問題49 日本の人口に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 「人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在)」(総務省)によると,2019年の総人口は前年に比べ増加した。
2 「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)」(厚生労働省)によると,2019年の合計特殊出生率は前年より上昇した。
3 「国立社会保障・人口問題研究所の推計」によると,2065年の平均寿命は男女共に90年を超えるとされている。
4 「国立社会保障・人口問題研究所の推計」によると,老年(65歳以上)人口は2042年にピークを迎え,その後は減少に転じるとされている。
5 「国立社会保障・人口問題研究所の推計」によると,2065年の老年(65歳以上)人口割合は約50 %になるとされている。
(注) 「国立社会保障・人口問題研究所の推計」とは,「日本の将来推計人口(平成29年推計)」の出生中位(死亡中位)の仮定の場合を指す。
本問は一定の知識がないと自信を持って正解を選べないと思われる。
1は、×である。日本は2010年頃からすでに
人口減少の局面に入っており
(過去問でも出ている)、その後大幅に出生率が上がったという事実もない。このことからも、2019年に総人口が増えたとは推論しづらい。
2は、知識がないと判断しづらい。知っていれば×と即答できるが、知らなければ△にして次に進む。
3は、×である。現在の
平均寿命はおよそ
男性が
82歳、
女性が
約89歳である。約半世紀後に男性が90歳を超えるとは考えづらい。
4であるが、
2042年に65歳になる人は何年生まれかを考えてみるとよい。すると1977年に生まれた人であることがわかる。また、2042年のベビーブーム世代(1947-1949年生まれ)の人は91-93歳であり、現在の平均寿命を超えている。すなわちその世代の多くの人は亡くなっている可能性が高い。ベビーブーム以後、出生数はだんだんと減少していくが、2042年には老年人口のかなりの数の人が亡くなるので、その後は、老年人口が減少すると推測することは不合理ではあるまい
(※ここでは絶対数の減少が問われていることに注意)。
5は、知らないと判断しづらい。肢4で検討したように2042年頃には老年人口は減ると考えられるので、それから約20年後の老年(65歳以上)人口割合は50%を大幅に下回ると考えた方がよいのではないだろうか。
【正解4】
問題50 「平成29年版厚生労働白書」における社会保障の役割と機能などに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 戦後の社会保障制度の目的は,「広く国民に安定した生活を保障するもの」であったが,近年では「生活の最低限度の保障」へと変わってきた。
2 1950年(昭和25年)の「社会保障制度に関する勧告」における社会保障制度の定には,社会保険,国家扶助,治安維持及び社会福祉が含まれている。
3 社会保障には,生活のリスクに対応し,生活の安定を図る「生活安定・向上機能」がある。
4 社会保障の「所得再分配機能」は,現金給付にはあるが,医療サービス等の現物給付にはない。
5 社会保障には,経済変動の国民生活への影響を緩和し,経済を安定させる「経済安定機能」がある。
肢5が正しいことはわかりやすいが、肢3の記述を深読みして判断に迷った人もいると思われる。
一番気をつけなければならないのは、答えを2つ選ぶことを忘れてしまわないようにすることである。
1は、×である。近年において社会保障制度の目的が「生活の最低限度の保障」へと後退したという話など聞いたことがない。
2は、「治安維持」の部分が×ぽい。1950年(昭和25年)の「社会保障制度に関する勧告」の中にそのような文言を使うとは考えにくい。
3は、「生活安定・向上機能」の向上機能が少しひっかかる。△にして次に進む。
4は、社会保障の「所得再分配機能」が医療サービス等の現物給付にはないとの記述をどう考えるかがポイントになる。医療サービスで考えた場合、財源が公費(≒租税)と保険料であることは多くの人が知っているであろう。租税が累進課税であり、保険料も所得に応じて段階が設けられていることも知っていなければならない。このことから考えると医療サービス等の現物給付に「所得再分配機能」がないとまではいえず、4は×だと考えるべきだろう。
5は、〇である。特に問題のない内容だ。
【正解3,5】
問題51 医療保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 国民健康保険には,被用者の一部も加入している。
2 医師など同種の事業又は業務に従事する者は,独自に健康保険組合を組織することができる。
