20.高齢者に対する支援と介護保険制度(R2年-第33回)1/2
問題126 「令和元年版高齢社会白書」(内閣府)における高齢者の介護に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 65歳以上の者の死因別の死亡率で最も高いのは,「老衰」となっている。
2 要介護者等からみた主な介護者の続柄で最も多いのは,「子の配偶者」となっている。
3 55歳以上の男性では,介護を頼みたい人として最も多いのは,「子」となっている。
4 要介護者等において,介護が必要になった主な原因で最も多いのは,「認知症」となっている。
5 55歳以上の男女では,介護が必要になった場合の費用をまかなう手段として最も多いのは,「貯蓄」となっている。
元の白書を知らなければ、既存の知識と推論で解くしかないが、過去問にも似たような出題がある。
過去問学習をしていた人は、ある程度、判断できるであろう。消去法で解くとよい。
1は、×である。平均寿命は男が82歳、女性92歳近くまで上がっている。65歳以上に限定しても、老衰以外の死因(がん等)がより上位にあると考えられる。
2は、×である。子の配偶者よりも、配偶者(そのもの)、子の方が多い。
3は、×である。子よりも配偶者の方ではないだろうか。「55歳以上の男性」であれば子に介護を頼みたいと思っている人は少ないように感じる。
4は、〇である。1位「認知症」、2位「脳血管疾患(脳卒中)」、3位「虚弱」、4位「骨折・転倒」である。
5は、×である。65歳以上のものに限れば、貯蓄よりも年金と答えた人の割合が高い。55歳以上だと少し悩むが、65歳以上の人口の方が多いので、やはり最も多いのは年金だと判断してよい。
【正解4】
問題127 高齢者の保健・福祉制度の展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 生活保護法(1950年(昭和25年))により,全国老人クラブ連合会が結成され,老人クラブが規定された。
2 老人福祉法(1963年(昭和38年))により,軽費老人ホームが規定された。
3 老人保健法(1982年(昭和57年))により,介護予防事業が規定された。
4 高齢社会対策基本法(1995年(平成7年))により,21世紀までの介護基盤の量的整備が規定された。
5 介護保険法(1997年(平成9年))により,認知症サポーター養成研修事業が規定された。
知識が必要であるが、多少の想像力を働かせば、消去法で絞れると思われる。
1は、×である。戦後間もない1950年当時に老人クラブについて検討する余裕などないだろうと感じて欲しい。
2は、〇である。知らなければ△にして次に進む。
3は、×である。介護予防事業は介護保険が施行された2000年よりも後の話である。
4は、知らないと判断しづらいであろうが、21世紀までの介護基盤の量的整備を規定したものは、1989年に策定された「高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略」(ゴールドプラン)か、1995年の新ゴールドプランのことだ。×である。
5は、×である。認知症サポーター養成研修事業(2005年)が規定されたのは、介護保険法施行の後のことである。
【正解2】
問題128 事例を読んで,W居宅介護支援事業所のC介護支援専門員(社会福祉士)によるDさんへの支援内容として,適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Dさん(69歳,女性,要介護2)は長男(42歳)と暮らしている。10年前にパーキンソン病と診断され,服薬を続けている。小刻み状態の歩行であり,自宅のカーペットは,ずれやすく転びそうになることがある。ベッドの端座位からの起立に時間がかかる。食事の際,たまにむせることがある。また,最近は昼間に強い眠気がある。担当のW居宅介護支援事業所のC介護支援専門員は,自宅で安心して暮らしていきたいというDさんと長男の意向を踏まえ,居宅サービス計画を立案している。
1 転倒防止のため,できるだけベッド上での安静を図るよう指示した。
2 転ばないように,カーペットを固定することを助言した。
3 強い眠気は薬の副作用であるので,薬の減量を長男に指示した。
4 ベッドからの起立を楽にするために,一気に起き上がることを勧めた。
