16.社会福祉(H31年-前期)4/4
問16
次の文は、人権の擁護に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 児童福祉施設の職員による入所児童に対する虐待の禁止について、「児童虐待の防止等に関する法律」に規定されている。
B 障害児入所施設の職員による入所児童に対する虐待の禁止について、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に規定されている。
C 婦人相談所の都道府県への設置について、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」に規定されている。
D 警察は、配偶者暴力相談支援センターの機能を担う。
(組み合わせ)
A B C D
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 × ○ × ×
4 × × ○ ○
5 × × × ×
これも難しい問題だと思います。
特に、AとBが間違いやすいと思います。参考部分が、赤文字。
A 児童福祉施設の職員による入所児童に対する虐待の禁止については、「児童虐待の防止等に関する法律」ではなく、児童福祉法に規定されています。更には、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準にも規定があります。「児童虐待防止法」で虐待者となるのは、保護者です。
以下、各種法律から関係部分を引用。
児童虐待防止法 第三条
この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
児童福祉法 第三十三条の十
この法律で、被措置児童等虐待とは、小規模住居型児童養育事業に従事する者、里親若しくはその同居人、乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設の長、その職員その他の従業者、指定発達支援医療機関の管理者その他の従業者、第十二条の四に規定する児童を一時保護する施設を設けている児童相談所の所長、当該施設の職員その他の従業者又は第三十三条第一項若しくは第二項の委託を受けて児童の一時保護を行う業務に従事する者(以下「施設職員等」と総称する。)が、委託された児童、入所する児童又は一時保護が行われた児童(以下「被措置児童等」という。)について行う次に掲げる行為をいう。
B 選択肢は障害児入所施設の職員となっていますので、A同様児童福祉法に規定されています。この問題を整理すると、障害者虐待防止法の障害者には障害児が含まれます。障害者虐待防止法の障害者は、障害者基本法第二条第一号に規定する障害者です。障害者基本法においては、障害者・障害児という年齢による区分はありません。従って、障害児も障害者虐待防止法の適用があります。試験センターにおいては、この選択肢は間違いとなっています。つまり、障害児入所施設の職員による虐待は児童福祉法に規定されているだけ、という狭義の解釈であると思われます。しかし、これは入所児童が障害者虐待防止法の適用がないとするものではありません。正確には、障害者虐待防止法の適用もあり得るが、障害児入所施設内においては児童福祉法が優先的に適用されるという解釈が良いのではないかと思います。ちょっと疑問符の着く問題です。
C 婦人相談所の都道府県への設置については、売春防止法に規定があります。
売春防止法 第三十四条
都道府県は、婦人相談所を設置しなければならない。
配偶者暴力相談支援センターの設置については、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に規定されています。そして、この配偶者暴力相談支援センターは婦人相談所その他の適切な施設に設置されることになっています。
ややこしいので、整理しながら覚えましょう。
D 配偶者暴力相談支援センターの機能を担うのは、警察ではなく都道府県及び市町村です。
【正解5】
問17
次の文は、「社会福祉法」に定める、運営適正化委員会に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 市町村社会福祉協議会に設置し、利用者等からの苦情を適切に解決する。
B 福祉サービスに関する苦情解決の申し出があった場合、その事情を調査する。
C 福祉サービス利用援助事業を行う者に対して、必要な助言をすることがある。
D 苦情に係る福祉サービスの利用者の処遇についての不当な行為が行われているおそれがある場合は、市町村長にその旨を通知する。
(組み合わせ)
A B C D
1 ○ ○ × ○
2 ○ × ○ ×
3 × ○ ○ ×
4 × × × ○
5 × × × ×
運営適正化委員会の業務に関する問題です。
運営適正化委員会の主な業務は、福祉サービス利用援助事業に関する助言/苦情の解決のための相談/都道府県知事への通知
