問題 70 公的医療保険における一部負担金に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 療養の給付に要した費用の一部負担金の割合は、一律3割である。
2 被用者保険に加入中の生活保護の被保護者は、一部負担金のみが医療扶助の対象となる。
3 正常な分娩による出産費用の一部負担金の割合は、3割である。
4 1か月の医療費の一部負担金が限度額を超えた場合、保険外併用療養費制度により払戻しが行われる。
5 入院時の食事提供の費用は、全額自己負担である。
★★
1は×である。
医療費の一部負担金の割合は、年齢に応じて、6歳までは2割負担、69歳までは3割負担、70歳から74歳までは原則2割負担、75歳以上は原則1割負担となっている。
2は〇である。
被用者保険に加入中であれば、一部負担金以外の部分は被用者保険がカバーしてくれる。そのため、当該被保護者は、一部負担金のみが医療扶助の対象となる。
3は×である。
正常な分娩による出産は、病気・けがに該当しないため、療養の給付の対象とならない。そのため全額を自己負担しなければならないことになる。これをカバーするのが出産育児一時金である。㉜問54肢2参照。
4は×である。
高額療養費制度により払い戻しが行われる。
5は×である。
食事療養に要した費用については,入院時食事療養費が給付される。㉛問70肢3参照。
正解2
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
公的医療保険がカバーする範囲について幅広く問うものである。肢2は初めて見た人が多かったと思われる(生活保護を受給している65歳以上の被保護者が介護サービスを利用した場合の介護扶助の対象となる部分を思い浮かべるとよい)。
積極的に答えを出せないときは、明らかに誤っているものを消去していく。
問題 71 「令和2(2020)年度国民医療費の概況」(厚生労働省)に示された日本の医療費に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 国民医療費の総額は40兆円を超えている。
2 人口一人当たりの国民医療費は60万円を超えている。
3 国民医療費に占める薬局調剤医療費の割合は、入院医療費の割合よりも高い。
4 国民医療費の財源に占める公費の割合は、保険料の割合よりも高い。
5 国民医療費に占める歯科診療医療費の割合は、入院外医療費の割合より高い。
★
1は〇である。
令和2年度の国民医療費は 42兆9,665億円、前年度の 44兆3,895億円に比べ1兆4,230 億円、3.2%の減少となっている。
2は×である。
令和2年度の人口一人当たりの国民医療費は34万600円、前年度の 35万1,800円に比べ1万1,200円、 3.2%の減少となっている。
3は×である。
入院医療費の割合は38.0%と最も高い。薬局調剤医療費の割合は17.8%だった。
4は×である。
公費の割合は約38%、保険料の割合は約50%である。国民皆保険であることから、医療費の財源としては、保険料>公費ではないかと判断できる。
5は×である。
歯科診療医療費の割合は約7%、入院外医療費の割合約34.5%である。
正解1
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
㉛問71、㉙問70に類似した問題があり、事前に準備していた人もいたと思われる。
肢4,5は常識的に考えて誤りと判断できるであろうが、残りは知識がないと判断に迷うはず。
出題者は、肢1は新聞やニュース、授業などで見聞きしていると考えたのだろうか。
問題 72 診療報酬に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 診療報酬の請求は、各月分について行わなければならない。
2 請求された診療報酬は、中央社会保険医療協議会が審査する。
3 医療機関が診療報酬を請求してから報酬を受け取るまで約 6か月掛かる。
4 診療報酬点数表には、医科、歯科、高齢の点数表がある。
5 診療報酬点数は、1点の単価が1円とされている。
★★
1は〇である。
ちなみに介護報酬の請求も同じである。
2は×である。
社会保険診療報酬支払基金が審査する。㉛問72肢3参照。
3は×である。
対象となって月の翌々月の21日に支払われるのが原則である(請求してから受け取るまで約1か月強かかる)。
4は×である。
診療報酬は医科、歯科、調剤の3つにわかれている。㉟問72肢2参照。
5は×である。
診療報酬の1点の単価は10円である。
正解1
問題73 医療法に基づく医療計画に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 国が、地域の実情に合わせて策定することになっている。
2 医療提供体制の確保を図るためのものである。
3 医療圏は、一次医療圏と二次医療圏の2つから構成されている。
4 病院の定義や人員、設備の基準を定めることになっている。
5 2年ごとに見直される。
★★★
1は×である。
医療法に基づく医療計画は、厚生労働大臣が指針を定め、都道府県が策定する。㉟問73肢1参照。
2は〇である。
3は×である。
三次医療圏までの3つから構成されている。
4は×である。
病院の定義や人員、設備の基準は、医療法で定められている。医療計画に病院の定義が定められているのはおかしいと感じて欲しい。
5は×である。
医療計画は6年を1期として策定される。2年では短すぎると感じて欲しい。
正解2
