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30.精神障害者の生活支援システム(R元年-第22回)

問題73 M精神保健福祉士は, X精神科病院相談室の責任者である。X精神科病院には職員の資質向上を目的とした研修企画委員会が設置されており, M精神保健福祉士も参加している。ある日の委員会で, X精神科病院受診者の特徴について理解を深める研修を企画するため, 委員が分担して統計資料を調べ, 次回の委員会で報告することになった。M精神保健福祉士は, 3年に1回厚生労働省が調査を実施して集計結果を公表している資料と当該病院の外来受診者について比較する担当になった。 次のうち, M精神保健福祉士が比較することになった厚生労働省の資料として,正しいものを1つ選びなさい。 l 「患者調査の概況」 2 「医療施設(動態)調査 ・病院報告の概況」 3 「過労死等の労災補償状況」 4 「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児 ・ 者等実態調査)」 5 「都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)」   研修の目的は「X精神科病院受診者の特徴」について理解を深めることにある。 そのために用いた資料は厚生労働省が3年に1回実施しているものである。 この要件を満たすものは、1の「患者調査の概況」であろうと推測できる。細かい知識を問う問題のようにも見えるが、推論によって答えを導きうる。「X精神科病院受診者の特徴」を調べるためには、一般的な精神科病院の受診者の特徴を知る必要がある。このような特徴が載っていそうなものを選択肢の中から探すと1の「患者調査の概況」であろうと推測できる。

【正解1】

問題74 次のうち,「障害者総合支援法」に規定される自立生活援助のサービス内容として, 正しいものを1つ選びなさい。 1 通帳・証書の預かりサービス 2 入浴, 排せつ, 食事の直接介助 3 公共料金や家賃の支払い状況の確認 4 家事能力を向上させるための宿泊訓練 5 救護施設退所者のためのアパート探しの同行 (注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。   自立生活援助は、2018年4月に施行された改正「障害者総合支援法」で新たに創設されたサービスである。マークしていた人には易しい問題だったと思われる。 自立生活援助は、地域で一人暮らしを希望する人に対し、地域において自立した日常生活、または社会生活を営むことができるよう、一定の期間にわたり定期的な巡回訪問(居宅訪問)随時の対応により、円滑な地域生活に向けた相談・助言などを行うものである。具体的には、定期的に利用者の居宅を訪問し、食事・洗濯・掃除など日常生活の課題、公共料金や家賃の支払い、体調や通院状況、地域住民との関係など、居宅での自立した日常生活を営むための各問題について状況の把握や確認を行い、必要な情報の提供および助言や相談、関係機関(計画相談支援事業所や障害福祉サービス事業所、医療機関など)との連絡・調整など、自立した日常生活を営むための環境の整備に必要な援助が行われる。主な就業職種は、地域生活支援員である。 自立生活援助のイメージ

【正解3】

問題75 「障害者総合支援法」に規定される就労継続支援A型の役割に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。 1 求職者に職業を紹介する。 2 職場適応援助者を養成する。 3 雇用契約に基づき就労の機会を提供する。 4 法定雇用率未達成事業所への指導を行う。 5 一般就労の継続のための支援を行う。   現場の人は直ぐに分かったのではないだろうか。  就労継続支援A型の役割は、3の雇用契約に基づき就労の機会を提供することにある。 就労移行支援、就労継続支援A型、B型の違いは基本的知識として持っておく必要がある。就労支援サービスは社会福祉士試験の専門科目であるが、同科目は次の改訂されたカリキュラムからは独立した科目ではなくなる。しかし、本問のように、今後もいずれかの科目で出題が続くと思われる。

【正解3】

問題76 ピアサポーターに関する次の記述のうち, 適切なものを2つ選びなさい。 1 専門職の代替的機能を担う。 2 対等な立場で仲間を支える。 3厚生労働大臣が定める研修を修了する必要がある。 4 意思疎通支援事業によって派遣される。 5 ロールモデルとして期待される。   本試験らしい予想が困難な問題である。知識と常識を駆使して解く。 ピアとは仲間である。 1は自信がなければ△。2はズバリ〇。3は×。4も×。5は自信がなければ△。2は確定として、残る一つを1か5のいずれにするか。もし、ピアサポーターが専門職の代替的機能を担うとすれば、専門職は不要ともいえそうなので1は×ぽい。5のロールモデルはいまいちピンとこないが、ロールは役割という意味なので(例:ロールプレイ)、ピアサポーターが一定の役割を果たすということは辻褄が合う。よって、2と5を選ぶのが無難な選択であろう。
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス ロールモデルとは、自分にとって、具体的な行動や考え方の模範となる人物のことである(模範、お手本となる人)。ピアサポーターには、まさにこのような役割が期待されているといえよう。

【正解2,5】

問題77 次のうち, 市町村の精神保健福祉業務として, 正しいものを 1つ選びなさい。 1 自立支援医療(精神通院医療)の申請受理 2 精神障害者保健福祉手帳の等級判定 3 発達障害者支援センターの運営 4 地方精神保健福祉審議会の設置 5 精神科救急医療体制の整備   知識として有していなければ、都道府県と市町村(行政)の役割分担を念頭に置いて考えるしかない。 そのような観点からみると、1から5までのすべてが都道府県レベルでの業務のようにみえる。この中で市町村が担うものがないかを再度検討すると1の自立支援医療(精神通院医療)の申請受理と推測できる。左側にある制度、機関の名所に着目すると、その内容、地理的範囲から考えていずれも都道府県レベルであることに気づく。そこで、再度、選択肢を吟味して、その業務のより具体的な内容である右側に着目する。すると1の自立支援医療(精神通院医療)は都道府県レベルだが、その申請受理だけなら市町村でもよいのでないかと推測できる。

