問題56 障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち.最も適切なものを1つ選びなさい。
1 1960年(昭和35年)に成立した精神薄弱者福祉法は、ソーシャルインクルージョンを法の目的とし、脱施設化を推進した。
2 1981年(昭和56年)の国際障害者年では、「Nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めるな)」というテーマが掲げられた。
3 2003年(平成15年)には、身体障害者等を対象に、従来の契約制度から措置制度に転換することを目的に支援費制度が開始された。
4 2005年(平成17年)に成立した障害者自立支援法では、障害の種別にかかわらず、サービスを利用するための仕組みを一元化し、事業体系を再編した。
5 2013年(平成25年)に成立した「障害者差別解消法」では、市町村障害者虐待防止センターが規定された。
(注)「障害者差別解消法」とは.「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。
1は×である。1960年の段階でソーシャルインクルージョンは早すぎる。
2は×である。
国連総会は1981年を国際障害者年と宣言した。それは世界の人びとの関心を,障害者が社会に完全に参加し,融和する権利と機会を享受することに向けることを目的とする。1981年の国際障害者年のテーマは、完全参加と平等である。「Nothing about us without us」は、「障害者の権利に関する条約」(2008年発効)の策定の過程において、すべての障害者の共通の思いを示すものとして使用されたものである。
3は×である。従来の措置制度から契約制度に転換した。㉚問57肢3参照。
4は○である。㉙問57参照。
5は×である。
障害者虐待防止センターが規定されたのは、2014年(平成26年)の「障害者差別解消法」である。年号などの詳細がわからなくても、障害者虐待防止法を想起できれば、本肢が誤りであることは推測できたと思われる。
正解4
問題57 「障害者総合支援法」における介護給付費等の支給決定に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 市町村は、介護給付費等の支給決定に際して実施する調査を、指定一般相談支援事業者等に委託することができる。
2 障害児に係る介護給付費等の支給決定においては、障害支援区分の認定を必要とする。
3 就労定着支援に係る介護給付費等の支給決定においては、障害支援区分の認定を必要とする。
4 市町村は、介護給付費等の支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者に対し、支給決定後に、サービス等利用計画案の提出を求める。
5 障害支援区分は、障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものである。
(注) 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
1は〇である。
2は×である。
障害児となっていることに注意する必要がある。「障害児については、発達途上にあり時間の経過と共に障害の状態が変化すること、乳児期については通常必要となる育児上のケアとの区別が必要なこと等検討課題が多く、現段階では直ちに使用可能な指標が存在しないことから、障害支援区分は設けない」こととされている(介護給付費等の支給決定等について:障発第0323002号)。
3は×である。
就労定着支援に係る介護給付費等の支給決定では、障害支援区分の認定を必要としない。
4は×である。支給決定前である。
5は〇である。
正解1,5
消去法も用いて解いた方がよい。2は「障害児」、3は「就労定着支援」、4は「支給決定後」の部分に着目できれば、誤りと推測しやすい。
問題58 事例を読んで、これからの生活においてLさんが利用可能な「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスとして.適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Lさん(30歳)は、視覚障害により障害等級1級の身体障害者手帳の交付を受けている。慣れた場所では白杖を利用し単独で歩行でき、日中は一般就労に従事している。これまで実家暮らしで家族から介護を受けてきたが、職場近くの賃貸住宅を借り、そこで一人暮らしをしようと準備している。これからは、趣味や外食のため、行ったことがない所にも積極的に外出したいと考えている。Lさんの障害支援区分は3で、調理、洗濯、掃除等の家事援助を必要としている。
1 居宅介護
2 重度訪問介護
3 同行援護
4 行動援護
5 重度障害者等包括支援
1は〇である。
Lは障害支援区分3を有しており、調理、洗濯、掃除等の家事援助を必要としている。㉛問61参照。
2は×である。
重度訪問介護の利用には、少なくとも障害程度区分4以上であることが必要である。㉜問58肢1参照。
3は〇である。
Lは視覚障害により障害等級1級の身体障害者手帳の交付を受けており、これからは、趣味や外食のため、行ったことがない所にも積極的に外出したいと考えていることから、同行援護は適切である。㉜問58肢4参照。
4は×である。
行動援護は、知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有し、常時介護を有する者であって、 障害支援区分が区分3以上で、障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上(児童にあってはこれに相当する支援の度合)あることが必要である。㉜問58肢2参照。
5は×である。
重度障害者等包括支援には、障害支援区分が区分6(児童にあっては区分6に相当する支援の度合)に該当し、意思疎通に著しい困難を有する者であることが要件となる。
正解1,3
㉜問58をはじめ、大部分のサービスは過去問で出されている。過去問を解く際に、各サービスの概要を押さえておけば解くことができる。
問題59 「障害者総合支援法」等に基づく専門職などに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 居宅介護従業者は、指定障害福祉サービスの提供に係る管理を行う者として配置されている。
2 相談支援専門員は、指定特定相談支援事業所において指定計画相談支援を行う者として配置されている。
3 相談支援専門員は、モニタリングに当たっては、1年に1回、利用者宅を訪問し面接を行わなければならない。
4 児童発達支援管理責任者は、指定障害児相談支援事業所において障害児支援利用計画の作成を行う者として配置されている。
5 居宅介護従業者は、病院又は障害福祉施設への紹介その他の便宜の提供を行う者として配置されている。
居宅介護従業者は、訪問介護を行う者の資格の一つで、都道府県知事の指定する居宅介護従業者養成研修の課程を修了した者をいう。
