問題36 諸外国の精神保健医療福祉の脱施設化及び地域ケアの歴史に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 イギリスでは,「精神保健に関するナショナル・サービス・フレームワーク」により, 積極的アウトリーチや家族ケアラー支援等の充実を図った。
2 ニュージーランドでは,「セクター制度」により, 一定の人口規模ごとに, 精神科病床, 施設を配置し, 治療と生活支援を一体的に実施した。
3 アメリカでは, 精神保健サービス計画「プループリント」を策定し,リカバリー概念をサー ビスの基盤とすることを明示した。
4 イタリアでは,「精神疾患及び知的障害に関する大統領教書」により, 精神科病院を解体し, 地域精神保健センターを整備した。
5 フランスでは,「法律第180 号」により, 精神科病院への新たな入院を禁止し, 地域ケアと外来医療中心に転換した。
これは知らないと解くのが難しいだろう。
知識があれば、積極法でこれを選べばよい。知らない人は、交差法が使えないかを検討してみるとよい。
1は〇である。3のアメリカが4の「精神疾患及び知的障害に関する大統領教書」と、4のイタリアと5の「法律第180 号」(※バザーリア法のこと)を結びつくことは覚えている人が多いと思う。後は、2のニュージーランドが3のブループリントとつながることを知っていれば、交差法で1を選ぶことができる。ちなみに、セクター制度はオーストラリアのものであり、本問ではフランスとつながる記述はない。
交差法で3,4,5は消しやすいが、2は少し細かい気がする。
このタイプの問題は考えても正解に至るのは難しいので、無理だと感じた時点で深追いするのはやめた方がよい。詳細は各自で確認してもらうこととして、ここでは本問の類題を参考までに紹介しておく。
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問題36の類題学習 諸外国の精神保健医療福祉政策に関する次の組み合わせのうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 イタリア — ケネディ大統領教書 (1963年)
2 アメリカ — 法律180号 (バザーリア法) (1978年)
3 ニュージーランド — 国民保健サービス及びコミュニティケア法 (1990年)
4 韓国 — 精神保健法 (1995年)
5 イギリス — ブループリント (1998年)
※ステップ・チャレンジ⇒類題の解説文を作ってみよう!
【正解1】
問題37 次のうち, 国連総会で採択された「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」(1991年)の記述として,正しいものを2つ選びなさい。
1 精神疾患を有するすべての者は, 可能な限り地域社会に住み, 及びそこで働く権利を有する。
2 精神疾患を有するという判定は, 各精神保健施設内で定めた医学的基準による。
3 すべての患者の治療及びケアは, 個別的に立案された治療計画に基づいて行われなければならない。
4 すべての患者は, 病状が不安定な場合を除き, 自己の居住する地域社会において治療及びケアを受ける権利を有する。
5 インフォームドコンセントとは, 患者の理解しうる方法と言語によって, 十分にかつ患者に理解できるように説明することである。
(注) 「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」の日本語訳は厚生科学研究班の仮訳によるものである。
選択肢を読むと内容的に間違っていそうなものがあることに気づく。
(注)は必ず読む。本問では、どこが訳したかが書いてあるだけなので、特にヒントになるところはない。それを確認したら、「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」(1991年)を意識しながら、選択肢を順に検討する。
2の記述は、
判定を「各精神保健施設内で定めた医学的基準」とする点で精神疾患を有する者の保護とはいえない。これは×であろう。1は内容と合致していそうなので〇ぽい。また、5はあまりにも当然のことを言っており、「精神疾患を有する者」に限らないので×ぽい。残る3と4から、いずれを選ぶかで迷う。3は個別性を掲げる点はよいが、医療を重視している点で迷う。一方、4は「病状が不安定な場合を除き」と保留している部分が、それでいいのだろうかという疑念が湧く。
