問題49 日本の社会保障制度の歴史的展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 1950 年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では, 日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。
2 1961年(昭和36年)に国民皆保険が実施され,全国民共通の医療保険制度への加入が義務づけられた。
3 1972年(昭和47年)に児童手当法が施行され,事前の保険料の拠出が受給要件とされた。
4 1983年(昭和58年)に老人保健制度が施行され,後期高齢者医療制度が導入された。
5 1995年(平成7年)の社会保障制度審議会の勧告で,介談サービスの供給制度の運用に要する財源は,公的介護保険を基盤にすべきと提言された。
消去法で解きやすい典型的な問題である。
1は「日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべき」がおかしい。×である。2は、「全国民共通の医療保険制度」が×である。未だに実現していない。3は、
児童手当法が「事前の保険料の拠出」を受給要件としたことはなく、×である。4は、
後期高齢者医療制度の導入はもっと後のこと(2006年)なので×である。5は単独で判断を求められると難しいが、1から4までが×であることはわかりやすいので、おそらく5が正しいだろうと推測できる。
【正解5】
問題50 「平成28年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費は,150兆円を超過した。
2 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を部門別(「医療」,「年金」,「福祉その他」)にみると,「福祉その他」の割合は1割に満たない。
3 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を機能別(「高齢」,「保健医療」,「家族」,「失業」など)にみると,「家族」の割合は1割に満たない。
4 2016年度(平成28年度)の社会保障財源における公費負担の割合は,社会保険料の割合よりも大きい。
5 2015年度(平成27年度)における社会支出の国際比較によれば, 日本の社会支出の対国内総生産比は, フランスよりも高い。
過去問に出ているものがいくつかある。知識がなくても消去法で答えを出すことが可能である。
よく似た問題を見た記憶があったので確認しところ、㉒‐問50、㉕‐問51、㉖-問51だった。
1は、100兆円は超えているものの、150兆円まで達したという話は聞いたことがなく×であろう。2であるが、福祉が1割に満たなかったのは2000年よりも前の話である。今は1割を超えている。×である。3は、知っていれば〇と判断できるが、知らなければ△にして次に進む。4は、
社会保障財源は、公費負担よりも社会保険料の財源が大きいので×である。これは最近の過去問でも出ている。5は、日本の社会支出の対国内総生産比は, フランスよりも低いので×である。日本の社会支出の対国内総生産比は、世界の中では決して高くないことを知っていれば×と判断できる。
【正解3】
問題51 会社に勤めている人が仕事を休業した場合などの社会保障制度上の取扱いに関する次の記述のうち, 最も適切なものを1つ選びなさい。
1 健康保険の被保険者が病気やケガのために会社を休んだときは, 標準報酬月額の2分の1に相当する額が傷病手当金として支給される。
2 厚生年金の被保険者に病気やケガが発生してから, その症状が固定することなく1 年を経過し, 一定の障害の状態にある場合は, 障害厚生年金を受給できる。
3 育児休業を取得する場合に支給される育児休業給付金は, 子どもが3 歳になるまでを限度とする。
4 労働者が業務災害による療養のため休業し, 賃金を受けられない日が4日以上続く場合は, 労働者災害補償保険による休業補償給付を受けられる。
5 育児休業期間中の厚生年金保険料は, 被保険者分のみ免除される。
厚生年金、健康保険、労災、育児休業など幅広い分野からの出題である。本問のような知識は、実際の相談援助にも役立つものである。
類似した過去問がある(㉖‐問54など)。過去問学習をしっかり行えていれば、ある程度までは選択肢を絞れる。
1は、
傷病手当金の額は標準報酬月額の3分の2に相当する額なので×である。正確に覚えていなくても2分の1(半分)よりは多かったはずだと判断できればよい。2は「1年」ではなく
1年半なので×。3は知らないと悩むであろう。
育児休業は1年6か月までだったが、2017年の法改正により最大で2年まで延長できることになった。育児休業給付金はこの休業期間中の所得保障制度なので、子どもが2歳になるまでを限度とすることになる。肢3は×である。4も知らないと悩むであろう。これが〇である。