等です。また、運営適正化委員会は都道府県社会福祉協議会に設置されます。
【正解3】
問18
次の文は、「平成 28 年 国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 全世帯のうち、高齢者のいる世帯は、約2割を占める。
B 母子世帯は、父子世帯より多い。
C 全世帯のうち、最も多い世帯構造は、三世代世帯である。
D 全世帯のうち、児童のいる世帯は、約1割を占める。
E 高齢者世帯のうち、単独世帯では、女性より男性の方が多い。
(組み合わせ)
A B C D E
1 ○ ○ ○ × ○
2 ○ × × ○ ×
3 × ○ × × ○
4 × ○ × × ×
5 × × ○ ○ ×
A 高齢者のいる世帯は、5割近くなっています。間違い。
B 母子世帯が多い。正しい。
C 間違い。
D 児童のいる世帯は、2割を超えています。間違い。
E 女性が多い。間違い。
詳細は「平成 28 年 国民生活基礎調査の概況」を見て頂くしかありませんが、迷うのはDぐらいではないでしょうか。高齢化率や男女別平均寿命などの常識的なことから、AとEは無いと思いますし、感覚的にBは正しく、Cはあり得ないという感じですね。
【正解4】
問19
次の文は、子育てと仕事に関する調査についての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 児童のいる世帯のうち母が仕事をしているのは、2016(平成 28)年の時点で約3割の世帯である。
B 仕事をしている女性の 2016(平成 28)年度の育児休業取得率は、8割以上である。
C 仕事をしている男性の 2016(平成 28)年度の育児休業取得率は、2割以上である。
D 育児のための短時間勤務制度を導入している事業所の割合は、2016(平成 28)年の時点で9割以上である。
(組み合わせ)
A B C D
1 ○ ○ × ×
2 ○ × ○ ○
3 ○ × × ○
4 × ○ × ×
5 × × ○ ○
正式な政府などの統計名がありませんが、「平成 28 年 国民生活基礎調査の概況」が参考になりそうです。
A 児童のいる世帯(熊本県を除く。)における母の仕事の有無をみると、「仕事あり」は 67.2%となっています。感覚的にも3割という数字でないことは分かるのではないでしょうか。
B 女性の育児休業取得率は86%程度となっています。
C 男性の育児休業取得率は5%程度となっています。
D 短時間勤務制度を導入している事業所の割合は、6割程度です。
※育児休業取得率の男女別の違いは、極端ですね。
【正解4】
問20
次の文は、地域包括ケアシステムの充実に向けた取り組みについての記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 医療及び介護の関係機関・団体が相互の役割分担と連携を密にして、総合的な支援が行われる体制を確保する。
B 地域住民に認知症に対する正しい理解を促すため、認知症サポーターを養成し、認知症の人を地域で支える体制をつくる。
C 高齢者各人の有する能力を評価することなく、自立した日常生活を支援することに努める。
D 高齢者と障害児者が同一事業所でサービスを受けやすくするため、共生型サービスを位置づける。
(組み合わせ)
A B C D
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 ○ × ○ ×
4 × × ○ ○
5 × × × ○
高齢福祉、介護保険の分野では地域包括ケアシステムというのは最重要事項です。
A 連携を行う、密にするという言葉が使われている選択肢が間違いである可能性は、この選択肢に限らず少ないと言えます。正しい。
B 地域で支える体制というのは正に目指しているところです。加えて認知症サポーターの養成というのも地域包括ケアシステムと密接に関係があります。
C 文章の後半部分は合っていますが、「能力を評価することなく」という箇所が間違いです。
D 厚生労働省のWEBに、平成30年の介護・障害報酬改定において、「共生型サービス」の創設に伴う基準・報酬についての必要な対応を行う、とあります。概念としての共生型は以前からあったかもしれませんが、具体的に報酬が算定されるのは平成30年4月からです。介護保険については、3年ごとの改定と覚えておきましょう。通常の流れは、平成12年4月施行、平成15・18・21・24・27・30年4月改定内容が施行されます。また、介護保険法の改正は、各々の年の前年の11~12月ぐらいに行われるのが通常です。この改正年と施行年を混同しないようにしましょう。例えば、2005年の改正で地域包括支援センターが創設された、というのはよく出てきますが、実際の施行は2006年4月からですね。
【正解2】
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