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
基本的知識と常識的判断を使って、正解したい問題である。
問題 74 訪問看護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 訪問看護は、看護師の指示で訪問看護サービスを開始する。
2 訪問看護ステーションには、栄養士を配置しなければならない。
3 訪問看護の対象は、65歳以上の者に限定されている。
4 訪問看護ステーションの管理者は、医師でなければならない。
5 訪問看護は、居宅において看護師等により行われる療養上の世話又は必要な診療の補助を行う。
★★★
1は×である。
医師の指示で開始される。
2は×である。
栄養士の配置は求められていない。
3は×である。
訪問看護の対象となる年齢の制限はない。なお、介護保険の訪問看護と誤解したとしても、第2語被保険者は利用できるので、本肢は誤りと判断できたはずである。
4は×である。
訪問看護の管理者は、保健師、助産師、看護師のいずれかでなければならない。
5は〇である。
正解5
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
消去法で解いた人も多かったと思われる。
問題 75 次の事例を読んで、医療ソーシャルワーカー(社会福社士)が紹介した現時点で利用可能な制度として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
入院中のFさん(39歳、会社員)は、大学卒業後から継続して協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の被保険者であり、同じ会社の正社員である妻 35歳と息子7歳との3人暮らしである。20代より生活習慣病を患い、保健指導と治療がなされたが行動変容は難しかった。Fさんは、3日前に糖尿病性腎症による人工透析導入のため入院することとなった。医師からは、約1か月間の入院となり、退院後は週に3日の継続的な透析治療が必要との説明を受けた。Fさんは、仕事は継続したいが、医療費や入院期間中の収入面の不安を訴えたことから、医師より医療ソーシャルワーカーを紹介された。
1 生活保護制度
2 労働者災害補償保険制度
3 高額療養費制度
4 傷病手当金制度
5 雇用保険制度
★★★
1は×である。
Fは仕事を継続したいと考えていし、妻も同じ会社の正社員であることから、生活に困窮している様子はない。
2は×である。
Fは、20代より生活習慣病を患っていて、保健指導と治療がなされたが行動変容は難しかったために重篤化したものであり、業務上の病気とはいえない。
3は〇である。
Fは医療費の心配をしている。人工透析導入のための医療費には、高額療養費制度の適用がある。
4は〇である。
Fは入院期間中の収入面の不安を訴えている。入院は約1か月かかると予想されることから、傷病手当金を利用できる。
5は×である。
Fは治療を終えた後、仕事を継続したいと考えていることから、この段階で雇用保険制度の利用を進めるのは適切ではない。
正解3,4
問題 76 「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(2018年(平成30年)改訂版)」(厚生労働省)に沿った対応の方針として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Gさん(72歳)は、妻(70歳)と二人暮らし。10年前より筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断を受け、在宅で療養を続けてきた。診断を受けた当初、「人工呼吸器は装着せずに、自宅で自然な状態で最期を迎えたい」と言っていた。1か月前から言語の表出、自発呼吸が困難となり、人工呼吸器の装着について検討することとなった。
1 診断を受けた当初のGさんの意思を優先する。
2 Gさんに代わって、妻の判断を優先する。
3 Gさん、家族、医療・ケアチームによる話し合いの場を設定する。
4 家庭裁判所に判断を求める。
5 医師の医学的判断により決定する。
★★
1は×である。
当初のGの意思は尊重される必要があるが、現時点では変わっている可能性もある。
2は×である。
ガイドラインは、本人の意思を基本とすることを明示している。
3は〇である。
4は×である。
現時点では、この問題について家庭裁判所が判断するという仕組みはない。
5は×である。
ガイドラインは、医師のみの医学的判断により決定するものとしていない。
正解3
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
ガイドラインを知らないと判断に迷うかもしれないが、本人の意思を尊重する現在の流れを考慮すると、2,5は×だと判断できる。4のような制度が存在するなら、どこかで耳にするであろうが、このような仕組みはない。
残る1と3のうちいずれが適切か考えた場合、Gを交えて再度話し合いをする3の方が、1よりもベターであろう。
本問では、Gが「1か月前から言語の表出、自発呼吸が困難となり」と書かれているため、この記述からGがそもそも話合いに参加できないのではないかと考えた人もいるかもしれない。
出題者が非言語的表現による意思の表出が可能であることを前提にしていたのかは、不明である。
なお、ガイドラインは、この問題について、本人の意思を基本として考えるとしているが、本人の意思が表明されていればそれに従うという単純なものではない。