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14.社会調査の基礎(R5年2月-第35回)

問題84 社会調査に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会調査は、個人ではなく、組織や機関が実施するものである。
2 社会調査は、市場調査や世論調査を含まず、行政調査と学術調査を指している。
3 国勢調査の対象者は、日本に居住する日本国籍をもつ人に限定されている。
4 社会問題の解決のために実施する調査は、社会踏査(social survey)と呼ばれる。
5 社会調査の分析対象は、数量的データに限定されている。

1は×である。個人が行うものも社会調査である。㉜問84肢2参照。
2は×である。社会調査には、市場調査や世論調査も含まれる。㉛問84肢2参照。
3は×である。
国勢調査では、国籍に関係なく、すでに3か月以上住んでいるか、3か月以上住むことになっている場所で調査が行われる。すなわち、対象者は、日本に居住する日本国籍をもつ人に限定されない。㉝問84肢1参照。
4は〇である。㉙問84肢4参照。
5は×である。分析対象は、数量的データに限定されない。㉜問84肢5参照。

正解4
比較的新しい過去問に関連する知識が出題されている。社会踏査がわからなくても、消去法で正解を導きたい。

問題85 統計法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 行政機関の長は、一定の要件を満たす学術研究に対して調査票情報を提供することができる。
2 行政機関の長は、基幹統計調査のデータを加工して、匿名データを自由に作成できる。
3 個人情報の秘密漏えいに関する罰則は定められていない。
4 厚生労働省が実施する社会福祉施設等調査は、基幹統計調査である。
5 一般統計調査には、基幹統計調査も含まれる。

1は〇である。統計法33条1項参照。
2は×である。
基幹統計調査に係る匿名データを作成しようとするときは、あらかじめ、統計委員会の意見を聴かなければならない(統計法35条1項)。「自由に」という文言から誤りと判断した人が多かったと思われる。
3は×である。二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処せられる(統計法57条1項)。
4は×である。
国勢統計、国民経済計算その他国の行政機関が作成する統計のうち総務大臣が指定する特に重要な統計を基幹統計という。この統計を得るための調査が基幹統計調査である。具体例として、国勢調査、就業構造基本調査、学校基本調査などがある。社会福祉施設等調査は含まれていない。㉝問56肢1参照。
5は×である。基幹統計調査以外のものを一般統計調査という。㉚問84肢1参照。

正解1
直接の出題が少なく、解きづらい問題だったと思われる。統計法の目的は、「公的統計が国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報であることにかんがみ、公的統計の作成及び提供に関し基本となる事項を定めることにより、公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図り、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与すること」にある。

問題86 標本調査に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 標本調査では、非標本誤差は生じない。
2 標本抽出には、性別や年齢といった母集団の特性を基準にする抽出法がある。
3 標準誤差は、質問の意味の取り違え、回答忘れなど、回答者に起因する。
4 系統抽出法では、抽出台帳に規則性がない場合、標本に偏りが生じる。
5 確率抽出法では、標本誤差は生じない。

1は×である。
非標本誤差は,回答者の誤答や記入漏れ,調査者の入力や集計のミスなどで生じる。当然、標本調査でも生じる。㉝問86肢1参照。
2は〇である。系統的抽出法の説明になっている。㉝問86肢3参照。
3は×である。
標準誤差とは、母集団からある数の標本を選ぶとき、選ぶ組み合わせに依って統計量がどの程度ばらつくかを、全ての組み合わせについての標準偏差で表したものをいう。回答者に起因するものではないので、本肢は×となる。標準誤差は、標本誤差とは異なる概念であり、本試験では初めての登場だと思われる。
4は×である。
系統抽出法では、抽出台帳に規則性がある場合、標本に偏りが生じる。㉜問86肢4、㉙問86肢2参照。
5は×である。
標本誤差とは母集団のすべてを調査しないで、一部の標本を無作為抽出して調査した結果にともなう誤差である。全数調査では発生しないが、標本調査で生じる。そのことは確率抽出法の場合にも当てはまる。㉜問86肢2参照。

