問題 63 生活保護法に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 保護が実施機関の職権によって開始されることはない。
2 保護は、生活困窮に陥った原因に基づいて決定される。
3 最低限度の生活を保障することを目的としている。
4 自立の見込みがあることを要件として、保護を受けることができる。
5 自立を助長することを目的としている。
★★★
1は×である。
保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる(生保法7条)。㉞問68肢4参照。
2は×である。
無差別平等の原理(生保法4条)に反する。㉝問64肢4参照。
3は〇である。
この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない(生保法3条)。
4は×である。
この記述を反対解釈すると、自立の見込みがない場合は、保護を受けられないことになる。だが、そのような解釈は、無差別平等の原理(生保法4条)に反する。
5は〇である。
生活保護法は、「日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」(生保法1条)。
正解3,5
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
生活保護法の目的、4つの原理、4つの原則を理解していれば、解くことができる。
問題 64 事例を読んで、生活保護法の定める内容に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
単身で2LDKの賃貸マンション暮らしのBさん(44歳)は、建設業に従事していたが半年前に自宅で骨折をして仕事を続けられなくなり、退職した。Bさんには遠く離れた故郷に父親(75歳)がいるが、父親も生活に余裕がない。Bさんは生活費が底をつき、生活保護を受給し、リハビリに励むこととなった。その後Bさんはリハビリが終わり、医師から軽労働なら就労できる状態だと診断された。求職活動をしたものの、年齢や技能の関係で仕事は見つかっていない。そこでBさんは今よりもう少し安い家賃のアパートに移ろうかと考えている。
1 就労に必要な技能修得の費用が生業扶助から支給される。
2 アパートに転居する際の敷金が生活扶助から支給される。
3 父親から仕送りを受けると、その金額の多寡にかかわらず保護は廃止される。
4 医師から就労できる状態だと診断された時点で、保護は廃止される。
5 父親は後期高齢者であるため、Bさんを扶養する義務はない。
★★
1は〇である。
生業扶助は、生活保護世帯の子どもが高校に通うために必要な学費や、受給者の就職のための資格取得に必要な費用を負担するものである。
2は×である。
当該敷金は、住宅扶助から支給される。
3は×である。
仕送りの額が最低限度の生活を営むのに足りるものでなければ、保護は廃止されない。
4は×である。
単に医師から就労できる状態だと診断されただけでは、保護は廃止さない。
5は×である。
父親には扶養義務がある(民法887条1項)。父親が後期高齢者とういう理由だけで、扶養義務を免れることはない。ただし、実際に扶養義務を果たせるかは別の話である。
正解1
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
生業扶助の中身を問うものは、近年の出題には見当たらなかった。積極的に1を選べないときは、基本的知識を用いて消去法で解く。
問題65 生活保護の種類と内容に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 生活扶助の第1類の経費は、世帯共通の費用とされている。
2 住宅扶助には、住宅の補修その他住宅の維持のために必要な経費が含まれる。
3 介護扶助には、介護保険の保険料が含まれる。
4 医療扶助によって、入院中の被保護者に対して入院患者日用品費が支給される。
5 出産扶助は、原則として現物給付によって行われる。
★★
1は×である。
第1類の経費は、個人的経費である。生活扶助基準の内訳は、飲食物費や被服費等の個人的経費である第1類費と光熱水費や家具什器費等の世帯共通的経費である第2類費に分けられる。
2は〇である。
㉜問65肢3で出題されている。
3は×である。
介護保険の保険料は、生活扶助費に加算される。㉛問65肢1、㉟問131肢5参照。
4は×である。
入院患者日用品費は、生活扶助によって支給される。
5は×である。
出産扶助は、原則として金銭給付によって行われる。㉜問65肢5参照。
正解2
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
肢1を押さえていた人は、少なかったのではないだろうか。
問題 66 生活保護制度における都道府県及び都道府県知事の役割や権限に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 都道府県は、福祉事務所を任意に設置できる。
2 都道府県知事は、地域の実情を踏まえて生活保護法上の保護基準を変更することができる。
3 都道府県は、町村が福祉事務所を設置する場合、その保護費の一部を負担する。
4 都道府県知事は、保談施設の設備及び運営について、基準を定めるよう努めることとされている。
5 都道府県知事は、生活保護法に定めるその職権の一部を、その管理に属する行政庁に委任することができる。
★★
1は×である。
都道府県及び市(特別区を含む)は,条例で,福祉事務所を設置しなければならない。㉜問68肢1、㉗問69参照。
2は×である。
保護基準は厚生労働大臣が定める。都道府県知事がそれを変更することはできない。
3は×である。
このような規定はない。保護費の4分の3は国が負担し、残り4分の1は自治体負担となっている。なお、町村設置福祉事務所に係る財源措置は、福祉事務所の運営費が経常的経費であることから、本来、普通交付税で措置されるべきであるにもかかわらず、特別交付税で都道府県・町村間を調整する扱いになっている。
4は×である。
努力義務ではなく、義務である。
5は〇である。
生活保護法20条参照。㉞問68肢1、㉙問63肢3。なお㉜問68肢2参照。
正解5
