4.現代社会と福祉(R3年-第34回)1/2
問題22 次の記述のうち,1970 年代後半の「福祉の見直し」が提唱された時期に示された「新経済社会 7 カ年計画」の内容として,正しいものを 1つ選びなさい。
1 社会保障制度を「すべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすること」と新たに定義した。
2 社会保障を,所得階層の観点から「貧困階層に対する施策」「低所得階層に対する施策」「一般所得階層に対する施策」に区分した。
3 社会福祉施設への需要の増加を踏まえて, 5か年程度の期間の社会福祉施設緊急整備計画の樹立とその実施を求めた。
4 個人の自助努力と家庭や近隣・地域社会等との連携を基礎とした「日本型ともいうべき新しい福祉社会の実現を目指す」ことを構想した。
5 要介護高齢者の増加を背景に,介護サービス見込量の集計を踏まえ,訪問介護等の介護サービスの具体的数値目標を定めた。
難しい問題です。知らない人は、マークだけして次の問題に移りましょう。歴史に興味のある人、時間のある人は是非各々の資料を読んでみましょう。
1:「すべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすること」は、1949(昭和24)年に設置された社会保障制度審議会による 1950(昭和 25)年の「社会保障制度に関する勧告」です。
2:社会保障を,所得階層の観点から「貧困階層に対する施策」「低所得階層に対する施策」「一般所得階層に対する施策」に区分したのは、1962(昭和37)年の「社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告」です。
3:社会福祉施設への需要の増加を踏まえて, 5か年程度の期間の社会福祉施設緊急整備計画の樹立とその実施を求めたのは、1970(昭和45)年の「社会福祉施設の緊急整備について」です。
4:正しい
5:要介護高齢者の増加を背景に,介護サービス見込量の集計を踏まえ,訪問介護等の介護サービスの具体的数値目標を定めたのは、様々な資料がある為、特定が難しい。少なくとも1970年代とは関係なさそう。
【正解4】
問題 23 ノーマライゼーションに関する次の記述のうち,最も適切なものを 1つ選びなさい。
1 EU(欧州連合)の社会的包摂政策がノーマライゼーションの思想形成に影響を与えた。
2 知的障害者の生活を可能な限り通常の生活状態に近づけるようにすることから始まった。
3 ニュルンベルク綱領(1947 年)の基本理念として採択されたことで,世界的に浸透した。
4 国際児童年の制定に強い影響を与えた。
5 日本の身体障害者福祉法の制定に強い影響を与えた。
最も適切なものという問題です。また、時間軸にも注目しましょう。
2を選べた人が多かったと思いますが、1と迷った人もいたのではないでしょうか。
ノーマライゼーションは、1959年にデンマークで知的障害者福祉法が成立したことで、広く認知されるようになりました。
EU(欧州連合)の社会的包摂政策は1980年代ですので、ノーマライゼーションの思想形成に影響を与えるというのは、ちょっと変です。
【正解2】
問題24 福祉政策の学説に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1つ選びなさい。
1 ローズ(Rose, R.)は,経済成長,高齢化,官僚制が各国の福祉国家化を促進する要因であるという 収斂理論を提示した。
2 エスピン‒アンデルセン(Esping-Andersen, G.)は,自由主義・保守主義・社会民主主義という 3 類型からなる福祉レジーム論を提示した。
3 マーシャル(Marshall, T.)は,社会における福祉の総量(TWS)は家庭(H),市場(M),国家(S)が担う福祉の合計であるという福祉ミックス論を提示した。
4 ウィレンスキー(Wilensky, H.)は,福祉の給付を「社会福祉」「企業福祉」「財政福祉」に区別した福祉の社会的分業論を提示した。
5 ティトマス(Titmuss, R.)は,市民権が 18 世紀に市民的権利(公民権),19 世紀に政治的権利(参政権),20 世紀に社会的権利(社会権)という形で確立されてきたという市民権理論を提示した。
すべてを覚えるのは難しいと思います。できなくてもやむを得ない問題です。理論と人名を結び付けます。
1:収斂理論-ウィレンスキー
2:適切
3:福祉ミックス論-ローズ
4:福祉の社会的分業論-ティトマス
5:市民権理論-マーシャル
【正解2】
問題25 戦前の社会事業に関する次の記述のうち,正しいものを 1つ選びなさい。
1 方面委員制度は,社会事業の確立によって済世顧問制度へと発展した。
2 第一次世界大戦末期に発生した米騒動の直後に,社会事業に関する事項を扱う行政機関として厚生省が設立された。
3 救護法は市町村を実施主体とする公的扶助義務主義を採用したが,要救護者による保護請求権は認めなかった。
4 国家総動員体制下において,人的資源論に基づく生産力・軍事力の観点から,戦時厚生事業は社会事業へと再編された。
5 社会事業法の成立により,私設社会事業への地方長官(知事)による監督権が撤廃されるとともに,公費助成も打ち切られた。
この問題も難しい。推論で答えは出せないと思う。
1:方面委員制度は、民生委員制度の前身です。
2:厚生省は1938(昭和13)年に内務省衛生局、社会局などの仕事を統合して、発足しました。米騒動は1918年です。
3:正しい
4:国家総動員体制下においては、国家の全ての人的・物的資源を政府が統制運用できる状態であり、設問の趣旨とは違う。
5:社会事業法は、1938(昭和13)年に成立しているようですが、筆者は社会福祉事業法しか知りませんでした。社会事業福祉法が後に社会福祉法になるのは有名ですね。公費助成がないというところで、変だなと思えれば良しとしましょう。
【正解3】
問題26 イギリスにおける貧困に関する次の記述のうち,正しいものを 1つ選びなさい。
1 ラウントリー(Rowntree, B.)は,ロンドンで貧困調査を行い,貧困の主たる原因が飲酒や浪費のような個人的習慣にあると指摘した。
2 ベヴァリッジ(Beveridge, W.)による『社会保険および関連サービス』(「ベヴァリッジ報告」)は,「窮乏」(want)に対する社会保障の手段として,公的扶助(国民扶助)が最適であり,社会保険は不要であるとした。
3 エイベル‒スミス(Abel-Smith, B.)とタウンゼント(Townsend, P.)は,イギリスの貧困世帯が増加していることを 1960 年代に指摘し,それが貧困の再発見の契機となった。
4 タウンゼント(Townsend, P.)は,等価可処分所得の中央値の 50 %を下回る所得しか得ていない者を相対的剥奪の状態にある者とし,イギリスに多数存在すると指摘した。
5 サッチャー(Thatcher, M.)が率いた保守党政権は,貧困や社会的排除への対策として,従来の社会民主主義とも新自由主義とも異なる「第三の道」の考え方に立つ政策を推進した。
人名と理論や出来事の暗記ものです。難問と言って良いと思います。
【正解3】
一覧に戻る