3 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の保険料率は,全国一律である。
4 健康保険の被扶養者が,パー.トタイムで働いて少しでも収入を得るようになると,国民健康保険に加入しなければならない。
5 日本で正社員として雇用されている外国人が扶養している外国在住の親は,健康保険の被扶養者となる。
過去問でも見たことのない肢や非常に新しい法改正に関する肢が入っている。
本問を解くことに限って言えば、ポピュラーな知識が肢にあることから、自信のない肢は深読みせずに、さっさと積極法を活用し、次に行ったほうがよい。
1は、〇である。選択肢の4がヒントになっていることにも気づいて欲しい。被用者であってもフルタイムの労働者から週1日とかさらには半日とかのパートタイム労働者もいる。
被用者保険(≒健康保険)に入れるのは、週の所定労働時間によって決まる。
2、は知らないと判断しづらい。ちなみに医師国保に加入できるのは、地区の医師会か大学医師会に所属する医師とその家族や従業員ということになっており、同種の事業又は業務に従事する者が、独自に健康保険組合を組織できるわけではない。
3は、知らないと判断しづらい。ちなみに各都道府県の保険料率は、地域の加入者の方の医療費に基づいて算出されているため、都道府県ごとに必要な医療費(支出)が異なることから保険料率にも差が生じることになっている。
4は、×である。肢1のところで述べたように週の所定労働時間によって異なる。なお、4は少しでも働くと「国民健康保険に加入しなければならない」としている点もおかしい。
5は、も知らないと判断に迷う。大学の現役の学部生であれば授業で聞いているかもしれないが、普通の受験生は知らなかったのではないだろうか。扶養親族の要件として、
日本国内に住所(住民票)を有していることが必要である。
【正解1】
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外国人労働者は海外に在住する親族を被扶養家族について
2020年3月以前は、健康保険法で決められた要件に当てはまれば、日本の健康保険に加入している外国人労働者は海外に在住する親族を被扶養家族として、健康保険に加入させることができた。しかし、法改正があり、2020年4月以降は海外に在住する扶養親族の要件として、従来の外国人被保険者から生計を維持されているということに加えて、日本国内に住所(住民票)を有していることが必要になった。
問題52 事例を読んで,労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
運送会社で正社員として働いているFさんは,合理的な経路及び方法により通勤中,駅の階段で転倒し,負傷した。
1 Fさんの負傷は業務災害ではないので,労災保険の給付は行われない。
2 Fさんの雇用期間が6か月未満である場合,労災保険の給付は行われない。
3 Fさんが療養に係る労災保険の給付を受けられる場合,自己負担は原則1割である。
4 Fさんが療養に係る労災保険の給付を受ける場合,同一の負傷について,健康保険の療養の給付は行われない。
5 Fさんの勤務先が労災保険の保険料を滞納していた場合,労災保険の給付は行われない。
健康保険と労災保険の関係は過去問で形を変えながら何回も問われている知識である。
迷う肢があったとしても、正解の肢を見つけやすい。
1は、×である。通勤災害にも労災保険の給付は行われる。
2は、×である。雇用期間に関わらず労災保険の給付は受けられる。
(㉕問55-肢3参照)。
3は、×である。労災保険から療養給付を受けられる場合、自己負担はない。
4は、〇である。Fが療養に係る労災保険の給付を受ける場合、同一の負傷について、健康保険の療養の給付は行われない。
5は、×である。感覚的に使用者の怠慢の非を労働者がかぶるのはおかしいと感じて欲しい
(㉖問53-肢4参照)。
【正解4】
問題53 障害児・者に係る現金給付に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 出生時から重度の障害があり,保険料を納めることができなかった障害者は,保険料を追納した場合に限り,障害基礎年金を受給することができる。
2 在宅の重度障害者は,所得にかかわらず特別障害者手当を受給できる。
3 障害厚生年金が支給される場合,労働者災害補償保険の障害補償年金は全額支給停止される。
4 特別児童扶養手当を受給している障害児の父又は母が,児童手当の受給要件を満たす場合には,児童手当を併せて受給できる。
5 障害児福祉手当は,重度障害児の養育者に対し支給される手当である。
判断を迷う肢があった時、両方の選択肢を見比べて、解決のためのヒントがないか探してみる姿勢が大切である。
1は、×である。出生時から重度の障害がある場合、保険料を追納しないと所外基礎年金を受給できないという結論はおかしいと感じて欲しい。
