問題84 政府が行う社会調査の対象に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 国勢調査は,日本に常住する外国人を対象としない。
2 労働力調査は,調査時に求職中の人も対象とする
3 社会保障生計調査は,被保護世帯を対象としない。
4 国民生活基礎調査は,20歳未満の国民を対象としない。
5 家計調査は,学生の単身世帯も対象とする。
知識がなければ自信を持って判断できないが、選択肢の調査の内容を想像すれば、ある程度まで選択肢を絞れる問題。
できるだけ早く正しそうな肢を絞って、そこから比較して答えを決める。
1は、×である。日本に住んでいる
全ての人が対象となる。
2は、〇ぽい。念のため、他の選択肢も確認する。
3は、×である。全国の
被保護世帯を対象として、約1,100世帯を抽出する。
4は、×である。調査対象は全国から無作為に抽出される。ちなみに、2021(令和3)年調査では、約5万5千世帯が対象となる。
5は、×である。二人以上の世帯が対象となる調査である。
【正解2】
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★社会保障調査の除外世帯★
次のいずれかに該当する世帯は、調査対象から除外される。
(1)生活扶助を受けていない世帯
(2)世帯分離している世帯
(3)世帯人員が6人以上の世帯
(4)耕地0.1ヘクタール以上を耕作して農業を営む者のいる世帯
(5)林業、漁業、その他の事業を営む者のいる世帯
(6)保護施設・寮等において賄いを共通しているなど集団的共同生活を営んでいる世帯
(7)賄い付きの同居人のいる世帯
(8)その他不適当と認められる世帯
※根拠法令:統計法に基づく一般統計調査
問題85 社会調査の倫理に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会福祉施設利用者に聞き取り調査をする際,聞き漏らしを防ぐための録音は,不安感を抱かせるので,調査対象者に告げずに行った。
2 介護施設で職員へのマネジメントに関する調査をする際,施設長に対する職員の評価を正確に把握するために,全員に記名式の質問紙の提出を義務づけた。
3 社会福祉学部の学生からの依頼で質問紙調査をする際,いつも出入りしている学生だったため,施設利用者に特に説明することなく質問紙を配布した。
4 社会福祉施設利用者の家族の実情を聴く際,第三者が出入りしない個室で聞き取り調査を行った。
5 施設にボランティア活動に来る小学生に質問紙調査をする際,本人たちの了承を得るだけでよい。
社会調査の倫理はかなり厳格だという感覚を持っておいたほうがよい。
社会調査協会倫理規定はわずか9条のものなので、一度は目を通しておくことを勧める。
1は、×である。録音するのであれば、原則として調査対象者に
告げてから行う必要がある。
2は、×である。記名式の質問紙の提出を義務づけると、職員は施設長に対する本音を書かないであろう。
3は、×である。調査をするのであれば、誰からの依頼であろうと施設利用者に説明する必要がある。
4は、〇である。プライバシー確保のために第三者が出入りしない個室で、聞き取り調査を行うことは適切である。
5は、×である。調査対象者年少者である場合、まず保護者や学校長などの責任ある成人の承諾を得なければならない(社会調査協会倫理規定第7条参照。なお、同規定は満15歳以下の場合としている)。
㉗問85で出題実績あり
【正解4】
問題86 標本調査に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 非標本誤差は,回答者の誤答や記入漏れ,調査者の入力や集計のミスなどで生じる。
2 無作為抽出法による標本調査には,道で偶然に出会った見知らぬ人々を調査対象者として選ぶ方法も含む。
3 系統的抽出法は,母集団を性別や年齢別などの比率で分けて標本を得る無作為抽出の方法である。
4 有意抽出法は,確率抽出法の一方法である。
5 無作為抽出法による標本調査では,サンプルサイズの大小は,母集団を推計する信頼度に関係しない。
標本調査に関する基本的用語が理解できていれば、比較的簡単に解ける問題である。
1は、〇である。知っていれば、これを選べばよい。受験生であれば知っていて欲しい基礎知識でもある。
2は、×である。無作為抽出法は確率抽出法のことであるが、道で偶然に出会った見知らぬ人々を調査対象者として選ぶのは確率抽出法とはいえない。
3は、×である。系統的抽出法は、有意抽出の方法である。
なお、知識が曖昧な場合は、「母集団を性別や年齢別などの比率で分けて標本を得る」方法が無作為抽出(確率抽出)の方法とはいえないことに気づけばよい。
4は、×である。意抽出法は,確率抽出法の対概念である。
5は、×である。サンプルサイズの大小は,母集団を推計する信頼度に関係すると気づいて欲しい。
【正解1】
問題87 横断調査と縦断調査に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 縦断調査とは,一時点のデータを収集する調査のことをいう。
2 横断調査で得られたデータを,時系列データと呼ぶ。
3 パネル調査とは,調査対象者に対して,過去の出来事を振り返って回答してもらう調査のことをいう。
4 パネル調査は,横断調査に比べて,因果関係を解明するのに適している。
5 横断調査では,時期を空けた2回目以降の調査で同じ調査対象者が脱落してしまうといった問題がある。