5 食べ物が喉の途中に引っかかる感じがないか,Dさんと長男に確認した。
事例文を良く読み込み、Dさんの心身の状況を念頭に解答しよう。
誰もが正解出来る問題である。取りこぼすことの無い様にしたい。
1は、×である。転倒は減っても、ベッド上での安静を図るだけでは廃用性症候群になってしまう。
2は、〇である。固定すれば、「自宅のカーペットは,ずれやすく転びそうになることがある」といった問題を解消できる。
3は、×である。薬を減量するかどうかは医師が判断することである。
4は、×である。一気に起き上がることはDにとって難しいことであろうし、起立性低血圧を起こす可能性もある。
5は、〇である。10年前にパーキンソン病と診断されていることから、嚥下障害が出てきている可能性があり、「食事の際,たまにむせることがある」というのだから、食べ物が喉の途中に引っかかる感じがないかを確認することは適切である。
【正解2,5】
問題129 「ロボット技術の介護利用における重点分野」(2017年(平成29年)改訂(厚生労働省・経済産業省))に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 見守り•コミュニケーション分野には,センサーや外部通信機能を備えた機器のプラットフォームが含まれる。
2 移乗支援分野には,ロボット技術を用いて高齢者等の外出や屋内移動をサポートする機器が含まれる。
3 移乗支援分野の非装着型の機器は,備付けのための土台工事が必要となる。
4 移動支援分野の装着型機器は,パワーアシストで介助者の負担軽減を図る。
5 排泄支援分野を担うロボットは,排泄物の処理を行うものに限られる。
この問題を事前に予想していた人は、受験生の中にはいなかったのではないだろうか。問題文をよく読んで想像力を働かせながら、選択肢の正誤を判断するしかない。
とっかかりがつかめないときは、ざっとすべての選択肢に目を通すのがよい。そうしているうちに、問題を解くためのきっかけが思い浮かぶこともある。
1は、〇である。見守りのためにはセンサーが有効であるし、コミュニケーションに外部通信機能を備えた機器のプラットフォームを含めても特に問題はない。
2は、×である。移乗(※移動ではない)の支援に外出や屋内移動をサポートする機器は含まれないと考えられる。
3は、少し迷う。ポイントは、非装着型の機器に,備付けのための土台工事が必要かである。福祉機器について多少の知識があれば、移乗支援のために可動型のリフトのようなものがあることが思い浮かぶであろう。そうした可動型のリフトには、備付けのための土台工事は不要である。×である。
4も、少し迷う。移動支援分野の装着型機器とはどのようなものだろうか。説明は「パワーアシストで介助者の負担軽減を図る」とあるが、むしろ利用者が装着することにより移動支援を図るようなものを指すと考えられないだろうか。もし、そうであれば介助者ではなく、利用者の負担軽減を図るものだということになる。こう考えれば×であると判断できる。
5は、どうか。文末の「限られる」がひっかる。排泄物の処理だけでなく、排泄のための動作を楽にするようなものも含めてよいのではないだろうか。そう考えると×であることが分かる。
【正解1】
問題130 要介護高齢者の住環境整備に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 階段は,ステップの面と高さの色彩コントラストをはっきりさせる。
2 床の滑り止めを極力強化することで,転倒を防止する。
3 手指に拘縮がある場合,握り式のドアノブにする。
4 車いす利用の場合,有効な廊下幅は550mm以上である。
5 ポータブルトイレの設置は,ベッドからできるだけ遠ざける。
介護福祉士や介護支援専門員の資格を有している人にとっては、サービス問題だったかもしれない。
1は、〇である。段差をはっきりさせることは住環境の整備として適切である。
2は、×である。かえって躓く危険性が高まる。
3は、×である。握り式だと手に拘縮がある人は開けづらい。
4は、×である。550㎜では狭すぎる。試験場で実際に手を使って幅を確認すれば、わかるはずである。
5は、×である。説明の必要はないだろう。
【正解1】
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