する。
2 Gさんの施設での生活では、職員が考えるGさんの最善の利益に関する事柄を優先的に取り入れる。
3 Gさんの興味が広がるよう、Gさんの理解力や意思決定の力を考慮して、思いや選好を確認するよう努める。
4 家族から聞いた話を基に、Gさんの支援に、自立に向けたプログラムとして施設内で実施している料理教室への参加を組み入れる。
5 Gさんの短期的な支援目標を、施設に近接する共同生活援助(グループホーム)への移行に改める。

1は×である。
Gが自宅で見せたそれまでにない行動に着目せず、施設の事情や制約に合わせた支援を行うことを再確認することは、利用者を中心にした支援とはいえない。
2は×である。
Gが自宅で見せた行動に何ら着目していない。職員が考えるGさんの最善の利益に関する事柄を優先的に取り入れることは、Gの意思を無視するものである。
3は〇である。
4は×である。
「家族から聞いた話を基に」することは悪いことではないが、Gの意思を十分に考慮していない。Fが「この時点で行う」こととしては、3の方がより適切である。
5は×である。
施設に近接する共同生活援助(グループホーム)への移行は、短期目標として適切なものとは言い難い。

正解3

問題95 リッチモンド(Richmond、M.)の人物と業績に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 ケースワークの専門職としてニューヨーク慈善組織協会に採用された。
2 ケースワークの体系化に貢献したことから、後に「ケースワークの母」といわれた。
3 社会改良を意味する「卸売的方法」は、個別救済を意味する「小売的方法」の始点であり終点であると位置づけた。
4 『社会診断』において、ケースワークが社会的証拠の探索と収集を重視することに対して、異議を唱えた。
5 『ソーシャル・ケース・ワークとは何か』において、ケースワークを人間と社会環境との間を調整し、パーソナリティを発達させる諸過程と定義した。

1は×である。
リッチモンドは、名前に反して貧しい幼少期を過ごした後、16歳で叔母のいるニューヨークに移った。叔母が病気で郷里に戻ってから、リッチモンドの生活はますます困窮するが、そんな折、偶然見つけたのが、COSの会計事務の仕事だった。
2は〇である。
「ケースワークの母」と名付けられていることからもわかるように、リッチモンドは女性である。
3は×である。
「リッチモンドは、社会改良の全体は小売り的方法の中にこそあり、社会改良の成果は、小売り的方法にこそ表れるとする」。リッチモンドは、卸売り的方法だけが社会改良ではないのであり、小売り的方法は社会改良の一つの形態であると主張した。平塚良子(2014)「メアリー・リッチモンドのソーシャルワークの機能論省察」西九州大学健康福祉学部紀要第44巻p77参照。
4は×である。
リッチモンドは、問題解決に用いる情報を社会的証拠と呼んだ。仮にこのことを知らなくても、社会的証拠の探索と収集なくして、社会診断をすることは難しいのではないかと考えて欲しいところである。
5は〇である。

正解2,5
リッチモンドが「ケースワークの母」と呼ばれることは、受験生なら知っておいて欲しい。しかし、その他は、かなり細かいことを聞いている。5の前半部分は正しいと判断しやすいが、後半の「パーソナリティを発達させる諸過程」と定義したとの部分は、最近の過去問では出題されていない。

問題96 次の記述のうち、福祉に関する事務所(福祉事務所)に配置される所員の社会福祉法に基づく業務として、正しいものを1つ選びなさい。
1 指導監督を行う所員(査察指導員)は、都道府県知事の指揮監督を受けて、生活保護業務の監査指導を行う。
2 現業を行う所員(現業員)は、所長の指揮監督を受けて、援護、育成又は更生の措置を要する者等に対する生活指導などを行う。
3 母子・父子自立支援員は、家庭における児童養育の技術及び児童に係る家庭の人間関係に関する事項等に関する相談に応じる。
4 知的障害者福祉司は、社会的信望のもとに知的障害者の更生援護に熱意と識見を持って、知的障害者やその保護者の相談に応じ必要な援助を行う。
5 家庭相談員は、児童の保護その他児童の福祉に関する事項について、相談に応じ、専門的技術に基づいて必要な指導を行う。

1は×である。
所員は、都道府県知事の指揮監督を受けるものではない。㉛問67肢1参照。
2は〇である。㉛問67肢2参照。
3は×である。
母子・父子自立支援員は、母子家庭及び父子家庭並びに寡婦の抱えている問題を把握し、その解決に必要な助言及び情報提供を行うなど、自立に向けた総合的支援を行う者である母子、父子となっていることから、一人親家庭を支援するものであることを念頭に置くとよい。
4は×である。
知的障害者福祉司は、福祉事務所や知的障害者更生相談所に配置が義務付けられている職員であり、知的障害を持つ者に対する情報提供や相談対応、事務所内の職員への指導などを担当する。本肢は、「社会的信望のもとに」という部分が誤りである。なお、「司」は大昔の官吏の職名の一つであるが、現代でも使われていることに歴史を感じる。
5は×である。
家庭相談員は、広域的な児童相談所では対応できない比較的小さな地域、すなわち、市や郡部を単位に心身障害や不登校、学校での人間関係、家族関係、性格・生活習慣、発達、言葉の遅れ、非行の問題を抱える児童や当該の児童の保護者の相談に対し、常勤の社会福祉主事と連携して応じるとともに必要な指導を行う。㉙問142肢5に登場している。

正解2

問題97 事例を読んで、ピンカス(Pincus、A.)とミナハン(Minahan、A.)の「4つの基本的なシステム」(チェンジ・エージェント・システム、クライエント・システム、ターゲット・システム、アクション・システム)のうち、チェンジ・エージェント・システムが抱える課題として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
脊髄小脳変性症で入院したHさん(45歳.男性)が退院準備のために医療ソーシャルワーカーに相談に来た。現在、下肢の筋力低下が進んでおり、長い時間の歩行は困難で車いすを利用している。Hさんは一戸建ての自宅で妻(42歳、会社員)と二人暮らしであり、今後は、介護保険サービスを利用して自宅に退院することを検討している。また、Hさんは入院後休職中であるが、自宅で療養した後に復職を希望している。

1 Hさんの退院後の自宅における介護サービス
2 Hさんが復職した場合の職場での勤務時間
3 Hさん夫妻に対して、退院後に必要となる妻への支援
4 Hさんの希望に基づき、近隣の利用可能な社会資源
5 Hさんの今後の療養に関わる院内スタッフの情報共有

正解5
「4つの基本的なシステム」について、大まかにでも理解していないと解くのは難しい。㉛問100で出題されており、出題を予想していた人も多かったと思われる。今回の受験生の正答率が悪ければ、続けて出される可能性もある。
「4つの基本的なシステム」のうち、チェンジ・エージェント・システムは、ワーカー自身とワーカーが所属する機関を意味する。ワーカーシステムと同じものだと理解しておけばよい。このことを知っていれば、5が正しいことは簡単にわかったであろう。

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