休業して1日目から3日目までは労働基準法に基づいて事業主に休業補償の義務がある。労災からの休業補償は4日目からとなる。5は、知らないと判断に迷うかもしれないが、「被保険者分のみ免除」の部分がヒントになっている。
最近の子育て支援策の強化の流れを思い浮かべるなら、育児休業期間中なら被保険者の配偶者の分も免除させていいのではないかと想像できるからである。
【正解4】
問題52 遺族年金に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は, 生計を同じくするその子の父または母がある間は支給停止される。
2 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は, その子が婚姻した場合でも引き続き受給できる。
3 遺族基礎年金は, 死亡した被保険者の孫にも支給される。
4 受給権を取得した時に, 30 歳未満で子のいない妻には当該遺族厚生年金が10年間支給される。
5 遺族厚生年金の額は, 死亡した者の老齢基礎年金の額の2分の1である。
難問だと感じた人が多かったと思われる。過去問でここまで聞く問題は記憶にない。
本問を解く上で十分な知識がない場合、1か4かで迷ったと思われる。
1は生計を同じくする父または母がいれば、支給停止としても子に不利益がないようにも思える。しかし、生活力にかける父または母であれば支給停止は不合理とも考えられる。知識がなければ△にして次に進む。2は、子が婚姻したのであれば独立した生計の主体となるわけだから、受給できなくなると考えるのが素直であろう。×ぽい。3は、子の子である孫までは支給されないと考えるのが素直である。孫にはすでに親である被保険者の子がいるからである。×ぽい。4は、知らなければ△にして次に進む。5であるが、
遺族厚生年金は、被保険者の厚生年金を元に算定される。少なくとも「老齢基礎年金の額の2分の1」であるはずがないことは容易に判断できるであろう。×である。4であるが、
30歳未満でも子のいる妻は(再婚しなければ)一生遺族厚生年金を受け取ることができる。かつては受給権を取得した時に30歳未満で子のない妻も同じ扱いを受けていた。しかし、
改正により平成19年4月から30歳未満で子のない妻は、5年の有期年金に変更された。このことを知っていれば、4を×にして消去法で1を選べる。しかし、通常の社会福祉士の受験生でそこまで押さえていた人は少なかったのではないだろうか。
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス
選択肢1について補足する。
ここで問題になっているのは遺族基礎年金である。国民年金の被保険者等であった者が、受給要件を満たしている場合、亡くなった者によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が、遺族基礎年金を受け取ることができる。
ここでの「子」は、次の3つの要件が必要である。
①18歳になった年度の3月31日までの間にある子。
②20歳未満で、障害等級1級または2級の障害状態にある子。
③婚姻していないこと。
このことから、遺族基礎年金は、子の保護のためのものだということがわかる。このことからすると、子に「生計を同じくするその子の父または母がある間は支給停止される」との結論には納得がいかないと感じる人もいるかもしれない。だが、この場合は子に対する遺族基礎年金の支給は停止される。なぜなら、その子と生計を同じくする父または母がいる場合、その父または母が遺族基礎年金の受給権を有するからである。もちろん、そのお金は子のために使われるということを念頭に置いている。
【正解1】
問題53 医療保険制度に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 後期高齢者医療制度には, 75 歳以上の全国民が加入する。
2 後期高齢者の医療費は, 後期高齢者の保険料と公費で折半して負担する。
3 都道府県は, 当該都道府県内の市町村とともに国民健康保険を行う。
4 健康保険組合の保険料は, 都道府県ごとに一律となっている。
5 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の給付費に対し, 国は補助を行っていない。
医療保険制度について、いろいろな角度からの問題である。意地の悪い問題である。
新たな国保制度は、平成30年からスタートした。ヤマとして張っていた人は多かったとであろう。この知識がないと、まんまと1を選ぶという罠にはまってしまうと思われる。その意味で近時の重要な改正をまったく無視することは得策ではないだろう。
1はよさそう。2は、現役世代の保険料も含まれるので×。3は最近改正があったところであり、よさそう。4であるが、健康保険組合の保険料は組合ごとに異なるので×。5の協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の前身は政府管掌健康保険である。国は補助を行っていそうなので×ぽい。ここで1と3を再度検討する。気づきにくいが1は×である。75歳以上の人が入れる医療保険は、後期高齢者医療制度しかない。このことから1を正しいと考えた人が多かったと思われる。だが、医療保険に加入していない人が存在するのである。このあたりで気づけただろうか。そう、