簡単そうで難しい。自信を持って判断できる肢を潰しながら、消去法で慎重に解くほうがよい。
1は、×である。縦断調査は、一定の調査対象に関して時をへだてた2つ以上の時点で調査を行うものである。
2は、×である。縦断調査で選られたデータに関するものである。
3は、×である。パネル調査は、調査対象者を固定化(パネル化)し、一定期間繰り返しアンケートをおこなう調査方法であり、過去の出来事を振り返って回答してもらう調査のことではない。
4は、どうか。推論して解く肢である。横断調査は、社会をある一時点において切断し,そこに作用するいくつかの社会的因子間の相関関係ないし因果関係を調査する方法である。一定期間繰り返しアンケートをおこなうパネル調査の方が因果関係を解明するのに適しているといえると感じれば、本肢を〇とすればよい。もし自信がもてなければ、△にして次に進む。
5は、×である。書かれている内容はパネル調査についてのものである。
【正解4】
問題88 質問紙の作成に当たっての留意点に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 一つの質問文で複数の事項を問うことは,複数の回答が同時に得られるので,質問紙の作成において望ましいと考えられている。
2 パーソナルな質問とは社会一般的な意見について尋ねる質問であり,インパーソナルな質問とは調査対象者自身の意識や行動について尋ねる質問である。
3 質問文を作成するときには,調査対象者に関心を持ってもらうために,一般的に固定的なイメージを持つステレオタイプな用語を使う必要がある。
4 社会的に望ましい結果を得るために,誘導的な質問をすることは質問紙の作成として適切である。
5 前の質問文の内容が次の質問文の回答に影響を与えないように,注意を払う必要がある。
質問紙の作成に関する問題であり、過去問でも問われている。
正解したい問題である。
1は、×である。ダブルバーレルと呼ばれるものであり、不適切な質問とされている。
2は、×である。説明部分が入れ替わっている。
3は、×である。ステレオタイプな用語の使用も質問紙の作成の際には不適切だとされている。
4は、×である。誘導的な質問も避けるべきだとされている。
5は、〇である。キャリー・オーバー効果に関するものである。
【正解5】
問題89 調査票の配布と回収に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 集合調査は,多くの人が集まる場所で調査票を配布後 ,個々の調査対象者に対して回答を尋ねて,調査員が調査票に記入して回収する方法である。
2 郵送調査は,調査対象者に調査票を郵便によって配布後 ,調査員が訪問して,記名のある回答済の調査票を回収する方法である。
3 留置調査は,調査対象者を調査員が訪問して調査票を置いていき,調査対象者が記入した後で調査員が回収する方法である。
4 訪問面接調査は,調査員が調査対象者を訪問して調査票を渡し,調査対象者に記入してもらい回収する方法である。
5 モニター調査は,インターネット上で不特定多数の人々に調査票を配信して回収する方法である。
選択肢1の判断に迷った人が多かったのではないだろうか。
肢1は「個々の調査対象者に対して回答を尋ねて,調査員が調査票に記入して」の部分が不要な記述ということになるので、出題者としては「×」として欲しかったのであろう。
1は、×である。集合調査とは、学校や職場、または、何らかの集会の場で調査票を配布しその場で記入してもらったり、あとで回収したりする調査方法のことをいう。少し迷う部分がある。自信がなければ△にして次に進む。
2は、×である。郵送調査と言っておきながら「調査員訪問して」回収するという部分に、気付いて欲しい。
3は、〇である。特に問題のない記述である。
4は、×である。訪問面接調査についての記述なのに、説明の部分に面接の要素がないことに気付いたであろうか。
5は、×である。モニター調査において「インターネット上で不特定多数の人々に調査票を配信して回収する」必然性がない。
モニターとは、「ある条件に基づき任意に抽出した調査対象のグループ」を指す言葉だが、知らなくても何となく想像できるのではないだろうか。
【正解3】
問題90 調査手法としての観察法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ 選びなさい。
1 観察法における「完全な観察者」は,観察に徹して,その場の活動には参加しない。
2 観察法では,聞き取り,文書,写真などの資料は使用しない。
3 観察法の一つとしての参与観察法では,集団を観察対象としない。
4 観察法におけるノートへの記録は,観察時間内に行い,観察終了後には行わない。
5 観察法では,質的なデータは扱うが,量的なデータは扱わない。
肢3の参与観察法が、肢1を判断するためのヒントになっている。
消去法で解けば、比較的正解が出しやすい。
1は、〇である。記載事項に問題はない。「完全な観察者」の意味がぴんとこなければ、△にして先に進む。
2は、×である。観察法でも「聞き取り,文書,写真などの資料」を使用することに問題はない。
3は、×である。参与観察法では、観察者も集団の活動に参加するが、観察対象は集団である。
4は、×である。ノートへの記録を観察終了後に行う場合も考えられる。
5は、×である。量的なデータを扱うことに問題はない。
【正解1】