問題32
地域福祉の政策に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」報告書(2008 年(平成20 年))では,地域住民の生活課題を踏まえて公助を拡大することの重要性が指摘された。
2 生活困窮者自立支援法(2013 年(平成25 年))では,生活困窮者の自立の促進と尊厳の保持とともに生活困窮者支援を通じた地域づくりが基本理念とされた。
3 「医療介護総合確保推進法」(2014 年(平成26 年))では,地域包括ケアシステムという用語が初めて法律に明記された。
4 「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」(2015 年(平成27 年))では,分野別の専門的相談支援体制の強化に向けての改革の必要性が提示された。
5 社会福祉法の改正(2017 年(平成29 年))では,市町村地域福祉計画について,3年ごとに,調査,分析及び評価を行うこととされた。
(注)1 「医療介護総合確保推進法」とは,「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」のことである。
2 「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」とは,厚生労働省新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討プロジェクトチームが出した「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現―新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン―」という報告書のことである。
難問と言えます。個々に知らない記述はあるだろうが、常識と現在の福祉の流れに即して判断する。
1は
「公助を拡大する」との部分が時代に合わない。×である。2は何となくよさそうだが、生活困窮者自立支援法の中に「生活困窮者支援を通じた地域づくり」を盛り込むことにやや
違和感を感じる。△。3は知らないと何とも言えないので△。4は2015年の時点で
「分野別の専門的相談支援体制の強化」という発想は時代に合わないと感じて欲しい。×ぽい。5は2017年の社会福祉法の改正で「3年ごと」に市町村地域福祉計画の調査,分析及び評価を行うとなっているが、知識がないと決めてに欠ける。
介護保険は3年だが市町村地域福祉計画は従来はそれよりも長くてよかったのだろうか。△だな。2と3と5で悩む。
【正解2】
問題33
地域福祉に関する理念や概念に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 ソーシャルキャピタルとは,地域における公共的建築物や公共交通といった物的資本の整備状況を示すことをいう。
2 住民主体の原則とは,行政の指導の下で地域住民が主体となって行う地域活動の原則のことをいう。
3 ノーマライゼーションとは,障害のある人に,障害のない人と同じような暮らしが可能となる生活条件を作り出していく考え方のことをいう。
4 地域移行支援とは,住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供することで,在宅の限界点を高めることをいう。
5 ソーシャルインクルージョンとは,全ての人々を孤独や孤立,排除や摩擦から援護し,社会の構成員として包み支え合う社会を目指すことをいう。
社会福祉士の基盤となる理念や概念に対する問題です。
1はソーシャルキャピタルを「公共的建築物や公共交通といった物的資本」に
限定している点がおかしい。×である。2は「行政の指導の下で」が余計である。×ぽい。3のような説明の仕方はあまり聞いたことがないが、内容はノーマライゼーションの要素を一応踏まえている(嫌な感じの肢である)。4は
「地域移行支援」と説明部分がマッチしていない。×ぽい。5は〇である。「2つ」選ばないといけないのだが、3か4のいずれを選ぶかで迷った人が多かったと思われる。
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス
地域移行支援とは
施設・病院からの退所・退院にあたって支援を必要とする人に、住居の確保などの地域生活に移行するための相談や必要な支援を行うものです。入所・入院中から新しい生活の準備等の支援を行うことで、障害のある方の地域生活への円滑な移行をめざします。
【正解3,5】
問題34
社会福祉協議会に配置された生活支援相談員による仮設住宅の入居者等の被災者を支援するための取組に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
震災後に設営されたN町の仮設住宅では,社会福祉協議会を通して,ボランティアを受け入れ,入居者へイベントや会食会などによる支援を行ってきた。1 年がたった頃から,ボランティアが主催する行事への参加者も少なくなってきた。そこで,生活支援相談員が入居者に尋ねたところ,一部の入居者から自分たちが集うアイディアを持ち掛けられた。
1 入居者のアイディアをボランティアに伝えて,生活支援相談員とボランティアとで行事を企画した。
2 アイディアを出した入居者とボランティアとの懇談会を開き,行事などの企画を一緒に考えた。
3 住民懇談会を開催し,入居者が自立して自ら交流すべきであると訴えた。
4 入居者同士の日頃の交流状況を把握するため,聞き取り調査を入居者有志と実施した。
5 アイディアを出した入居者に交流は任せて,安否確認の個別訪問活動に専念することにした。
素直に考えて判断する。
1は
入居者はどこにいったの?という感じ。×である。2はいい感じ。〇ぽい。3は、空気を読めよと突っ込みたくなる記述である。×ぽい。4は特に問題ないが、本問が
適切なものを「2つ」選べという部分を見落としてケアレスミスをした人もいるだろう。5のような「アイディアを出した入居者に交流は任せて」という記述はまず×である。
【正解2,4】
問題35
社会福祉法に規定されている社会福祉協議会の活動などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 市町村社会福祉協議会は,市町村地域福祉計画と一体となった地域福祉活動計画を策定するとされている。
2 市町村社会福祉協議会は,区域内における社会福祉事業又は社会福祉に関する活動を行う者の過半数が参加するものとされている。
3 市町村社会福祉協議会は,主要な財源確保として共同募金事業を行っている。
4 市町村社会福祉協議会は,「社会福祉事業」よりも広い範囲の事業である社会福祉を目的とする事業に関する企画及び実施を行う。
5 都道府県社会福祉協議会は,広域的見地から市町村社会福祉協議会を監督する。
社協と行政、都道府県社協と市町村社協の違いを意識する。
1であるが、「市町村社会福祉協議会は,市町村地域福祉計画と一体となった地域福祉活動計画を策定する」との規定は、
社会福祉協議会の独自性を失わせるものではないだろうか。このような規定はもちろんない。×である。2は知らなければ△。3は、
共同募金事業は都道府県社会福祉協議会なので×。4は△だが、内容はよさそう。5は「監督」がひっかかる。4にマークするのが無難だろうか。
【正解4】
問題36
地域福祉の対象に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 災害対策基本法における避難行動要支援者とは,本人が同意し,提供した情報に基づいて避難行動要支援者名簿に登載された者をいう。
2 「ホームレス自立支援法」におけるホームレスとは,都市公園,河川,道路,駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし,日常生活を営んでいる者をいう。
3 生活困窮者自立支援法における生活困窮者とは,最低限度の生活を維持できていない者をいう。
4 ひきこもり対策推進事業におけるひきこもりとは,様々な要因の結果として社会的参加を回避し,原則的には1 年以上家庭にとどまり続けていることをいう。
5 「障害者虐待防止法」における,養護者による障害者虐待とは,身体的虐待,心理的虐待,放棄・放置,経済的虐待の四つのことをいう。
(注)1 「ホームレス自立支援法」とは,「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」のことである。
2 「障害者虐待防止法」とは,「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。
様々な制度から出題されている。 2と4のいずれにすべきかで迷う。
1は狭すぎる。本人が同意していなくても避難行動要支援者であることは十分考えられる
(意思を表明できない人など)。×ぽい。2は△。3は
最低限度の生活を維持できていなければ生活保護の対象になる。生活困窮者自立支援法における生活困窮者は、それとは違っていそう。×ぽい。4は△。5は性的虐待が抜けているが、それでよいのか。×ぽい。
【正解2】