問題77次のうち、日本国憲法における社会権として、正しいものを2つ選びなさい。
1財産権
2 肖像権
3 教育を受ける権利
4 団体交渉権
5 自己決定権
★★
1は×である。
自由権である。
2は×である。
肖像権には、人格権の一部としての肖像権と、財産権としての肖像権とがあるが、社会権には分類されない。
3は〇である。
4は〇である。
5は×である。
自己決定権とは、一定の個人的な事柄について、公権力から干渉されることなく、自由に決定する権利をいい、憲法13条を根拠に認められるとする考えが一般的である。
正解3,4
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
社会権は、社会で生きていく上で人間が人間らしく生きるための権利である。自由権が国家からの干渉は排除する権利であるのに対し、社会権は国家の積極的な介入を求める権利というふうに説明される。
本問のような出題は、近時の過去問にはなかった。意表を突かれた人は、自由権の性質を有するものを除外していって、消去法で解くとよい。
マーシャル(Marshall,T.)は、市民権が18世紀に市民的権利(公民権)、19世紀に政治的権利(参政権)、20世紀に社会的権利(社会権)という形で確立されてきたという市民権理論を提示している(㉞問24参照)。
問題 78 事例を読んで、Hの相続における法定相続分に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Hは、多額の財産を遺して死亡した。Hの相続人は、配偶者J、子のK・L・M、Hよりも先に死亡した子Aの子(Hの孫)であるB・Cの計6人である。なお、Lは養子であり、Mは非嫡出子である。Hは生前にMを認知している。
1 配偶者Jの法定相続分は3分の1である。
2 子Kの法定相続分は6分の1である。
3 養子Lの法定相続分は7分の1である。
4 非嫡出子Mの法定相続分は8分の1である。
5 孫Bの法定相続分は7分の1である。
★★
まずは、相続人を確定させる。
1は×である。
配偶者Jの法定相続分は2分の1である。
2は×である。
子Kの法定相続分は8分の1である。
3は×である。
養子Lの法定相続分は8分の1である。養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する(民法809条)。
4は〇である。
かつては、非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の2分の1とされていたが、平成25年9月4日の最高裁決定により憲法に違反すると判断され、法律が改正された。
5は×である。
相続開始の時点でHの子Aは死亡しているが、孫のBとCは代襲相続する(民法887条1項)。Bの法定相続分は、16分の1である。Bは、自分の父Aの相続分(8分の1)をCと2人で分けることになる(民法901条1項)。
正解4
問題 79 遺言に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 成年被後見人は、事理弁識能力が一時回復した時であっても遺言をすることができない。
2 自筆証書遺言を発見した相続人は、家庭裁判所の検認を請求しなければならない。
3 公正証書によって遺言をするには、遺言者がその全文を自書しなければならない。
4 自筆証書によって遺言をするには、証人2人以上の立会いがなければならない。
5 遺言に相続人の遺留分を侵害する内容がある場合は、その相続人の請求によって遺言自体が無効となる。
★
1は×である。
成年被後見人は、事理弁識能力が一時回復した時であれば、遺言をすることができる(民法973条)。医師2名以上の立ち合いなどの要件が課されている。
2は〇である。
民法1004条1項参照。
3は×である。
公正証書遺言では、遺言者が公証人に伝え、公証人が作成する。
4は×である。
自筆証書遺言には、このような制限はない。公正証書遺言では、証人2人以上の立会いがなければならない(民法969条第1号)。
5は×である。
遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求権を行使できる(民法1046条1項)、このような請求があっても遺言自体は有効である。
正解2
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
古い過去問には、関連した知識が問われているものがあるが、近時はこのような問題は出題されておらず、驚いた人が多かったのではないだろうか。
問題 80 事例を読んで、Dさんについての後見開始の審判をEさんが申し立てた主な理由として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Dさん(80歳)は、子のEさんが所有する建物に居住していたが、認知症のため、現在は指定介護老人福祉施設に入所している。Dさんの年金だけでは施設利用料の支払いが不足するので、不足分はEさんの預金口座から引き落とされている。施設で安定した生活を営んでいるものの医師からは白内障の手術を勧められている。近時、Dさんの弟であるFさんが多額の財産を遺して亡くなり、Dさんは、Dさんの他の兄弟とともにFさんの財産を相続することとなった。Eさんは、家庭裁判所に対しDさんについて後見を開始する旨の審判を申し立てた。
1 Dさんの手術についての同意
2 Dさんが入所する指定介護老人福祉施設との入所契約の解約
3 Dさんが参加するFさんについての遺産分割協議
4 Dさんが入所前に居住していたEさん所有の建物の売却
5 Dさんの利用料不足分を支払っているEさんの預金の払戻し
★★★
1は×である。
後見人の医療行為についての同意は否定するのが通説である。
2は×である。
Dは施設で安定した生活を営んでいるので、解約の必要性に乏しい。
3は〇である。
Dの弟Fが多額の財産を遺して亡くなり、Dは、Dの他の兄弟とともにFの財産を相続することになったことから、この財産をどのようにわけるかがDにとっての懸案事項となっている。認知症のあるDは遺産分割協議を適切に行えない可能性が高いので、Dの後見人を選任する必要性がある。
