21.高齢者に対する支援と介護保険制度(R2年-第33回)2/2
問題131 介護保険制度における保険給付と介護報酬に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護報酬の算定基準を定める場合,厚生労働大臣はあらかじめ財務大臣及び総務大臣の意見を聴かなければならないこととなっている。
2 特定入所者介護サービス費は,介護保険施設入所者のうちの「低所得者」に対し,保険給付にかかる定率負担の軽減を図るものとなっている。
3 介護報酬の1単位当たりの単価は10円を基本とした上で,事業所・施設の所在地及びサービスの種類に応じて減額が行われている。
4 要介護度に応じて定められる居宅介護サービス費等区分支給限度基準額が適用されるサービスの種類の一つとして,短期入所療養介護がある。
5 福祉用具貸与の介護報酬については,貸与価格の下限の設定が行われることとなっている。
(注) 「低所得者」とは,要介護被保険者のうち所得及び資産の状況などの事情をしん酌して厚生労働省令で定める者のことである。
介護支援専門員の有資格者以外には難しい問題だったのではないだろうか。
肢3はよく読まずに〇とした人がいたと思われる。焦りは禁物である。
1は、判断に迷うが、事実ではない。実際、このような報道は、あまり聞いたことがない内容ではある。分からなければ、△にして次に進む。
2は、×である。特定入所者介護サービス費は、食費と居住費の負担を軽減するものであり、保険給付にかかる定率負担の軽減を図るものではない。
3は、×である。「減額」ではなく「増額」が行われている。
4は、〇である。言い回しがヤヤコシイ気もするが、基礎知識である。
5は、×である。上限の設定が行われるならわかるが、「下限」は設定する必要性があまりないのではないかと感じてほしい。
【正解4】
問題132 次の記述のうち,国民健康保険団体連合会の介護保険制度における役割として,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用を充てるため,財政安定化基金を設ける。
2 介護サービス事業者が利用者に提供したサービスに伴う介護給付費の請求に関し,市町村から委託を受けて,審査及び保険給付の支払を行う。
3 介護サービスの苦情処理等の業務や事業者・施設への指導、助言のための機関として,運営適正化委員会を設置する。
4 市町村が介護認定審査会を共同設置する場合に,市町村間の調整や助言等の必要な援助を行う。
5 保険給付に関する処分や保険料などの徴収金に関する処分について,不服申立ての審理・裁決を行うための機関として,介護保険審査会を設置する。
介護支援専門員試験に出題されそうな問題である。
1は、×である。書かれている内容に誤りはないが、国民健康保険団体連合会(以下、国保連と略す)の介護保険制度における役割ではない。
2は、〇である。介護保険の事業所で働いている人にとっては常識であろう。
3は、×である。運営適正化委員会の設置は国保連の役割ではない。
4は、×である。これも国保連が担う役割ではない。
5は、×である。介護保険審査会を設置するのは都道府県である。
【正解2】
問題133 事例を読んで,X事業者(福祉用具貸与事業者及び特定福祉用具販売事業者)に勤務するE福祉用具専門相談員(社会福祉士)が行う支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
E福祉用具専門相談員は,Y居宅介護支援事業所のF介護支援専門員からの依頼で,R市で一人暮らしをしているGさん(女性,84歳,要介護1)の自宅を訪問し,福祉用具の選定に関する相談を行うこととなった。Gさんは約10年前の大腿骨頸基骨折の後遺症により股関節が動きにくくなり,現在では浴槽への出入りと屋外での移動に支障がある。しかし,その他の日常生活動作や認知機能に支障はなく,状態も安定している。GさんはこれまでT字以外の福祉用具は使用したことがない。
1 Gさんに,福祉用具貸与による入浴補助用具の給付が可能と説明した。
2 Gさんに,特定福祉用具販売による自宅廊下の手すりの設置が可能と説明した。
3 Gさんに屋外での移動のため,福祉用具貸与による歩行器の利用が可能と説明した。
4 Gさん及びF介護支援専門員と相談した上で福祉用具貸与計画と特定福祉用具販売計画を作成し,利用前にR市に提出して承認を得た。
5 Gさんが将来,身体状況が悪化したときのことを想定して,玄関の段差を解消するために移動用リフトを設置した方がよいと説明した。
社会福祉士試験の出題としてはやや細かい知識の感はあるが、大枠は知っておいて欲しいということであろう。
福祉用具貸与(レンタル)、特定福祉用具販売、住宅改修は、密接に関連している。
