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20.高齢者に対する支援と介護保険制度(R元年-第32回)1/2

問題126 「平成30年版高齢社会白書」(内閣府)にみる日本の人口の高齢化の動向及び将来推計に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1 2025年に後期高齢者数と前期高齢者数が逆転し, 後期高齢者数が上回ると予測されている。 2 高齢化率の「倍加年数」は24年であり,1970年から1994年にかけてであった。 3 2017年時点で,都道府県の中で高齢化率が最も低いのは東京都であった。 4 65歳以上人口に占める一人暮らしの者の割合は,2040年には男女共に40%を超えると予測されている。 5 2060年に高齢化率は50%を超えると予測されている。 (注) 「倍加年数」とは, 人口の高齢化率が7%から14%に達するまでに要した年数のことである。   白書系の問題や統計等に関する問題で、(注)記載がある場合には、(注)の記述内容を必ず読むこと。 2は倍化年数の意味がわかれば、割合とポピュラーな知識に関する肢だと気づく。知っていれば、積極法で2を選んで終了である。これを知らない場合、消去法でいくしかない。 1の後期高齢者数と前期高齢者数が何を指すかを知っていることは当然の前提である。前期高(65歳以上75歳未満)後期高(75歳以上)を比べた場合、いずれが多いのかはなかなか推論しづらい。知らなければ△にして次に進む。2の倍化年数は聞きなれない用語だが、(注)をみるとその内容が書いてある。言い換えれば、日本では1970年に高齢化社会になってから1994年に高齢社会になるまでが24年間だったということになる。これが〇である。3は過去問で何回か出題されている。2017年時点で高齢化率が最も低いのは沖縄県なので、×である。4である、2040年頃には3人に一人が高齢者になるという話は聞いたことがあるはず。さすがに40%は高すぎる感があるので×ぽい。5の2060年に50%という数字も少し高すぎる感があるので×ぽい。過去問で問われているものや推論可能なものもあるが、1は推論しづらい。平均寿命が男性80歳位、女性87歳位であることは知っている人が多いと思う。これを前提にすると人口構成がきれいなピラミッド型なら、前期高>後期高となるだろうと推測できる。ところが、人口構成は周知のように釣鐘型からつぼ型へと移行しているため、前期高<後期高という事態が生じるのである。肢1では2025年に前期高<後期高になると書かれているが、これは団塊の世代が2025年に後期高齢者になりきることを意識したひっかけであろう。実際には2018年3月の概算値で前期高<後期高となっており、2025年は遅すぎるので×である。細かすぎると思った人もいるかもしれないが、㉖-問126「 国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成24年1月中位推計)」によれば,2010年代後半には,75歳以上人口が65~74歳人口を上回る。」という肢がある。

【正解2】

問題127 高齢者等に関する近年の政策の動向についての次の記述のうち, 正しいものを1つ選びなさい。 l 「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年(平成28年)6月閣議決定)において,2025年度に向けて, 高齢者の介護予防施策に関する成果と要介護認定者数の伸びの抑制についての数値目標が掲げられた。 2 「認知症施策推進総合戦略( 新オレンジプラン)」(2017年(平成29年)改訂(厚生労働省))の7つの柱において, 若年性認知症の人の特性に配慮した就労・社会参加支援等の推進が掲げられた。 3 「高齢社会対策大網」(2018年(平成30年)2月閣議決定)において,高齢者の支援において新技術( 人工知能や介護ロポット,情報通信技術など)を活用することは,人間的な温かさが乏しいため, 避けることが望ましいという提言が行われた。 4「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 (2018年(平成30年)改訂(厚生労働省))では, 本人の意思による積極的安楽死についての決定プロセスが規定された。 5 「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(2018年(平成30年)(厚生労働省))において, 認知症の人の意思決定支援については,ケアを提供する専門職員や行政職員は関与しないことが規定された。   本問は、いずれの方法で解いてもよい問題である。積極法、消去法は、問題を解くための要領に過ぎない。自分なりに根拠を持って答えられれば、いずれでもよい。 「認知症施策推進総合戦略( 新オレンジプラン)」の7つの柱を知っていれば、積極法で2を選べる。しかし、その内容を正確に記憶していた人はどの位いたのであろうか。本問については、2の知識がなくても、消去法で正解は導ける。 1は、説明部分に問題はなさそうだが、「ニッポン一億総活躍プラン」に定められているとすれば違和感がある。何に定められているのかはわからなくても、×ぽいことには気づく。2は、知らなければ△にして次に進む。3の高齢者の支援における新技術( 人工知能や介護ロポット,情報通信技術など)の活用は避けられない状況であり、「人間的な温かさが乏しいため, 避けることが望ましい」との部分は×であろう。4は、「積極的安楽死について」の決定までは規定されていないので×。5は、認知症の人の意思決定支援だからこそ、ケアを提供する専門職員や行政職員は関与すべきと思われるので×ぽい。以上から、消去法で2を選ぶ。

