問題126 日本における高齢者の保健・福祉に係る政策に関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。
1 老人福祉法制定前の施策として,生活保護法に基づく特別養護老人ホームでの保護が実施されていた。
2 老人福祉法の一部改正により実施された老人医療費支給制度では,65 歳以上の高齢者の医療費負担が無料化された。
3 老人医療費支給制度による老人医療費の急増等に対応するため,老人保健法が制定された。
4 高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)の中で,老人保健福祉計画の策定が各地方自治体に義務づけられた。
5 介護保険法の制定により,それまで医療保険制度が担っていた高齢者医療部分は全て介護保険法に移行した。
知識がなければ解けない問題である。正答率はあまり高くなかったのではないだろうか。
ただし、各肢の内容については、過去問の中に類似したものがほぼ出そろっている。
1は、老人福祉法制定前は、生活保護法の養老施設が実施されていたので×。
老人福祉法が制定された際に、養老施設が、養護老人ホームと特別養護老人ホームにわかれた。2は、全体的にはよさそうだが、「65歳以上」の部分がひっかかる。△。3も全体としてはよい。答えは2か3だと推測できる。そのこともあり、4は、自信がないが、
高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)は1989年頃の話である。「老人保健福祉計画の策定が各地方自治体に義務づけられた」のはもう少し後だった気がする。×ぽい。5は「全て」が怪しいと感じるのでないだろうか。もちろん×である。
【正解3】
問題127 事例を読んで,在宅サービスを利用して一人暮らしをしているAさんのケアプランに関する次の記述のうち,適切なものを2 つ選びなさい。
〔事 例〕
弱視であるAさん(64 歳,男性)は20 年前に事故で頸椎損傷を受傷し,四肢麻痺の状態になった。現在,障害支援区分6 で居宅介護と同行援護を利用し,障害基礎年金を受けて生活している。間もなく65 歳となり介護保険を利用することになると訪問介護の時間数が減少してしまうため,地域包括支援センターに行った。そこで,B介護支援専門員(社会福祉士)に今後も同等のサービスを利用できるかを相談した。
1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。
2 「障害者総合支援法」のサービスのまま,ケアプランを作成する。
3 介護保険法のサービス内でケアプランを作成する。
4 同行援護は,「障害者総合支援法」で引き続き対応する。
5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。
(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
Aさんの年齢、介護保険>障害総合支援法(ただし、介護保険にない障害者総合支援法のサービスは引き続き利用できる)という基本的知識をもとに推論する。
問われているのは、「在宅サービスを利用して一人暮らしをしているAさんのケアプラン」についてである。
1は、よさそうな内容である。〇ぽい。2は
介護保険>障害総合支援法(>は優先するという意味で用いている)からして×ぽい。3も同様な理由で×ぽい。4の
同行援護(問題文の「弱視」も見逃さないこと)は
介護保険にないサービスなので、〇ぽい。5は、以上のことから×であろう。
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス
出題の意図は、個々の内容について正確な知識なのだろうか?このような事例を扱っているケアマネジャーでもない限り、そんなに細かいことまでは知らないはずである。
社会福祉士国家試験は現役の大学4年生でも合格できるように作問されているハズである。だとしたら、大胆に推論して解くこともあってよいと思う。
【正解1,4】
問題128 右片麻痺者が杖歩行(三動作歩行)をする場合の杖と足を動かす順番に関する次の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。
1 平地を歩くときは,杖→左足→右足の順である。
2 段差を越すときは,左足→杖→右足の順である。
3 階段を上るときは,杖→左足→右足の順である。
4 階段を下りるときは,杖→左足→右足の順である。