医療扶助を受けている人は、75歳以上であっても後期高齢者医療制度には加入していないということである。
【正解3】
問題54 事例を読んで, 子育て支援などに関する次の記述のうち. 最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
会社員のDさん(32 歳男性)と自営業を営むE さん(30 歳女性)の夫婦は. 間もなく第1子の出産予定日を迎えようとしている。Dさんは, 厚生年金と健康保険の被保険者で. Eさんは国民年金と国民健康保険の被保険者である。
1 Eさんは,「産前産後期間」の間も国民年金の保険料を支払わなければならない。
2 Eさんが出産したときは. 国民健康保険から出産育児一時金が支払われる。
3 Dさんが育児休業を取得する場合, 健康保険から育児休業給付金が支給される。
4 Dさん夫妻の第1子の医療保険給付の一部負担は, 義務教育就学前までは3割である。
5 Dさん夫妻の第1子が3歳に満たない期間については, 月額2万円の児童手当が給付される。
(注) 「産前産後期間」とは, 出産予定日又は出産日が属する月の前月から4か月間を指す。
事例を通じて、基本的知識の有無を試す問題である。
Eさんは国民健康保険(国保)の被保険者である。健康保険(健保)にはあるが国保にはない給付があることは多くの人が知っているであろう。なお、本問では厚年か国年かの差異は直接には聞かれていない。
1の「産前産後期間」は、さすがに保険料は支払わなくてもよいと感じるはずである。いくら何でもこの期間の妊産婦に保険料を請求したら鬼である。×ぽい。2の
出産育児一時金はどうか。国保であっても、出産に要する費用は健保と同じに扱うべきではないかと感じるはずである。そうでないと選んだ職業による差が大きくなり過ぎてしまう。〇であろう。3は、Dさんが育児休業を取得する場合には育児休業給付金が支給されるのは当然である。ただし、それは
雇用保険から支給される。本肢は「健康保険から」の部分が×である。4の
義務教育就学前までの医療保険給付の一部負担は2割である。本肢は×である。なお、多くの自治体には、その一部負担を免除する制度が設けられている(マル乳・マル子など)が、この話と混同しないように注意する必要がある。5の
3歳未満の児童手当の額は一律1万5000円であるから、本肢は×である。
やや細かいと感じる知識もあるが、積極法で2を選んだ人が多かったのではないだろうか。1と2は、はっきりと覚えていなくても上記のように考えて正誤を判断することは可能だと思われる。参考書の一覧表は便利であるが、それを記憶に定着させるための工夫をして欲しい。3についてDが男だから受け取れないと考えた人は時代の流れに反した思考といえる。ただし、本問は別のところにひっかけがあるので、とにもかくにも×だとできれば結果オーライではある。4と5は社会保障あるいは保健医療サービスの中で一度は目にする内容ではないだろうか。
【正解2】
問題55 事例を読んで, 適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
F さん(65 歳女性)は, 22 歳からアパレル関係の大企業で正社員として働き,
厚生年金にも加入していた。その後会社員の夫と結婚し, 35歳の時に退職して専業主婦になった。48歳の時に個人事業主として手芸店を開き, 現在ではかなりの事業収入を得ている。
1 Fさんが大企業で働いて厚生年金に加入していた時には, 給与の額にかかわらず毎月定額の保険料を支払っていた。
2 Fさんは通算して10 年以上年金制度に加入しているので, 老齢基礎年金を受給できる。
3 Fさんが専業主婦であった期間は, Fさん自身が国民年金の保険料を納付する必要はない。
4 Fさんは, 事業収入に応じた年金保険料を支払わなければならない。
5 Fさんは65 歳なので老齢厚生年金を受給できるが, 事業収入が基準を超える場合は年金額が減額される。
厚生年金と国民年金をミックスした問題である。
1は、
厚年の保険料は給料の額によって違うので×である。2は〇である。数年前に最低納付期間が
25年から10年に短縮されたことは当然知っておくべき知識である。3も〇である。受験生でない人でも知っている人が多いだろう。4であるが、個人事業主となったFさんは国民年金の保険料を納めなければならない。
国年の保険料が一律なのは、基本的知識といえるだろう。本肢は×である。5は細かい知識であり、新カリ以降の試験では出題されていない。
在職老齢年金制度は、すでに個人事業主であるFさんには適用されないので×である。
選択肢5について明確に知っていた人が試験場でどの位いたのかは不明だが、ここで悩む前に2と3を選びたいところである。逆にそこで決着をつけられれば、5の在職老齢年金制度は(サラリーマンではない)個人事業主には適用されないのだろうと推測して、気持ちよく次の科目に移ることができる。
【正解2,3】