【正解1】

(精神障害者の生活支援システム・事例問題) 次の事例を読んで,問題 78 から問題 80 までについて答えなさい。 〔事 例〕 Aさん(35歳女性)は 5 年前に離婚して実家に戻り,製造会社の事務員として就職した。Aさんは同僚や上司との関係も良く,定時に帰ることができる働きやすい職場に勤務することができていた。しかし,半年前に母親が病気で急逝したことにより,うつ病を発症した。精神科の主治医からは,休職して治療に専念することを勧められた。 Aさんは上司とも相談して,当面のあいだ休職することにした。 休職して半年がたつと給与が払われなくなった。貯金はあったが今後の生活に不安を覚えた。そこで Aさんは,通院先の B精神保健福祉士に相談したところ,健康保険法に基づく,病気で休業中に生活を保障する制度を利用できることを知り,申請することにした。(問題78) その数か月後うつ病の症状は軽減したが,職場での居場所がなくなる不安を覚え,復職について精神科の主治医と B 精神保健福祉士に相談した。主治医は,病状から診てAさんが復職を焦っていることに懸念があることを伝えた。また, B 精神保健福祉士は, Aさんの仕事に集中し過ぎることに不安があることを伝えた。その上で, B精神保健福祉士は,Aさんに障害者の雇用の促進等に関する法律に基づき設置されているYセンターの「職場復帰支援」の利用を勧めた。(問題 79) その後Aさんは,Y センターの職場復帰支援を受けることになった。支援を担当したC さんは,Aさんや家族や上司などから,各々が抱く心配や,職場環境,ソーシャルサポートの状況などを確認した。そしてCさんは,Aさんの職場復帰に向けた支援計画を作成した。(問題 80) Aさんは,その支援計画に基づき,同じ悩みを持つ仲間とのミーティングヘの参加や職場での短時間勤務などを重ね,徐々に職場復帰のための準備を整えていった。   問題78 次のうち, Aさんが申請した制度として, 正しいものを1つ選びなさい。 1 傷病手当金 2 障害厚生年金 3 高額療養費 4 生活扶助 5 療養補償給付   答えだけでなく、知らない用語は一通り調べよう。 B精神保健福祉士が提案した「健康保険法に基づく,病気で休業中に生活を保障する制度」として正しいものは1の傷病手当金である。問68と同様にこの問題も実務的に非常に大切な知識を問うものである。なお、本問と関連する問題は、共通科目である社会保障で何回か出題されている(社福㉕-問55など)。

【正解1】

問題79 次のうち, Yセンターとして, 正しいものを1つ選びなさい。 1 産業保健総合支援センター 2 地域障害者職業センター 3 精神保健福祉センター 4 市町村保健センター 5 地域活動支援センター   知識がないと解くのは難しいが、設問の条件と他分野の基本的知識を駆使して解決の糸口を探る。 Yセンターの設置根拠は障害者の雇用の促進等に関する法律であり、「職場復帰支援」を行っていると書かれている。根拠法からみて、3(精神保健福祉法)、4(地域保健法)、5(障害者総合支援法)が×であると推測できる。なお、根拠法が違うだろうと感じられれば十分で、( )で示した法律の名称が言えなくても構わない。残る1と2は名称そのものからは判断できないが、障害者の職場復帰支援を行っている名称に相応しいものは2の地域障害者職業センターではないだろうか。 もしまったく知らなかった場合には、うつ病を発症した後に症状が改善したものの、まだ主治医が心配だと考える部分のあるAが、職場復帰を相談するのにもっとも相応しい名称の機関はどこかという観点から積極法で解くという方法もある。うまく波長が合えば、正解できる可能性がある。

【正解2】

問題80 次のうち, Cさんの職名として, 正しいものを1つ選びなさい。 1 サービス管理責任者 2 精神障害者雇用トータルサポーター 3 障害者専門支援員 4 障害者職業カウンセラー 5 職場適応援助者   専門職の名称の問題。自分に合った記憶法を探ろう。 問79の地域障害者職業センターに関する知識がある人は、Cの職名が4であることに気づくことができる。知識がない場合は、消去法で肢を絞る。すなわち、間違っていそうなものを消していく。CはAのような状態にある人を支援する役割を担っていて、相談業務を行う何らかの機関で働いていることはわかる。1のサービス管理責任者(通称はサビ管)は、障害者総合支援法に基づく具体的なサービスを提供する事業所に配置されるものであり、Cには該当しない。2は△にして次に進む。3は知らないと悩むが、2,4と比べると少し正解から離れた感じを受ける。4はよさそうだが、他の肢と比較する必要がある。5の職場適応援助者はジョブコーチのことであり、Cには該当しない。ざっと読むと2か4までは絞れるのではないだろうか。問79が2とした人は、確率法で問80は4につけるという方法がある。なお、精神障害者雇用トータルサポーターはハローワークに配置されている。

【正解4】

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