問題文だけから、いずれが正しいのかを判断するのは難しい気がする。本問で正しいものは3である。
【正解1,3】
問題 38 次のうち, ケアマネジメントにおけるチームアプローチに関する記述として,適切なものを1つ選びなさい。
1 利用者の状態にかかわらず, 同じ構成員で活動する。
2 構成員は独自に立てた計画に基づき, 専門性を発揮する。
3 利用者の希望する場合を除き, 構成員は専門職とする。
4 チームでは, プライバシー保護に配慮した上で, 情報の共有化を図る。
5 チーム全体に関わる方針は, リーダーが決定する。
問われているのは、ケアマネジメントにおけるチームアプローチである。
1は、利用者の状態に関係なく、
「同じ構成員で」という部分が×。2は、
「独自に立てた計画に基づき」が
チームアプローチに反する。3は、チームの構成員をすべて専門職とする必要はないので×。4は、問題のない記述であり〇ぽい。5は、
「リーダーが決定する」という部分がチームアプローチに反する。
【正解4】
問題 39 次の記述のうち. ディーガン(Deegan, P. )が述べるリカバリーの内容として, 正しいものを2つ選びなさい。
1 病気になる前の状態に戻る。
2 新たな目的を再構築する。
3 目標に向けて直線的に前進する。
4 課題に立ち向かうことが求められる。
5 回復した結果を重視する。
リカバリーのイメージは、何となく多くの人が持っていると思われる。
1は、「病気になる前の状態」に戻ることは困難なことであり、×ぽい。リハビリテーションの考え方と比較して×判断した人もいるだろうが、それも一つの判断方法だと思う。2の新たな目的の再構築は、精神疾患を有する人のリカバリーの内容として的を得ていると感じられ、〇ぽい。3は、「直線的に前進」の部分が×ぽい。紆余曲折しながら進むのが通常であろう。残る4と5については迷う。4は課題に立ち向かう強い姿勢が必要という印象を受けるが、5はともかく回復したならその結果を尊重しようという印象を受ける。いずれを選ぶかは、ディーガンの考えを知らないと判断しづらい。
先の問37に続き、答えが割れた問題だと思われる。ディーガンの述べるリカバリーの内容としては4が正しい。
リカバリーは、一般的には、疾病や障害によって失ったものを回復することを指す概念として理解されている。ディーガンについては過去問で出題されておらず、迷った受験生が多かったと思われる。2-4、2-5で答えが割れたのではないだろうか。
パトリシア・ディーガンによるリカバリーは「障害に立ち向かい、障害がもたらす制限の中であるいはその制限を超えて、人生の新たな意味と目的を再構築することであり、地域の中で暮らし、働き、人を愛し、社会に貢献すること」である(駒澤真由美(2019)「精神障害当事者にとっての「リカバリー」とはなにか」Core Ethics Vol.15p59)。
【正解2,4】
問題 40 次の記述のうち, 社会リハビリテーションにおけるアセスメントとして,正しいものを1つ選びなさい。
1 実施した宿泊体験の妥当性を検討する。
2 一人暮らしに必要なサボート体制を編成する。
3 利用できる文化施設を増やす。
4 買物支援の満足度を確認する。
5 活用できる移動手段を把握する。
問われているのは、「社会リハビリテーションにおけるアセスメント」である。
このうちアセスメントに着目すると本問は簡単に解ける。
1は
モニタリング。2は
プランニング、3は
実施、4は
モニタリング、5は
アセスメントとなっているからである。すなわち、いずれも社会リハビリテーションに関わっており、そこは問題を解く上ではあまり意味を持たないということである。
どこに着目するかで、比較的簡単に解けた人とそうでない人が分かれたと思われる。
難しそうに見えて、実は基本を聞いているというタイプの問題が、本試験ではよく出される。「社会リハビリテーション」に目が行ってしまった人は、解答の糸口が掴めなかったであろう。「■■■における□□□として」となっている場合、□□□にも着目することが大切だということである。
【正解5】
