問題 16 精神作用物質の乱用対策及び使用者への援助に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 有効な外来治療として,ワークブックとマニュアルを用いた集団認知行動療法プログラムが開発されている。
2 大麻は,麻薬及び向精神薬取締法で使用と所持が規制されている。
3 ハーム・リダクションとは . 薬物使用を厳罰化することで.その流通量を減らすことを目的とした政策のことである。
4 薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予制度とは,一定期間服役させた後残りの期間を社会復帰促進センターで処遇するものである。
5 覚せい剤取締法違反は, 「医療観察法」における重大な他害行為とされる6罪種の一つである。
(注) 「医療観察法」とは.「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」のことである。
麻薬・覚せい剤は芸能人の所持、使用等で話題になっている。
ニュースを見たら即ネット検索という習慣をつけよう。
知識が十分でない場合、1から4については△とするしかないのではないだろうか。5は、
「医療観察法」における重大な他害行為は殺人が典型なので、その中に覚せい剤取締法違反は含まれていないと推測することは可能であろう。
【正解1】
問題17 災害時の精神保健に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 災害発生後 48 時間以内に被災者が呈する精神症状を心的外傷後ストレス障害(PTSD)という。
2 厚生労働省によって組織される専門的な研修・訓練を受けたチームを災害派遣精神医療チーム(DPAT)という。
3 重度の精神障害者のために考案された介入法をサイコロジカル ・ フーストエイド(PFA) という。
4 被災者の治療優先順位を決める手法をデブリーフィングという。
5 被災者へのケア活動によって,被災を直接経験していない支援者に生じる外価性ストレス反応のことを二次受傷という。
この問題は知識優位型だと思われる。
1の
PTSDは災害によるものに限定されないので、×ぽい。2は、DPATの説明が、「厚生労働省によって組織される」が×である。3の
PFAは重度の精神障害者のために考案されたものではないので、×である。4の
デブリーフィングの意味は説明部分とはまったく噛み合っていない。×である。5は何となくよさそうな記述であるが、積極的に〇だと判断するためには
二次受傷の意味を知っている必要があると思われる。
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス
こういった問題を解いたときに分からない言葉の意味を調べ、それを記憶に定着させる努力をしているか否かの差は大きい。各々の専門用語がばらばらに出されたり、別の科目の選択肢の1つとして出題されることが多いからである。
ソーシャルワンカーと一緒にワン ステップUP‼
デブリーフィングとは辛い経験した人々に対して行われる、急性期(体験後2、3日~数週間)の支援方法。体験した辛い経験をあえて、言葉にして語り合うことで、辛さの克服を目指す。
二次受傷とは代理受傷、共感性疲労、外傷性逆転移などと呼ばれている現象の総称のこと。辛い体験を負った人の話を聞いたり、現場を目撃することで、自分自身は、実際に体験をしていないのに、実際に辛い経験をした人と同様もしくは類似の、PTSD症状をしめすこと。
【正解5】
問題 18 成人の勤労者を対象に,職場でのストレスの大きさ, 職場でのサポートの程度及び抑うつ症状の重症度について, 一定の尺度を用いた質問紙調査を行った。調査で得られた量的データを基に抑うつ症状を従属変数として, 職場でのストレス及び職場でのサポートの二つの独立変数との関連性について分析を行った。
次のうち, 上記のデータ分析方法の名称として,正しいものを1つ選びなさい。
1 カイ 2 乗検定
2 デルファイ法
3 重回帰分析
4 分散分析
5 因子分析
選択肢の分析方法について知らないと、解くのは難しい。
問題文を読むと1つの従属変数について2つの独立変数との関連性を分析するものであることがわかる。
独立変数が2つあることに特徴がある。この分析方法の名称として正しいものは、肢3の
重回帰分析である。
2つの独立変数があるという特徴から、名称にそれらしい文字の入っている重回帰分析を選らんだ人はセンスがいい。大体において名は体を表す。
選択肢にあるものは、
量的調査の分析方法である。これらの基本的理解があれば解くことは可能である。精神保健福祉士の試験では社会調査の基礎が独立した科目にはなっていないが、実際には同科目の問題が何らかの形で出題されることが多い。なお、
デルファイ法は前年の
㉑-問56で出題されている。
【正解3】
問題 19 ドメスティック・バイオレンス(DV)に関する次の記述のうち, 正しいものを 2つ選びなさい。
1 市町村には配偶者暴力相談支援センターの設置が義務づけられている。
2 婦人相談所は「DV防止法」で設置が規定された機関である。
3 「DV防止法」において配偶者には, 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むと定義されている。
4 配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数は,2014年度(平成26年度)以降,毎年10万件を超えている。
5 児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力は,「児童虐待防止法」において身体的虐待として定義されている。
(注) 1 「DV防止法」とは,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保設等に関する法律」のことである。
2 「児童虐待防止法」とは,「児童虐待の防止等に関する法律」のことである。
2と3の知識は割とポピュラーで、5は推論で何とか判断できる。
しかし、1と4については、そのようなわけにはいかない。
1は、
努力義務なので×。2の
婦人相談所は売春防止法に基づくので×。3は割合とポピュラーな知識ではないだろうか。
事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むと定義されているので〇である。4は知らないと自信を持って〇とできないかもしれない。5は、
児童の目からみて家庭における配偶者に対する暴力がどう映るかを問題にするものである。そうだとすれば、身体的虐待ではなく心理的虐待として定義されているのではないかと推測できる。本肢は×である。
【正解3,4】
問題 20 周産期の精神保健に関する次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。
1 カンガルーケアとは, 胎児の情緒的安定を目的とした母親の関わりのことである。
2 ペリネイタルロスとは, 流産・死産・新生児死亡などの周産期における喪失体験のことである。
3 マタニティブルーとは, 産後うつ病の別名のことである。
4 ダブルケアとは, NICU(新生児集中治療室)において愛着形成を促すことである。
5 マルトリートメントとは, DV被害を受けた妊産婦に対するケアのことである。
カタカナなのでちょっと分かりづらいが、推測できる用語もあるのではないかと思う。
1は、内容だけから判断を下すのは難しい。2も同様である。ただし、
~ロスとあるので、何からの喪失体験を表すものだとういうことは推測できる。3の
マタニティーは妊娠中を指していると考えるのが素直であろう(例:マタニティードレス)。そこから、
「産後~」は違うと推測できるので、×であろう。4の
ダブルケアとは、介護と育児を担うことなので、×である。知らなかったとしても、選択肢の中にダブっている部分がないので×だと推測した人もいると思われる。5の
マルトリートメントは、残虐または暴力的な扱い(≒虐待)のことである。
マルなのに悪(わる)で覚えやすい。本肢は×である。
カンガルーケアとは、生まれたばかりの裸のままの赤ちゃんを母親(父親)の乳房の間に抱いて直接、肌を合わせて体温を感じる時間をつくる保育法である。これを知らないと肢1の判断は難しい。ペリネイタルロスも同様で、ロスが分かっても、ペリネイタルが何を意味するかは英語の達人でないと難しいのではないだろうか。
ペリネイタルとは周産期を意味する。
【正解2】