2は〇である。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準3条1項参照。
3は×である。
モニタリングは、利用者本人等の心身の状況、置かれている環境、援助の方針や解決すべき課題、目標や達成時期等並びに厚生労働省令で定める期間を勘案して市町村が決定した期間毎に、サービス等の利用状況の検証を行い計画の見直しを行う(障害者総合支援法5条22、23項)。
4は×である。
児童発達支援管理責任者の業務は、利用する児童の成長に合わせた個別支援計画書を作成することと、自身が作成した個別支援計画書に基づいた支援や療育が組織的に行えているか管理することである。児童発達支援管理責任者は、障害児支援サービスを提供する事業所に配置が義務付けられている。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準49条1項、58条1項、63条1項、69条1項参照。㉚問61参照。
5は×である。
指定特定相談支援事業者である(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準8条参照。
正解2
たくさんのことをと問われているように見えるが、専門職として挙げられているのは3つである。居宅介護従業者、相談支援専門員、児童発達支援管理責任者の各名称からイメージできる業務内容を選択肢の説明と照らし合わせて判断する。
問題60 事例を読んで、この段階においてU相談支援事業所のM相談支援専門員(社会福祉士)が行う支援の内容として、次のうち最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
U相談支援事業所のM相談支援専門員は、V精神科病院の地域医療連携室に勤務するA精神保健福祉士から、精神障害者のBさん(50歳代)の今後の生活について、相談を受けた。Bさんは、V精神科病院において約10年にわたって入院生活を送ってきた。現在、症状は安定しているが、身寄りもなく、帰る場所もない状態であり、聞かれれば、「可能なら就労したい」と答える。そこで、M相談支援専門員は、A精神保健福祉士と連携しつつ、Bさんとの定期的な面接による相談を行い、これからの生活を一緒に考えることになった。
1 地域移行支援による退院支援
2 地域定着支援による退院支援
3 公共職業安定所(ハローワーク)を利用した求職活動の支援
4 障害者就業・生活支援センターによる職業準備訓練を受けるための支援
5 後見開始の審判申立て支援
1は〇である。
事例からBは長期入院後、症状は安定しているものの、身寄りもなく、帰る場所もない状態にある。まずは、退院後の居住場所を確保する必要があり、この段階で行う支援としては地域移行支援による退院支援が最も適切である。
2は×である。
地域定着支援よりも先に地域移行支援を行う段階にある。
3は×である。
Bは「可能なら就職したい」と答えているが、現段階では先に行うべき支援がある。
4は×である。肢3の解説参照。
5は×である。
Bについては、判断能力の低下を示すような事情は書かれていない。
正解1
㉛問33、㉛問61参照。
問題61 身体障害者福祉法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 身体障害者福祉法の目的は、「身体障害者の更生を援助し、その更生のために必要な保護を行い、もって身体障害者の福祉の増進を図ること」と規定されている。
2 身体障害者の定義は、身体障害者手帳の交付を受けたかどうかにかかわらず、別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者をいうと規定されている。
3 身体障害者手帳に記載される身体障害の級別は、障害等級1級から3級までである。
4 都道府県は、身体障害者更生相談所を設置しなければならなぃ。
5 市町村は、その設置する福祉事務所に、身体障害者福祉司を置かなければならない。
身体障害者福祉法1条は、同法の目的について「この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)と相まって、身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、身体障害者を援助し、及び必要に応じて保護し、もつて身体障害者の福祉の増進を図ることを目的とする。」としている。
2は×である。
身体障害者福祉法4条は、「この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう」としている。
3は×である。
手帳の交付対象となる障害の範囲は、身体障害者福祉法別表によって定められており、身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)により1級から7級までの区分が設けられている(ただし、7級の障害が一つのみでは手帳の対象にはならない)。
4は○である。㉚問45肢2参照。
5は×である。
市町村は、その設置する福祉事務所に、身体障害者福祉司を置くことができるが、義務ではない(身体障害者福祉法11条の2第2項)。なお、都道府県は、その設置する身体障害者更生相談所に、身体障害者福祉司を置かなければならない(同1項)。㉙問45肢3参照。
正解4
問題62 「精神保健福祉法」に規定されている入院に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 任意入院では、入院者から退院の申出があった場合、精神保健指定医の診察により、24時間以内に限り退院を制限することができる。
2 応急入院では、精神科病院の管理者は、精神保健指定医の診察がなくても、72時間以内に限り入院させることができる。
3 医療保護入院では、精神保健指定医の診察の結果、必要と認められれば、本入の同意がなくても、家族等のうちいずれかの者の同意に基づき入院させることができる。
4 医療保護入院では、精神保健指定医の診察の結果、必要と認められれば、本人の同意がなくても、本人に家族等がいない場合は検察官の同意により入院させることができる。
5 措置入院では、本人に自傷他害のおそれがあると認めた場合、警察署長の権限に基づき入院させることができる。
(注)「精神保健福祉法」とは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。
1は×である。
指定医の診察の結果、医療および保護のため、入院の継続が必要なときは72時間に限り、退院させないことができる。
2は×である。応急入院では、精神保健指定医の診察が必要である。
3は〇である。
4は×である。医療保護入院では、精神保健指定医の診察が必要である。
5は×である。入院の措置権限があるのは、都道府県知事である。
正解3
最近の過去問には入院の要件を問うものが少なかったので、精神保健福祉士と併願している受験生以外には難しい問題だったかもしれない。