【正解2】

問題128 高齢者保健福祉施策の変遷に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1 老人保健法(1982 年(昭和57年))により,市町村による40 歳以上の者に対する医療以外の保健事業(健康教育,健康診査,訪問指導など)の実施が規定された。 2 老人福祉法の改正(1990 年(平成2 年))により,特別養設老人ホーム等の入所決定権が,国から都道府県に移譲された。 3 介護保険法(1997 年(平成9 年))により,第一種社会福祉事業は原則として民間営利企業が経営することとなった。 4 高齢者の医療の確保に関する法律(2006年(平成18 年))により,老人訪問看護制度が創設された。 5 高齢者の居住の安定確保に関する法律の改正(2011年(平成23年))により,高齢者向け優良賃貸住宅の制度が創設された。   一定の知識がないと解きづらい。 本問は答えが割れたと思われる。 1は、やや細かい。知らなければ△にして次に進む。2は、記述が事実だとする1990年までは特別養設老人ホーム等の入所決定権が国にあったことになる。さすがに国に入所の決定権があったというのはおかしいだろうと感じるので、×ぽい。3は、介護保険法が成立したか否かとは関係なしに、第一種社会福祉事業は原則として国、地方公共団体、社会福祉法人しか営めないので×である。4の老人訪問看護制度ができたのは、1991年(平成3年)10月の老人保健法の改正のときなので×。正確に覚えていなくても、高齢者の医療の確保に関する法律(2006年)よりも前の話であることを思い出せればよい。5は知らないと判断しづらい。高齢者向け優良賃貸住宅の制度は、平成23年10月に廃止されたので×である。その後継として高齢者の居住の安定確保に関する法律によるサービス付き高齢者向け住宅の登録が開始された。2,3,4は推論で何とかなるが、5は判断しづらい。また、1の記述は単独で読むと、「医療以外の」という部分がひっかかってしまう(これが正解の肢なのだが)。

【正解5】

問題129介護予防に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。 1 指標としての健康寿命とは,健康状態で生活することが期待される平均期間である。 2 サルコペニアとは,加齢によって予備力が低下し,ストレスヘの回復力が低下した状態で, 要介護状態の前段階といえる。 3 2016年(平成28年)における平均寿命と健康寿命の差は,女性より男性の方が大きい。 4 フレイルとは,高齢期の筋量や筋力の低下,それに伴う身体機能低下で,サルコペニアの要因の一つである。 5 予防・健康づくりの推進のための介護予防と生活習慣病対策・フレイル対策は,一体的に介護保険で行われている。   サルコペニア、フレイルは最近流行り始めた言葉。知らない人は覚えよう。 選択肢2と選択肢4のどちらにも、サルコペニアという言葉が記載されている。この様な表現がある場合は、交差法が反映している場合が多い。 ※交差法については、当ブログの「その他」カテゴリー記事を参照。 1の健康寿命は過去問で何回かでているが、言い回しが特殊であり即座に適切とはしづらい。△にして次に進む。2のサルコペニアは、4の説明部分にある「筋量や筋力の低下」のことなので×。男性のほうが女性より7年位平均寿命が短い(≒80歳)。だとすれば、平均寿命と健康寿命の差は、女性のほうが大きいと推論すべきだろうから、×。4のフレイルは、2の説明部分と対応するので×である。5は、少なくとも「生活習慣病対策」が「介護保険で行われている」という部分はおかしいので、×である。 

【正解1】

問題130 片麻痺(まひ)の要介護者に対する介護の方法に関する次の記述のうち, 適切なものを1つ選びなさい。 1 上着を脱がせるときは, 麻痺のある側から脱がせ, 着るときは麻痺のない側から袖を通す。 2 車いすからベッドヘ移乗介助する場合, ベッドに対して要介護者の患側に車いすを置く。 3 移動介助におけるボデイメカニクス活用として, 介助者の支持基底面を狭くとる。 4 食事時の座位姿勢として, 頸部(けいぶ)は体幹に対して後屈の姿勢とする。 5 杖(つえ)歩行の介助を行う場合介助者は杖を持っていない側の後ろに立つ。   介護職には有利な問題である。 1は、結論が逆になっているので×である。2の移乗を行う際は、健側を軸にして動くことがポイントになる。そのためベッドに対して要介護者の健側にが適切だと思われるので、本肢は×である。3は、介助者の支持基底面を広くとる必要があるので×。5は、特に問題のない記述である。杖を持っている側に立つと杖が十分に使えないし、杖を持っていない側の後ろに立つのは姿勢を崩したときに速やかに支えられることは容易に想像できる。 1であるが、脱がせるときは、麻痺のない側からでないと脱がせられないし、着るときは麻痺のある側から袖を通さないと両袖を通すことは困難である。イメージしづらい人は、実際に片側に麻痺があるものと想定し(まっすぐな状態で動かさないようにして)、実際にやってみるとよい。2は、「車いすからベッドヘ移乗介助する場合」となっているが、それに対する実際の介助の記述はややつながりにくい(問題文に問題があるのではないだろうか)。

【正解5】

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