問題 41 次のうち,ナラテティブアプローチに関する記述として, 正しいものを1つ選びなさい。
1 物事の見方の多様性を認識して, クライエントの新たな意味づけを重視する。
2 援助機関の機能を明確にして クフイエントの意志の力を引き出す。
3 自我の構造に注目して, パーソナリティの変容を目指す。
4 行動の学習過程に着目して, クライエントの望ましい行動を形成する。
5 問題を因果関係で捉えるのではなく, 円環的に捉えて解決を図る。
ナラテティブアプローチは過去問でも頻出しており、イメージを掴めている人は多いと思われる。積極法で正解を選ぶ。
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ナラテティブアプローチとは
ナラティブ・アプローチは1990年以降、対人関係サポートの現場で幅広く実践され始めた方法で、それまでの方法では難しかった課題解決を目指せることから、多くの注目を集めました。ナラティブとは日本語で「物語」という意味を持ちます。このため、ナラティブアプローチは「物語を通した支援」と称されることもあります。
もう少し、具体的に説明しましょう!例えば、課題を抱えているクライエントを支援する時、支援者側が解決策を示しサポートしたとしましょう。その瞬間は解決出来ても支援者不在の状態で、同じように出来るとは限りません。つまり、内省されていないのですね。
こんな時、「こうすればいいよ」とか「〇〇の次に△△だよ」とアドバイスするのではなく、「どうすればいいと思う?」「何でそうなると思う?」と、クライエント自身の言葉で考え言語化することで、支援者不在でもクライエントは徐々に課題を解決できるようになります。これが「ナラティブアプローチ」すなわち「自分語りの中で気付きを得る」支援手法です。クライエント自身の気付きに期待することから、専門家にとっては、専門性を捨てた「無知の態度サポート」を意識することが重要だと考えられています。
受験生の皆さんが、最初は解説を読み込むことで、「なるほど…。なるほど…。」となり、それが少しづつ、自らが解説をしながら問題が解けるようになる。福祉勉強会の「~受験対策応援ブログ~合格への道」は、ナラティブアプローチの一つと言えるかもしれませんね。
【正解1】
問題42 次の記述のうち, リファーラルの説明として,適切なものを1つ選びなさい。
1 患者の支援に役立つ疾病や障害の状況を調べる。
2 患者やその環境又はその両者に対して働き掛ける。
3 患者の支援に関する実施状況について見直す。
4 患者との対等な関係に基づき課題解決に向けて取り組む。
5 患者の希望する支援に対してサービス提供機関へつなぐ。
リファー(refer)の理解があれば、積極法で正解が選べる問題。
リファー(refer)は、より適切な別の機関につなぐことを意味する用語として使われている。リファーラル(referral)はその名詞形であり、委託とか紹介という意味である。
【正解5】
問題43 次の記述のうち,精神保健福祉士がコンサルティに対して行うコンサルテーションとして,適切なものを1つ選びなさい。
1 組織内の運営方針について説明する。
2 勤務態度などの職務を管理する。
3 クライエントの自宅に同行して,クライエントと面談する。
4 クライエントの社会環境を理解するためのエコマップを提示する。
5 アドバイスに従ってクライエントを支援するように指導する。
コンサルティの意味を取り違えると問題文の意味が掴みづらくなるが、選択肢の中にはそうした誤解を前提にした肢は入っていない。
コンサルテーションは、業務を進めていく中で支援に必要となる分野の専門家から助言を受けることをいう(この程度の理解は必須)。本問では、
コンサルティという言葉が登場しているが、これはコンサルテーションを受ける人を指す概念である(例:employer⇔employeeが典型)。すなわち、本問ではコンサルテーションをする側(コンサルタント)が精神保健福祉士なのである。言い換えれば、
精神保健福祉士が、その専門的知識を使ったアドバイスを受ける人に行う内容として適切なものはどれか、ということになる。そして、
コンサルテーションでは、コンサルティと一緒に行動することは念頭に置かれていない。問題文の意味がわかれば、答えは比較的選びやすいであろう。
【正解4】