正解2

問題87 社会調査における測定と尺度に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 信頼性とは、測定しようとする概念をどのくらい正確に把握できているかを意味する。
2 妥当性とは、同じ調査を再度行ったときに、どのくらい類似した結果を得ているかを意味する。
3 順序尺度では、大小や優劣を測定できる。
4 間隔尺度の例として、身長や体重がある。
5 比例尺度の方が、間隔尺度よりも情報量が多い。

1は×である。説明部分は、妥当性に関するものである。
2は×である。説明部分は、信頼性に関するものである。
3は〇である。
4は×である。間隔尺度の具体例は、気温や年号である。
5は〇である。名義尺度<順序尺度<間隔尺度<比例尺度、の順に情報量が多くなる。

正解3,5
尺度に関しては㉜問87が最後の出題だったので、今回は出題を予想していた人も多かったと思われる。基本的知識の重要性を痛感させられる問題である。

問題88 質問紙を作成する際の留意点に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 回答者の理解を促進するため、ワーディングはできるだけ多くの専門用語を用いることが望ましい。
2 回答者の回答を容易にするため、一つの質問に複数の論点を含む質問文を作成することが望ましい。
3 配布した質問紙の回収後の集計作業を効率的に行うため、自由回答法を多く用いることが望ましい。
4 選択肢法を用いる場合は、想定される回答を網羅するため、選択肢の内容が相互に重複していることが望ましい。
5 作成した質問紙の構成や内容が適切かを検討するため、プリテストを実施することが望ましい。

1は×である。専門用語が多いほど、回答者は理解が困難になる。
2は×である。一つの質問に複数の論点を含む質問文では、回答は容易にできない。㉝問81肢1参照。
3は×である。自由回答法を多く用いると、回収後の集計作業は煩雑になる。
4は×である。選択肢の内容が相互に重複していると選ぶのに苦労する。
5は〇である。
プリテスト(事前のテスト)を行うことで、作成した質問紙の構成や内容が適切かをチェックし、修正することは適切であある。

正解5

問題89 参与観察に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 調査中に対象者が意識しないように、調査終了後に観察していたことを伝える。
2 観察の記録は、現地で見聞きしたことについて、網羅的に記すことが原則である。
3 観察を通して現地で得た聞き取りの録音データの文字起こし作業に当たっては、録音データの中から調査者が気になった部分や必要だと思う部分を抽出し、要約する作業を最初に行う。
4 現地で記録したメモは、できるだけ早く観察ノートに記録する。
5 観察ノートを整理する際は、調査者の感想を記さないように留意する。

1は×である。事前に調査について説明しておくべきである。
2は〇である。
3は×である。録音データの文字起こし作業の際には、一字一句書き写すことが求められる。
4は○である。
5は×である。観察ノートを整理する際には、調査者の感想を記してもよい。

正解2,4
関連する問題に、㉝問90がある。肢1で迷った人が多かったと思われる。

問題90 Q市社会福祉協議会では、地域の潜在的な福祉ニーズを探索するため、地域住民向けのワークショップを開催した。参加者が、KJ法を参考に意見を整理することとした。 次の記述のうち、参加者が行う意見整理の進め方として、適切なものを2つ選びなさい。
1 参加者は、一つのカードに様々な自分の意見をできるだけ多く書き出す。
2 提出したカードを並べた後、全体を眺めながら内容が類似しているものをグループとしてまとめる。
3 グループ化する際は、カードが1枚だけで残ることがないように、いずれかのグループに割り当てる。
4 各々のグループに名前を付ける際には、福祉に関する専門用語を用いなければならない。
5 グループに名前を付けた後、グループ間の相互関係を検討し、図解する。

1は×である。
一つのカードに思いついた考えを一つ書く。別の考えが思い浮かんだら、新たなカードに書く。
2は〇である。
3は×である。
グルーピングの際、いかなるグループにも所属しないような「独立したアイデア」がある場合は、無理にグルーピングせずに、ラベルとしてそのまま残しておく。
4は×である。無理に専門用語を用いる必要はない。
5は〇である。グループにわけたものについて、関係性を図解化する。

正解2,5
何となくでもよいのでKJ法についてイメージできれば、容易に解ける問題である。研修や学校のゼミで、KJ法と似た手法を用いて問題を検討して経験がある人は多いのではないだろうか。

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