4は×である。
E所有の建物の処分は、Dの後見開始とは関係がない。
5は×である。
Eの預金の払い戻しは、Eが単独で行うことができる。そのため、本肢は、EがDの後見開始の審判を申し立て主な理由とはいえない。
正解3
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
解説では、一つ一つに理由を付したが、事例問題としてみた場合、Dが相続することになったFの財産をどうやって分けるかが問題になることは明らかである。細かいことを考えずに、3を選んだ人が多かったと思われる。
>問題81 事例を読んで、Gさんの成年後見監督人に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
知的障害のあるGさん(30歳)は、兄であるHさんが成年後見人に選任され支援を受けていた。しかし、数年後にGさんとHさんの関係が悪化したため、成年後見監督人が選任されることとなった。
1 Gさんは、成年後見監督人の選任請求を家庭裁判所に行うことができない。
2 Hさんの妻は、Hさんの成年後見監督人になることができる。
3 GさんとHさんに利益相反関係が生じた際、成年後見監督人はGさんを代理することができない。
4 成年後見監督人は、Hさんが成年後見人を辞任した場合、成年後見人を引き継がなければならない。
5 成年後見監督人は、GさんとHさんの関係がさらに悪化し、Hさんが後見業務を放置した場合、Hさんの解任請求を家庭裁判所に行うことができる。
★★
1は×である。
被後見人であるGも後見監督人の選任請求を家庭裁判所に行うことができる(民法849条)。㉝問82肢2参照。
2は×である。
後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない(民法850条)。㉚問79肢5参照。
3は×である。
GとHに利益相反関係が生じた際、成年後見監督人はGを代理することができる(民法851条第4号)。㉚問79肢4参照。
4は×である。
このような規定はない。
5は〇である。
後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる(民法846条)。
正解5
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
個別の条文を知らなくても、常識的に考えて判断すればよい。後見監督人に期待されているのは、まさに肢5のような役割だと感じられれば十分である。
問題82 次のうち、「成年後見関係事件の概況(令和4年1月∼12月)」(最高裁判所事務総局家庭局)に示された「成年後見人等」に選任された最も多い者として、正しいものを1つ選びなさい。
1 親族
2 弁護士
3 司法書士
4 社会福祉士
5 市民後見人
(注)「成年後見人等」とは、成年後見人、保佐人及び補助人のことである。
★★
1は×である。
7,560件。
2は×である。
8,632件。
3は〇である。
11,764件。
4は×である。
5,849件。
5は×である。
271件。
正解3
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
㉛問80肢4,㉝問80肢3で出題されている。成年後見関係事件の概況からの出題は数年に1度なされており、受験生は新しいものに目を通しておいた方がよい。
問題 83 成年後見人Jさんへの成年後見人による意思決定支援に関する次の記述のうち、「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」に沿った支援として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 Jさんには意思決定能力がないものとして支援を行う。
2 Jさんが自ら意思決定できるよう、実行可能なあらゆる支援を行う。
3 一見して不合理にみえる意思決定をJさんが行っていた場合には、意思決定能力がないものとみなして支援を行う。
4 本人にとって見過ごすことのできない重大な影響を生ずる場合にも、Jさんにより表明された意思があればそのとおり行動する。
5 やむを得ずJさんの代行決定を行う場合には、成年後見人にとっての最善の利益に基づく方針を採る。
(注) 「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」とは、2020年(令和2年)に、最高裁判所、厚生労働省等により構成される意思決定支援ワーキング・グループが策定したものである。
★★★
1は×である。
ガイドラインでは(以下略)、全ての人は意思決定能力があることが推定される。
2は〇である。
3は×である。
一見すると不合理にみえる意思決定でも、それだけで本人に意思決定能力がないと判断してはならない。
4は×である。
①本人の意思推定すら困難な場合、又は②本人により表明された意思等が本人にとって見過ごすことのできない重大な影響を生ずる場合には、後見人等は本人の信条・価値観・選好を最大限尊重した、本人にとっての最善の利益に基づく方針を採らなければならない。
5は×である。
肢4の解説にあるように、「本人にとっての最善の利益」に基づかねばならない。なお、本人にとっての最善の利益に基づく代行決定は、法的保護の観点からこれ以上意思決定を先延ばしにできず、かつ、他に採ることのできる手段がない場合に限り、必要最小限度の範囲で行われなければならない。
正解2
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
初の出題である。支援者にとって大切な視点が書かれているので、解説ではガイドラインの該当箇所を引用した。
ただし、ガイドラインを知らなくても問題を解くことはできる。ここで重視されているのは、本人の意思の尊重である。
選択肢の中から、本人の意思を尊重した対応となっているものを探せばよい。この観点から、2と4までは絞れる。そして、2と4を比較した場合、2の方がより適切な内容であると気づければよい。