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
肢5については、反対の形式で2回出題されている。結論を覚えていなかったとしても、選択肢の中でもっともありえそうな内容だと感じられれば良い。
問題67 事例を読んで、Cさんが生活福祉資金貸付制度を利用する場合の内容に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Cさん(50歳)は、R市で一人暮らしをしていたが、会社が倒産し、無職となった。雇用保険(基本手当)の給付を受けていたが、受給期間終了後も再就職先が見つからず、生活が苦しくなったので生活福祉資金貸付制度の総合支援資金を利用したいと思い。R市の社会福祉協議会に相談に訪れた。
1 貸付を受けるためには、連帯保証人が必須となる。
2 貸付金の償還が免除されることはない。
3 離職理由によって、最終貸付日から返済が開始されるまでの据置期間が異なる。
4 借入れの申込み先は、R市の福祉事務所である。
5 資金の貸付けを受ける場合には、必要な相談支援を受けることが求められる。
★★
1は×である。
借入申込者は、原則として、連帯保証人を立てることが必要だが、連帯保証人を立てない場合も借入申込をすることができる。
2は×である。
借受人・世帯主の両方が住民税非課税の場合や、返済期間中に生活保護を受給した場合、重度障害となった場合等、返済期間中にも免除となる場合がある。
3は×である。
離職理由による据置期間の差異はない。
4は×である。
都道府県社会福祉協議会を実施主体として、市区町村社会福祉協議会が窓口となって実施している。
5は〇である。
本貸付制度では、資金の貸付けによる経済的な援助にあわせて、地域の民生委員が資金を借り受けた世帯の相談支援を行う。
正解5
🐾ソーシャルワンカーのつぶやき🐾
類題に㉞問69がある。1,2,4が誤りであることには気づけるのではないだろうか。
問題 68 事例を読んで、生活困窮者自立相談支援機関のD相談支援員(社会福社土)が提案する自立支援計画案の内容に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Eさん(50歳)は、実家で両親と3人暮らしである。両親はともに80代で、実家は持ち家だが他に資産はなく、一家は両親の老齢基礎年金で生活している。Eさんは大学卒業後、出身地の会社に就職したが人間関係がこじれて5年前に退職し、その後は定職に就かず、実家でひきこもり状態である。Eさんの状況を両親が心配し、またEさん自身もこの状況をどうにかしたいと考えて、Eさんは両親とともに生活困窮者自立相談支援機関に来所した。D相談支援員は、アセスメントを経て、Eさんに今後の支援内容を提案した。
1 社会福祉協議会での被保護者就労支援事業の利用
2 公共職業安定所(ハローワーク)での生活困窮者就労準備支援事業の利用
3 認定事業者での生活困窮者就労訓練の利用
4 地域若者サポートステーションでの「求職者支援制度」の利用
5 生活保護法に基づく授産施設の利用
(注)「求職者支援制度」とは、職業訓練の実施等による特定求職者の就職に関する法律(求職者支援法)に基づく制度のことである。
★
1は×である。
被保護者就労支援事業は、生活保護の被保護者が対象である。Eは、被保護者ではない。
2は×である。
生活困窮者就労準備支援事業の実施主体は、公共職業安定所(ハローワーク)ではなく、福祉事務所の設置自治体である市町村や都道府県である。
3は〇である。
生活困窮者就労訓練とは、 自立相談支援機関(生活困窮者自立支援法に基づき自治体やその委託事業者が運営) のあっせんに応じて、就労に困難を抱える生活困窮者を受け入れ、 その状況に応じた就労の機会を提供するとともに、生活面や健康面での支援を行うものである。
4は×である。
求職者支援制度を実施するのはハローワークである。㉞問145参照。
5は×である。
生活保護法に基づく授産施設は、身体上、精神上の理由、または世帯の事情で就業能力の限られている要保護者に対し、就労や技能の修得のために必要な機会を与え、自立を支援する施設である。
正解3
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
事例問題であるが、選択肢の事業・制度の内容を把握していないと答えを見つけるのが難しい。
問題 69「ホームレスの実態に関する全国調査」(厚生労働省)に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 概数調香によれば、全国のホームレス数は2022年に比べて増加している。
2 概数調査によれば、性別人数では男性より女性が多数を占めている。
3 生活実態調査によれば、ホームレスの平均年齢は2016年調査に比べて低下している。
4 生活実態調査によれば、路上生活期間「10年以上」は2016年調査に比べて増加している。
5 生活実態調査によれば、「生活保護を利用したことがある」と回答した人は全体の約7割程度である。
(注)「ホームレスの実態に関する全国調査」(厚生労働省)とは、「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)」(2023年(令和5年))及び「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)」(2021年(令和3年))を指している。
★★
1は×である。
2023年の概数調査では、確認されたホームレス数は、3,065人(男性2,788人、女性167人、不明110人)であり、前年度と比べて383人(▲11.1%)減少している。
2は×である。
2023年の概数調査では、男性2,788人、女性167人、不明110人となっている。女性のホームレスを見かけることは少ないのではないだろうか。
3は×である。
生活実態調査によれば、ホームレスの平均年齢は上昇している。
4は〇である。
5は×である。
生活実態調査によれば、生活保護を利用したことがある人は32.7%だった。
正解4
ソーシャルワンカーからのワン🐾ポイントアドバイス
本問の元になっている調査結果を知らなくても、2,3,5は誤りと判断できるであろう。ホームレスの総数は減少傾向にある。このことを知っていれば、1は誤りで、以前からホームレスだった人が長期化していると推測できたであろう。