問題63 「生活保護の被保護者調査(令和2年度(月次調査確定値))」(厚生労働省)に示された生活保護の動向に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 保護率(人口百人当)は、16.3%である。
2 1か月平均の被保護実人員数は、約20万人である。
3 保護の種類別に扶助人員をみると、「医療扶助」が最も多い。
4 保護開始世帯の主な理由別構成割合をみると、「貯金等の減少・喪失」が最も多い。
5 保護廃止世帯の主な理由別構成割合をみると、「働きによる収入の増加・取得・働き手の転入」が最も多い。
1は×である。令和2年度の保護率は、1.64%である。㉝問63肢2参照。
2は×である。1か月平均の被保護実人員数は、約200万人である。
3は×である。種類別の扶助人員では「生活扶助」が最も多い。㉙問64肢4参照。
4は○である。㉝問63肢3参照。
5は×である。保護廃止世態で最も多いのは「死亡」である。㉝問63肢4参照。
正解4
過去問で出題されたものについて、単に〇か×かだけではなく、実際の状況まで含めて確認しておく必要がある。
問題64 現行の生活保護法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 生活保護は、日本国憲法第21条が規定する理念に基づいて行われる。
2 生活保護が目的とする自立とは、経済的自立のみを指している。
3 能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、生活の維持及び向上に努めなければ、保護を申請できない。
4 補足性の原理によって、扶養義務者のいる者は保護の受給資格を欠くとされている。
5 保護の基準は、保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、これを超えないものでなければならない。
1は×である。
憲法25条の生存権の理念に基づいて行われる。憲法21条は表現の自由の規定である。
2は×である。
経済的自立のみではなく、日常生活自立、社会生活自立を意味している(社会福祉法3条参照)。㉚問68肢4参照。
3は×である。
生活上の義務(生活保護法60条)は、被保護者の義務であり、保護の申請ための要件ではない。
4は×である。
扶養義務者の扶養は、保護に優先して行われるが(生活保護法4条)、扶養義務者がいることだけで、保護の受給資格を欠くわけではない。扶養義務者がいても、扶養できるだけの能力を欠くような場合を想起すれば、誤りとわかるであろう。
5は〇である。
基準及び程度の原則(生活保護法8条2項)である。
正解5
問題65 生活保護の種類と内容に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 生業扶助には、高等学校等就学費が含まれる。
2 生活扶助は、衣食住その他日常生活の需要を満たすために必要なものを給付する。
3 教育扶助は、原則として現物給付によって行うものとする。
4 介護扶助は、原則として金銭給付によって行うものとする。
5 葬祭扶助は、原則として現物給付によって行うものとする。
1は〇である。
2は×である。衣食住のうち、「住」は住宅扶助で給付する。
3は×である。原則は金銭給付である。
4は×である。原則は現物給付である。
5は×である。原則は金銭給付である。
正解1
基本的知識があれば、消去法で正解を導ける。㉜問題65参照。
問題66 生活扶助基準の設定方式に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 標準生計費方式とは、現行の生活保護法の下で、栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて最低生活費を計算する方式である。
2 マーケット・バスケット方式とは、最低生活を営むために必要な個々の費目を一つひとつ積み上げて最低生活費を算出する方式である。
3 エンゲル方式とは、旧生活保護法の下で、経済安定本部が定めた世帯人員別の標準生計費を基に算出し、生活扶助基準とした方式である。
4 格差縮小方式とは、一般国民の消費水準の伸び率を超えない範囲で生活扶助基準を引き上げる方式である。
5 水準均衡方式とは、最低生活の水準を絶対的なものとして設定する方式である。
標準生計費方式とは、昭和21~22年にかけて用いられた方法で、経済安定本部が定めた世帯人員別の標準生計費を基に算出し、生活扶助基準とした方式である(肢3参照)。
2は〇である。
昭和23~35年にかけて用いられた。㉛問64参照。
3は×である。
エンゲル方式は、昭和36~39年にかけて用いられた。栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式である。エンゲル方式については、肢1の説明部分が対応している。
4は×である。
格差縮小方式は、一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式である。昭和40~58年に用いられた。
5は×である。
水準均衡方式jは、昭和58(1984)年から用いられている。一般国民の消費水準との均衡を図る観点から生活扶助基準の水準を調整する方式である。肢4の説明部分は、水準均衡方式を意識したものと思われる。
正解2
マーケット・バスケット方式のイメージから、2を選んだ人も相当いたと思われる。さっぱり手がかりがつかめないときは、交差法で選択肢を絞れないかを検討するとよい。
問題67 生活困窮者自立支援法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 生活困窮者自立相談支援事業は、委託することができないとされている。
2 生活困窮者自立相談支援事業と生活困窮者家計改善支援事業は、必須事業である。
3 子どもの学習・生活支援事業は、全ての都道府県、市町村に実施の責務がある。
4 生活困窮者一時生活支援事業は、生活困窮者に対し、生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行うものである。