2は、×である。特別障害者手当は社会福祉の制度であり、何らかの事由で一定以上の所得がある場合には、受給出来ないこともある。
3は、×である。この場合、併給を認めた上で調整される。
過去問で出題されている知識である(㉖問54-肢5参照)。
4は、少し迷う。児童手当はすべての児童の保護者を対象にしている(※所得制限はあるが)。これに対し特別児童扶養手当は障害を持つ児童を扶養する親に支給される。2つの手当ては目的が異なっているので、併給できると考えてよいのではないだろうか。結論として、〇である。
5は、×である。ポイントは、
誰に対して支給されるのかである。障害児福祉手当は
障害児に対して支給されるものである。
【正解4】
問題54 事例を読んで,Gさんが受けられる社会保障給付等に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。 2も×ぽい。
〔事例〕
Gさん(35歳.女性)は民間企業の正社員として働く夫と結婚後,5年間専業主婦をしていたが2019年(令和元年)に離婚し,3歳の子どもと二人で暮らしている。飲食店で週30時間のパートタイムの仕事をしており,雇用保険の加入期間は1年を過ぎた。しかし,店主の入院により飲食店は営業を休止し,Gさんは休業を余儀なくされている。
1 Gさんは,婚姻期間中の夫の老齢基礎年金の保険料納付記録を分割して受けられる。
2 Gさんが児童扶養手当を受給できるのは,子が小学校を卒業する年度末までである。
3 Gさんが母子生活支援施設に入所した場合,児童扶養手当を受給できない。
4 Gさんは,休業期間中の手当を雇用保険の雇用継続給付として受給できる。
5 Gさんが解雇により失業した場合,失業の認定を受けて雇用保険の求職者給付を受給できる。
雇用保険に関する問題は、数年置きに出題されるので、今後も最低限の勉強はしておいたほうがよい。
選択肢の中で1,2,3が×であることは比較的判断しやすいと思われる。
1は、×である。夫の年金の保険料納付記録を分割して受けられるのは厚生年金である。老齢基礎年金は個々人が納付するものなのだから分割の対象にはならない。
2は、×である。Gが児童扶養手当を受給できるのは子が18歳に達する日以降の最初の3月31日までである。仮に知らなくても小学校卒業するまでというのはおかしいと感じて欲しい(せめて義務教育までは必要だろうという素朴な疑問を持って欲しいところである)。
3は、×である。母子生活支援施設に入所しても児童扶養手当を受給できなくなるということはない。母子生活支援施設は、さまざまな事情の母親と子どもに対して、生活の安定のための相談や援助を行いながら、自立を支援する施設である。入所したら児童扶養手当が打ち切られるというのはおかしいと感じて欲しい。
4は、×である。休業中はGは働けないので給与をもらえない。なんらかの形でGを保護できないかという思いを抱く人も多いであろう。しかし、雇用継続給付はこの場合支給されない。なぜなら、Gの場合、高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付のいずれの要件も充たさないからである。
5は、〇である。解雇による場合であっても、失業の認定を受けて雇用保険の求職者給付を受給できる。
【正解5】
問題55 国民年金に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 国民年金の第一号被保険者の保険料は,前年の所得に比例して決定される。
2 障害基礎年金を受給していると,国民年金の保険料納付は免除される。
3 学生納付特例制度の適用を受けた期間は,老齢基礎年金の受給資格期間には算入されない。
4 自営業者の配偶者であって無業の者は,国民年金の第三号被保険者となる。
5 障害基礎年金には,配偶者の加算がある。
若干細かく感じるものものあるが、 選択肢の多くは基本的な知識に属するものだといえよう。
暗記に頼る勉強をしていた人は、難しく感じたのではないかと思われる。
1は、×である。国民年金の第一号被保険者の保険料は定額である。
2は、〇である。生まれつき重い障害があり、20歳から障害基礎年金を受給しなければならないケースを念頭に置くと理解しやすいであろう。もし自信をもって判断できなければ、△にして次に進む。
3は、×である。学生納付特例制度の適用を受けた期間も、あとから追納すれば老齢基礎年金の受給資格期間は算入される。なお、追納しない場合は、合算対象期間(いわゆる空期間)となる。
4は、×である。国民年金の第三号被保険者は、第2号被保険者(サラリーマンのような会社員)の配偶者で無業の者である。
5は、×である。障害基礎年金には、配偶者の加算はない。障害基礎年金は、実質的には国民年金が形を代えたものである。国民年金は各人が加入して各人が納付した保険料に応じて受給するものである。
【正解2】