1は、×である。入浴補助用具は、福祉用具貸与の対象ではない。
2は、×である。自宅廊下の手すりの設置は、工事が不要のものであれば福祉用具貸与の対象であり、工事が必要なら住宅改修の話になる。いずれにしても特定福祉用具販売の対象ではない。
3は、〇である。歩行器は福祉用具貸与の対象となる。
4は、×である。事前の承認が必要なのは、住宅改修の話である。
5は、×である。Gは「浴槽への出入りと屋外での移動に支障がある」ものの「その他の日常生活動作や認知機能に支障はなく,状態も安定している」とあるので、現段階での移動用リフトの設置は時期尚早といえる。ちなみに、要支援・要介護1の場合、移動用リフトの設置は原則として認められていない。
【正解3】
問題134 老人福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 市町村は,市町村老人福祉計画において,当該市町村の区域において確保すべき老人福祉事業の量の目標を定めるものとしている。
2 養護老人ホームの入所要件は,60歳以上の者であって,経済的理由により居宅において介護を受けることが困難な者としている。
3 老人福祉法に基づく福祉の措置の対象となる施設の一つとして,救護施設が含まれている。
4 特別養護老人ホームについて,高齢者がやむを得ない事由により自ら申請できない場合に限って,市町村の意見を聴いた上で都道府県が入所措置を行う。
5 老人介護支援センターは,介護保険法の改正(2005年(平成17年))に伴って,老人福祉法から削除され,介護保険法上に規定された。
老人福祉法、施設の種別、根拠法、歴史的経緯が問われており、難しいと感じた人が多かったのではないだろうか。
1は、〇である。市町村老人福祉計画が老人福祉法に規定されていることは過去問にもある。老人福祉事業の量の目標を定めることが規定されているかまでは自信を持って判断できないとしても、そのような内容が書かれていたとしても不適切とは感じられない。2は、×である。「居宅において介護を受けることが困難な」との部分が誤りである。
3は、×である。救護施設は生活保護法に基づく福祉の措置の対象となる施設である。
4は、×である。特別養護老人ホームへの入所措置を行うのは市町村である。
5は、×である。老人介護支援センターは、老人福祉法から削除されていない。介護保険法の改正(2005年(平成17年))によって、新たに介護保険法上に規定されたのは地域包括支援センターである。
【正解1】
問題135 高齢者の住まいに関する法制度についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 住宅確保要配慮者に対して居住支援に取り組む法人(居住支援法人)は,その申請により,都道府県知事から指定されることとなっている。
2 サービス付き高齢者向け住宅は,入居者に対し,介護保険制度における居宅介護サービス若しくは地域密着型サービスの提供が義務づけられている。
3 シルバーハウジングにおいては生活支援コーディネーターが配置され,必要に応じて入居者の相談や一時的な身体介護を行うこととなっている。
4 終身建物賃貸借制度は,賃借人が死亡することによって賃貸借契約が終了する借家契約であり,75歳以上の高齢者が対象とされている。
5 市町村は,住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する計画(市町村賃貸住宅供給促進計画)の作成を義務づけられている。
あるいはまったく見当がつかなかった受験生もいたと思われる。
住宅政策に関する問題は数年に一度出されるが、難問が多い。
1は、〇である。指定するのが都道府県知事か否かは知らないと自信をもって判断できないが、内容そのものに大きな問題は見当たらない。とりあえず△にして次に進むのでもよい。2は、×である。介護保険のサービスの提供が「義務づけられている」との部分に違和感がある。
3は、×である。生活支援コーディネーターとは地域支え合い推進員のことであり、シルバーハウジングに配置されるものではない。
4は、×である。知らないと自信を持って判断できないが、「75歳以上」の部分が間違いではないかと推測してほしい。正しくは60歳以上である。
5は、知らないと悩むであろう。市町村賃貸住宅供給促進計画の作成は義務とはされていない(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律6条1項)。
なお、国土交通大臣は、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない(同法4条1項)とされている。
【正解1】
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