5 坂道を上るときは,左足→杖→右足の順である。
ひさびさ~!そんな気持ちが湧き起こる問題である。問題文から右足が患側、左足が健側であることを押さえる。
1の平地を歩くときは、
杖→患側(右足)→健側(左足)となるので、×である(私は、「つえ→かん→けん」で覚えていた)。2の段差を超すときはどうか。やはり杖を先に出さないと無理であろう。×である。3と4は階段を上るときである。3は「階段を上るとき」は,
「杖→左足(健側)→右足(患側)」の順となっているが、これが〇である。4の
階段を下りるときは、肢3と反対に、
杖→右足(患側)→左足(健側)となる。よって4は×である。5の坂道を上がるときであるが、やはり杖を最初に出さないと無理である。×である。
ソーシャルワンカーからのワン ポイントアドバイス
この類の出題は、介護福祉士試験では必須の知識である。介護福祉士資格のある人は有利だっかもしれない。
社会福祉士試験は第21回までは介護概論という科目があったので、その当時は出題が予想された問題である。新カリキュラムになってから、ここまで細かい介護に関する問題が出たことはあっただろうか。記憶にない。
介護技術に関する項目も学習領域であるので、基本事項は勉強していることだろう。忘れていたとしたら、頭の中でイメージする(試験管に不審がられない程度に体を動かしてもよい)。
いずれの場合も、まず健側で持っている杖を先に出して態勢を整えるところから始める。平地の場合については、杖→患側→健側の順である。5の坂道も同様に考えてよい。
厄介なのは階段の昇り降りである。階段については、まず杖から始まるが、それと併せて「昇るときも降りる時も健側が上にある」(私は「階段は・昇りも降(くだ)りも・健が上」と覚えていた。五七五の感じで何回か唱えると覚えられる)。昇る時は健側が先で、降りるときは患側を先にして、健側はそれに続いておろす。いずれも健側が患側よりも上にあるという意味である。
【正解3】
問題129 認知症総合支援事業に基づく認知症初期集中支援チームに関する次の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。
1 包括的,集中的な支援をおおむね2 年とする。
2 介護サービスが中断している者も対象である。
3 早期入院の初期対応体制をとる。
4 初回訪問は医療系職員が2 名以上で行う。
5 チーム員に認知症サポーター1 名が含まれる。
このテーマは、近時の過去問で問われていた記憶がある。過去問でであったときに、少しだけ理解を深めるようにしておくとよいのではないだろうか。
1の「2年」は「初期集中支援」と相いれない感じがする。×ぽい。2は、「介護サービスが中断している」かどうかは、「認知症初期集中支援チーム」の介入の要否とは必ずしも関係ないのではないだろうか。そうだとすると2は〇ぽい。3は「早期入院」とする点で×ぽい。4は知らないと△にするしかない。5は、「初期集中支援」なのだから、チーム員に「認知症サポーター」を含める必要性も合理性も感じられない。×ぽい。
【正解2】
問題130 介護保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。
1 被保険者は,都道府県に対して,当該被保険者に係る被保険者証の交付を求めることができる。
2 要介護認定は,その申請のあった日にさかのぼってその効力を生ずる。
3 介護給付を受けようとする被保険者は,要介護者に該当すること及びその該当する要介護状態区分について,主治の医師の認定を受けなければならない。
4 要介護認定は,要介護状態区分に応じて市町村の条例で定める期間内に限り,その効力を有する。
5 市町村は,政令で定めるところにより一般会計において,介護給付及び予防給付に要する費用の額の100 分の25 に相当する額を負担する。
本問で問われている知識は、近時の試験でちょこちょこ出されている。しっかりマークしておこう。
1は、被保険者が
被保険者証の交付を求めることができるのは
市町村に対してである。×である。2は、申請の日にさかのぼって認定の効力が生じることが書かれている。これが〇である。3の
認定は市町村が行う。もちろん介護認定審査会の意見を踏まえてであるが。3は×である。4は少し迷う。認定の有効期間は法律で範囲を決めているだろうから「条例で」が×のような気もする。また、「要介護状態区分に応じて」期間が定まるわけではないと思うので、そこが×なのかもと感じる。5は「一般会計」でなく「特別会計」である。よって、本肢は×である。
【正解2】