5 生活困窮者就労準備支援事業は、雇用による就業が著しく困難な生活困窮者に対し、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うものである。
1は×である。
都道府県等は、生活困窮者自立相談支援事業の事務の全部又は一部を当該都道府県等以外の厚生労働省令で定める者に委託することができる(生活困窮者自立支援法5条2項)。
2は×である。
生活困窮者家計改善支援事業は、「行うるように努める」ものとされている(同法7条1項)。
3は×である。
子どもの学習・生活支援事業は、「行うことができる」とされている(同条7条2項2号)。
4は×である。
生活困窮者一時生活支援事業には、生活困窮者に対し、生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行うことは含まれていない(同法3条6項参照)。
5は〇である。同法3条4項。
正解5
1,2,3については、何となく誤りではないかと推測できたのではないだろうか。
問題68 生活福祉資金貸付制度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 貸付対象世帯は、高齢者世帯、傷病者・障害者世帯、ひとり親世帯とされている。
2 日本に居住する低所得の外国人世帯は、貸付対象から除外されている。
3 緊急小口資金の貸付金の利率は年1.5%である。
4 資金の種類は、総合支援資金、緊急小口資金、教育支援資金の3種類である。
5 複数の種類の資金を同時に貸し付けることができる。
1は×である。
貸付対象世帯は、低所得世帯、高齢者世帯、障害者世帯である。
2は×である。
外国人であっても、外国人登録が行われ、現住地に6ヶ月以上居住し、将来とも確実に永住する見込みがあれば、貸付対象となる。㉜問104参照。
3は×である。
緊急小口資金、教育支援資金については、無利子である。
4は×である。
資金の種類は、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4種類である。福祉資金には、福祉費と緊急小口資金とがある。不動産担保型生活資金については、㉞問34肢4参照。
5は〇である。
同一世帯に対して2つ以上の資金(資金ごとに細分された経費の種類を含む)を同時に貸付けることができる。
正解5
過去問でここまで全般的に聞かれた問題はないため、驚いた受験生も多かったと思われる。複数の種類の資金については肢4が参考になるので、それらを重複して貸し付けることができるかどうかを考えてみるとよい。目的が違うことから考えて複数の種類の資金を同時に貸し付けることができるのではないかということに思い至れば、5を選ぶことができる。なお、貸付の際には、申請の必要性と償還能力が考慮され、申請さえすれば貸し付けを受けられるものではないことにも留意して欲しい。
問題69 事例を読んで、N市の生活困窮者を対象とした自立相談支援機関の相談支援員(社会福祉士)による、Cさんへの支援に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
〔亊例〕
Cさん(40歳)は、派遣社員として働いていたが、雇用契約期間が満了して、P市にあった会社の寮から退去した。その後、N市にあるインターネットカフェで寝泊まりをしていたが、なかなか次の仕事が見付からず、所持金も少なくなって不安になり、N市の自立相談支援機関を探して来所した。
1 最後の居住地であったP市に対して、生活保護を申請することを勧める。
2 生活福祉資金貸付制度の緊急小口資金の利用を勧める。
3 住居を見付け、生活困窮者自立支援法に基づく住居確保給付金を利用することを勧める。
4 居住地がないため、直ちに救護施設に入所できると判断し、施設に直接連絡をして利用を申請する。
5 当面の住まいを確保するため、社会福祉法に基づく無料低額宿泊所への入所を自治体に申請するよう提案する。
1は×である。
居住地のある要保護者については、居住地を管轄する福祉事務所に保護の実施責任がある。居住地は生計の本拠となっている場所であり、住民登録は居住地の要件にはなっていない。本問であれば、居住地はN市と考えてよい。㉘問66参照。
2は〇である。
本問では、自立相談支援機関の相談支援員(社会福祉士)によるCへの適切な支援について問われている。当座の生活費に充てるために、生活福祉資金貸付制度の緊急小口資金の利用を勧めることは適切である。㉞問69参照。
3は〇である。
生活困窮者自立支援法は、「生活困窮者自立相談支援事業の実施、生活困窮者住居確保給付金の支給その他の生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図ることを目的とする」(同法1条)。自立相談支援機関の相談支援員(社会福祉士)によるCへの適切な支援としては、4,5よりも本肢を選ぶべきだと考える。㉞問97参照。
4は×である。
救護施設は、「救護施設は、身体上又は精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者を入所させて、生活扶助を行うことを目的とする施設」である(生活保護法38条2項)。Cが直ちに救護施設に入所できると判断するのは適切とはいえない。㉞問66参照。
5は×である。
無料低額宿泊所は「生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業」(社会福祉法2条3項8号)に基づいて設置される施設である。厚生労働省は、無料低額宿泊所をあくまでも一時的な居住の場と位置付けている。なお、無料低額宿泊所は、生活保護法の宿所提供施設とは異なることにも注意する。㉛問69参照。
正解2,3
自立相談支援機関の相談支援員(社会福祉士)による支援に関する問題は、㉞問97で出題されている。肢1については㉘問66で出題されているが、これが誤りと判断できるかどうかは、本問を解く上での鍵を握っている。というのは、選択肢3,4,5は、いずれもCの住まいに関する記述なので、この中の一つが正解だと考えれば、残る正解を肢2と推測できるからである。